2010年9月26日日曜日

『チーム・ビルディング』

日本でも有数のファシリテーター堀公俊氏の共著。
活性化したよい”チーム”をつくりあげるノウハウが詰め込まれている。

チーム・ビルディングとは、良いチームをつくるための考え方や技法を集大成したもの。言い換えると、人と人を「つなぐ」技法に他ならない。

チームは同じ目的を持った人の集まり。人が集まれば、人と人の間に関係性ができる。組織とは、人の集まりであると同時に、関係性の集まりでもある。
そのため、関係性の良し悪しが、チームのパフォーマンスに大きな影響を与える。

話し合いを通じて、具体的な成果を生み出すには2つの要素が不可欠。
1つは、事実、知識、経験などの情報。
もう1つは、それを分析したり組み立てていく思考プロセス。
コンピューターで言えば、前者がデータで、後者がプログラム。
ところが、感情のある動物である人間は、その時の感情によってアウトプットが変わってくる。人を動かすのは感情であり、それがうまく扱えないと情報や思考プロセスが思うように活用できない。

人のつながりが今まで以上に重要視されていることと合わせて<社会関係資本>という考え方についても紹介されている。
「社会関係資本」とは、ヒト(人的資本)、モノ(物的資本)、カネ(金融資本)、情報(知的資本)に加え、関係性(人と人のつながり)を資本としてとらえる考え方。
関係性が様々な価値を生むという考え方で、そのためには①信頼、②互酬性の規範、③ネットワークの3つが必要だと言われている。

<チーム・ビルディングの4つの要素>
1)活動の枠組み
2)構成メンバー
3)場(環境)
4)関係性
に基づいて、各々のデザインについて様々なノウハウ、ヒントが満載。

余談的だが、面白かったのが<世界三大難関ファシリテーション>
夫婦合意形成ファシリテーション、親子関係構築ファシリテーション、嫁姑問題解決ファシリテーション。
これらについては、プロのファシリテーターをもってしても困難なのだとか。
これを逆手にとれば、家庭こそもっとも身近なチーム・ビルディングのトレーニングの場となる、とあったがやはり日々家庭でも精進することがファシリテーション能力のアップにつながるのであろうか。
こりゃ結構大変だ。

『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』

フリービット株式会社という「日本で最も人材育成をする会社」を目指している会社で、実際に導入している人材育成プログラムの論理的背景と、プログラム導入のポイントをまとめた本。
現在行っている人材育成の取り組みと重なる部分が多々あり、非常に参考になった。

「人材育成」というと≒研修と思われ勝ちだが、そこには大きな違いがあることが明確に述べられている。
いわゆる「勝ち組」のビジネスパーソンを集めて「あなたを成功に導いた要因は何か?」と聞くとそれぞれに異なる回答が出されるはず。
しかしながらこうした個々の回答に何らかの共通点を挙げるとすれば、それは彼らを成功へと導いた要因は「決して研修ではない」という事実である。
「研修」とは「人材育成」という大きな文脈においては、もはや枝葉の話であって、人材育成の実務における根幹ではない。
これからの人材育成の実務は、「研修のデザイン」ではなくて、「経験のデザイン」という方向に向かう。

また、
○企業における人材育成の目的は企業理念の浸透にこそある
○人材育成のデザインは「教えずに学ばせる」ことを目指さなくてはならない
など、納得感の高い記述が多い。

<バックワードチェイニング>という、業務の一連の連鎖のうち、最後のゴールの成功体験から始めさせて、少しずつ前倒しで始めさせる手法が紹介されていて非常に面白い。
「勝ち癖」をつけながら一連の仕事を学ぶことができ、常に「最後までやり抜いた」という充実感を伴って経験をクローズすることができる。
「常にゴールのテープを切る」という成功体験を積ませつつ、徐々に難易度を高めていく経験のデザイン手法は、うまく組み立てると非常に効果的に人材育成につながるのではないかと思った。

人材育成を売りにしている会社なので、一方では、人材育成を継続することの難しさについても記述がある。
人材育成の仕事は常に組織横断的であり、現場の仕事よりも重要性が低いために、現場からすればどうしても後回しにしたくなる話。
そして悪いことに人材育成プログラムというのは、その導入コストは測定できても、導入の効果になるととたんに声が小さくなる。
責任は取らず、現場では二の次になり勝ちで、お金がかかり、かつその効果が見えにくいという人材育成は、経営者の信念と継続的で強いコミットメントがなければ立ち行かない運命にある。
しかし、実は、多くの企業には「本気の人材育成」というものがなかなか存在し得ないからこそ、そこに差別化による競争優位構築の可能性がある。

人材育成において世界で最も尊敬されている企業の1つがGE。
ジャック・ウェルチ時代から始まったクロトンビルにおける研修については有名だが、GEのCEOは業務の1/3を人材育成に費やすことが決められているのだそうだ。
基本理念として「人材は育つのではなく、育てるものだ」ということを明確に打ち出している。

「どういう人とチームを組むのかが、ある人の成長の重要な部分を決めてしまう」という、著者曰く「怖い仮説」があるらしい。
特定の部署から多くの人材を輩出することがある。人だけではなく、人と人とのつながり方、実践する内容も含めた「場」の力ということなのであろうと思っている。
だからこそ、組織全体として人材育成に適した活性化した雰囲気をまとうことが必要なのではないだろうか。

ニーチェ曰く「脱皮できない蛇は滅びる」とのこと。
今後も希望を持って脱皮できるよう精進していきたい。

2010年9月25日土曜日

『マンガでわかる 会社組織が甦る!職場系心理学』

マンガではあるが、心理カウンセラーの衛藤信之氏が監修しており、心理学に基づく知見もたくさんでてくる。

成果主義により会社が人を育てることを放棄し、人と人との関係が希薄になっていく現代会社組織において、どのようにすればいいかのヒントが述べられている。

<エリックバーン博士の「交流分析」>
人種、性別、年齢、教養を問わず、人は大きく分けると3つの心を持つ。
P:Parent(私の中の親心)
  CP:Critical Parent  私の中の厳しい父親心・・・理想、威厳、道徳的、支配、命令、叱咤激励
A:Adult(冷静な大人の心)
  私の中の合理的な私・・・冷静沈着、状況判断、損得計算、情報収集
C:Child(私の中の子供の心)
  FC:Free Child(無邪気な自己表現の子供心)・・・明るい、無邪気、好奇心、天真爛漫などの私の中の明るい私
  AC:Adapted Child(他人の期待に添う子供心)・・・自己抑制、忍耐、従順、我慢などの気を遣う私(はずみで反抗の心にも転ずる)

相手の投げて来た球をちゃんと理解して、同じ所へ投げ返す、それが会話のキャッチボールというもの。世のなかでは会話のドッジボールが横行している。


<教育学者 ジョン・デューイが提唱した問題解決のモデル>
1.何について対立しているのか問題をハッキリさせる。
2.色々な解決策を出してみる。
3.出て来た解決策をひとつひとつ具体的に評価していく。
4.その一番いい解決策を選ぶ。
5.その解決策をどうやって実行するかを考える。
6.実行後うまくいっているかどうかを調べる。

これらの手順を1つの会議でやろうとするとうまく行かない。
→この6つのプロセスに従って会議を分けるべし。
①問題発見・整理会議
②ブレーンストーミング会議
③評価、意志決定会議
④役割計画・実行会議
⑤経過確認・フォロー会議


<価値観の対立への処方箋>
1.あなた自身が変わること・・・はじめから相手を全否定していたという事実に気がつく☞相手に過剰な期待をしなくなるという変化が現れる。
2.あなたが”有能な”コンサルタントになる・・・”有能な”コンサルタントとは、その価値観をとりたくなるように、あらゆる角度から考え伝えることができる人。
3.モデリング・・・真似させる。真似したくなるような存在をつくること。
〜心理学的にはここまで〜
4.祈り・・・価値観というものにおいては、人間同士最後は分かり合えない瞬間が残る。価値観の違う人のために祈る、ここから先は神の領域かもしれない。


自分があと3日の命だったらという前提で遺書を書く。
☞アメリカの墓標のように死んでもなお残る自分の足跡のようなものをあらためて考える機会となる。

「感動」という言葉はあるが、「理動」ということばはない。人は何かを感じて動くことはあるが、理屈では動かない。
などなど、それこそマンガならではのストーリー性を伴った”感動”とともに頭に入ってくる。
マンガパワーあなどれじ。

2010年9月23日木曜日

『統計数字にだまされるな』

M・ブラストランド、A・ディルノットというイギリスのジャーナリスト、エコノミストが、数字や統計学の有用性の限界と、その正しい押さえ方について述べた本。
巧みな比喩や具体事例で、非常に分かりやすく書かれた良書である。

まずは数字が出て来た時に「この数字は大きいのか、小さいのか」について、一人当たりの大きさに割り戻すことで、感覚的に判断できるようにせよ、という大原則が述べられている。

公共支出系の計算に役立つ便利な数字として、人口に1年52週をかけた数字31億2000万が挙げられている。これがイギリスで一人につき週に1ポンドずつ配る場合に、政府が1年間に支払うことになる金額ということである。逆に31億2000万で割ると、全国民一人一人に対し、均等に分けた場合の週あたりの価値が導き出される。
(ちなみにこのマジックナンバーは日本だと62億4000万

また、大きな数字がよくわからないという場合には、そうした数字を秒として想像してみると良いというアドバイスが書かれている。
100万秒は約1.5日。10億秒なら32年近くになる。
単位の多寡を期間で置き換えるとイメージしやすくなるいう秀逸なアイデアである。

また、”%”で語られる内容に関しては、「自然頻度」という「影響を受ける100人あたりの人数で考えるとどうなるか」で考えると、具体的で、直感的に理解しやすい。
この事例の好例として
「乳がんになっている人を見つける正確さが90%、なっていない人を見つける正確さが93%の検査(マンモグラフィ)で陽性になった場合、その患者が本当に病気である可能性は?ちなみに病気になるのは母集団(検査を受ける40代から50代の女性グループ)の約0.8%である。」
という問題が出されている。
答えは最初のイメージを大きく裏切るものである。

自分の直感と照らし合わせられるように数字を加工するという工夫をもって数字をみることと、数字、統計という有効な媒体の限界を知ることで、とっつき憎い統計数字を身近に感じることができる良書。
これからは、一人一人が自分で色々なことを判断していかなければならないことを考えるとこういった基礎スキルは大切である。

2010年9月20日月曜日

『部下を思わずハッとさせる上司の伝達力ですべてが決まる』

人材育成に関しては、チームのグッドコミニュケーションが必要不可欠である。
その際、同じ内容を伝えるにも、「良い言い方」と「悪い良い方」があるのではないかという問題意識があり、この本を手に取って見た。



ベスト型リーダーが用いる”ベストフレーズ”を
□傾聴・共感フレーズ【信頼関係】
□カウンセリングフレーズ【問題発見】
□明確化・指示フレーズ【問題解決】
□フィードバックフレーズ【現実未来認識】
□モチベーションフレーズ【やる気喚起】
□臨機応変フレーズ【状況対応】
という6つに分類して、自ら日々更新する。
それにより、「良い言い方」のフレーズ集をつくりながら「良い言い方」が自然と口をつくようにし、更には実施効果測定してグレードアップ作業を行おうという提案が述べられている。

「伝達力」はビジネスシーンにおいてはとても大切な基本力である。
しかしながら実はベストフレーズだけではダメである。
そこにフレーズを支えるプラスのエネルギーが、常に充満していて、伝えようとする明確で具体的で肯定的な意思が働いていなければ、相手に伝わっていかない。
つまり、最後は「こころ」の問題だと言っても過言ではない、ということが最後に述べられている。
「伝達力」は基本の基の字ということか。

また、組織全体で「ベストフレーズ」を学び、組織遺伝子として次世代に引き継がれることが、組織文化の変革につながる、としている。
確かに、組織全体で肯定的で具体的な「良い言い方」で伝達がなされている組織は、成果を上げる確率が高いのではないだろうか。

不随意筋は本来コントロールできないが、それを可能とするのに「呼吸」を意識的にコントロールすることで可能とすることができる。
同様に、意識を変えるにあたっては、言い方を変えていく(コントロール)することは非常に的を得たやり方ではないだろうか。
言い方についての『グッドフレーズ』については、まだまだ研究の余地があると思われる。

スーパーリアルマネキン

先日行った越谷レイクタウンのイオンにありました。
シリコンラバー製で、肌は特殊シリコンを何層も重ねて人の皮膚にそっくりの質感を出しているそうです。
髪の毛やまつげ、ひげは1本1本手作業で植毛とのこと。













確かにすごいリアルなんだけど、どうしてこの男性がモデルなのかしら(多分製作者なんだろうけど、プロモーション的には???)

同じく陳列されていた『バイオマスマネキン』。秩父産・杉のおが粉含有率が35%なんだそうです。頭の双葉がチャームポイントです。(ただ置いてあったら何が何やらわかりませんが)

お好み焼き 「来たろう」

1月ほど前の関西出張で、お好み焼きの美味しい店ということで芦屋の「来たろう」に連れて行ってもらった。
何と10年以上も前からマスターが変わらずお客の前でお好み焼きを焼いているらしい。
その動きは正に職人。リズムをとりながら焼きごてを手にする姿もさることながら、ちゃんと店全体への目配りを忘れず、時折店員にやわらかく、しかし毅然と指示を出す姿は見ていて気持ちがいい。
そんな感じなので従業員含めた店全体の雰囲気がいい感じでしまっている。

お好み焼きも絶品。出張で色々視察してお腹がすいていたことを除いても、また行きたくなる感じであった。
お店のこだわりで「お好み焼きはヘラで食べて」とあったのだが、気がついたらお箸で食べていた。習慣というものは恐ろしいものである。

また機会を見つけて再訪し、今度はヘラで食べたいものである。

佐野ラーメン 亀嘉

佐野のアウトレットに行って来た。
カミさんが高速の乗り方を実践したいというのが主な目的だったりしたが、一応買い物も目的として家族それぞれ必要なもの購入して来た。
ついでと言ってはなんだが、佐野ラーメンも食べて来た。
佐野ラーメンはどこが有名なのかよく知らなかったので、インターネット情報によりまずは「亀嘉」に行ってきた。
スープはすっきり系だが、メンが縮れていてスープと程よく絡んで美味であった。

アウトレットに佐野の情報拠点があって、そこのお姉さんに「佐野ラーメンの美味しい所教えて」とお願いをした。
「あくまで、お客様情報ということで」と前置きした上で
「近くだと”利休”、”しまだや”。ちょっと離れると”おぐら屋”、”大金”が美味しいらしいですよ。」
と教えてくれた。

また買い物と合わせてラーメンを食べに行く楽しみが増えた。

『20歳のときに知っておきたかったこと』

「手元に5ドルあります。2時間でできるだけ増やせといわれたら、どうしますか?」
アメリカ、スタンフォード大学の演習である。
課題にあてられる時間は水曜日の午後から日曜日の夕方まで。この間、計画を練る時間はいくら使ってもかまわないが、一旦封筒を開けたら、2時間以内にできるだけお金を増やさなければならない。何をやったのかは日曜日の夕方スライドにて発表する。

実は、大金を稼いだチームは,元手の5ドルには全く手を付けていない。
お金に注目すると、問題を狭く捉え過ぎてしまうことに気づいたのだ。
5ドルはあってないようなもの。元手が無いのにお金を稼ぐにはどうしたらいいのか?
多いチームでは600ドル以上を稼ぎ出した。クラス平均でも4000%の投資リターンとなった。
封筒の中身が5ドルから10個のクリップなどに変わり、「イノベーション・トーナメント」としてこの演習は現在も続いている。。

さて、学生達が何を考え出したかは本を読んでいただくとして、演習の成果から浮かび上がった意外なポイントが以下の3点である。
①チャンスは無限にある。周りを見回せば、解決すべき問題がいくらでもある。
②問題の大きさに関係なく、いまある資源を使って、それを解決する独創的な方法は常に存在する。
③我々は往々にして問題を狭く捉えすぎる。

著者のティナ・シーリグが20歳の息子に向けて書いた本ということで、
「失敗を恐れるな。自分自身に許可を与えよ」ということが繰り返し述べられている。

この本を読んで思ったのが”セレンディピティ”という言葉である。
ある目的を持って出発するのだが、必ずしも当初の目的以外の素晴らしいものを手に入れるという能力のことだ。

「ルールは破られるためにある」
「許可を求めるな。許しを請え」
「失敗こそシリコンバレーの強みの源泉」
「光輝くチャンスを逃すな」
「異質なことをせよ」
様々な言葉で、チャレンジを訴えかけてくる。

でも一番ぐっときてしまったのは、
教室の前で転んだ障害者のクラスメートや、母親を亡くしたクラスメートに何と声をかけるべきなのか。今までどのような声をかけていいのか分からずに、声をかけないで済ませて来たが、
「大丈夫ですか?何かできることはありますか?」
という一言が大切だったということに最近気がついた、という下り。
自分でも常に悩んでいる内容だからだろうか。

自分の悩んでいる内容が小さすぎて嫌になるが、何歳であっても気概というものを忘れずに日々精進したい。

2010年9月19日日曜日

『15秒でツカみ90秒でオトす アサーティブ交渉術』

会社でも研修をやってもらっているグローバリンクの大串亜由美さんの本。
1冊になっているが、15秒および90秒の自己紹介術とアサーティブコミュニケーションの2つの内容を合体させた本となっている。

Assertive Communication とは、発展的で協調的な自己主張を伴ったコミュニケーションのこと。
それを身につけるための4つのポイントが
①言い訳をしない
②優先順位をつける
③時間を区切る
④きちんと言い切る

自分のメッセージを相手にきちんと「聞いてもらえる話」にすることこそ、アサーティブ・コミュニケーションの基本。
①相手の話が聞ける
②相手の立場を考えたうえで、きちんと主張できる
③相手のタイプに合わせたアプローチができる
を実現するのがアサーティブ・コミュニケーション。
自分に正直であることが何よりも大切。その正直な気持ちを上手に伝えるための技術。
目指すは「話上手」ではなく、「聞いてもらい上手」
相手を変えようとするのではなくて、自分の優先順位を考え、伝え方をほんのちょっと工夫する。それだけで相手が変わる。

上手な”訊き方”のヒントとして
○「クローズエンド」→「二者択一」→「オープンエンド」で聞く。
○”しりとり式”質問話法でキーワードを引き出す。
○刺のある発言は、相槌でさりげなく刺を抜いてあげる。(復唱→整理→前向きな発言)
などが挙げられており、これも参考になる。

この本の素晴らしい所は、内容が翌日からすぐに実践できることだろう。
自己紹介もいくつかパターンを持っておきたい(考えておきたい)と思った。

『言いにくいことを上手に伝える62パターン会話術』

日々活用できるフレーズ集として、現在担当している「人材育成」に活用できないかと思い読んでみた。
6つのカテゴリーとして
1.きっかけ
2.主張
3.共感
4.例示
5.改善案
6.確認
という風に分かれているのだが、この分けが分かりづらい。

62個のフレーズを自分なりに分類してみたところ、
1.きっかけ
2.(共感を示しつつ)お断り
3.主張
4.指摘
5.依頼
6.共感
7.その他
に分類された。
(分類によると「共感」の数が多かったのは、「共感を示しつつ〜する」というのが「言いにくいことを上手に言う」ことのベースにあるからであろう。)

「申し訳ございません。」は「〜してしまって」「〜させてしまって」と、何に対して「申し訳ありません」なのかハッキリさせる。
「すみません」「ごめんなさい」は大人の言葉遣いではない。
など基本的な部分についても述べられている。

以前同様にフレーズとして活用できるものを、といことで『できる大人のモノの言い方』という本を購入したが、それよりは基礎的な内容が多い。
いずれにせよ、日々実践でつかえるかどうか、そこが課題である。

『これだけで「組織」は強くなる』

ワタミの渡邉美樹氏と元楽天監督の野村克也氏の対談方式による組織論。
ノムさんのID野球の考え方が非常にビジネスにおける組織論とも通じることがあり面白い。

以下ノムさんの言葉>>
☆エースと4番打者がいれば、手っ取り早くチームを機能させることができる。
ここで言うエースと四番とは、他の選手の「鑑」になるような選手。「○○を見習え」というだけでチームが正しい方向にむかうような、人間的にも一流で人望のある、絶対的な中心選手のこと。
ただし、スター選手だけでは「勝てる組織」にならない。それぞれの場面に応じて、己の役割をわきまえて働いてくれる人材が必要。
☆強いチームは、勝つときは接戦、負けるときはボロ負け。弱いチームはその逆。
☆外角低めが投球の「原点」。原理原則を意識しない選手には伸びしろがない。
絶対に結果論で選手を叱ってはいけない。
☆「人間は、『無視、賞賛、非難』という段階で試される」
☆よく観察して足りないものに気づけば、人の再生は難しくない。
「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする」
「失敗と書いて『せいちょう(成長)』と読む」
☆メジャーリーグには「教えてないコーチが名コーチ」という名言がある。
教えすぎると、選手から自分で考えようとする気持ちを奪ってしまう。
最初から教えようとせず、選手の中で問題意識が高まるようなアドバイスをして、「今のやり方でいいのか?」と疑問が生まれるように仕向けるのがいい。
「どうしたらいいでしょうか?」と訊いて来た時こそコーチの出番。絶対に突き放してはいけない。この時が徹底低に教え込むチャンスで、見違えるほど成長を遂げる可能性を秘めている。
日本の球界も慢性的な人材不足。コーチを任せられるこれという人は少ない。


渡邉さんも良いことおっしゃっているのだが、同じビジネス畑なので真新しい感じの話は少なく感じた。
その中でも
人の「再生」のキーポイントは、「その人の一番強い部分で勝負させてあげる」ということ。
言葉を変えると、その人の「存在対効果」を高めるということ。
という話の中の「存在対効果」(「費用対効果」からの渡邉氏の造語)という発想は面白かった。

野球好きな人だともっと共感を持って読めるのかもしれない。

『感動の会議!』

会議を開く側の心得、スキルをわかりやすく述べた本。
「ファシリテーター」スキルと重なる所が多々あるのだが、ファシリテーションよりも日常業務で多くつかう通常の会議のリーダーとしてのスキルがベースとなっているので、一般ビジネスマンに活用しやすい内容となっている。

会議の達人に共通している3つの原則
原則1.自ら、明確なゴール(意図)をもっている
原則2.課題達成だけでなく、参加者の満足を引き出している
原則3.会議のオーナーとしての責任をとっている

共鳴→発見→合意
のプロセスを企画し、その道の上を、参加者が自主的に歩いていくように促していく
のが達人の技術。

ということをベースに会議の準備段階から実行段階における留意点、ノウハウが展開されている。

「参加者の満足の源泉とは?」ということで
①課題への貢献感
②自分自身の成長実感
③それを、まわりが見てくれていること(承認)
というのが挙っている。
以前同志社女子大の上田信行教授が
「僕の授業では、学生に対して、学ぶだけではなくて何か授業に貢献してもらうことにしています。最初に学生に「あなたはこの授業で何に貢献してくれますか?」と聞くんです。ちょっと戸惑うのですが、すぐに参加して積極的に意見を出すことが「貢献することだ」と認識してくれて積極的に参加してくれるようになります」
と言っていたのを思い出した。
「学ぶか貢献するか」そしてその行為を承認(Acknowledgment)することが参加者のモチベーションにつながるというのは、非常に腑に落ちる内容だ。

ファシリテーターにおける質問もそうだが、会議では「良い質問」を如何に問うかに力量が問われる。

その際に参考になるのが<会議の達人の質問プロセス>。
・現状からスタートして行動に至る3つの基本プロセス(即行動型、原因分析型、理想追求型)
・参加者の脳みそを揺さぶりプロセスを活性化させる4つの質問パターン(時間軸、視点、チャンク、前提)
から構成される基本形式を縦横無尽に活用して質問を組み立てていく。
実際の会議でも、ベースとなる考え方があると、慌てずに済むのかもしれない。

議論を壊そうとする確信犯が真っ先に狙うのは「範囲」なので、その会議の議論対象範囲を時間的、空間的に定めておく必要がある等、自分の過去の経験に絡めても納得できる内容が満載の良書。

会議をデザインする立場になったら必読の書のひとつに挙げたい。

2010年9月8日水曜日

『フィンランド流 6時に帰る仕事術』

皆が休暇をしっかり取得し、6時に帰るという人口わずか530万人の国、フィンランド。
千葉県の人口(600万人)にも満たないこの小国が、世界経済フォーラム(WEF)が発表する国際競争力ランキングで日本を上回っている。
教育においてはフィンランドメソッドというのが研究されたりしているが、仕事版フィンランドメソッドとは何かを「仕事術」として述べた本。

大まかに勝手にまとめると
①徹底的に無駄を省く
・発言をしない会議には出ない(ステータス報告はメールで十分)
・不必要なメールは送らせない
②目標を定めたらやり方を含め任せる
③オープンに情報開示をする。
というところか。

「仕事術」以上にフィンランドの生活様式が日本との比較で書かれていて非常に楽しめる。


フィンランドで有名なのは教育。フィンランドメソッドとして日本でも有名だ。
OECD実施の国際学習到達度調査(PISA)の2006年度の結果では、科学リテラシーで1位、総合読解力で2位、数学的リテラシーでも2位と素晴らしい結果を残している。(対して日本は科学的リテラシーで6位、数学的リテラシーで10位、総合的読解力では15位。)

フィンランドの小中学生は、ガリ勉をしているという様子がない。そもそも小学校から大学まで無償であり、ほぼ全て公立学校だ。そして学習塾というものが存在しない。家庭教師もいない。ついでに学校には部活というものがない。
フィンランドの学校教育の授業時間数は640時間程度。日本は670時間(ゆとり教育以前では720時間程度)
フィンランドでは、フィンランド語とスウェーデン語の2カ国語が公用語になっていて、街のあらゆる場所で、看板には二つの言葉が併記されている。従って、中学卒業までに両方の言葉を覚えなければならない。
ところが、フィンランド語は日本語やモンゴル語と同じ、ウラル・アルタイ系の言語で、スウェーデン語は、ドイツ語と英語の中間のようなゲルマン系の言語だ。両者はまるで体系が異なる。
さらに、北欧の小国のフィンランドには、国がグローバル市場で生きていくためには、英語こそ、全国民に習得させる必須の言語だと言う強烈な認識がある。
英語は小学校3年生から習得させ、第2外国語は中学1年から教え始める。
フィンランドの若者は、アメリカのホームドラマを毎日見ている。
音声は政府の指導により必ず英語のままで、フィンランド語の字幕がついている。これが毎日のことだから、自然に英語が身に付いてしまうのだそうだ。

フィンランドの教育の一つ目の特徴は、独創性を伸ばすこと、独立心を高めること、そして褒める教育を行うことだ。
日本では「他の人達と協調してやっていける人間を育てる」ことを重視するのに対して、フィンランドでは「人生の全ての面で、個人として自立した生活ができる人間を育てる」ことにある。

二つ目の特徴は「落ちこぼれ生徒を作らない」という理念だ。
PISAの学力テストの結果をよくみると、全体に学力の差が少なく、落ちこぼれの予備軍が少ない。
フィンランドの学校には、ボランティアがいつも授業に参加する形になっていて、アシスタントとして教室についていることが多い。
フィンランドでは落第は「権利」とみなされていて、しっかりと理解できるまで、原級にとどまることが「要求できる」のである。
大学の入学年齢はバラバラで、平均は23歳くらい。


また、フィンランドでは、小中高校の教員になりたいという志望者が非常に多い。憧れの職業なのだ。
しかし、教員になるためには、かなり狭き門を通らなければならない。まず、全員が教育修士号を取得する必要がある。このためには、大学の教育学部で教職課程を受講して、修了しなければならない。
フィンランドの素晴らしいところは、教員の採用が、普通の企業の採用と同様、各学校の裁量に委ねられているところだ。
とはいえ教員の給料は一般の企業の社員とあまり違わない。
教員に人気が集まるのは、教員という職業が、周囲から尊敬される職業だからだ。
使命感に燃えた先生を、生徒も父兄もみな尊敬するから、日本のモンスターペアレンツのようなことは起きないのだそうだ。


フィンランドは付加価値税が25%近い高率(食品が12%、その他が22%。車の取得税は100%)。そのため、福祉が充実していると言っても、夫婦共働きをしないと、とても家計がもたない。
フィンランドは19世紀から約110年間、ロシアの占領下におかれて、いつもロシア皇帝から理屈に合わないこと、無理難題を吹きかけられてきた。苦難の末に独立を勝ち得たあと、国民は合法性の行き届いた、不正を許さない政府を自らの手でつくりあげた。
1991年、やっと工業国として一流になってきた時期にソ連の崩壊が起こった。それまでにソ連向けの輸出が全体の20%を占めていたのが、突然ほぼ0に落ち込んだ。ちょうどその時期バブル経済が進行していたために、深刻な金融危機が襲った。
91年から93年までの3年間でGDPは約10%も減少。失業率も数%だったのが17%にまで上昇した。
ところが、この時に、フィンランド政府は毅然とした対応を取り、矢継ぎ早に危機回避策を実行した。
まず銀行業界の統廃合を進め、各銀行では大幅なリストラが実行された。さらに政府自身も、財政と行政の改革を行った。国家歳出の削減のなかで、なんと年金など社会福祉予算を大幅にカットしたのだ。それは国民全員に痛みを要求するものだった。
しかし、国民はそれを受け入れたのである。そしてフィンランドはわずか4年という短期間にこの経済危機を無事に乗り切ることができた。その後の発展はめざましく、「フィンランドの奇蹟」と言われている。
振り返って日本をみると、日本の借金は950兆円という巨額に達したが、国民に消費税引き上げを説得できる政治家がいない。。


フィンランドはいまだに東の隣国への警戒を怠らない。兵役がいまも敷かれていて、18歳以上の男子には6ヶ月から1年の兵役の義務がある。
地下駐車場が核戦争時のシェルターとして機能するようになっている。
ヘルシンキの中心には国家の投資で80万人が収容できる巨大なシェルターが作られた。
平時は、市営の駐車場として利用されているが、いざとなれば、24時間でシェルターに戻すことができるそうだ。
子供のときから別荘脇(当然サウナ付き!)のドライ・トイレを日常で使っているのも、いざ戦争が始まったら質素な生活に戻ることができるということらしい。


フィンランドとは関係がないのだが、面白かったのは
「良い質問」には2種類ある
というものだ
一つ目のタイプの質問は、現場の実務者として、当然部下が押さえておかなければならないこと、例えば当面の損益や売上や、品質はどうかといった質問。
二つ目のタイプの質問とは、もっとぼやっとした、一般的・根源的なものだ。
「この仕事は、会社に取って大切なものだろうか?」
「これだけ頑張ると、本当にみんなに喜んでもらえるのだろうか。それはなぜだろうか?」
といった一見ピンとのぼけた質問だ。
良い経営者はどちらの質問も発することができるらしい。


フィンランドメソッドを研究した時にも思ったが、一度フィンランドに行ってみたいものだ。

2010年9月2日木曜日

『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』

佐々木常夫氏の本で絶対に読むべしと書かれていたロングセラー。(佐々木氏が新任課長の石田君宛の手紙形式で書いたのはこの本の影響であろう)
タイトルが印象的だったので父が読んでいたのは知っていたが(読めとも言われなかった)が、恥ずかしながら読んでいなかったので、読んでみた。

「ひとりの父親は百人の教師に優る」by ジョージ・ハーバート
という言葉があるらしい。(佐々木氏も引用していた)
少なくともキングスレイ・ウォード氏は30人の教師と同等だったようだ。
30通の各手紙の最後に書かれている自称が面白い。

子煩悩の親父より
君の進路指導教官より
君の応援団長より
カヌーの相棒より
君の教育の最高責任者より
君の守護天使より
「自分のやり方でやった」ウォードより
同じ道を志す友より
同僚より
共同経営者より
愛の天使より
「臆病者」より
君の資金源の父より
君に拍手を送る聴衆のひとりより
エミリー・ポストより (※エミリー・ポストはアメリカの著名エチケット・アドバイザー)
君と懇意の銀行家より
一歩も譲らないウォードより
ウォード船長より
本の虫より
完璧主義者より
人事部長より
君の親友でもある父親より
香しい花より
君の行きつけの個人金融業者より
君を破産宣告から守る最高の保護者より
共に健康を謳歌する釣り仲間より
君に感謝している同業者団体の会員より
元社長より
父さんより

息子が大学に入るところから、息子に社長を継がせて引退するまでの書簡なのだが、最後の自称が単に
「父さんより」
で終わる。
シンプルだがグッとくる終わり方である。

わざわざ人に読まれるために書かれたものでないので、父親の温かいまなざしを存分に表現している感じがする。
自分が子供に対してだったらと考えると、単に「説教」して終わってしまいそうである。(しかも「説得」でもない)
きっちりと伝えるためには手紙にするというのも一つのやり方かと、考えてしまった。