2011年7月24日日曜日

『組織で使える論理思考力』

もう70歳超と思われるKT法の大家、飯久保廣嗣氏の著作。
正直、分かり易い書き方の本ではない(厳しく表現すると、もっと平易に書ける気がする)が、内容については、ハッとさせられるモノが多数あった。

日本企業において、多くの場合、上位メンバーの(えてして「思いつき」の)意見・アイデアが、ある種の「制約」として設定される。
日本の組織においては、権限を委嘱されたといっても、フリーハンドの権限を保有しているわけではない。委譲された権限はあくまで「貸与」されたものでしかなく、上位者の意向によっては、いつでも取り上げられることが可能と言っても過言ではない。
合理的な組織人は、権限を行使するにあたって、随時上位者に報告し、意見を求める。このとき、上位者から与えられた意見がたとえ「示唆」のレベルであっても、概ね「命令」として受け取られる。

日本の組織に見られる状況故、ラショナル思考(合理的論理的思考)については日本では役に立たないとされるケースが多かった。
それに対して、新KKD(経験、勘、度胸)も含めた新しい論理思考力について述べたのが本書である。

日本は目に見える製品の製造コストの徹底的な削減によって競争力をつけてきた。
しかし今日では、目に見えない思考業務のコスト、すなわち「意思決定のコスト」を如何に削減するかが最重要課題となっている。
会議はその目的に応じて「報告」「連絡」「協議」の3つに分類される。
「協議」の会議の効率性が、組織の「意思決定」コストにかかわってくる。

会議の議題が「現象の原因究明と対策(過去)」なのか、それとも「課題設定と優先順位(現在)」なのか、もしくは「意思決定とリスク対応(将来)」なのかを判断することが重要。
次の三つのポイントが大切
①協議するテーマを明確にし、それに重点思考すること
どの程度まで具体化するかの判断
②結論に至る考え方のプロセスを確立し共有すること
会議をエンジニアリングすること
③会議中の質問の重要性について、参加者が高い認識を持つこと
「質問・設問に対しての回答」と「単なる自身の意見の主張」の間に区別がないことが会議の効率を悪くする。
質問には大きく分けて二つの種類がある。一つは「結論を導き出すために必要な情報や根拠を聞く質問」であり、この質問には俯瞰的な見方が必要。思考のプロセスや枠組みを必要とするので、「智力」を伴う。もう一つは、「具体的な状況や情報についての知識を深く知るための質問」この二つの質問体系を意識して使い分けることが肝要。


日本人は「問題は起きてはいけない」と考える傾向が強いが、この発想は現実的ではない。「問題は起きうるものだ」と考えれば、それを上司に報告することに対する躊躇がなくなる。

もうひとつ事実認識として面白かったのは『現場は「短絡」するもの』であるということ。
それを前提として経営サイドは以下の点に留意する必要があるのだそうだ。
①優先順位の根拠は明らかか
重要性と緊急性の二つの観点からきっちり評価されているか。(得てして緊急性が重要視されがち)
②原因は短絡していないか
特定の原因を推定し、十分な検討をすることなしに、対策までも策定するという傾向がある。
③選択肢は短絡していないか
判断基準を明確にせずに、特定の選択肢を選んでいないか


これからの日本には『高品質の決断を迅速に下す』ということが必要となる。
そのためには新しいラショナル思考が必要というのは非常に説得力を持っている。

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