2011年7月31日日曜日

組織とは

セブンイレブン 井阪社長の「変化を止めたら死んでしまう。だから変化のエンジンを組織に備え付ける。」というコメントが日本経済新聞に載っていた。

セブンイレブンのような優良大企業ですら「変化し続けること」に必死だということだ。

生物においては一種の平衡状態にみえるものでも、細胞レベルでは常に変動しており、それを称して福岡伸一氏は「動的平衡」(dynamic equilibrium)と呼んだ。

組織においても同様のことが言えるのかも知れない。
社員がだれしも一喜一憂する人事異動。しかしこれは企業という生物においては細胞の入れ替えに過ぎない。
企業と言う”生物”が生き残るために行っている生業についても、外部環境が変化すれば変えていく必要がある。
強いものが生き残るのではない。外部環境に適応したものが生き残るのだ。

我々”細胞”がどの部分の細胞となるのかが、”細胞”が生命体の生存期間のどの程度一緒に存続できるかの鍵を握るということなのかも知れない。
外部環境の変化をいち早く捉えて、企業という生命体がどのようにしたら今の(そして次の)変化に対応できるのかを脳細胞(すなわちトップ)に提言することが、脳細胞になれる道を拓き、ひいては”細胞”レベルでの生き残りにつながるということなのだろうか。

いずれにせよ、企業は変わり続けていく必要がある。
そのためには失敗を恐れずチャレンジしていくことが必須であり、チャレンジしないことが最もリスクであることを”脳細胞”が認識する必要があるということだ。
そういう意味だけでみても、やはりセブンイレブンは優良企業である。
今は一隅を照らすことで精一杯であるが、脳細胞になったときのことも常に考えるようにしておきたいものだ。

「KAITEKIのかたち展」

柏の葉でおつきあいのあったアート集団”ワーコールアートセンター/スパイラル”企画の「KAITEKIのかたち展」が表参道のスパイラルガーデンで行われるというので行ってきた。

三菱ケミカルホールディングスが共催ということで、様々な最先端の化学素材がアートに使われていた。
実はこの日、午前中は三菱一号館美術館に行って正統派アートを堪能してからスパイラルホールに向かったのだが、子供の食いつきは間違いなく午後の現代アート。
柏の葉でも「敷居が低いこと」「触発されるものであること」「飽きないこと」というのを軸に現代アートを取り入れているが、交流ツールとしてのアートはやはり「あり」だと再認識。


谷尻誠氏の「HORIZON」
水平線を描いているのは「温度計」。目に見えない「気温」というものを可視化するアート。


今回の展示で個人的にはNO1の、印デザインによる「Light3D Sculpture」。
光ファイバーの素材を使って、後ろの人型がそのまま表で3D光で表現される優れもの。子供のみならず大人もハマってました。

柏の葉でもお世話になったジャン=リュック・ヴィルムートの「Dome with Sounds Plants」。
ドームの中でお茶したかったのですが、叶わず。

丸の内ブリックスクエア

三菱一号館美術館に家族で行ってきた。
その時に丸の内ブリックスクエアの中庭を見てほれぼれ。
実はこの建物2年位前に竣工しているので、今更ながらなのだが、空間のつくり方と植栽の配置が絶妙。
近代的緑化の壁面緑化もメインの柱にうまく利用していて非常に素敵な空間。
ちょっと時間がずれてて、あまり人に伝えられないのが残念だが、久しぶりに素敵な空間であった。
悔しいけどやるぜ、三菱地所!



2011年7月24日日曜日

『組織で使える論理思考力』

もう70歳超と思われるKT法の大家、飯久保廣嗣氏の著作。
正直、分かり易い書き方の本ではない(厳しく表現すると、もっと平易に書ける気がする)が、内容については、ハッとさせられるモノが多数あった。

日本企業において、多くの場合、上位メンバーの(えてして「思いつき」の)意見・アイデアが、ある種の「制約」として設定される。
日本の組織においては、権限を委嘱されたといっても、フリーハンドの権限を保有しているわけではない。委譲された権限はあくまで「貸与」されたものでしかなく、上位者の意向によっては、いつでも取り上げられることが可能と言っても過言ではない。
合理的な組織人は、権限を行使するにあたって、随時上位者に報告し、意見を求める。このとき、上位者から与えられた意見がたとえ「示唆」のレベルであっても、概ね「命令」として受け取られる。

日本の組織に見られる状況故、ラショナル思考(合理的論理的思考)については日本では役に立たないとされるケースが多かった。
それに対して、新KKD(経験、勘、度胸)も含めた新しい論理思考力について述べたのが本書である。

日本は目に見える製品の製造コストの徹底的な削減によって競争力をつけてきた。
しかし今日では、目に見えない思考業務のコスト、すなわち「意思決定のコスト」を如何に削減するかが最重要課題となっている。
会議はその目的に応じて「報告」「連絡」「協議」の3つに分類される。
「協議」の会議の効率性が、組織の「意思決定」コストにかかわってくる。

会議の議題が「現象の原因究明と対策(過去)」なのか、それとも「課題設定と優先順位(現在)」なのか、もしくは「意思決定とリスク対応(将来)」なのかを判断することが重要。
次の三つのポイントが大切
①協議するテーマを明確にし、それに重点思考すること
どの程度まで具体化するかの判断
②結論に至る考え方のプロセスを確立し共有すること
会議をエンジニアリングすること
③会議中の質問の重要性について、参加者が高い認識を持つこと
「質問・設問に対しての回答」と「単なる自身の意見の主張」の間に区別がないことが会議の効率を悪くする。
質問には大きく分けて二つの種類がある。一つは「結論を導き出すために必要な情報や根拠を聞く質問」であり、この質問には俯瞰的な見方が必要。思考のプロセスや枠組みを必要とするので、「智力」を伴う。もう一つは、「具体的な状況や情報についての知識を深く知るための質問」この二つの質問体系を意識して使い分けることが肝要。


日本人は「問題は起きてはいけない」と考える傾向が強いが、この発想は現実的ではない。「問題は起きうるものだ」と考えれば、それを上司に報告することに対する躊躇がなくなる。

もうひとつ事実認識として面白かったのは『現場は「短絡」するもの』であるということ。
それを前提として経営サイドは以下の点に留意する必要があるのだそうだ。
①優先順位の根拠は明らかか
重要性と緊急性の二つの観点からきっちり評価されているか。(得てして緊急性が重要視されがち)
②原因は短絡していないか
特定の原因を推定し、十分な検討をすることなしに、対策までも策定するという傾向がある。
③選択肢は短絡していないか
判断基準を明確にせずに、特定の選択肢を選んでいないか


これからの日本には『高品質の決断を迅速に下す』ということが必要となる。
そのためには新しいラショナル思考が必要というのは非常に説得力を持っている。

2011年7月23日土曜日

『彼らが日本を滅ぼす』

敬愛する佐々淳行氏の著作。

尖閣諸島問題の関連で記載されていたことだが、日本には領海侵犯を取り締まる法律がないらしい。
「領域警備法(領海警備法)」「領海侵犯罪」もなく、こんな国は世界にも例がないそうだ。

>>>>>
日本の自衛隊は、いまや通常兵器による防衛戦では、世界一流の戦力を保持している。ただ、重大な欠点は、継戦能力がないことだ。
従って、兵力の逐次投入は避け、第一回戦で全戦力を集中させて敵を殲滅しなければならない。
せめて、米軍来援まで持ちこたえる「三回戦ボーイ」にならないといけない。
>>>>>
という提言を佐々氏は行っている。

朝鮮半島有事の際のエヴァキュエーション(緊急脱出作戦)についても書かれていて、朝鮮半島有事となると、2万8千人の在韓邦人と年間300万人と言われる日本人観光客やビジネスマン(1日3日ほどの滞在とすると、1日平均滞在者約3万人)の保護、合わせて6万人近い日本人の保護・救出が必要となる。
あまり考えたことも無かったが、あり得ない話しではない。
今回の原発が「想定外」だったとしても、朝鮮有事は十分「想定内」であるし、対策についても考えておく必要がある。

相変わらず舌鋒するどく本質に切りこんでいるが、今回の本は民主党政権批判の部分が多くてちょっと残念。
佐々氏も歳をとったということなのかも知れない。
我々の中から第二の佐々氏が現れなくてはならないということか。

2011年7月18日月曜日

『とことんやれば、必ずできる』

アップルコンピュータジャパン日本法人社長から日本マクドナルドホールディングス社長に就任した原田泳幸氏の著作。
「マクドナルドに来たばっかりなので・・」というような表現があって確認したら、第1刷は2005年4月とのことで大分前のもの。
藤田田さんから原田さんが社長になってから単純な安売り路線でなくなり、マクドナルドに元気がでてきているという認識であったので、その考え方等がどのようなものかを知りたくて読んでみた。

色々な自分の考え方が述べられていて、マクドナルド社長就任直後に著していることを考えると自分の考え方を社員に示しているのではないかと思ってしまう位である。

○20代は学ぶとき、30代は人生の方向を決めるとき、40代は決めたことを全うするとき、50代は後継者を作って自分の第二の人生・キャリアを考えるとき。
(ちなみに孔子は「吾十有五而志于学、三十而立、四十而不惑、五十而知天命、六十而耳順、七十而従心所欲 不踰矩」)
○考える時間は予定をブロックしてでも確保する。
○週に一度は自己チェックをして「新しいモノを生んだだろうか、自分にプラスになることを何かしただろうか」をチェックする。
○この先、企業を伸ばすために必要なものは”スピード”。そのプランがお客様に喜んでいただけると確信できるものならば、とにかく実行に移すのがベスト。
「決定したことをすぐにやれ、はもう古い。決定しなくてもいいから、いいと思うプランはすぐ実行しろ。実行しながら検証して、ベストの結果をだせ。それが今求められているスピードだ。」
○悩む時こそがチャンス。この種の壁にぶち当たったときは、とことんもがいてみるのが一番。行き詰まりを打破する道は「考える」ことに尽きる。
○停滞期があるから急成長がある。
○リーダーにとって何よりも大事なのは、部下の能力を見極めて適材適所で配置し、チームのパフォーマンスを最大にすること。
「顧客の立場で考える」「会社レベルで考える」「グローバルな視点で考える」という三つの「考える仕事」を通じて、ベストな結果を出すこと。
○自分自身と企業の成長の核になるのは、情熱であると言っても過言ではない。
○目標も無く、現状に満足していたら、現状維持すら難しい。
などなど。

面白かったのと関心したのが一点ずつ。
面白かったのが、自分が不要と思う社員像の三つ目に「失敗をしない社員」というのを挙げている点。
理由は、失敗をしないということは、何も挑戦していないことの裏返しだから。
仕事に対する情熱が足りない社員は失敗をしなくてもダメ社員ということだ。

関心した点は、
「ビジネスの方向性を部下と共有し、持てる力を発揮させるのがリーダーであり、そこで優れたリーダーシップを発揮し人材の育成につなげるところにある。
リーダーの最も重要な役割は、実は人材育成にある、というのが私の考え。」
と述べている点。
あれだけ短期的にも実績を出している原田氏が「リーダーの最も重要な役割は、実は人材育成」というのは非常に含蓄深い。
マクドナルドが成長する訳だ。

2011年7月17日日曜日

『大局観』

前著『決断力』に続く、棋士羽生善治氏の著作。
この人は棋士になっていなくても大成したのではないかと思えるくらい洞察力がある。
いや、日々真剣勝負だからこそ、哲学的とも言える洞察が身についたのであろうか。
本人曰く「私はこれまで、何と闘うという目標を立ててやってきていない。信じていただけないと思うが、常に無計画、他力志向である。突き詰めると「結論なし」となる。人生は突き詰めてはいけないと思う。」
と述べているのだが、目標の無い人があれほどの結果をだせるものなのだろうか。
日々「自分ができることを精一杯やる」ということでやってきたとすると、やはり羽生善治は天才なのであろう。

今回の著作も前回の高速道路理論と同様すてきな考察が多い。
前著よりも、古今の棋士に対するコメントが増えたのは、将棋界での地位が上がったこととリンクするのであろう(とはいえ、辛口コメントはほとんど無く、ポジティブな評価ばかりであるが)

名棋士は比喩が巧みである。
>>>>>
将棋の世界は、リスクをとらなければ棋士の成長は止まってしまう。
だから、私は、新しい手を見つけたら、メジャータイトルを含む実際の対局で試すようにしている。
本番で試すリスクをおかさない限り、プロ棋士としての成長はない。

同じ戦法を手堅くとり続けるというのは、一見すると最も安全なやり方のように見えるが、長いスパンで考えたら、実は、最もリスキーなやり方なのである。

リスクとは自動車のアクセルのようなものだ。運転の上手な人は、アクセルを強く踏んでも決して事故を起さない。
それは、どの程度のスピードまでならきちんと自分で対応できるかをちゃんと知っていて、適切なタイミングでブレーキを踏んでいるからだと思う。
リスクの取り方にもバランスが必要。
リスクをとるという行為は、クルマの運転と似ている。
相手のスピードと同じスピードで走っていると、自分がどれだけ速さで走っているのかわからなくなるので、スピードを定期的に確認する必要がある。

有益な情報を抽出するためのプロセスは、コーヒー豆からコーヒーを作るのに似ている。
まずコーヒー豆を粉状にする作業(第一のプロセス)。次に、フィルターをかけ、お湯を注ぐ作業(第二のプロセス)。まったく異なる二つのプロセスを通すことによって、抽出されるものが有益な情報になるのではないか。

深く集中して考えることは、深い海に潜ることと感覚的に良く似ている。
>>>>>

また、名棋士の様々な洞察力には怖れいる。
>>>>>
全てを教えるのではなく、大部分を伝え、最後の部分は自分で考えて理解させるようにするのが、理想的な教え方。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」

捨ててしまったら二度と取り戻せないものを手放すことができるかどうかは、過去を総括する覚悟ができるかどうかにかかっている。つまり、現実として消化できているかだ。その覚悟さえできれば、未練も後悔もなくモノを捨てることができるはずだ。
>>>>>

前著よりも散発的な感があるとはいえ、結果を出し続けている著者の洞察力に富んだ言葉には非常な重みがある。

沖縄出張

沖縄に1泊2日で出張してきた。
沖縄ではコールセンターを産業の柱として県をあげて積極的に誘致しているという話を聞き、色んなコールセンターの見学をしてきた。

そこで知ったこと。思ったこと。
・コールセンターはストレス産業。適量を超えて人と接するというのはストレスになる。
・沖縄は女性が自立していて強い。早々結婚して子供つくっても、これまた早々に離婚して、ガッツリ働いて子供を育てるケースが多いらしい。
・システム業界は、建設業界の仕組みと似ている。建設業界ではゼネコンの下にサブコンがいて、その下に各種専門業者がいて、その下に中小の親方さん達がいる。システム業界でも、大手システムベンダーの下に、中小のベンダーが部分部分のシステムを請け負って、さらにその下請けがいるようだ。システム業界の場合にはエリアを選ばないので分かりづらいが、立派なコングロマリットの上に業務が成り立っているように感じた。ここでも”勝者の代償”が存在しているような気がする。
・沖縄は地震が少ない(というより無い)。台風の方が色んな意味でリスク。

今回はほとんど仕事オンリーだったので、またゆっくりしに行きたいものだ。


2011年7月10日日曜日

『ウソを見破る統計学』

統計学の基本が分かりやすく紹介されている良書。
初心者がとっつきやすいように、これでもか!と分かりやすくしてくれているのだが、恥ずかしながら理系出身にもかかわらず、知らないことも多かった。

独立した事象が起こる一定期間における”回数”を分布化すると「ポアソン分布」が、回数ではなく”間隔”を分布化すると「指数分布」が現れる。
指数分布は、事象と事象の間隔が狭ければ狭いほど起きる確率が高くなることを示している。
これは事故(事件)が起きてから、次の事故(事件)が起きるまでの間隔は短ければ短いほど高確率になるということで、次の事故は事故の直後に起きる可能性がもっとも高いということ。
東日本大震災後で、ちょっとストップしている感のある東海大震災が起きる可能性が高いというのも確率的にはうなずける話のようだ。

極値分布という分布があり、異常気象の予測など災害防止にも役立っているらしいが、これを応用すると陸上競技における人間の限界値が想定できるのだそうだ。
それによると
男子100mは9秒29(世界記録9秒74)までしか記録がのびず、
一方女子マラソンは2時間6分35秒(世界記録2時間15分25秒)まで記録が伸びるとされている。
こんなことが統計学を応用して算出できるというのはビックリである。


専門家がその知見をベースに、一般社会について意見を述べるのを聞くのは非常に楽しい。
>>>>>
山火事のサイエンス誌掲載の研究によると
「一定時間の間に山火事の起こる頻度は、焼失面積にほぼ反比例する」
つまり、どのように山火事が起きたとしても、燃えてしまう土地面積の合計は結局のところあまり変わらないということを意味する。
つまり山火事は、小規模なものが繰り返し起きている方が、自然にとって好都合。
これは山火事を防ごうと努力することで、却って問題を深刻化してしまうことも意味している。
このことに気づいて、アメリカでは山火事を無理に防ぐのをやめた。

競争力の無くなった企業に税金を投入するなどして無理に延命するのは、必ずしもいいことではない。
山火事が周期的に起きるのは、新しい芽が育つために、古木が山火事で焼け落ちる必要があることを示している。
時代が変わるとともに、新たな状況に適応できない企業が退場していかないと、時代に適応した企業は育たない。
>>>>>
やはり強い生物(企業)が生き残るのではなく、変化に対応できた生物(企業)が生き残るということか。

統計学というと難しい数式のオンパレードという気もしていたが、見方を変えると生活の中で様々利用されていることが分かって非常に面白かった。