2019年4月30日火曜日

『THE TEAM』

4月から新部署に赴任。新任として所信表明で「コミュニケーションが成果の基盤」と言う話をしたところ、翌朝の新聞で「コミュニケーションが活発なチームがいい❌」と言う本の紹介がされていて独り憤慨。早速購入して読んだのがこの本。
会社業務でもお世話になっているリンクアンドモチベーション役員の麻野耕司氏の著作。
結論からすると、「コミュニケーションは非常に重要である」と言うことは著者は重々分かっていて、その上で「コミュニケーションだけではない」と言う趣旨であえて挑戦的な表現にしたものと思われる。(「時代に求められるのはルールよりもコミュニケーション」とう章があるくらい)
読んでみたら非常に共感できる良書であった(笑)

<チームの重要性>

約10万年前に地球上には6種類の人種が存在したが、その中で生き残ったのは我々ホモ・サピエンスだけだった。
ホモ・サピエンスは他の5種類に比べて個体としての能力が低かったとされている。では何故、我々ホモ・サピエンスだけが生き残れたのか。
『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、その理由が「集団」にあったと述べている。
ホモ・サピエンスは複雑な言語や空想的思考によって大きな社会集団を形成した。そして、集団の知恵によって協力・共創する事で環境に適応し、他の人種を滅ぼしながら世界中へ広がることができたという。

もともと西洋では、物事は要素に分解することで理解することができるという「要素還元主義」の考え方が発達してきた。
西洋医学において、悪くなった臓器を手術で取り除くことによって病気を治すという行為にも「要素還元主義」の考え方が表れている。物事の要素、つまりは「個」に注目する考え方が西洋では重視された。
一方で東洋では、物事の成否は要素と要素の関係性に左右されるという「関係性世界観」の考え方が発達してきた。東洋医学において、臓器と臓器を繋ぐ血流を漢方薬によって良くしていくことで病気にかかりにくくするという行為にも「関係性世界観」の考え方が表れている。物事と物事の関係、つまりは「個と個との繋がり」に注目する考え方が東洋では重視されてきた。


<チームの5つの法則>

Aim(目標設定)の法則
Boarding(人員選定)の法則
Communication(意思疎通)の法則
Decision(意思決定)の法則
Engagement(共感創造)の法則

各々フックのかかった部分についてコメントしていく。


<Aim(目標設定)の法則>

サミュエル・I・ハヤカワ「抽象のハシゴ」と言うのがある。
大聖堂(教会)を作る職人の目標設定が
意義 「みんなが幸せに過ごせる場所を作る」
目的 「教会を作る」
作業 「レンガを積む」
と言うことで目標においても抽象度が異なってくることを述べたもの。
これを転じて、ビジネスにおいても「行動目標」「成果目標」「意義目標」という各々のレベルで目標の設定ができる、と著者は言う。

意義目標がなければ作業と数字の奴隷になってしまう。
歴史的に「目標」がどう変化してきたのかも面白い。
高度成長期の日本は、各企業におけるビジネスの勝ちパターンはさほど変化することはなかった。よって行動目標が重視された。
しかしビジネス環境の変化のスピードが速くなる中、チームやメンバーが取るべき行動が刻一刻と変えることが必要となってくると、行動目標に基づく評価だけではパフォーマンスが上がりにくくなった。
1990年代以降の日本で普及したのが成果目標に基づく「MBO」(Management by Objectives) チームごとの成果目標を各メンバーにブレイクダウンしていく。成果目標はできる限り定量的に設定され、評価は期末時点の成果目標の達成度合いによって決まる。これにより、成果を創出するためにどんな行動をとるか、というのは個人の自己責任による部分が大きくなった。成果を創出するために必要な行動をメンバー自らが考えることにより、ビジネス環境の変化にも対応できるチームが生まれてきた。
しかし、昨今のビジネス環境の変化スピードはさらに速くなってきている。
そして今、普及しだしているのが意義目標に基づく「OKR」(Objectives and Key Results)。元インテル CEOアンディ・グローブが生み出したと言われる。
OKRにおいては、「Key Results=創出すべき成果」とともにその先にある「Objectives=実現すべき目的や意義」まで含めて目標設定をする。
OKRにおいて重視すべきは「Objectives」意義目標であり、その実現のために効果的だと判断されれば「Key Results」は変更することも可能。


<Boarding(人員選定)の法則>

【チームの4タイプ】
著者は、環境の変化度合い×人材の連携度合いと言う2軸により、チームは4タイプに類型化できるとしている。
サッカー型(人材の連携度合いが大きく、環境の変化度合いも大きい。例:スマートフォンアプリの開発チーム)
野球型(人材の連携度合いが大きく、環境の変化度合いが小さい。例:飲食業の店舗スタッフチーム)
柔道団体戦型(人材の連携度合いが小さく、環境の変化度合いが大きい。例:生命保険の営業チーム)
駅伝型(人材の連携度合いが小さく、環境の変化度合いも小さい。例:メーカーの工場の生産チーム)

「環境の変化の度合い」が大きければ、メンバー選びは出口にこだわった方が良い。環境の変化度合いが大きいということは、状況に応じてメンバーを入れ替えていく必要があるから。入り口のハードルを多少下げた上で、その都度パフォーマンスを上げるメンバーに残ってもらい、そうでないメンバーに去ってもらう形でメンバーを構成していった方がチーム全体のパフォーマンスは高まりやすくなる。
環境の変化度合いが少ない場合には、逆にメンバー選び入り口にこだわる。
人材の連携度合いが大きければ、異なるタイプの人材を集めた方が良いが、人材の連携度合いが小さければ同じタイプの人材を集めた方が効率的である。


<Communication(意思疎通)の法則>

ルールの4W1Hを用いてチームに合ったルール設計をすることで、コミュニケーションの複雑性を減らす。ルールによってコミュニケーションの複雑性を下げたとしても、チームにおけるメンバー同士の効果的な連携にはコミュニケーションは必要不可欠。

【ルール設定のポイント】
① What:ルールの設定粒度
ルールが多い(人材の連携度合いが大きく、環境の変化度合いが小さい『野球型』)


ルールが少ない(人材の連携度合いが小さく、環境の変化度合いが大きい『柔道団体戦型』)
② Who:権限規定のルール
チームで(リーダーが)決める(人材の連携度合いが大きく、環境の変化度合いが小さい『野球型』)


メンバーが決める(人材の連携度合いが小さく、環境の変化度合いが大きい『柔道団体戦型』)
③ Where:責任範囲のルール
個人成果に責任を負う(人材の連携度合いが小さく、環境の変化度合いも小さい『駅伝型』)


チーム成果に責任を負う(人材の連携度合いが大きく、環境の変化度合いも大きい『サッカー型』)
④ How:評価対象のルール
成果を評価する(人材の連携度合いが小さく、環境の変化度合いが大きい『柔道団体戦型』)


プロセスを評価する(人材の連携度合いが大きく、環境の変化度合いが小さい『野球型』)
⑤ When:確認頻度のルール
確認が多い(人材の連携度合いが大きく、環境の変化度合いも大きい『サッカー型』)


確認が少ない(人材の連携度合いが小さく、環境の変化度合いも小さい『駅伝型』)


チーム内に「どうせ、しょせん、やっぱり」が蔓延らないようにするためにはチームメンバーに「心理的安全」を醸成することが必要。
「心理的安全」に支障をきたす原因は4つに分類することができる。
1つ目は、「無知(Ignorant)だと思われる不安」→率直質問の機会を設ける。NGワードは「こんなことも知らないのか」
2つ目は、「無能(Incompetent)だと思われる不安」→失敗共有の機会を設ける。NGワードは「こんなこともできないのか」
3つ目が、「邪魔(Intrusive)だと思われる不安」→発言促進の機会を設ける。NGワードは「今の言う意味あった?」
4つ目が、「批判的(Negative)だと思われる不安」→反対意見の機会を設ける。NGワードは「それは絶対違うでしょ」

ルールによってコミュニケーションの複雑性を低減させることはいつの時代でも同じ。しかし、今の時代においては、ルールよりもコミュニケーションによって臨機応変にチームメンバー同士の連携を図らなければならなくなっている。
チームに対して降りかかる予想もつかない様々な問題に対して、その都度メンバーたちが話し合い、知恵を出し合い、乗り越えていく必要があるのだ。


<Decision(意思決定)の法則>

チームの意思決定には「独裁」「多数決」「合議」がある。どれにもメリット、デメリットがある。

チームによる「合議」をスピーディに、再現性を持って進めるには、選択肢同士ではなく、まず選択基準と優先順位を決めるべき。

多くの意思決定には51%のメリットと49%のデメリットがあることを意思決定者だけでなく、チームメンバーが理解し、意思決定者の決断を自分達の手で正解にする気概が重要。 独裁による意思決定を成功させるのは、意思決定権者だけでなく、その意思決定を事項するチームメンバー全員なのだ。


<Engagement(共感創造)の法則>

【エンゲージメント(共感想像)の4P】
Philosophy(理念・方針)・・ディズニー型
Profession(活動・成長)・・マッキンゼー型
People(人材・風土)・・リクルート型
Privilege(待遇・特権)
上の3つは主に「感情報酬」として位置づけられ、Privilegeは「金銭報酬、地位報酬」に位置づけられる。

メンバーの「当事者意識」を高めるために最も無駄なのが「当事者意識を持て!」と言うこと。当事者意識を高める仕組みをチームの中に埋め込むことが重要。
当事者意識を高めるポイントは3つ。
1つ目のポイントは「人数」。チームの人数が一定以上に達したら、チームを分化させ、大きなチームの中に小さなチームが複数あると言う状況にした方が良い。
2つ目のポイントは「責任」。「責任範囲」「評価対象」を明確にする必要がある。
3つ目のポイントは、「参画感」。「多数決」「合議」と言う意思決定手法を適宜取り入れることで参画感を持たせる。


<エリン・メイヤー「カルチャーマップ」>

面白かったのにエリン・メイヤー「カルチャーマップ」と言うのがあったので、ちょっとご紹介。
主に国ごとに文化が異なることによってもたらされる活動や人間関係の8つの前提の違いを示したもの。
コミュニケーション:ローコンテクスト型(アメリカ、オランダ)vsハイコンテクスト型(日本、中国)
評価(ネガティブフィードバック):直接的vs間接的
説得:原理優先vs応用優先
リード:平等主義(デンマーク、オランダ)vs階層主義(日本、韓国)
決断:合意志向vsトップダウン式
信頼:タスクベース(アメリカ、スイス)vs関係ベース(中国、ブラジル)
見解の相違:対立型vs対立回避型
スケジューリング:直線型(ドイツ、日本)vs柔軟型(中国、インド)
上記エリン・メイヤーの示した項目に加えて、著者はもう一つ、「役割分担」と言う項目を加えている。
役割分担:テトリス型(アメリカ、イギリス)vsアメーバ型(日本、タイ)

上記に関する追加のコメント
◇コミュニケーション
ローコンテクスト型は、「良いコミュニケーションとは厳密、シンプルで明確なものである。メッセージは額面通りに伝え、額面通りに受け取る」「ルールは多く設定した方が良い」
ハイコンテクスト型は、「良いコミュニケーションとは繊細、含みがあり、多層的なものである。メッセージは行間で受け取る。ほのめかして伝えられることが多い」「ルールは少なく設定した方が良い」
◇リード
平等主義は「上司と部下の距離は近い。理想の上司とは平等な人々の中のまとめ役である。組織はフラット。しばしば序列を飛び越えてコミュニケーションが行われる」
階層主義は「上司と部下の距離は遠い。理想の上司とは最前線で導く、強い旗振り役である。肩書きが重要。組織は多層的で固定的。序列に沿ってコミュニケーションが行われる」
◇役割分担
テトリス型は「職務や役割、責任範囲が明確に決まっており、互いに侵犯してはならない」「個人成果に責任を負う」
アメーバ型は「職務や役割、責任範囲は曖昧。全体最適の発想の元、自身の責任範囲外のことにも積極的に関わる」「全体成果に責任を負う」
「責任範囲」に関するルールで、メンバーがチーム成果と個人成果のどちらを重視するのかを明確にする必要がある。
◇信頼
タスクベース型は「信頼はビジネスに関連した活動によって築かれる。仕事の関係は実際の状況に合わせてくっついたり離れたりが簡単にできる」「成果を評価する」
関係ベース型は「信頼は食事をしたり、お酒を飲んだりすることによって築かれる。仕事の関係はゆっくりと長い期間をかけて築かれる。個人的な時間も共有する」「プロセスも評価する」
「評価対象」に関するルールで成果とプロセスのどちらを評価するのかを明確にする必要がある。
◇スケジューリング
直線型は「プロジェクトは直線的なものとして捉えられ、一つの作業が終わったら次の作業へと進む。一度に一つずつ、邪魔は入らない。重要なのは締め切りとスケジュール通りに進むこと」「途中段階も確認する」
柔軟型は「プロジェクトは流動的なものとして捉えられ、場当たり的に作業を進める。様々なことが同時に進行し、邪魔が入っても受け入れられる。重要なのは順応性」「最終的な結果を確認する」
「確認頻度」に関するルールで、途中確認は多い方が良いか、少ない方が良いのかを確認する必要がある。


ちょっとした反発心から読んでみた本だったが、実は5つの法則の中で一番紙幅を割いているのがCommunicationの章。
正直、「コミュニケーションが活発なチームがいい❌」と言うのはひっかけなんじゃないかと思うくらい、実はコミュニケーションが大切であることを述べている。
(最初に若干「必ずしもコミュニケーションが活発な方がいいわけではなくて、ルールで効率的に対応できるところはそうしましょ」と言うことが書いてあるくらい)
ちょっとプロモーション的な言葉を言わんがために無用な紙幅を割いている感がなくもないが、内容は非常に共感できる良書。
色々な部門をまとめる立場だとそれぞれが、どういうチームなのかを分類しながら取りまとめることができそうに感じる。
これを単に学問ではなく成果に結びつけるかは各読者の力量ということか。

2019年3月3日日曜日

『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごい時間術』

ソフトバンクの草創期に経営企画室長をやっていた三木雄信氏の著作。
「そもそも上司とは、ちゃぶ台返しをするものである」と言う前提のもと、だったらどうしたらそのちゃぶ台返し、いわゆるむちゃぶりに対応できるか、と言うメソッドを記載したノウハウ本。
今は自身も独立して、会社社長として社員の残業を減らす仕組みを構築している。
ソフトバンクの孫社長という極端な事例(人)だからこそ見えてくることがあるのかもしれない。

「時間は人生で最も貴重な資源である」
これが孫正義社長の生き方の根底にある考え。

そもそも、時間の使い方には「投資」「消費」がある。
「消費」とは、「今の幸福度を高めるが、将来の幸福度を高めるものではなく、かつ無形資産にならないもの」
「投資」とは、「今の幸福度は下がるかもしれないが、将来の幸福度を高めるものであり、かつ無形資産になるもの」
時間管理も、お金の投資と同様、目的別にアロケーション(配分)を考えてポートフォリオを組む必要がある。時間投資のROIを最大化する時間の使い方をすべき。


「10秒以上考えるな!」が孫社長の口癖だった。これは「10秒考えてわからないことは、それ以上一人で考えても答えは出ない。だから人と議論したり、意見を聞いたりしなさい」ということ。
孫社長にとって仕事とは「10秒以内の判断の積み重ね」。
そしてミーティングは「判断材料を揃えて意思決定する場」という位置付け。よってソフトバンクの会議では「検討中です」は禁句。そんなことを言おうものなら、その人は二度と会議には呼ばれなくなる。
ミーティングで意思決定するには、「情報」「権限」を揃えることが必要。よって「会議に誰を呼ぶか」は非常に重要。

お金をかけずに他人の時間を買う方法がある。それは、成功事例を共有すること。 他人が時間をかけて得た知恵や情報を共有することは、立派な「時間を生む技術」。

などなど、具体性に富んだノウハウが展開される。
孫社長との具体的なやりとりも書かれていて、孫社長の人となりを垣間見る感じでそれも楽しく読めた。

2019年1月27日日曜日

『メモの魔力』

自分でも相当のメモ魔だと思っていたが、遥かに上をいくメモ魔の前田裕二氏の『「メモ教」教義書』とも言える本。

著者によると、これからのAI時代に必要なのは「知的生産のためのメモ」
メモは情報伝達ではなく、知的生産に使ってこそ本領が発揮される。

メモによって次の5つのスキルが鍛えられる。
①アイデアを生み出せるようになる(知的生産性の向上)
②情報を「素通り」しなくなる(情報獲得の伝導率向上)
③相手の「より深い話」を聞き出せる(傾聴能力の向上)
④話の骨組みがわかるようになる(構造化能力の向上)
⑤曖昧な感覚や概念を言葉にできるようになる(言語化能力の向上)

知的生産のためのメモ術においては、「ファクト」→「抽象化」→「転用」というフレームワークを使う。
①インプットした「ファクト」をもとに、
②気づきを応用可能な粒度に「抽象化」し、
③自らのアクションに「転用」する。
具体事例→抽象化→具体化というチャンクアップ、チャンクダウンを一連のメモで行うということだ。

記入する色も分類をして後で見てわかりやすくする。
その際、色分けの軸は「主観or客観」と、「重要度」の二つ。ポイントは「緊急度」ではなく「重要度」で色分けすること。

著者によると「抽象化」こそが人間に与えられた最も重要な思考機能であり、最大の武器ということである。
抽象化とは「本質を考える」こと。
人間は「抽象化」によって、より効率的に生きたり、多くの発明を生み出したりなど、文明を進化させてきている。「抽象化」は発明の母なのだ。
ただ、抽象化を行う意識がついても、自身に切羽詰った問題意識、すなわち転用すべき他の具体課題がないと、単なるゲームで終わってしまうので注意が必要。

抽象化の際は、「他の具体にも当てはめて転用すると、同等以上の効果を得られる」ということが大前提。
ゆえに、「これらの事象をまとめて◯◯と呼ぼう」とWhat型で言語化能力を身につけていくことも当然重要だが、できれば、他の事象への転用可能性の高い(=転用した際の価値が相対的に大きい)How型とWhy型の抽象化を意識することが重要。
それには、あらゆる事象に対して「どんな(特徴)?」「なぜ(理由)?」と問うことを癖にしていくことが重要。
そこからの気づきを他に転用する生産性の高い抽象化こそが、知的生産メモの本質。

前田式のメモ術ではノートを見開きで使い、あえて「抽象化」「転用」の余白を大きく取ることで、必然的にその「抽象化」「転用」の部分を埋めさせようというものがある。
よくシャワーの時や寝る前にアイデアを思いつくことがあるが、あれは「脳内の比率をアウトプット側に無理やり寄せているから」。
ノートの使い方も、あえて余白にアウトプットさせるよう脳に促すことで、知的生産に資するメモになるという理屈だ。

モチベーションの2類型(トップダウン型、ボトムアップ型)の話や、自己分析を行うための「ライフチャート」のやり方など、他にも抽象度の高い示唆とそれから導き出されるハウツーが述べられていて非常にためになるメモ愛に富んだ本であった。

2019年1月6日日曜日

『お金を増やす一番知的なやり方』

自分自身の利益を守るため、自分が自分の投資マネジャーになるための情報提供を目的とした本。

出費を抑える、できる限り分散する、逆張りで行く。そして、 理解できない金融商品は買買わない。
効率的市場仮説、主観的期待効用理論、資本資産評価モデル(CAPM)といったアカデミックな理論は、理解しておけば武器にはなるが、真に受けすぎてはいけない。

まとめてしまうと教えはこんなところだが、金融のプロならではの陥りがちなバイアスの説明から、素人個人投資家ならではの強みまでウィットに富んだ語り口で学ぶことができる。


<世界三大基金>

2015年時点で世界の3本指に入る大手基金
◆ノルウェー政府の基金(資産規模約9000億ドル)
 →運用はノルウェー国中央銀行の1部門、ノルウェー銀行投資運用部門(NBIM)
◆オランダの年金基金ABP(4000億ドル)
◆米カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)
これらの世界的投資家の平均を手本とする場合、投資配分は株式が51%、債券が35%、不動産が7%で、残りの7%は手元資金あるいはその他の用途にとっておくことになる。

<効率的市場仮説>

狭義の中にも3つの副次的な解釈がある。
・ウィーク型:過去の価格変動は、将来の価格変動について何の情報も伝えていない。
・セミストロング型:証券に関する公開情報は全て、価格に織り込み済みである。
・ストロング型:証券について知り売る情報は全て、価格に織り込み済みである。

<価値の考え方>

・資産の価値とは、誰かがそれを得るのに支払いたいと思う額である。:時価会計原則
・資産の価値とは、それが尚らに渡って生み出すキャッシュである。:ファンダメンタル・バリュー原則

時価会計主義とファンダメンタル・バリューという、資産価値評価の2大原則を和解させるシンプルな考え方。
市場価格がファンダメンタル・バリューを上回っている場合、賢明なる投資家は市場価格で売って、別の投資先を探せば良い。
市場価格がファンダメンタル・バリューを下回った時には、保有し続けて定期的に入ってくるキャッシュを享受すれば良い。
この自由さこそが、賢明なる投資家の直接的なアドバンテージである。


<ファンダメンタル・バリュー原則>

市場価格は時折、ファンダメンタル・バリューとかけ離れた軌跡を辿ることがあるが、最終的には是正される。
価格は「短期的には正の自己相関」を示す。1日、1週間、1ヶ月という単位で価格を観察してみると、上昇した後はさらに上昇する確率の方が大きい。 短期的なこうした特徴は「モメンタム」と呼ばれる。
価格は「長期的には負の自己相関」を示すことも確認されている。 3年とか5年とか長い期間にわたって価格を観察すると、上昇の後には下落することの方が多く、低迷期の後には好調期が訪れることの方が多い。長期的な相場変動のこうした特徴は「ミーン・リバージョン」と呼ばれる。
ランダム・ウォークモデルは、それと緊密な関係にある効率的市場仮説と同じく、啓発的だが真実ではない。

<リスクと不確実性>

リスクの反対は安心。リスクの意味が曖昧なのは、安心の概念の違いによるところが大きい。安心と確実性を取り違えてはならない。
確実性とは何が起こるかを知っていることだが、その起こることはひょっとして、あまり嬉しくない事態かもしれない。明日処刑されると知っている男性にあるのは確実性であり安心ではない。
もっと一般的な話をすると、志が低ければいくばくかの確実性は得られるが、安心を得られることは滅多にない。やたらと確実性を求める人々は、自らの人生の手綱を手放すことによって、見せかけの確実性を手に入れることが多いが、結局は確実なものなど何もないのを知る。
自分自身で人生や資産運用の手綱を握ることは、不確実性を生むように見えるかもしれないが、必然的に不確実なこの世において、安心を得るための必須条件である。お金に関して言うと、ほとんどの人にとって最も魅力的なゴールは、お金のことを心配しなくて良いだけのお金を持つことだ。
安心とは、ある人が無理のない期待を持っている時、それが叶えられるという強い自信である。100%の自信ではない。なぜならモデルとは違う現実世界にそんなものは存在しないからだ。

リスクと不確実性の違いは、リスクとは 「前例のある未知」(人が知らないとわかっている物事)であり、不確実性とは「前例のない未知」(知らないということさえ分かっていない物事)である。

人は不確実性を前にすると、モデルとは違う道具を使う。たいていの場合、物語を語るのだ。我々は物語を紡ぎ、出来事と期待をその中に織り込んでいく。


<中心傾向の3つの尺度>

統計学者が言うところの、分布の「中心傾向」を計測する方法は3つある。
まず期待値は、平均値(ミーン。平均的な結果)である。
次に中央値(メジアン。代表的な結果)は50パーセンタイルで、これはメジアンより良い結果が出る確率と悪い結果が出る確率が等しいことを意味する。
そして最も確率の高い結果が最頻値(モード。最も確率の高い結果)。
 統計学の訓練を受けたことがない人の中で、「中心傾向」の3つの尺度を慎重に区別する人はほとんどいない。
正規分布を前提にした考え方が人気なのは、そうした区別をしなくて良いことに一因がある。


<投資アドバイザーの宿命>

◆「アクションバイアス」
金融助言の宿命。何か動くことをアドバイスしなければならない。「何もせずにじっと待ちなさい」という助言をもらうために高い手数料を払う人はいない。
◆四半期単位等の短期に成績を判断される。
それ故、短期で結果を出すことに重きが置かれる。
◆アドバイスの結果に関する説明責任がある。
だから、プロはリターンの絶対値よりも、ベンチマークとの相対的リターンに集中しがち。景気によりリターンが多くなっても褒められないし、ベンチマークとともにリターンが減る分には「マーケットが悪かった」と言い訳できる。そうして助言に従い、横並び投資家は、大型で幅広く保有されている株式に重点投資することになる。


<「手堅い投資家」の志向>

プロのアドバイスを受ける「手堅い投資家」(↔︎「賢明なる投資家」)の志向は以下の通り。
◆手堅い投資家が時にリスク、すなわち前例のある未知を過度に避けたがる傾向があるとすれば、不確実性、すなわち前例のない未知については過度に受け入れたがる傾向がある。
◆リスクとリターンはトレードオフの関係にあると信じている。(これもまた、時に啓発的だが往々にして真実ではない格言の一つ)。
トレードオフを前提とすると、「ポートフォリオに留意せよ」原則に注意が行き届かなくなる。個々のリスクを単純に足しても、ポートフォリオのリスクは測れない。
◆手堅い投資家は、リスクとは短期的なリターンの振れ幅だと思っているが、賢明なる投資家のリスク概念は異なる。あなたのリスクとは、あなたの現実的な目標を、あなたが達成できないことである。
◆手堅い投資家は、隙あらば自分で判断するのを避けようとする。


<自己判断個人投資のメリット>

◆相対的なリターンではなく、絶対的なリターンを重視することができる。 (おかげで賢明なる投資家は、市場の心理よりも、ファンダメンタル・バリューの分析に集中できる)
市場のモメンタムを見極めたり予想したりすることによって儲けることは例外的とはいえ可能だ。しかし個人投資家が儲けることはまずない。 賢明なる投資家が、市場を打ち任さないまでも遅れをとらないでいたいと思えば、ファンダメンタル・バリューに注目するほかない。この方法なら四半期単位とかに成績を判断される投資のプロよりも大いに優位に立てる。
◆「動かない」ことができる。投資リターンを高める最も確実は方法は、手数料をなるべく払わないことだ。
今日の賢明なる投資家は、アクセスが難しくて投資機会を奪われる危険より、アクセスが簡単すぎて過剰に売買してしまう危険の方が大きくなっている。
◆個別株のリスクをもっと取ることができる。事前、事後を問わず、決定の言い訳をしなくていいからだ。逆張りをする際にも自分が判断すればそれで実行できる。


<各種格言>
◆「市場というものは、あなたの財布が持ちこたえられるよりも長期にわたって、間違え続けることがある」
ケインズ

◆「市場はしばしば効率的であることを正しく見抜いた彼ら(学者や投資のプロ、企業幹部ら)は、だから市場は常に効率的であるという誤った結論に達した。2つの命題の間には、昼と夜ほどの違いがある」
ウォーレン・バフェット

◆「長期的には、我々は皆死んでいる」
ケインズ

◆「第一流の知性とは、二つの相反する考え方を同時に頭に入れてもなお、頭脳が働くということである」
スコット・フィッツジェラルド

◆「片手のエコノミストを寄越してくれ」
ハリー・トルーマン大統領
※「一方で(on the one hand)、しかし他方では(on the other hand)」というエコノミストたちに業を煮やして発したセリフ。

◆「この世で避けて通れないものはただ二つ。死と税金である」
ベンジャミン・フランクリン
※個人はどちらも避けられない。慈善団体はどちらも避けられる。

◆投資の世界では「今回ばかりは違う」という言葉が最も高くつく、という格言がある。

◆賭博師の古い格言「この部屋の誰がカモなのか分からないなら、カモは多分あなただ」

◆人は自分では制御できないリスクのことばかり心配し、制御できるリスクのことはあまり気にかけない。むべなるかな。だから飛行機に乗るのを怖がる人はこんなに多いが、本当はもっと危ない自動車の運転を怖がる人はずっと少ないのかもしれない。
著者


まずは手堅い投資家から賢明なる投資家(THE INTELLIGENT INVESTOR)を目指すべし、というのも実践的な教えだし、賢明なる”個人投資家”になるノウハウは有益である。
あとは実践か。

2019年1月5日土曜日

『出世する人の英語』

最近、『一流の人が行なっている〜』『成功する人がやっている〜』というタイトルの本が多い。
この本もタイトルだけ読むとあざとい感じを受けるが、ビジネスマン向けにアメリカ人のものの考え方や思考の癖、そしてそれに基づいた言動を分かりやすく書いた本である。

<アメリカ人について>

◯アメリカ人のビジネスエリートはアメリカのことしか知らない。

どちらかというと「世界はアメリカを中心に回っている」という意識を持っているビジネスパーソンが多い。こういった意識が根底にあるからか、アメリカ人エリートは「わざわざ海外に出て、苦労する必要はない。アメリカ国内で州をまたいで広く活躍できるのがエリートの理想の姿」と考えている人が多い。
日本人だと、「グローバルに活躍するビジネスパーソン」と言えば、北米、欧州、アジア、オセアニア、南米など様々な地域で国境をまたいで働くことをイメージする人が多い。
一方アメリカ人のマネジメント層が部下を海外に送るとき、行き先は大抵の場合、イギリスかオーストラリア。「サラブレッドを育てるなら、英語が通じ、文化的にもある程度近い国に行かせよう」という意識がある。
そうやって2年ほど経験を積ませ、「海外のビジネスもわかった」ということにしてしまうわけだ。
アメリカ人と仕事をする時は、グローバルスタンダードを意識するよりも、アメリカならではの「ローカルルール」を意識した方が仕事がスムーズに進む。

◯アメリカ人は、単語を3つ知っていれば、「私は〇〇語ができる」という人達。

良し悪しではなく、このことを頭の片隅に置いておかないと、アメリカ人が自信満々な態度でいる理由が理解できず、不快な思いをしたり、アメリカ人の「それなら私がやれますよ」という言葉を信じて酷い目にあったりということになる。

◯アメリカ人は、自信がなくても「できます」「やります」と言う。

アメリカ人は、組織において上司が「あなたに任せる」と言った以上、「上司は、私がその仕事をやり遂げられると判断した」と考える。自分が本当にその仕事を完遂できるかどうか、最終的に責任を持てるかどうか、と言ったことは眼中にない。
基本的にアメリカ人は、仕事が完遂できなくても「できませんでした」とは言わない。「目標に対して足りない部分はありましたが、できなかったことについては、そこからこんな学びを得ました」などと言うように非常にポジティブに表現する。
日本人からすれば、できそうもないことにチャレンジするアメリカ人は危なっかしく見えることもある。
しかし、このようなアメリカ人のスタンスは、実際にはアメリカ企業が成長していく原動力になっているように思う。少なくとも「できなかったら責任を問われるのではないか」と怯える日本人より、伸び代が大きいことは間違いない。

◯アメリカ人には「ちょっとご挨拶だけ」は通じない。

アメリカ人もアイスブレイクの会話から入るが、本題に入ったら「最も重要な話」からスタートすることが多いのも特徴と言える。
ビジネス全般において、「アメリカは予習型。日本は復習型」。
日本では多くの場合、面談する時は「まずは相手の話を聞き、要望を持ち帰って検討しよう」と考える。これが「復習型」。
一方アメリカでは、事前に「どんな結論を出すのか」を想定し、そのための事前準備をした上で面談に臨む。そして面談の時間をとった以上は、必ず求める結果が出るように話を進める。これが「予習型」。
「予習型」のアメリカ人を相手に、「持ち帰って後で検討すれば良い」と言う「復習型」の態度で面談に臨めば、相手の期待を大きく裏切ることになる。
アメリカ人にとって「会って話す時間を取る」と言うことの価値は非常に高いと考えてほしい。そもそも非常に広大な国土を持つアメリカでは、移動による時間の損失が発生しやすく、「直接会う」ことの重みが違うことも意識したいところ。

◯アメリカ人は、会議の開始時間よりも、終了時間を守ることに厳しい。

一般に、日本では会議の開始時間が理由なく遅刻することは許されないが、会議が長引くのは、さほど珍しいことではない。
一方、アメリカ人は、事前に決めていた時間の範囲で必ず会議を終了する。
彼らにとって時間管理ができていると言うことは、すなわち「決められた時間内に成果や結果を出すこと」。日本人のようにダラダラと会議を続けるようなやり方は「時間管理ができていない」とみなされる。
「決められた時間内に成果や結果を出す」ことを重視するアメリカ人は、他人の時間を大切にすべきだと言う意識も強く持っている。

◯アメリカ人はFair とIntegrityを重んじる。

アメリカ人は「Fairであること」を非常に重視している。日本人が思う以上に、Fairであることには重い意味があるので、この言葉を使うときは十分な配慮が必要。
例えば仕事中に、アメリカ人相手に「あなたはFairではない」と言うのは、相手の人生を丸ごと否定するのに等しいこと。そのような発言をすれば相手から激しく反論されるだけでなく、人間関係にもヒビが入る恐れがある。
日本人は「発注する側」と言うだけで偉そうに振る舞うことがよくある。 もしアメリカ人の前で「自分はお客さんだから」「発注する側だから」と偉そうな態度をとれば、相手からはもちろん、アメリカ人の同僚や上司からも人格を疑われ、Fairでない人という烙印を押されることになりかねない。
同様にアメリカ人にとっての重要性を知っておくべき言葉に”Integrity”がある。
辞書では「高潔」「誠実」「清廉潔白」などと訳され、本来の意味がわかりにくいが、イメージが近いのは「言動が一致している」「一本筋が通っている」といった表現。
アメリカ社会では、組織にとっても個人にとっても、Intgrityは非常に重要。もし「あなたはIntegrityに問題がある」と言うようなことをアメリカ人相手に言ってしまえばおおごとになりかねない。

◯アメリカ人は議論の手法を知っている。

アメリカにおいて子供達はディベートの授業で、自分の意見を言いたくて手を挙げているわけではない。
アメリカの子供達は、たとえ自分の意見がまとまっていなくても、とりあえず手を挙げる。指されたら、それまでに出ていた意見に対してまず「反対である」ということを述べ、その理由を添える。
子供達がこのような行動を取るのは、議論においてイニシアチブを取ることが最優先だからだ。とにかく手を挙げ、発言することで議論を引っ張っていく役割を担うことこそ重要なのだ。
アメリカ人のこのような態度は、子供の頃からあらゆる場面で形成されており、企業の中で行われる会議においても同様の傾向が見られる。「まず手を挙げて意見を言う」と言う反射神経が鍛え上げられているのだ。
アメリカ人との会議に参加し、発言の機会を一度も得られなければ、あなたはその場にいなかったのと同然の扱いを受けることになる。
ディベートで意見を言うことは、「その場にいる人たちが知恵を出し合って、より良い結論に到達する過程に貢献すること」なのだ。
このようなアメリカ人の態度は、ビジネスシーンでも見られる。どんなに激しく交渉でやり合っても、最後は握手で終わると言う精神が育まれているのだ。
また、会議や討論の場では、イニシアチブを取ることだけでなく、「より良い結論を導くために貢献しているかどうか」が重視される。
このことが分かっていないと、激しい交渉の後に悪い空気を引きずってしまったり、議論を建設的な方向に持っていくことができず、信頼を損ねたりする可能性があるので注意が必要。


<アメリカ人との仕事の仕方>

◯交渉はWin-Winになるよう「お土産」を用意する。

譲れない一線を守りつつ、相手が「何かを勝ち取った」と思えるよう配慮することは、交渉の重要なポイント。特に相手がわざわざアメリカから日本に来ているような場面では、「手ぶら」では帰れないはず。
日本でよくある「泣き落とし」はアメリカ人には通じない。ストレスが溜まるだけで、全く結果に繋がらないアプローチ法。

◯アメリカ人にとって「会議は物事を決定するための場」。

であるので、原則として会議で決まったことは覆せない。これは日本人が想像する以上に、明確で厳格なルール。
もし会議中に「これはもしや・・」と思ったら、少なくともその場で考えられる理由を添えて、「データがないので今決めるべきではない」「今日のところは仮決裁にとどめ、結論は保留にしてほしい」といった意見を表明すべき。

◯アメリカ人にとって「決められたタイムラインを守ること」は非常に重要。

プロジェクトのタイムラインは絶対であり、よほどのことがない限りそれが覆ることはない。「完成度を高めるために、多少遅らせることがあっても」という発想がそもそも皆無。
アメリカ人は会議をダラダラやることはない。事前に議題を決め、それに関する結論が出たら会議は終わり。会議の場で「ついでにこの件も・・」などと議題が追加されると言ったことも滅多に起こらない。そして一度決めたことはよほどのことがない限り変更しない。
こう言ったアメリカ人の仕事のやり方は、すべて「事前に決めた期限までに、決めた通りの仕事を終える」という考え方がベースにある。
「締切厳守」という考え方を日本人とは比較にならないほど強く持っている。
この「締切厳守」は良し悪しで、アメリカ人はタイムラインを重視するあまり、クオリティの低下に寛容になりがちだという見方もできる。日本人はタイムラインに対してはアメリカ人に対し柔軟である一方、クオリティの維持・向上へのこだわりは強いという言い方もできる。


<英語力アップの方法>

そういったアメリカ人の特性を理解しつつ、どうしたら英語力がアップするか。

◯英語を話す時だけ別人になって「キャラ替え」する。

英語を話す時にアメリカ人と同じ調子で話したいなら、声量をアップしてお腹から発生すること、表情を豊かにすることがポイントとなる。
細かい発音の正確性にはこだわらなくて良いので、イントネーションもはっきりつけるようにする。
そして自信満々な態度(キャラクター)となること。

◯「英語ぺらぺらになる」という幻想を捨てる。

英語ペラペラに見えるビジネスパーソンでも映画の6〜7割しか分かっていない。そもそも映画やドラマを英語で理解するのは非常に難しい。映画やドラマはその国の文化的背景への理解がないと内容についていけないことがあるから。

◯ポジティブな雑談ネタを考えておく。

◯できる上司や外国人を真似るのが近道。

◯会社のアニュアルレポートの英語版を音読する。

特に企業トップから株主へのメッセージの部分がお勧め。

◯リスニングは1つの教材を聴き倒す。



もちろんアメリカ人が全員当てはまるわけではないのだろうが、前半のビジネスをするにあたっての「アメリカ人のものの考え方」というあたりはヒューリスティック的に非常に面白かった。
参考にしながら語学研鑽に努めたい。

2019年1月3日木曜日

『サバイバル英会話』

昨年の11月にアメリカ出張があった。
英語が話せるメンバーと一緒に行ったこともあり、自分の英語力について「ちょっとまずいぞ」と思うようになった。
と言うことで、まずはどのように勉強するかも含めて色々英語学習の本を読んでみた。
その第1弾。

この本は4つのパートに分かれて書かれているので、それにならって興味深かった点を記載。

1.話せるまでの「地図」を持つ

・効率よく英会話技術を上達させるには、「どこで使う英会話」なのかをはっきりさせるべき。
これは他の本でも書かれていることなのだが、マルチで英語力を伸ばそうとするのは効率を考えるとよろしくないらしい。ピンポイントで業務上使う、こう言うことをやっていきたい、ということを絞るのが大切らしい。
・英会話の雑談は「準備」が9割。
英語で自己紹介ができるようにしておくと言うのは雑談するにしても必須とのこと。
・言われた瞬間に「なるほど!」と言うスピードで反応できる力は、音読することで身につく。
これは、最近i-Phoneのsiriの言語を英語にして話しかけたりしている。それにより発音がどのように認識されるのか(とは言っても相手はsiriだけど)、ちゃんとsiriは聞き取った内容を英文にしてくれるので、「この単語がちゃんと発音できていない」てなことまで分かって面白い。また、siriの反応も時々ひねった回答をしてくるのでそれも楽しみ。
・言ったことが通じないのは、発音が「きれいか否か」ではなく、アクセントの知識不足によるものが多い。
アメリカでは、ネイティブでなくても英語を話していて、言っては申し訳ないがきれいな発音でない人も多い。そう言った人たちでも英語の話していて、ちゃんと相手に通じて、議論を行なっている。相手に通じるかどうかは、発音の美しさではなく、正確さ(すなわち知識の部分)と言うのは言われてみて納得。
・英語の勉強時には、常にスピーキングを意識する。覚えた英語をそらで言えるかどうかチャレンジしてみる。
インプットの無駄が減り、「何度も繰り返す」重要性がわかるらしい。
・英語の勉強を続ける仕組みを義務化する。
これは業務で必要になれば、当然のごとく必要となるが、そうでなくても英会話学校に通うなどして続ける仕組みを作ると言うこと。

2.マインドセットを知る

・第一の鉄則「黙っていてはいけない」
分からないなら、分からないなりに何かを言う。
・ある程度理解して回答できたら、How about you? と相手に話のバトンを渡す。
・第二の鉄則「雑談のパターンを知っておく」
何か特別なことを言う必要はない。雑談のパターンを覚えて活用すると良い。
挨拶→雑談→By the way, my name is ◯◯. And you are..
と言うのは相手の名前を自然に尋ねるパターン。
・第三の鉄則「おばちゃん思考になる」
話しかける、褒める、余計なことを言う(付け足す)と言うおばちゃん思考で会話を行う。
確かにアメリカ映画を見ると、登場人物がどうでも良い会話を交わすことが多い。それが伏線になっているケースもなくはないが、大抵は(映画における)相手との関係を観賞者に示すぐらいにしか使われてない。アメリカでは普通に会話を広げるのが普通のマインドセットだと言うことだ。
・雑談で気をつけること
①いきなりWhat’s your name? は失礼。
先ほどの例のように、雑談の後に、By the way, where are you from?ならあり。
日本に来た理由を聞くのもwhyを使うと直接的なので、What brought you here? の方が柔らかくてベター。
②foreigner という単語は避ける。排他的な感じを受けるから。言葉とするとvisitor 、people from other countries といったあたりで言い換える。
③何語を話すか、何か国語を話すかはセンシティブな話題。日本人だと多言語を話せることは素晴らしいと思いがちだが、色々な事情から多言語を話せるようになったケースも多々ある。
How many languages can you speak? は聞かない方が無難。
・雑談における鉄板ネタ
①週末の話題 What are you going to do over the weekend? What did you do over the weekend? はHow are you? と同じくらいよく使われると思うべし。
②出身地・職業
③趣味

3.テクニックを使いこなす

・How are you? のバリエーション
・聞かれて答えたら必ず "And you?"
・相づちを攻略する
・Yes No の色々な表現
など色々なフレーズが披露されるのだが、参考になったのは
・聞き取れなかった場合の、クマのプーさんの会話でも使われた「who・what 代入法」
・「単語が出てこない」時の切り抜け方
などが参考になった。

4.「見栄え」を整える

英語らしく見せるための+αということで
リズムを生むために言葉を足す手法であったり、相手の名前を盛り込む手法など。
また、英会話レッスンの効果的な受け方ということで、目的を設定して質問しまくるということが挙げられていた。
また、当然なのだが、単語はレッスン前に独学で覚えておくこと、というのもうなずけた。

少しビジネスより、一般会話に寄っている感じがしないでもないが、次回海外出張時には試してみたいフレーズ満載。学んだことを活用していきたい。


今年の抱負

毎年正月に考えて記載するのが恒例となっている一字漢字での抱負。
一昨年の卦(占い)をやったところ、「水雷屯」(すいらいちゅん)と言う卦が二度も立て続けに出た。

ちなみにネットによると、「水雷屯」の意味は「生みの苦しみに耐え忍ぶ時」と言うことらしく、詳細は以下の通り。
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「屯」は伸び悩むこと。「水雷屯の時、大いに通じる。貞正であれば良い。今は進んではならない。諸侯にやってもらうのが良い」。この 卦は、早春に厚く積もった雪(水)の下から若芽(雷)が必死に出ようとしているので すが、雪の重圧にさえぎられて立ち往生している姿です。すなわち、タイミングが悪いのです。水雷屯の時、もし、やるべきことがあれば昔、王が地方に諸侯を 置いたように、自ら手を下さずに人にやってもらえとあります。雪解けを待って、動かずじっと我慢の時です。 ◎三大難卦に次ぐ難卦。
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三大難卦に次ぐ難卦が二度も立て続けにでた。
確かに占いをした一年前頃は、非常に厳しい時期で、正直公私ともに八方ふさがりに近い状態だった。
そんなこともあって昨年は「忍」と言う一文字を選んだ。

孫子の兵法に「四路五動」(しろごどう)と言うものがある。
路の交差点には4つの道があり、とるべき(進むべき)道も4つあるわけだが、とるべき戦略とすると実は5つあって、「動かない」と言うのも一つの大きな戦略である、と言う教え
である。
この言葉は結構好きで、そう言った意味も込めて昨年は「忍」の字を選んだ。

さて、今年であるが、水雷屯の卦の解説になぞらえて表現すると、厚く積もった雪も春が近づき大分薄くなってきている。時期は来つつある。今こそ動く時、と言う意味を込めて

「動」

と言うのを今年の抱負としたい。