グッドデザインカンパニー代表、水野学氏の著作。
会社の先輩から、気軽に「面白いよ」と渡されたので気軽に読み始めたのだが、中々どうして、奥が深くて実務上も役に立ちそうな良書であった。
著者は講演等で「どうしたら水野さんのようなセンスを身につけられるのか?」という質問をよく受けるらしい。
そのための方法論を分かりやすく話しているつもりなのだが、最後には
「でも結局は生まれ持ったセンスの問題ですよね」
と言われてしまう経験からこの本を書いたとのこと。
だから企業経営も同じ。企業の価値を最大化する方法の一つに、センスというものが挙げられる。それどころか、その会社が存続するか否かも決める。
◯センスがいい商品をつくるには、「普通」という感覚がことのほか大切。 それどころか、普通こそ、「センスのいい/悪い」を測ることが出来る唯一の道具。
普通とは「いいもの」がわかるということ。普通とは「悪いもの」もわかるということ。その両方を知った上で、「一番真ん中」がわかるということ。
「センスがよくなりたいのなら、まず普通を知る方がいい」
ただし、これは「普通のものをつくる」ということではない。「普通」を知っていれば、ありとあらゆるものがつくれるということ。
◯絵を描く。歌う。踊ったり体を動かしたりする。この3つは人間が原始的かつ生理的に求めてしまうものであり、美術、音楽、体育の三教科が当てはまる。
この三教科は、実技のみが重視されるため、子供の頃には慣れ親しんでいたものが、大半の人には縁のないものとして訣別の時を迎える。
本来は美術(三教科)は、学問であり、知識を蓄える「学科」と「実技」に分かれている。
歴史が、「知識を学んだ上で、今の時代で自分が何をすべきかという礎をつくる授業」であるなら、美術とは、「知識を学んだ上で、自分が何をつくったり、生み出したり、表現したりする礎をつくる授業」であるべき。
「歴史がうまいね。下手だね」と言わないのと同じように、美術にうまいも下手もない。
◯人間というものは、技術がその時点の限界まで進歩すると、ノスタルジックな思いに身を寄せ、美しいものを求める傾向がある。「技術からセンスへの揺り戻し」である。大量生産が当たり前になると、人々の意識が変わる。そうすると「技術からセンスへの揺り戻し」が起こる。
この手の市場調査には二つの落とし穴がある。
一つは悪目立ちするものに目がいきがちであること。
二つ目は新しい可能性を潰してしまいがちなこと。
◯また、人材育成的にも危険。
第一に、調査だけに頼っていると、自分は何がいいと思い、何がつくりたいのか、自分の頭で考えなくなる。
第二に、「調査結果で決めた」となると、責任の所在が曖昧になる。
クリエイティブディレクターは、センスで企業を治療する医者のような役割。
◯失敗を恐れず、縦割り構造の会社組織に横串をさせる人こそクリエイティブディレクターであり、それには三パターンある。
一つ目のパターンは経営者もしくは経営陣がクリエイティブディレクターになること。(ex:スティーブ・ジョブズ)
二つ目のパターンは、外部の人間がクリエイティブディレクターになること。(ex:佐藤可士和、水野学)
三つ目のパターンは、企業の中に特区をつくり、そこで働く人たちがクリエイティブディレクター的な役割を果たすこと。(ex:サムスン、資生堂)
世の中で一番少ないのは、「誰も見たこのない、あっと驚くヒット企画」。イメージ2%程度。(☞未来のスタンダードはこれ)
次に少ないのが、「あまり驚かない、売れない企画」。イメージ15%。
次は、「あまり驚かないけれど、売れる企画」。これは意外に多くて、イメージ20%。
そして一番多いのは、「あっと驚く売れない企画」。イメージ残る63%。要は半分以上。
「あっと驚く売れない企画」の多さという現実の厳しさを知った所で、「あまり驚かないけれど売れる企画」に注目するのがヒット商品を狙う正解。
だから、過去に存在していたあらゆるものを知識として蓄えておくことが、新たに売れるものを生み出すには必要不可欠ということ。
◯「あっ!」より「へぇー」にヒットは潜んでいる。
あっと驚く心の裏には、恐怖も潜んでいる。
新しいものに接した時、過去のものや過去の知識に照らし合わせて考えるのが自然。
みんなが「へぇー」と思うものは、ある程度知っているものの延長線上にありながら、画期的に異なっているもの。「ありそうでなかったもの」。
ものをつくる人間は、新しさを追い求めながら、過去へのリスペクトを忘れないことが大切。
◯知識にもとづいて予測することがセンス。
◯効率よく知識を増やす三つのコツ
①王道から解いていく。
「王道のもの」=「定番のもの」「一番いいとされているもの」「ロングセラーになっているもの」
王道のものは、言い換えるとすでに「最適化されている」と言える。
「王道」を探す過程で、センスアップに不可欠な「知識」の獲得を行っている。
②今、流行しているものを知る。
③「共通項」や「一定のルール」がないかを考えてみる。
◯「誰が、どんな時に、どんな場所で使うのか」、対象物を具体的に思い浮かべることは、センスを最適化するために最も必要な三原則である。
センスを磨く方法は、知識を集積することと客観的になること。 逆に言うと、不勉強と思い込み(主観)はセンスアップの敵。思い込みと主観による情報をいくら集めても、センスは良くならない。
◯センスを磨くには知識が必要だが、知識を吸収し自分のものとしていくには、感受性と好奇心が必要。
幼児性が創造力や発想につながっていく大きな理由は、感受性と好奇心が並外れて大きいから。
「感受性+知識=知的好奇心」
◯もしもあなたが仕事でデザイナーと関わることがあれば、「これはどうしてこういうデザインなんですか?」と質問をすること。
それはアウトプットの精度を高めること、売れる商品をつくることにつながっていく。
◯僕は自分の感覚というものを基本的に信用していないので、「この感覚はどこからやってきているんだろう?」という確認作業をすることにしている。
「センス」という暗黙知をどのように伝承していけばよいのか、その方法論として非常に明確で分かりやすい。
まずは知識をベースとするべく広く情報を集め、その上で精度を高める。
今やっている商品企画にもつながる話しだ。
会社の先輩から、気軽に「面白いよ」と渡されたので気軽に読み始めたのだが、中々どうして、奥が深くて実務上も役に立ちそうな良書であった。
著者は講演等で「どうしたら水野さんのようなセンスを身につけられるのか?」という質問をよく受けるらしい。
そのための方法論を分かりやすく話しているつもりなのだが、最後には
「でも結局は生まれ持ったセンスの問題ですよね」
と言われてしまう経験からこの本を書いたとのこと。
企画とは、アイデアではなく「精度」こそが重要
◯「センスのよさ」とは、数値化できない事象の良し悪しを判断し、最適化する能力。だから企業経営も同じ。企業の価値を最大化する方法の一つに、センスというものが挙げられる。それどころか、その会社が存続するか否かも決める。
◯センスがいい商品をつくるには、「普通」という感覚がことのほか大切。 それどころか、普通こそ、「センスのいい/悪い」を測ることが出来る唯一の道具。
普通とは「いいもの」がわかるということ。普通とは「悪いもの」もわかるということ。その両方を知った上で、「一番真ん中」がわかるということ。
「センスがよくなりたいのなら、まず普通を知る方がいい」
ただし、これは「普通のものをつくる」ということではない。「普通」を知っていれば、ありとあらゆるものがつくれるということ。
◯絵を描く。歌う。踊ったり体を動かしたりする。この3つは人間が原始的かつ生理的に求めてしまうものであり、美術、音楽、体育の三教科が当てはまる。
この三教科は、実技のみが重視されるため、子供の頃には慣れ親しんでいたものが、大半の人には縁のないものとして訣別の時を迎える。
本来は美術(三教科)は、学問であり、知識を蓄える「学科」と「実技」に分かれている。
歴史が、「知識を学んだ上で、今の時代で自分が何をすべきかという礎をつくる授業」であるなら、美術とは、「知識を学んだ上で、自分が何をつくったり、生み出したり、表現したりする礎をつくる授業」であるべき。
「歴史がうまいね。下手だね」と言わないのと同じように、美術にうまいも下手もない。
技術からセンスへの揺り戻し
◯安土桃山時代とは、技術からセンスへ移り変わった時代だった。 戦国時代という技術の時代が終わり、新しいセンスが必要となり、そこで千利休というクリエイティブディレクターが必要とされた。◯人間というものは、技術がその時点の限界まで進歩すると、ノスタルジックな思いに身を寄せ、美しいものを求める傾向がある。「技術からセンスへの揺り戻し」である。大量生産が当たり前になると、人々の意識が変わる。そうすると「技術からセンスへの揺り戻し」が起こる。
いわゆる「市場調査」
◯日本企業を弱体化させたのは、市場調査を中心としたマーケティング依存。この手の市場調査には二つの落とし穴がある。
一つは悪目立ちするものに目がいきがちであること。
二つ目は新しい可能性を潰してしまいがちなこと。
◯また、人材育成的にも危険。
第一に、調査だけに頼っていると、自分は何がいいと思い、何がつくりたいのか、自分の頭で考えなくなる。
第二に、「調査結果で決めた」となると、責任の所在が曖昧になる。
クリエイティブディレクター
◯企業の美意識やセンスが企業価値になる。これが今の時代の特徴。クリエイティブディレクターは、センスで企業を治療する医者のような役割。
◯失敗を恐れず、縦割り構造の会社組織に横串をさせる人こそクリエイティブディレクターであり、それには三パターンある。
一つ目のパターンは経営者もしくは経営陣がクリエイティブディレクターになること。(ex:スティーブ・ジョブズ)
二つ目のパターンは、外部の人間がクリエイティブディレクターになること。(ex:佐藤可士和、水野学)
三つ目のパターンは、企業の中に特区をつくり、そこで働く人たちがクリエイティブディレクター的な役割を果たすこと。(ex:サムスン、資生堂)
ヒット商品
◯世の中には「誰も見たことのない、あっと驚く企画」というのは実はゴロゴロ転がっている。しかし、「あっと驚く企画」には二種類ある。世の中で一番少ないのは、「誰も見たこのない、あっと驚くヒット企画」。イメージ2%程度。(☞未来のスタンダードはこれ)
次に少ないのが、「あまり驚かない、売れない企画」。イメージ15%。
次は、「あまり驚かないけれど、売れる企画」。これは意外に多くて、イメージ20%。
そして一番多いのは、「あっと驚く売れない企画」。イメージ残る63%。要は半分以上。
「あっと驚く売れない企画」の多さという現実の厳しさを知った所で、「あまり驚かないけれど売れる企画」に注目するのがヒット商品を狙う正解。
だから、過去に存在していたあらゆるものを知識として蓄えておくことが、新たに売れるものを生み出すには必要不可欠ということ。
◯「あっ!」より「へぇー」にヒットは潜んでいる。
あっと驚く心の裏には、恐怖も潜んでいる。
新しいものに接した時、過去のものや過去の知識に照らし合わせて考えるのが自然。
みんなが「へぇー」と思うものは、ある程度知っているものの延長線上にありながら、画期的に異なっているもの。「ありそうでなかったもの」。
ものをつくる人間は、新しさを追い求めながら、過去へのリスペクトを忘れないことが大切。
再び、「センス」を磨くには
◯よきセンスを持つには、知識を蓄え、過去に学ぶことが大切。同時にセンスとは、時代の一歩先を読む能力も指す。◯知識にもとづいて予測することがセンス。
◯効率よく知識を増やす三つのコツ
①王道から解いていく。
「王道のもの」=「定番のもの」「一番いいとされているもの」「ロングセラーになっているもの」
王道のものは、言い換えるとすでに「最適化されている」と言える。
「王道」を探す過程で、センスアップに不可欠な「知識」の獲得を行っている。
②今、流行しているものを知る。
③「共通項」や「一定のルール」がないかを考えてみる。
◯「誰が、どんな時に、どんな場所で使うのか」、対象物を具体的に思い浮かべることは、センスを最適化するために最も必要な三原則である。
センスを磨く方法は、知識を集積することと客観的になること。 逆に言うと、不勉強と思い込み(主観)はセンスアップの敵。思い込みと主観による情報をいくら集めても、センスは良くならない。
◯センスを磨くには知識が必要だが、知識を吸収し自分のものとしていくには、感受性と好奇心が必要。
幼児性が創造力や発想につながっていく大きな理由は、感受性と好奇心が並外れて大きいから。
「感受性+知識=知的好奇心」
「精度」とは
◯ありそうでなかったものをつくり出す時、しばしば「差別化」という言葉が使われる。これは本来、「ほんの少しの差」を指すのではないか。ただし、単に「ほんの少し違う」だけでは駄目で、その先に求められるのが「精度」。◯もしもあなたが仕事でデザイナーと関わることがあれば、「これはどうしてこういうデザインなんですか?」と質問をすること。
それはアウトプットの精度を高めること、売れる商品をつくることにつながっていく。
◯僕は自分の感覚というものを基本的に信用していないので、「この感覚はどこからやってきているんだろう?」という確認作業をすることにしている。
「センス」という暗黙知をどのように伝承していけばよいのか、その方法論として非常に明確で分かりやすい。
まずは知識をベースとするべく広く情報を集め、その上で精度を高める。
今やっている商品企画にもつながる話しだ。