2010年9月23日木曜日

『統計数字にだまされるな』

M・ブラストランド、A・ディルノットというイギリスのジャーナリスト、エコノミストが、数字や統計学の有用性の限界と、その正しい押さえ方について述べた本。
巧みな比喩や具体事例で、非常に分かりやすく書かれた良書である。

まずは数字が出て来た時に「この数字は大きいのか、小さいのか」について、一人当たりの大きさに割り戻すことで、感覚的に判断できるようにせよ、という大原則が述べられている。

公共支出系の計算に役立つ便利な数字として、人口に1年52週をかけた数字31億2000万が挙げられている。これがイギリスで一人につき週に1ポンドずつ配る場合に、政府が1年間に支払うことになる金額ということである。逆に31億2000万で割ると、全国民一人一人に対し、均等に分けた場合の週あたりの価値が導き出される。
(ちなみにこのマジックナンバーは日本だと62億4000万

また、大きな数字がよくわからないという場合には、そうした数字を秒として想像してみると良いというアドバイスが書かれている。
100万秒は約1.5日。10億秒なら32年近くになる。
単位の多寡を期間で置き換えるとイメージしやすくなるいう秀逸なアイデアである。

また、”%”で語られる内容に関しては、「自然頻度」という「影響を受ける100人あたりの人数で考えるとどうなるか」で考えると、具体的で、直感的に理解しやすい。
この事例の好例として
「乳がんになっている人を見つける正確さが90%、なっていない人を見つける正確さが93%の検査(マンモグラフィ)で陽性になった場合、その患者が本当に病気である可能性は?ちなみに病気になるのは母集団(検査を受ける40代から50代の女性グループ)の約0.8%である。」
という問題が出されている。
答えは最初のイメージを大きく裏切るものである。

自分の直感と照らし合わせられるように数字を加工するという工夫をもって数字をみることと、数字、統計という有効な媒体の限界を知ることで、とっつき憎い統計数字を身近に感じることができる良書。
これからは、一人一人が自分で色々なことを判断していかなければならないことを考えるとこういった基礎スキルは大切である。

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