2019年1月27日日曜日

『メモの魔力』

自分でも相当のメモ魔だと思っていたが、遥かに上をいくメモ魔の前田裕二氏の『「メモ教」教義書』とも言える本。

著者によると、これからのAI時代に必要なのは「知的生産のためのメモ」
メモは情報伝達ではなく、知的生産に使ってこそ本領が発揮される。

メモによって次の5つのスキルが鍛えられる。
①アイデアを生み出せるようになる(知的生産性の向上)
②情報を「素通り」しなくなる(情報獲得の伝導率向上)
③相手の「より深い話」を聞き出せる(傾聴能力の向上)
④話の骨組みがわかるようになる(構造化能力の向上)
⑤曖昧な感覚や概念を言葉にできるようになる(言語化能力の向上)

知的生産のためのメモ術においては、「ファクト」→「抽象化」→「転用」というフレームワークを使う。
①インプットした「ファクト」をもとに、
②気づきを応用可能な粒度に「抽象化」し、
③自らのアクションに「転用」する。
具体事例→抽象化→具体化というチャンクアップ、チャンクダウンを一連のメモで行うということだ。

記入する色も分類をして後で見てわかりやすくする。
その際、色分けの軸は「主観or客観」と、「重要度」の二つ。ポイントは「緊急度」ではなく「重要度」で色分けすること。

著者によると「抽象化」こそが人間に与えられた最も重要な思考機能であり、最大の武器ということである。
抽象化とは「本質を考える」こと。
人間は「抽象化」によって、より効率的に生きたり、多くの発明を生み出したりなど、文明を進化させてきている。「抽象化」は発明の母なのだ。
ただ、抽象化を行う意識がついても、自身に切羽詰った問題意識、すなわち転用すべき他の具体課題がないと、単なるゲームで終わってしまうので注意が必要。

抽象化の際は、「他の具体にも当てはめて転用すると、同等以上の効果を得られる」ということが大前提。
ゆえに、「これらの事象をまとめて◯◯と呼ぼう」とWhat型で言語化能力を身につけていくことも当然重要だが、できれば、他の事象への転用可能性の高い(=転用した際の価値が相対的に大きい)How型とWhy型の抽象化を意識することが重要。
それには、あらゆる事象に対して「どんな(特徴)?」「なぜ(理由)?」と問うことを癖にしていくことが重要。
そこからの気づきを他に転用する生産性の高い抽象化こそが、知的生産メモの本質。

前田式のメモ術ではノートを見開きで使い、あえて「抽象化」「転用」の余白を大きく取ることで、必然的にその「抽象化」「転用」の部分を埋めさせようというものがある。
よくシャワーの時や寝る前にアイデアを思いつくことがあるが、あれは「脳内の比率をアウトプット側に無理やり寄せているから」。
ノートの使い方も、あえて余白にアウトプットさせるよう脳に促すことで、知的生産に資するメモになるという理屈だ。

モチベーションの2類型(トップダウン型、ボトムアップ型)の話や、自己分析を行うための「ライフチャート」のやり方など、他にも抽象度の高い示唆とそれから導き出されるハウツーが述べられていて非常にためになるメモ愛に富んだ本であった。

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