自分自身の利益を守るため、自分が自分の投資マネジャーになるための情報提供を目的とした本。
出費を抑える、できる限り分散する、逆張りで行く。そして、 理解できない金融商品は買買わない。
効率的市場仮説、主観的期待効用理論、資本資産評価モデル(CAPM)といったアカデミックな理論は、理解しておけば武器にはなるが、真に受けすぎてはいけない。
まとめてしまうと教えはこんなところだが、金融のプロならではの陥りがちなバイアスの説明から、素人個人投資家ならではの強みまでウィットに富んだ語り口で学ぶことができる。
◆ノルウェー政府の基金(資産規模約9000億ドル)
→運用はノルウェー国中央銀行の1部門、ノルウェー銀行投資運用部門(NBIM)
◆オランダの年金基金ABP(4000億ドル)
◆米カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)
これらの世界的投資家の平均を手本とする場合、投資配分は株式が51%、債券が35%、不動産が7%で、残りの7%は手元資金あるいはその他の用途にとっておくことになる。
・ウィーク型:過去の価格変動は、将来の価格変動について何の情報も伝えていない。
・セミストロング型:証券に関する公開情報は全て、価格に織り込み済みである。
・ストロング型:証券について知り売る情報は全て、価格に織り込み済みである。
・資産の価値とは、それが尚らに渡って生み出すキャッシュである。:ファンダメンタル・バリュー原則
時価会計主義とファンダメンタル・バリューという、資産価値評価の2大原則を和解させるシンプルな考え方。
市場価格がファンダメンタル・バリューを上回っている場合、賢明なる投資家は市場価格で売って、別の投資先を探せば良い。
市場価格がファンダメンタル・バリューを下回った時には、保有し続けて定期的に入ってくるキャッシュを享受すれば良い。
この自由さこそが、賢明なる投資家の直接的なアドバンテージである。
価格は「短期的には正の自己相関」を示す。1日、1週間、1ヶ月という単位で価格を観察してみると、上昇した後はさらに上昇する確率の方が大きい。 短期的なこうした特徴は「モメンタム」と呼ばれる。
価格は「長期的には負の自己相関」を示すことも確認されている。 3年とか5年とか長い期間にわたって価格を観察すると、上昇の後には下落することの方が多く、低迷期の後には好調期が訪れることの方が多い。長期的な相場変動のこうした特徴は「ミーン・リバージョン」と呼ばれる。
ランダム・ウォークモデルは、それと緊密な関係にある効率的市場仮説と同じく、啓発的だが真実ではない。
確実性とは何が起こるかを知っていることだが、その起こることはひょっとして、あまり嬉しくない事態かもしれない。明日処刑されると知っている男性にあるのは確実性であり安心ではない。
もっと一般的な話をすると、志が低ければいくばくかの確実性は得られるが、安心を得られることは滅多にない。やたらと確実性を求める人々は、自らの人生の手綱を手放すことによって、見せかけの確実性を手に入れることが多いが、結局は確実なものなど何もないのを知る。
自分自身で人生や資産運用の手綱を握ることは、不確実性を生むように見えるかもしれないが、必然的に不確実なこの世において、安心を得るための必須条件である。お金に関して言うと、ほとんどの人にとって最も魅力的なゴールは、お金のことを心配しなくて良いだけのお金を持つことだ。
安心とは、ある人が無理のない期待を持っている時、それが叶えられるという強い自信である。100%の自信ではない。なぜならモデルとは違う現実世界にそんなものは存在しないからだ。
リスクと不確実性の違いは、リスクとは 「前例のある未知」(人が知らないとわかっている物事)であり、不確実性とは「前例のない未知」(知らないということさえ分かっていない物事)である。
人は不確実性を前にすると、モデルとは違う道具を使う。たいていの場合、物語を語るのだ。我々は物語を紡ぎ、出来事と期待をその中に織り込んでいく。
まず期待値は、平均値(ミーン。平均的な結果)である。
次に中央値(メジアン。代表的な結果)は50パーセンタイルで、これはメジアンより良い結果が出る確率と悪い結果が出る確率が等しいことを意味する。
そして最も確率の高い結果が最頻値(モード。最も確率の高い結果)。
統計学の訓練を受けたことがない人の中で、「中心傾向」の3つの尺度を慎重に区別する人はほとんどいない。
正規分布を前提にした考え方が人気なのは、そうした区別をしなくて良いことに一因がある。
金融助言の宿命。何か動くことをアドバイスしなければならない。「何もせずにじっと待ちなさい」という助言をもらうために高い手数料を払う人はいない。
◆四半期単位等の短期に成績を判断される。
それ故、短期で結果を出すことに重きが置かれる。
◆アドバイスの結果に関する説明責任がある。
だから、プロはリターンの絶対値よりも、ベンチマークとの相対的リターンに集中しがち。景気によりリターンが多くなっても褒められないし、ベンチマークとともにリターンが減る分には「マーケットが悪かった」と言い訳できる。そうして助言に従い、横並び投資家は、大型で幅広く保有されている株式に重点投資することになる。
◆手堅い投資家が時にリスク、すなわち前例のある未知を過度に避けたがる傾向があるとすれば、不確実性、すなわち前例のない未知については過度に受け入れたがる傾向がある。
◆リスクとリターンはトレードオフの関係にあると信じている。(これもまた、時に啓発的だが往々にして真実ではない格言の一つ)。
トレードオフを前提とすると、「ポートフォリオに留意せよ」原則に注意が行き届かなくなる。個々のリスクを単純に足しても、ポートフォリオのリスクは測れない。
◆手堅い投資家は、リスクとは短期的なリターンの振れ幅だと思っているが、賢明なる投資家のリスク概念は異なる。あなたのリスクとは、あなたの現実的な目標を、あなたが達成できないことである。
◆手堅い投資家は、隙あらば自分で判断するのを避けようとする。
市場のモメンタムを見極めたり予想したりすることによって儲けることは例外的とはいえ可能だ。しかし個人投資家が儲けることはまずない。 賢明なる投資家が、市場を打ち任さないまでも遅れをとらないでいたいと思えば、ファンダメンタル・バリューに注目するほかない。この方法なら四半期単位とかに成績を判断される投資のプロよりも大いに優位に立てる。
◆「動かない」ことができる。投資リターンを高める最も確実は方法は、手数料をなるべく払わないことだ。
今日の賢明なる投資家は、アクセスが難しくて投資機会を奪われる危険より、アクセスが簡単すぎて過剰に売買してしまう危険の方が大きくなっている。
◆個別株のリスクをもっと取ることができる。事前、事後を問わず、決定の言い訳をしなくていいからだ。逆張りをする際にも自分が判断すればそれで実行できる。
<各種格言>
◆「市場というものは、あなたの財布が持ちこたえられるよりも長期にわたって、間違え続けることがある」
ケインズ
◆「市場はしばしば効率的であることを正しく見抜いた彼ら(学者や投資のプロ、企業幹部ら)は、だから市場は常に効率的であるという誤った結論に達した。2つの命題の間には、昼と夜ほどの違いがある」
ウォーレン・バフェット
◆「長期的には、我々は皆死んでいる」
ケインズ
◆「第一流の知性とは、二つの相反する考え方を同時に頭に入れてもなお、頭脳が働くということである」
スコット・フィッツジェラルド
◆「片手のエコノミストを寄越してくれ」
ハリー・トルーマン大統領
※「一方で(on the one hand)、しかし他方では(on the other hand)」というエコノミストたちに業を煮やして発したセリフ。
◆「この世で避けて通れないものはただ二つ。死と税金である」
ベンジャミン・フランクリン
※個人はどちらも避けられない。慈善団体はどちらも避けられる。
◆投資の世界では「今回ばかりは違う」という言葉が最も高くつく、という格言がある。
◆賭博師の古い格言「この部屋の誰がカモなのか分からないなら、カモは多分あなただ」
◆人は自分では制御できないリスクのことばかり心配し、制御できるリスクのことはあまり気にかけない。むべなるかな。だから飛行機に乗るのを怖がる人はこんなに多いが、本当はもっと危ない自動車の運転を怖がる人はずっと少ないのかもしれない。
著者
まずは手堅い投資家から賢明なる投資家(THE INTELLIGENT INVESTOR)を目指すべし、というのも実践的な教えだし、賢明なる”個人投資家”になるノウハウは有益である。
あとは実践か。
出費を抑える、できる限り分散する、逆張りで行く。そして、 理解できない金融商品は買買わない。
効率的市場仮説、主観的期待効用理論、資本資産評価モデル(CAPM)といったアカデミックな理論は、理解しておけば武器にはなるが、真に受けすぎてはいけない。
まとめてしまうと教えはこんなところだが、金融のプロならではの陥りがちなバイアスの説明から、素人個人投資家ならではの強みまでウィットに富んだ語り口で学ぶことができる。
<世界三大基金>
2015年時点で世界の3本指に入る大手基金◆ノルウェー政府の基金(資産規模約9000億ドル)
→運用はノルウェー国中央銀行の1部門、ノルウェー銀行投資運用部門(NBIM)
◆オランダの年金基金ABP(4000億ドル)
◆米カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)
これらの世界的投資家の平均を手本とする場合、投資配分は株式が51%、債券が35%、不動産が7%で、残りの7%は手元資金あるいはその他の用途にとっておくことになる。
<効率的市場仮説>
狭義の中にも3つの副次的な解釈がある。・ウィーク型:過去の価格変動は、将来の価格変動について何の情報も伝えていない。
・セミストロング型:証券に関する公開情報は全て、価格に織り込み済みである。
・ストロング型:証券について知り売る情報は全て、価格に織り込み済みである。
<価値の考え方>
・資産の価値とは、誰かがそれを得るのに支払いたいと思う額である。:時価会計原則・資産の価値とは、それが尚らに渡って生み出すキャッシュである。:ファンダメンタル・バリュー原則
時価会計主義とファンダメンタル・バリューという、資産価値評価の2大原則を和解させるシンプルな考え方。
市場価格がファンダメンタル・バリューを上回っている場合、賢明なる投資家は市場価格で売って、別の投資先を探せば良い。
市場価格がファンダメンタル・バリューを下回った時には、保有し続けて定期的に入ってくるキャッシュを享受すれば良い。
この自由さこそが、賢明なる投資家の直接的なアドバンテージである。
<ファンダメンタル・バリュー原則>
市場価格は時折、ファンダメンタル・バリューとかけ離れた軌跡を辿ることがあるが、最終的には是正される。価格は「短期的には正の自己相関」を示す。1日、1週間、1ヶ月という単位で価格を観察してみると、上昇した後はさらに上昇する確率の方が大きい。 短期的なこうした特徴は「モメンタム」と呼ばれる。
価格は「長期的には負の自己相関」を示すことも確認されている。 3年とか5年とか長い期間にわたって価格を観察すると、上昇の後には下落することの方が多く、低迷期の後には好調期が訪れることの方が多い。長期的な相場変動のこうした特徴は「ミーン・リバージョン」と呼ばれる。
ランダム・ウォークモデルは、それと緊密な関係にある効率的市場仮説と同じく、啓発的だが真実ではない。
<リスクと不確実性>
リスクの反対は安心。リスクの意味が曖昧なのは、安心の概念の違いによるところが大きい。安心と確実性を取り違えてはならない。確実性とは何が起こるかを知っていることだが、その起こることはひょっとして、あまり嬉しくない事態かもしれない。明日処刑されると知っている男性にあるのは確実性であり安心ではない。
もっと一般的な話をすると、志が低ければいくばくかの確実性は得られるが、安心を得られることは滅多にない。やたらと確実性を求める人々は、自らの人生の手綱を手放すことによって、見せかけの確実性を手に入れることが多いが、結局は確実なものなど何もないのを知る。
自分自身で人生や資産運用の手綱を握ることは、不確実性を生むように見えるかもしれないが、必然的に不確実なこの世において、安心を得るための必須条件である。お金に関して言うと、ほとんどの人にとって最も魅力的なゴールは、お金のことを心配しなくて良いだけのお金を持つことだ。
安心とは、ある人が無理のない期待を持っている時、それが叶えられるという強い自信である。100%の自信ではない。なぜならモデルとは違う現実世界にそんなものは存在しないからだ。
リスクと不確実性の違いは、リスクとは 「前例のある未知」(人が知らないとわかっている物事)であり、不確実性とは「前例のない未知」(知らないということさえ分かっていない物事)である。
人は不確実性を前にすると、モデルとは違う道具を使う。たいていの場合、物語を語るのだ。我々は物語を紡ぎ、出来事と期待をその中に織り込んでいく。
<中心傾向の3つの尺度>
統計学者が言うところの、分布の「中心傾向」を計測する方法は3つある。まず期待値は、平均値(ミーン。平均的な結果)である。
次に中央値(メジアン。代表的な結果)は50パーセンタイルで、これはメジアンより良い結果が出る確率と悪い結果が出る確率が等しいことを意味する。
そして最も確率の高い結果が最頻値(モード。最も確率の高い結果)。
統計学の訓練を受けたことがない人の中で、「中心傾向」の3つの尺度を慎重に区別する人はほとんどいない。
正規分布を前提にした考え方が人気なのは、そうした区別をしなくて良いことに一因がある。
<投資アドバイザーの宿命>
◆「アクションバイアス」金融助言の宿命。何か動くことをアドバイスしなければならない。「何もせずにじっと待ちなさい」という助言をもらうために高い手数料を払う人はいない。
◆四半期単位等の短期に成績を判断される。
それ故、短期で結果を出すことに重きが置かれる。
◆アドバイスの結果に関する説明責任がある。
だから、プロはリターンの絶対値よりも、ベンチマークとの相対的リターンに集中しがち。景気によりリターンが多くなっても褒められないし、ベンチマークとともにリターンが減る分には「マーケットが悪かった」と言い訳できる。そうして助言に従い、横並び投資家は、大型で幅広く保有されている株式に重点投資することになる。
<「手堅い投資家」の志向>
プロのアドバイスを受ける「手堅い投資家」(↔︎「賢明なる投資家」)の志向は以下の通り。◆手堅い投資家が時にリスク、すなわち前例のある未知を過度に避けたがる傾向があるとすれば、不確実性、すなわち前例のない未知については過度に受け入れたがる傾向がある。
◆リスクとリターンはトレードオフの関係にあると信じている。(これもまた、時に啓発的だが往々にして真実ではない格言の一つ)。
トレードオフを前提とすると、「ポートフォリオに留意せよ」原則に注意が行き届かなくなる。個々のリスクを単純に足しても、ポートフォリオのリスクは測れない。
◆手堅い投資家は、リスクとは短期的なリターンの振れ幅だと思っているが、賢明なる投資家のリスク概念は異なる。あなたのリスクとは、あなたの現実的な目標を、あなたが達成できないことである。
◆手堅い投資家は、隙あらば自分で判断するのを避けようとする。
<自己判断個人投資のメリット>
◆相対的なリターンではなく、絶対的なリターンを重視することができる。 (おかげで賢明なる投資家は、市場の心理よりも、ファンダメンタル・バリューの分析に集中できる)市場のモメンタムを見極めたり予想したりすることによって儲けることは例外的とはいえ可能だ。しかし個人投資家が儲けることはまずない。 賢明なる投資家が、市場を打ち任さないまでも遅れをとらないでいたいと思えば、ファンダメンタル・バリューに注目するほかない。この方法なら四半期単位とかに成績を判断される投資のプロよりも大いに優位に立てる。
◆「動かない」ことができる。投資リターンを高める最も確実は方法は、手数料をなるべく払わないことだ。
今日の賢明なる投資家は、アクセスが難しくて投資機会を奪われる危険より、アクセスが簡単すぎて過剰に売買してしまう危険の方が大きくなっている。
◆個別株のリスクをもっと取ることができる。事前、事後を問わず、決定の言い訳をしなくていいからだ。逆張りをする際にも自分が判断すればそれで実行できる。
<各種格言>
◆「市場というものは、あなたの財布が持ちこたえられるよりも長期にわたって、間違え続けることがある」
ケインズ
◆「市場はしばしば効率的であることを正しく見抜いた彼ら(学者や投資のプロ、企業幹部ら)は、だから市場は常に効率的であるという誤った結論に達した。2つの命題の間には、昼と夜ほどの違いがある」
ウォーレン・バフェット
◆「長期的には、我々は皆死んでいる」
ケインズ
◆「第一流の知性とは、二つの相反する考え方を同時に頭に入れてもなお、頭脳が働くということである」
スコット・フィッツジェラルド
◆「片手のエコノミストを寄越してくれ」
ハリー・トルーマン大統領
※「一方で(on the one hand)、しかし他方では(on the other hand)」というエコノミストたちに業を煮やして発したセリフ。
◆「この世で避けて通れないものはただ二つ。死と税金である」
ベンジャミン・フランクリン
※個人はどちらも避けられない。慈善団体はどちらも避けられる。
◆投資の世界では「今回ばかりは違う」という言葉が最も高くつく、という格言がある。
◆賭博師の古い格言「この部屋の誰がカモなのか分からないなら、カモは多分あなただ」
◆人は自分では制御できないリスクのことばかり心配し、制御できるリスクのことはあまり気にかけない。むべなるかな。だから飛行機に乗るのを怖がる人はこんなに多いが、本当はもっと危ない自動車の運転を怖がる人はずっと少ないのかもしれない。
著者
まずは手堅い投資家から賢明なる投資家(THE INTELLIGENT INVESTOR)を目指すべし、というのも実践的な教えだし、賢明なる”個人投資家”になるノウハウは有益である。
あとは実践か。
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