2013年7月21日日曜日

『Yコンビネーター』

シリコンバレーにあるYコンビネーター(以下YC)。
ソフトウェア・スタートアップが生まれるベンチャーファンドだ。
YCは、同時に数十社ものソフトウェア・スタートアップに投資する。それぞれのベンチャー会社は1万1千ドルから2万ドルという少額の出資を受ける換わりに株式の7%をYCに与える。
YCはスタートアップベンチャー企業に対し、単に出資するだけではなく、「指導」を行う。しかし、この「指導」は決して手取り足取りという感じではなく、「這い上がってくるためのコツ」のレクチャーという感じだ。
スタートアップにおいて、具体的にどのようなコトが行われているのかが描写されていて非常に面白い。

YCが最終候補として面接に呼ぶのは2000組の応募チームのわずか9%以下。(それでもYCのパートナー達は最終候補170組を8日で面接しなければならない。) 通常、その日の上位8チーム程度が合格する。(合格率はほぼ3%ということ)
YCに選ばれることが難関であるのに、そのYCの卒業生が成句するのは同じ位の難関。もしかするとスタートアップの最終的な成功率は0.3%位なのかもしれない。

YCのもっとも精力的な教師であり、主席アーキテクトであるポール・グレアムによると、スタートアップの創業者になるのに最適の時期を選べと言われれば、20代の半ばだそうだ。
「 25歳はスタミナ、貧乏、根無し草性(移動を厭わない性格)、同僚、無知といった起業に必要なあらゆる利点を備えている。」
最後の利点(?)の「無知」というのが面白い。先が見越せてしまうととてもではないが起業に踏み切れないということか。


ソフトウェア・スタートアップでは「ゴールドラッシュではツルハシを売れ」ということが言われるらしい。
 1849年のカリフォルニア州のゴールドラッシュで、もっとも大きな成功を収めた実業家たちは自身で金を採掘したのではなく、ジーンズを発明したリーバイ・ストラウスのように、採掘者たちに必需品を売った人々だった。
自ら「金」を採りにいくのではなく、それをサポートするツール(ソフト)を供給せよという意味だ。

日本でも「インキュベーター」という言葉が市民権を得てきているが、インキュベーターとはオフィス・スペースを提供する場合を言うらしい。
技術的な定義になるが、スタートアップにオフィス・スペースを提供する場合は「インキュベーター」と呼ばれ、そうでない場合は「アクセラレーター」と呼ばれる。


YCは自らもエンジェルとなるのだが、YCの有望なスタートアップを選ぶ能力に信頼が寄せられることにより、デモ・デーには他の多数の投資家が参加し、その場もしくはその後で投資先を決めていく。
そのため、YCは自ら投資家でありながら、「出資を受けるためのスキル」を与える役割も担っているのが面白い。


以下はYCで面接時に聞かれる内容。実はこれらは投資家から後で聞かれるであろう内容となっている。
・新しいユーザーがこのプロダクトを使ってみようと思う理由は?
・一番怖いと思うライバルは?
・君たちがチームとして集まった理由は?
・ボスは誰?
・これまでで一番自慢になるきみの業績は?
・きみの今までで最大の失敗は?
・既存のプロダクトとの違いを正確に言うと?
・プロダクトがどういう仕組みなのか、もっと詳しく説明すると?
・ユーザーが使うのをためらう理由は?
・このプロダクトは次にどう発展させていきたい?
・新しいユーザーはどこから来る?
・6ヶ月後に直面しているであろう、一番大きな問題は?
・今まで他の人がこれをやらなかった理由は?
・ユーザーからの希望で一番多いものは?
・コンバージョン率は?

投資家から聞かれる内容。。これらは新規事業を手がけるなら回答を要求される項目ということだ。
全部回答できるかな。