2014年5月25日日曜日

第5回つなぐLab 『女性に優しい社会』とは

立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科特任准教授の中西紹一先生によるワークショップ第5弾。
今回のテーマは『これからの女性支援を考える』

某T社さんのワーキングマザーをターゲットとしたと思われるCMを見て、何に違和感を感じて、どういう領域に女性が進出するといいのかという議論を行った。

参加者のうち8割くらいが女性だったこともあり、(個人的には滅多に機会のない)女性のセキララな意見が聞けて面白かった。

CMを見た感想として
「男性から見たママ像ベースだが、何を誰に言いたいのか分からない」
「家事は女性がするものという前提条件が刷り込まれている」
「女性にとって現代の三種の神器はルンバ、食洗機、全自動洗濯機なのに、それが分かっていない」
「リアリティがなく、生活感もないので、心に響かない」
と言った意見が出ていた。

次に、何故このようなCMとなってしまったのかを想像しようというセッションになった。
自分は結構このフローは分かっていたが、逆に参加者の大半がクライアントと広告代理店、そしてクリエイターの役割、立場の違いについて分かってないことにちょっとビックリした。

セッションの中で面白いと思った意見を列挙すると
「女性向けのリサーチは企業も行っているが、そのリサーチは役立っているとは言えない」
「女性だからといって「ママ」が分かっているとは限らない。むしろ今の企業で生き残っているのは「男性化した女性」だけ」
「日本では専業主婦→ワーキングマザーという流れが主流だが、アメリカでは働いていた女性が専業主婦となるケースが増えてきている(『ハウスワーク2.0』)。」
「アベノミクスでは、2020年に女性管理職を30%という数値目標を掲げているが、その任にない人まで女性管理職となると今度は女性の自殺率が増えたりするのではないか」
「被災地では、子供のみならず女性も見かけなくなった。」
「天下り文化とは、『稼がなくてはならない』という男性主体の文化が生み出したもの」


男性=女性という二項対立で考えることが我々の意識の中に埋め込まれている、という中西先生の話しがあった後も、
「(女性に優しい社会にするには)女性はどの領域に進出すべきか」
という議論について、女性も含めて全員が「女性」=「働く女性」という前提で話しをし始めていたことに「無意識下に埋め込まれた前提の重さ」を感じた気がした。


女性は政治領域にも進出すべきだという意見がある一方、「今の女性政治家は変な人ばかり。機能しているとは言えない」という厳しい声も女性からあがっていて面白かった。


「女性に優しい社会をつくるのには、制度で守るのではなく、関係で守る必要がある」
「多様性(diversity)をパワーに変えていくことがこれからの社会では必須となる」
というような意見が最後にでて、なるほどという感じであった。
非常に勉強になった。



『スタンフォードの自分を変える教室』

自分の行動を変えたいと思っている人は多いが、失敗する人も多い。
単に意志の力とされたりするが、これを何故失敗してしまうのかという理論とやり通すための実践できる方法をセットで解説している本。

ちょっと長くなるがポイントを記載していきたい。

時代をさかのぼること10万年前のホモサピエンスになったと想像して欲しい。
ほんの数世代前前までは、生きていく上で重要なことはごくわずかだった。
①食べ物をみつける。
②繁殖する。
③人食いワニとの遭遇を避ける。
しかし、いまやあたなは密接な結びつきをもつ部族の中で暮らしており、生き残っていくためには、仲間のホモサピエンスの力を借りなければならない。
つまり、④「他人を激怒させないようにすること」が生き残るための心得に加わった。

現代の我々が持っている意志力は、大昔の人間達が仲間とうまく付き合い、親やパートナーとしてやっていくために、必要に迫られて身につけた能力。
そのために人間の脳は、前頭前皮質、ちょうと額と目の後ろに位置する脳の領域を進化させた。 進化の歴史が始まって以来、前頭前皮質の主な役割は身体の動きをコントロールすることだった。歩いたり、走ったり、いわば自己コントロールの原型みたいなもの。

人類が進化するにつれて前頭前皮質は大きくなり、脳の他の領域との連携も良くなった。 スタンフォード大学の神経生理学者ロバート・サポルスキーは、現代の前頭前皮質の主な役割は、脳にやるべきことをやるようにしむけることだと言っている。
前頭前皮質は灰白質からなる一つの塊ではなく、おもに3つの領域に分かれている。
前頭前皮質の上部左側の領域は「やる力」を司っている。そのおかげで、退屈な仕事や難しい仕事、あるいはストレスの多い仕事でもちゃんと着手してやり遂げることができる。 反対の右側は「やらない力」を司っており、衝動や欲求を感じてもすぐに流されないようにしている。
3つ目の領域は、前頭前皮質の中央の少し下の方に位置しており、目標や欲求を記録する場所。これによってあなたの「望むこと」が決まる。この部分の細胞が即座に反応すればするほど、行動を起こしたり、誘惑をはねのけたりするモチベーションが上がる。
前頭前皮質のこの領域は、あなたが本当に望むことを忘れない。

<闘争・逃走ストレス反応>
サバンナでサーベルタイガーを発見した瞬間を想像して欲しい。
目からの情報は、まず脳の扁桃体という場所へ送られる。扁桃体はいわばあなた専用の警報装置のようなもの。この警報装置は脳の中央に位置し、迫り来る緊急事態を察知する役目を果たす。ちょうど脳の真ん中にあるため、危険を察知した場合に脳の他の領域や体中へ信号を送りやすい。
警報装置は、その信号を速やかに脳の他の領域や体に送り、ただちに闘争・逃走反応に移る準備を命じる。
すると、ストレスホルモンが副腎から分泌され、エネルギー〜すなわち脂肪と糖分〜が肝臓から血液中に分泌される。呼吸器系では肺が膨らみ、体内に酸素が充分に行き渡るようにする。心臓血管系はフル回転し、戦うにせよ逃げるにせよ、血中のエネルギーが必要な筋肉に行き渡るようにする。つまり、体中の細胞が指令をうけた状態となる。
また、警報システムは脳内化学物質に複雑な変化を生じさせ、前頭前皮質、つまり衝動をコントロールする脳の領域の働きを妨げる。
つまり、闘争・逃走反応は、あなたがもっとも衝動的にあるように仕向けるのだ。
闘争・逃走反応はエネルギー管理本能とも言えるだろう。限られた身体的、精神的エネルギーをどのように使うべきかを決定するのだ。

一方、ケンタッキー大学の心理学者スーザン・C・セガストロームが打ち出した<休止・計画反応>というものもある。
こちらは闘争・逃走反応と違って、外的な脅威を認識したときではなく、内なる葛藤を認識した場合に起こる。
前頭前皮質は、自己コントロールの指示を出し、心拍数や血圧や呼吸など自動的な機能を司る脳の領域の働きを鈍らせる。(つまり、休止・計画反応は闘争・逃走反応とは正反対のことをさせる)

意志の強さは「心拍変動」というものでわかり、測定することができる。
休止・計画反応を測定するために最もよい生理学的な方法は、心拍変動と呼ばれるもの。 ストレスを感じると交感神経系が活発になる。これは戦ったり逃げたりするための基本的な生理状態の一部。心拍数が増加し、変動は低下する。つまり、心拍数は増加したままになり、闘争・逃走反応につきものの不安や怒りの感情が体に表れる。
逆に、自制心をうまく発揮できた時には副交感神経系が活発になり、ストレスを和らげ、衝動的な行動を抑える。心拍数は減少するが、変動は上昇する。このような状態になると、気持ちが静まって落ち着く。

心拍変動は意志力の指標として非常に優れているため、それによって誰が誘惑に勝てそうか、あるいは負けそうかも予測できる。
元アルコール依存症患者で、お酒を見た時に心拍変動が上昇する人は、禁酒を続けられる確率が高いという。 こうした発見を踏まえ、心理学者たちは心拍変動を意志力の体内「保有量」と呼ぶようになり、自己コントロール能力を生理学的に測定することにした。
呼吸のペースを1分間に4回〜6回に抑えると前頭前皮質が活性化し、心拍変動も上昇する。 神経生理学者がエクササイズを始めたばかりの人たちの脳を調べたところ、灰白質(つまりは脳細胞)と白質(脳細胞の上にある絶縁体で、脳細胞がすみやかに効率よく連絡し合うのを助ける)の両方が増えていた。
脳は瞑想と同様にエクササイズによって、より大きくなり、より速く働くようになるが、その効果が最も顕著に表れるのは前頭前皮質なのである。

という脳科学的な理論を知ってから、どういう時に意志力が弱くなるのかが述べられている。


スタンフォード大学経営学部教授 ババ・シヴによると
「人は気が散っている時ほど誘惑に負けやすい」
誰かの電話番号を思い出そうとしながらデザートを選んでいる学生は、フルーツよりもチョコレートケーキを選ぶ確率が50%も高くなる。
また上の空で買い物をしている人は店頭販売にひっかかりやすい傾向にある。

睡眠不足が慢性化すると、ストレスや欲求や誘惑に負けやすくなる。そして、感情をコントロールしたり、意識を集中させたり、「やる気」のチャレンジに取り組むのも難しくなる。
睡眠不足の状態では体や脳の主要なエネルギー源であるグルコースを使用することができない。疲れていると、血液中のグルコースが細胞に中々吸収されない。そのため細胞がエネルギー不足となり、疲労を感じる。体や脳がエネルギーを欲しがるため、甘いものやコーヒーが飲みたくなる。
でも、糖分やコーヒーでいくらエネルギーを補給しても、それを効率よく使うことができないため、体や脳は充分なエネルギーをとることができない。
これは自己コントロールにとっては困った状態。 脳が使用できるエネルギーはただでさえ限られているのに、自制心を発揮するには多くのエネルギーが必要だから。
なかでもとりわけエネルギーを消費する前頭前皮質は、このエネルギー危機の影響をもろに受ける。
睡眠の研究者はこの状態を「軽度の前頭前野機能障害」などと呼んでいるほどだ。
睡眠不足の状態で目を覚ますと、一時的に脳に障害を負ったような状態になる。
研究によれば、睡眠不足が脳に与える影響は、軽度の酩酊状態と同じであることが分かっている。これでは、自己コントロールなど到底望めない。

長い目でみた場合、ストレスほどあっという間に意志力を弱らせるものはない。ストレスに対する生理機能と自己コントロールの生理機能は、一緒には成立しない。

①気が散っている状態、②寝不足状態、③ストレス下、というのは意志力が弱くなる状態とのことだ。

これに対抗する手段としては、著者は瞑想やエクササイズなどを挙げている。


<モラル・ライセンシング>
初めて知って面白かったのが「モラル・ライセンシング」という概念。
人は何かよいことをすると、いい気分になる。そのせいで自分の衝動を信用しがちになる。多くの場合、悪いことをしたって構わないと思ってしまう。
プリンストン大学の女性差別的な質問を行った後の就職面接候補者選定実験。 人種差別的な態度についての質問のあと、人種マイノリティへの差別意識が表れる実験を行った時にも同様の現象が起きた。 心理学者たちは、人はいったん意見を表明したら、その後もその意見に従って行動するものだと思っていた。しかし、終始一貫した行動をとりたいという我々の望みには、例外があることを突き止めた。
こと善悪の問題に関しては、大抵の人は道徳的に完全でありたいなどとは思っていない。だから、少し良いことをすると、今度は自分の好きなように行動してもいいと思ってしまう。

このモラル・ライセンシングのせいで、悪いことをするだけではなく、良いことをするように求められた時に責任逃れをするようにもなる。
寄付金の依頼を受けた時に、自分が以前に気前よく寄付したことを思い出した人たちは、そのような過去の良い行いを思い出さなかった人たちに比べ、寄付した金額が6割も低いという結果がでている。

モラル・ライセンシング効果は、世間一般にモラルが高いと信じられている人たち(牧師、家庭の大切さを説く政治家、腐敗を厳しく追及する司法長官など)がひどい不品行を行いながらも自分に対してそれを正当化する理由を説明できるかもしれない。
我々は、しようと考えただけで、した気になってしまう。
我々が実際にどれほどよい行いをして、どんなご褒美をもらうべきかについて、脳はまともな判断をしていない。我々は、ただ良いことをした「気」になっただけで、自分は良い人間だと思ってしまう。意志力のチャレンジを道徳上の問題として考えてしまうと、我々は自己批判に陥りがちになり、意志力のチャレンジは目標達成に役立つということを見失ってしまう。

香港科技大学とシカゴ大学の研究で、誘惑に負けなかった時のことを学生たちに思い出してもらったところ、ライセンシング効果が生じ、その後70%の学生が自分を甘やかすような行動をとった。 しかし、学生たちに「なぜ」誘惑に負けなかったのかと理由を尋ねたところ、ライセンシング効果は見られず、今度は69%の学生は誘惑に負けなかった。
研究者らが発見したこの単純な方法は、まるで魔法のように学生たちの自制心を向上させ、自分自身の大きな目標にふさわしい選択をさせるのに役立った。

「なぜ」という理由を思い出すのが効果的なのは、それによって自分を甘やかすような報酬についての感じ方が変わってくるからだ。

ニューヨーク市立大学バルーク校のマーケティング研究者たちの研究によると、実はメニューにヘルシーな品物が載っているだけで、チーズバーガーとフライドポテトを注文したくなる。 マクドナルドのメニューにヘルシーな品物を加えたとたん、ビッグマックの売上が驚異的に伸びたというレポートを実証したものだ。
人は目標にふさわしい行動をとる機会が訪れただけでいい気分になってしまい、実際に目標を達成したような満足感を覚えてしまう。
そうしてヘルシーなものを選ぶという決心はどこかへ吹き飛び、まだ満たされていない欲求〜目先の楽しみ〜が最優先になる。
ヘルシーな食べものを注文しなくては、という決心は弱まり、ジャンクフードを食べたい欲求が強くなる。すると、まったくおかしなことに、メニューの中でもとりわけ動脈を詰まらせ、お腹を出っ張らせ、寿命を縮める原因になりそうな食べ物を選んでしまう。
こうした研究結果を受け、公衆衛生当局が学校のカフェテリアや自動販売機やチェーン店のレストランにも最低一つはヘルシーなメニューを用意するように指導しているのはいかがなものかと疑問視する動きも出てきた。
ヘルシー志向がもっと大幅に普及し、全てのメニューが全体的にヘルシーになるのでもない限り、却って何の対策も打たない場合よりも人々の選択に悪影響を及ぼす恐れがある。

これは実は「意志が強い」と思っている人ほど陥りがち。
メニューにサラダが載っていなかった場合、自称「意志力の鉄人」たちが最も太りそうなものを選ぶ割合は10%に過ぎなかったが、メニューにサラダが載っている場合は、50%もの人が一番太りそうなものを選んだ。おそらく、ヘルシーなものは今度選べばいいやと思って、フライドポテトを注文したのだろう。

このことは、我々が後で行うはずの選択について考える時に犯しがちな、根本的な間違いを示している。 我々は、明日は今日と違う選択が出来るに違いないと思うが、そうはいかない。
イエール大学の実験 学生に脂肪ゼロのヨーグルトとミセス・フィールズのクッキーのどちらかを選ばせた。 次の週の実験でも同じ二つの選択肢から選べると聞いた場合、83%の学生はクッキーを選んだ。
これに対し、お菓子が出てくる実験が1回限りだと思っていた学生の場合、クッキーを選んだのは57%。
実のところ、翌週も同じ選択肢が待っていると聞いた学生のうち67%が「次回はもっと良い選択をする」としていた。
ところが、その翌週に同様の実験を行ったところ、前回と異なる選択をした学生はわずか36%という結果。
「後で挽回できる」と思ってしまうと、自分に甘い選択をしても気がとがめなくなってしまう。

モラル・ライセンシングに対する行動経済学者 ハワード・ラクリンの提言。
「ある行動を変えたい場合、その行動自体を変えるのではなく、日によってばらつきがでないように注意する。」
 そうすると「明日からちゃんとやればいいや」という言い訳ができなくなる。
なるほど、ボラティリティを下げるような行動を心がけるということは「モラル・ライセンシング」や後述の「どうにでもなれ効果」にも有効な手段と言えそうだ。


<金魚鉢(フィッシュ・ボウル)>
報酬系による「報酬の予感」は、依存症の克服にも利用されている。
アルコールや薬物の依存症に最も効果的な方法のひとつは「金魚鉢(フィッシュ・ボウル)」と呼ばれている。
薬物検査に合格した患者達は、ボウルの中に入っているたくさんの紙切れの中から1枚を選んでとることができる。 紙切れのうち半分は、1ドルから20ドルまでの賞金の当たりくじになっている。そして、たった1枚だけ100ドルの当たりくじが入っている。
半分の紙切れは賞金ゼロだが、代わりに「その調子で頑張ろう」などのメッセージが書いてある。
ある実験では、金魚鉢のご褒美作戦を行った場合、患者の83%が12週間の治療を最後まで続けたのに対し、金魚鉢のご褒美なしで通常の治療を行った患者では、最後まで治療を受けた人はたったの20%だった。 また、金魚鉢作戦を行った患者の8割が全ての薬物検査に合格したのに対し、通常の治療を行った患者で全ての検査に合格したのはその半分の4割だった。
治療が終了した後も、金魚鉢作戦のグループは、もう金魚鉢のご褒美はもらえなくなったのに、通常の治療を行った患者に比べ、再発の可能性もはるかに低かった。 驚いたことに、薬物検査に合格したら定額の報奨金をもらえる仕組みよりも、金魚鉢作戦の方が効果があった。
そんな訳で、企業では一番下っぱの社員にさえ、「いつかCEOになれる可能性はある」と思わせるのは非常に大事。


<恐怖管理理論>
人間は自分の死を考えるとき恐怖を感じる。死の恐怖を感じたことで、我々の中には無力感を打ち消そうとする、やむにやまれぬ衝動が生まれる。それで、何でもいいから安心感や安らぎを与えてくれるもの、自分が強くなったように感じさせてくれる、お守りのようなものにすがりつく。
いつかは死ぬ運命にあることを思い出すとき、我々はありとあらゆる誘惑に負けそうになる。楽しい気分になれるものでほっと一息ついて、希望や安心感を得ようとするからだ。 だからテロや殺人事件の残酷なニュースの合間にも(合間だからこそ)CMは流れる。
スーパーで買い物をする人たちを対象にした実験では、参加者に自分の死について考えてもらったところ、買い物リストが長くなったり、甘いものや好物を普段より余計に買いたくなったりするという結果が出ている。
葬儀業者がスーパーのカート置き場の脇でパンフレットを配布しているのはそういう訳。 別の実験では、人が死亡したニュースをテレビで見た視聴者は高級車やロレックスの時計など、贅沢品の広告に購買意欲をそそられることが分かった。 ロレックスをしていればミサイル攻撃から身を守れる訳ではないが、そういう品物を所有することで自己のイメージが高まり、パワフルになった気がするというわけだ。
3/11の大震災の直後の東北で、ベンツやロレックスが売れまくったというのは、単に補助金という臨時収入が入ったということではなく、こういった脳の仕組みによるものか。

死亡の危険性をうたうタバコの警告表示は、喫煙者にストレスや恐怖を与える。公衆衛生当局の狙い通りだ。
しかし、残念なことに、不安にかられた喫煙者達が頼ったのはお決まりのストレス解消法、すなわち喫煙だった。
喫煙者の脳が「<警告>タバコはガンの原因になる」というメッセージを認識し、自分の死に向き合ったとしても、脳のどこかから叫び声が聞こえる。「心配ご無用。タバコを吸えば気分がよくなるよ!」
恐怖管理が起きると、我々は誘惑になびくだけでなく、物事を先伸ばしにしがちになる。


<どうにでもなれ効果>
前の晩に飲み過ぎたせいでひどく落ち込んだ人ほど、その日の夜も、また翌日の夜も飲み過ぎてしまう。 誘惑に負けたことで自己嫌悪に陥り、気晴らしに何かしたくなる。
最も簡単で手っ取り早い気晴らしの方法は、落ち込む原因をつくった、まさにそのものだったりする。はめを外して、落ち込んで、さらにはめを外すという悪循環。
実は慰めの言葉で「どうにでもなれ効果」が緩和される。
意志力を強化するには自分にもっと厳しくするしかないと思っているかもしれないが、それは間違いである。
数々の研究でも明らかになっている通り、自己批判はつねにモチベーションの低下や自己コントロールの低下を招く。
また、自己批判はつねにうつ病の最大の予兆。
驚いたことに、罪悪感を抱くよりも自分を許す方が責任感が増す。
研究者たちの発表によれば、失敗したことについて、自分に思いやりを持って振り返った場合の方が自分を厳しく批判した場合よりも、失敗したのは自分のせいだったのだと認めやすくなる。その方が、他人の意見やアドバイスに対しても進んで耳を貸せるようになり、失敗の経験から学ぶことも多くなる。
自分を許すことで失敗から立ち直れる理由の一つは、自分を許すことによって恥の意識や苦しみに苛まれることなく、事実をありのままに見つめられるようになること。
「どうにでもなれ効果」は、失敗したあとに感じる嫌な気持ちから逃れようとする反応だが、そもそも罪悪感や自己批判に悩まされなければ逃げる必要もない。


この本は10章からなっていて、10週間分の講義の内容をまとめていて、どこから読んでもOKとされている。
こんな授業があったら確かに色んな人たちから人気の授業になるであろうと思った。