2011年6月27日月曜日

『プラットフォーム戦略』

プラットフォーム戦略について書かれた日本で初めての本らしい。
プラットフォーム戦略とは、多くの関係するグループを「場」(プラットフォーム)に乗せることによって、外部ネットワーク効果を創造し、新しい事業のエコシステム(生態系)を構築する戦略のこと。
最近著しく伸びている企業の大半がこの戦略を採用していると言えるらしい。


<プラットフォームのもつ5つの機能>
1.マッチング機能
2.コスト削減機能
3.検索コストの低減機能(ブランディング・集客機能)
「○○ならば□□」というブランディングに伴う安心を付与する機能
4.コニュニティ形成による外部ネットワーク効果・機能
ウィルスのように口コミが波及していくという意味でのバイラル効果によって、参加しているグループ内での信頼情報の醸成やグループ間での情報の相互流通が起こることで、プラットフォームへの「粘着度」が増していくことに寄与する機能。
リアル店舗でも、良いものを友人・知人に勧めるという「井戸端会議効果」として存在していたもの。
5.三角プリズム機能
三角プリズム機能とは、通常では直接に相互作用が及ばない2つ以上のグループを結びつける機能のこと。

<勝てるプラットフォームの3つの特徴>
1.自らの存在価値を創出すること(検索コストと取引コストを下げる)
「○○ならば□□」というブランドを確立することで、利用者が探しまわるコスト、プラットフォーム側から見れば宣伝費を低減することを可能とする。
2.対象となるグループ間の交流を刺激すること(情報と検索)
口コミが広がっていくこと
3.統治すること(ルールと規範を作りクオリティをコントロールすること)

多くの成功しているプラットフォームは、実は必ずしも最初に誕生したものではない。
このことが、長期的な戦略の重要性を物語っている。
プラットフォームにおいては、ファーストムーバー・アドバンテージ、すなわち最初にリスクをとって参入したものが勝利するという法則が成り立たないのは特筆すべき点。

積み上がりで価格を設定する「メーカー発想」から脱却し、「将来の市場の拡大を予測してそのリスクをとる」という「プラットフォーム戦略発想」になれるかが勝負の分かれ目。

大切なことは、参加しているグループの「本源的欲求は何か?」という原点をつねに見失わないこと。

以上はプラットフォーマーサイドで参考になる点であるが、一方のプラットフォームに参加する側の立場でも留意すべき点があることがこの本では述べられている。
誤解を怖れずに一言で言ってしまうと、大切なことはプラットフォームに参加する前にこれらの戦略をしっかりと構築しておくこと、ということに尽きる。(どう戦略を構築するかは、各企業のおかれた立場によって異なる)

プラットフォームという観点でみると、現在推進しようとしている事業も大風呂敷の中で整理できる気がした。
どうせやるなら大きくいきたい。

2011年6月26日日曜日

『一歩先のクラウド戦略』

IT戦略策定における「勘所」の解説と、ローランド・ベルガー社による中立的な視点で選ばれたシステム・ベンダー数社の解説が載っている。
システム部門やシステム子会社の陥りやすい罠などが模式的に書かれているのでイメージしやすい。

「競争力強化のためには、どんなITが必要か」
これが会社のIT部門の肝となる部分である。

IT関連であるにも関わらず、思想として、
「プレミアム」(=機能的価値×情緒的価値)の競争力、「体力」ではなく「体質」で競うための原点である”現場”を「コスト・センター」ではなく「バリュー・センター」と位置づけ、現場力の復権へと舵取りをする必要がある。
というのが挙げられているのが面白い。(これは「見える化」で有名な遠藤功氏が監修しているからだろうか)

<クラウド3つの種類>
SaaS(Software as a Service):アプリケーションの機能をインターネット経由で提供するサービス。電子メール、CRMなど。
PaaS(Platform as a Service):アプリケーションを稼働させるミドルウェアなどのプラットフォーム機能をインターネット経由で提供するサービス。データベース、ウェブアプリケーション実行環境、開発環境など
IaaS(Infrastructure as a Service):サーバーの計算機能やストレージの記憶機能など、仮想化したハードウェア機能をインターネット経由で提供するサービス。サーバー、ストレージ、ネットワークなど。

「パブリック・クラウド」・・・不特定多数の企業で利用する形のクラウドサービス。一般的に「クラウド」という場合には「パブリッククラウド」
「プライベート・クラウド」・・・企業内のみで利用する「クラウド型」のシステム。
「オンプレミス」・・・自社保有しているシステムで、特定部門以外では共有されていないシステム
という概念の解説などもIT音痴の自分にとってはありがたかった。

その他にもシステム開発のどこにお金がかかっているのか(システム部門の予算の7割は既存システムの維持管理に食われている。また、新規システム開発時には予算の半分位は既存システムとの接続のため費やされている。だからこそ短期的成果はでなくとも①システム間連携をシンプルにすること。②企業内に点在・偏在するデータを統合すること。は行う必要がある)、IT部門の改革は何故すすまないのか(受け身・丸投げ・空洞化、そして経験の機会劣位という宿命)、IT子会社の問題点といったことも模式的に書かれていて分かりやすい。

現在の部署で、システムも含めた組織制度設計を行う必要があり、付け焼き刃で購入したが、非常に分かりやすく参考になった。

2011年6月25日土曜日

『35歳からの「脱・頑張り」仕事術』

著者の山本真司氏が、自らの経験から生み出した仕事術について書かれている。
山本氏のマネジメントスタイルは「ウルトラ放し飼い」のノーマネジメント→「究極の一人プロジェクト」
という両極端に振れたらしいが、その苦しみながら試行錯誤のもと生み出されているので説得力もある。

仕事にはオーナーシップが必要ということで、いかにこの「仕事オーナーシップ」を部下に持たせるかが肝要ということになる。
仕事の最初の段階では、マネージャーが一兵卒よろしくかけずりまわり、長くても2週間程度で仮説を構築する。その検証を部下と一緒に行う。仮説に修正が必要ならばすぐに修正を行う。
間違っても悉皆調査(全数調査)的にあたって(あたらせて)はいけない。有限である時間という資源を集中的に配分するためには仮説思考が必要である。

その他にも「仕組み」として様々な仕事術が紹介されている。
○板書のススメ・・・一回見れば全体が把握できる。そして不純物が混じらない(複雑な絵は描けない。のでシンプルにしか書けない)
○部下の思考を把握するブレイン・ジャック創造思考
○リスクマネジメントの要諦は「嗅覚」にあり。ということで高頻度で短時間の打ち合わせを行う。これはワコールのトリンプの吉越浩一郎さんの早朝会議の発想同じ。
○成果物つくりは、壁塗りのように、まずは粗く全体を、次にそこそこ深く全体を、そして最後に完成塗りをしていく。これは「残念な人の思考法」で紹介されていた考え方とほぼ一緒。
○1週間に反日、手足を動かさずに沈思黙考する時間を確保する。これは意外とできそうでできない。相当な覚悟が必要。
○気楽に自分のところに駆け込んでもらうための行動
①部下が駆け込んできた時に、絶対に叱責しないこと
②トラブル処理に全力を集中すること
③原因究明は、トラブル処理に関係が薄い時には後回しにすること
これは救急医療ERの考え方と一緒。
トラブルにどう対応するかは全ての部下がよく見ている。口で言ってるだけではなく、行動で示さないとダメ。

などなど。
色んな知見が一緒になっているまとめの様な本だが、それが実際の仕事を通じて産まれてきたものである
ところに重みがある。

「お天道様はみている」というフレーズも久々に聞いた(読んだ)。

2011年6月19日日曜日

黒板に板書

次男坊の授業参観に行ってきた。
字のきれいな先生で、黒板にきれいな文字で消してしまうのがもったいない位の丁寧さで図表等を書いていた。
せっかく書かれるこの内容、次の授業前にはきれいに消されてしまうということが日々繰り返されている。先生の業務負荷を考えると非常に無駄でもったいない仕事のようにも思える。(プリントやら、電子黒板のようなものに一度作った内容を順次表示する方式でもいいのではないか?)
この「黒板」というもの、日本には明治初期の頃から入ってきているようだが、いまだに学校で利用されているのは何故なのだろうかと考えてしまった。

<仮説1>費用対効果説
わかりやすいが、もしIT化バリバリの電子黒板が教育にとって有用ということであれば、公立はともかく、私立で採用して”売り”にする学校がでてきても不思議はないのではなかろうか。

<仮説2>時間をかけることに意義がある説
子供達の理解度を考えると時間をかけることに意義があるという説。
でも、これはIT黒板を利用しても、適正な理解時間をとるように授業を進めれば、先生方は黒板に板書する時間を生徒達の観察に使えるのでよりいいので?

<仮説3>先生がお手本となって板書することに意義がある説
色々考えるとどうやらこれに落ち着くのだが、まだどうやって書いたらいいかわからないような生徒達にとって、先生が実際に目の前で書いてみせることによって「お手本」となるという説。
でもこれだって、IT黒板になったら、書いているシーンを撮影して流せば持って足るような気がする。

授業時間において、先生が板書している時間はほぼ板書以外のことはやれない。(せいぜい後ろの生徒の気配を耳で感じる位である)
このIT化時代、その負荷を減らしてもっと先生にやって欲しいこと(子供の観察、子供ごとの指導・対応など)をやってもらえるデバイスを導入した方がよりよい教育ができるのではなかろうか。



翻って、ビジネスの世界では、パワーポイントなどのIT化全盛である。
いちいち手で書いていたのでは説明時間が足りないということなのだろう。
しかし、実はパワーポイントでやると聞く側(ビジネスだと大体クライアントや上司、学校の授業でいうと生徒側)の本当の理解が得られにくいのだとすると、本当に大事なことは板書して説明し、それを書き取ってもらうくらいのことが必要なのではないのか。
それはわかってるけど、流しながら説明(かつイラスト・写真なんかのイメージをふんだんに盛り込みながら)し、分かった気になってもらうのが話す側の目的だったりすると案外的確なやりかたをしているということか。クワバラクワバラ。

2011年6月5日日曜日

『「人を動かす人」になるために知っておくべきこと』

世界一のメンターと言われているジョン・C・マクスウェル氏の著作をワタミの渡邉美樹氏が監修した本。
著作の中で特に渡邉氏に響いた内容についても記述があり、それも面白い。
○カリスマ性のある人のまわりでは、いつもワクワクするようなことが起こっている。
○出口のないトンネルはない
○一人静かに「内省する時間」を確保する
という内容については渡邉氏に響いたようだ。

個人的にフックがかかったのは以下の内容について。
○協力なリーダーシップを発揮する統率の鍵とは「人の価値を高めていくこと」
○組織を率いる上で大切なのは、「問題解決」にフォーカスしたコミュニケーションに意識を集中すること。
○その人の現状ではなく、「可能性」に目を向けるとよい。人は期待をかけられると、その期待に応えようとする。だからこそ「現状」ではなく「可能性」に目を向けることが大切。
○勝つ組織をつくるにはどうしたらよいか。適材適所の仕事を与えれば良いのだ。一人ひとりに行動する「動機」を与え、やる気を引き出すことである。
○どのような行動に対して報酬を与え、励ますべきかは慎重に考える必要がある。その一つのヒントが、長期的に成果や業績を上げ続けている人に対して報酬を与えることだ。これはつまり、「何が持続的な成功につながるか」を考えることでもある。

<チームに「勝利」をもたらす4つの法則>というのが紹介されている。
1 「絶対勝利」を”旗印”にせよ
2 「リスク」よりも「停滞」を恐れよ
3 「1%の成長」にも貪欲であれ
4 「仲間の成長」の延長に「自分の成功」があると考えよ(互恵の精神)
いずれも大切な内容だが、今の会社で特に必要だと思うのは『「1%の成長」にも貪欲であれ』である。
成長に対する絶え間ない(貪欲な)渇望が組織には必要である。それにはある程度の危機感が伴う必要があるかもしれない。一定の緊張感の中、お互いの成長を模索していく組織でありたい。


その他にも本論を補完するために著名人の含蓄深い名言も紹介されている。
「経営問題の6割はコミュニケーション不全によるものだ」
by P・F・ドラッカー

「安全などというのは多くの場合、迷信に過ぎません。人生は冒険するか、空虚に過ごすかの二つに一つなのです」
by ヘレン・ケラー

ドタバタ感だけなら、まさに人生冒険中という感じだが、今のチャレンジを成功に結びつけていきたい。

『ユニクロで学んだ「巻き込み」仕事術』

予算がない、人が足りない、時間がない。。。そういった状況の中で、今あるリソースでいかに改革を進めていくのか。
正に自分のおかれている環境に似ていたこともあり、読んでみた。

「中間管理職というのは、メンバーみんなを主役にし、ヒーロー、ヒロインをたくさんつくることが仕事」
という非常に共感できる価値観がベースにあり、
「現有戦力で改革を行うためには、メンバーのいいところに積極的に目を向ける必要がある。」というのがあって勇気づけられた。

「中間管理職から中心管理職へ」ということが提唱されており、
具体策としては
<巻き込み仕事術の5ステップ>
ステップ1 「データベース」を整理する
ステップ2 口説く相手を分析して「戦略」を立てる
ステップ3 口説き方の「戦術」を練る
ステップ4 「コミット&期限」の確認
ステップ5 議事録をかぶせた「リマインドメール」の活用
というフローが示されている。

このうち「データベース」を整理するというステップの中で、「個人のマイナス情報はプラス情報に転換する」というのがあり、メンバーのいいところに積極的にフォーカスするという大方針の具体策として感心した。

周囲のモチベーション、テンションを上げる「巻き込みフレーズ」なるものが19例ほど紹介されている。
個人的には「ものの言い方」というのは非常に大切だと思っているので、マジックフレーズはすぐ活用させてもらいたいと思っている。
その中で
「やれる、としてどんな方法があるかな?」
「今月だけは、ライバル社だけには勝とうよ!」
というのがあった。
どちらも近日中に活用させてもらうつもりである。
ユニクロで著者が辿った仕事の経緯の話についても非常に勇気づけられた。

『ウォールストリート・ジャーナル式 図解表現のルール』

ウォールストリート・ジャーナル誌のグラフィック編集者として活躍してきたドナ・ウォン女史の図解表現におけるノウハウを述べた本。
最近、仕事でもパワーポイントを活用したりと発信する機会が増えたこともあり、参考にしたく思い購入した。

”とにかくシンプルな図表を作成する”
というのが基本らしく、3Dグラフについては使う価値なしとバッサリ。

○行間はフォントサイズよりも約2ポイント大きい物を使うと読みやすくなる。
☞最後にコピー機で縮小コピーをしてみて文字が読めるかどうか確認する。
○黒地や色の付いた背景に白抜きの文字を使うのは極力避ける。
○濃淡のコントラストを確認するには、図表を白黒でコピーしてみるとよい。
☞白黒コピーとって、うまく図表が見えていれば色使いは成功。
○折れ線グラフの「折れ線」が占める割合はグラフ全体のだいたい3分の2くらいが適性。
○線グラフをつくる時には、折れ線は4つ以下にして、かつ実線だけを使うようにする。
☞4つ以上のデータの場合にはそれぞれ別の折れ線グラフにする。
○縦棒グラフの太さは柱と柱の間の余白の2倍程度が適性。柱は明るい色から濃い色の順に並べる。
○円グラフは、一番大きなセグメントを12時の線の右側に配し、2番目に大きいセグメントを12時の線の左側に、それ以外のセグメントは大きい順に反時計回りに配置していくのがもっとも良い方法。

最後の円グラフのノウハウについてはちょっとピンと来ない部分もあるが、
その他にも「色」の基本的な話として、
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色には
「色相」(ヒュー)
「彩度」(サチュレーション)
「明度」(バリュー)
という3つの特徴がある。
赤と緑、青と黄色のコンビネーションは、色相環の反対に位置する組み合わせ。色相がまったく異なるが、近い明度を持っていて、どれも強い色の組み合わせなので、たくさん使うと目がチカチカしてくる。
また、これらの組み合わせは、色覚障害がある人にとっては色の濃淡がないために、事実上判別できなくなる。
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というようなノウハウが満載。

パワーポイントなんかはこのノウハウをベースにテンプレートつくればいいのにと思ってしまった。