2017年10月25日水曜日

『経済は地理から学べ!』

代ゼミの地理の先生、宮路秀作氏の著書。
立地、資源、貿易、人口、文化などの様々な切り口で、各国の特徴を捉えている。

色々面白い(そしておそらく試験にも使える)知識が満載。

◯人間の行動は、土地と資源の奪い合いで示される。
当たり前のことだが、土地と資源には限りがあるからである。有限だからこそ、重要と供給によって価値が決まる。

◯経済はヒト、モノ、カネ、サービスの「動き」と言っても過言ではない。
その「動き」の理解には距離の概念が役立つ。
「物理距離」以外には、「時間距離」「経済距離」「感覚距離」という3つの距離がある。

◯地球上には約14億立方kmもの水が存在し、そのうち97.5%は海水。残りは陸水が2.5%と、わずかな水蒸気。
その2.5%の陸水を分類すると、氷雪・氷河が68.7%、地下水が30.1%、地表水が2.2%。氷雪・氷河の大部分は南極とグリーンランド(デンマーク領)。
残る 2.2%の地表水は、河川水・湖沼水・土壌水に分類されるが、生活用水として利用するのは河川水が中心。
河川水は陸水のうち、0.006%。 半径64cmの地球儀で考えてみると、1滴の水を人間だけでなく陸上生物の全てが分かち合って生きている計算。
現在世界では約7億人の人たちが、水不足の生活を強いられている。
20世紀は「石油の世紀」だったが、21世紀は「水の世紀」。
「国土全体において水道水を安全に飲める国」は世界に15カ国しかない。
フィンランド、スウェーデン、アイスランド、ドイツ、オーストリア、スイス、クロアチア、スロベニア、アラブ首長国連邦、南アフリカ共和国、モザンビーク、オーストラリア、ニュージーランド、日本。

◯可容人口
ドイツの地理学者、A・ペンクは「ペンクの公式」と呼ばれる計算式を考案し、地球上に収容可能な人口を約160億人と算出した。
ある地域における収容可能な人口数は、就業機会と食料供給量で決まる。
食料供給量の減少により、他地域への人口移動が発生することを「人口圧」という。
東京に人々が集まってくるのは、ひとえに就業機会が多いから。

◯芋あるところに豚あり。じゃがいもと養豚は相性が良い。
ドイツ北部はかつての氷食地で寒冷な地域であるため、耐寒性の大麦やライ麦、えん麦の栽培が行われている。
ドイツ北部は寒冷のやせ地であるため、本来農業生産性が低い地域。特に冬は農作物があまり取れないこともあって、食材が不足しがちだった。
そのため保存食品の開発が進んだ。肉や魚を野菜と一緒に酢などのつけ汁に浸すマリネや、キャベツの漬物(ザワークラウト)、ソーセージなどが代表的な食品。
ビールは大麦から作られる。ドイツのビールといえば、「ホップ、麦芽、水、酵母だけを使用して作る」と法律で定められている。これをビール純粋令という(成立は16世紀)。ただでさえ小麦の生産が困難な地域なので、食用としての貴重な小麦を、ビールの原料に利用しないようにするのが目的だったと言われている。
ところが、ドイツには小麦を原料としたビールもある。ヴァイツェンである。ヴァイツェンという名前がそもそも「小麦」という意味を持っている。特にバイエルン地方を中心にドイツ南部で飲まれているビール。ドイツ南部はかつての氷食地ではなく、小麦が生産できるからである。
現在ではビール純粋令も改正され、基本原料に変化はないが、ヴァイツェンを合法的に作れるようになっている。

社会に出ると、地理とか歴史とかが実は実生活に関わってくるというのが分かって、勉強しておけば良かったと思うことも多い。
歳を取ってから学び直す人の気持ちは非常によく分かる。
でもせっかく学んだら、是非またそれを社会に還元したいものだ。