あまり不動産関連の本って買わないのだが、ついつい気になることが書いてあるので購入して読む。
色々知らないビックリなことも書いてあって、恥ずかしながら非常に勉強になった。
基本的には日本の不動産を巡る7つのメガトレンドを示した上で、
「不動産投資は自宅で」「買うなら湾岸タワー」というのが著者の主張。
これから数年は不動産でどう資産を形成するかを考える時期だと言える。
②人口増加から減少へ
今後、郊外では住宅に買い手がつかない状況となるだろう。
③相続対策需要の増加
東京都心部では、今から30年は続く「相続税対策特需」がある。
④資金の出し手の国際化
円安も進行し、外国人投資家の目からみれば、東京の不動産はまさにお買い得。
⑤不動産評価方法の変化
取引事例比較法から収益還元法へ。
⑥新築購入リスクの増加
これから数年間、新築で売り出されるマンションは、中古物件になったとき大きく値下がりする可能性が高い。
⑦自宅購入者の情報力向上
売る側と買う側の情報格差が縮小。
まぁ、正直このあたりは知ってるよ〜(もしくは言ってることは分かるよ〜)、という感じだが、相続対策需要の増加などは数字で説明されるとなるほどという感じ。
◯国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」における推計では、現在およそ130万人の年間死亡者数は今後年を追って増加し、2040年頃に168万人〜165万人でピークを迎える。その後は漸減するものの、2060年になっても150万人を超えている。
2014年現在を上回る相続需要がこの先、30年以上続くのだ。
某高額物件仲介会社さんのチラシだと「相続税圧縮率」という指標が案件ごとに記載されていてビビったが、それも上記のような世の中の流れを捉えての話ということだ。
【不動産アービトラージその1】
賃貸に出ている物件を入居者がいる状態で売却することを「オーナーチェンジ」と呼ぶ。 オーナーチェンジの場合、買い手は投資家となるため、利回りだけが注目され、価格は完全な収益還元法で決まる。
しかし賃貸物件ではあっても、ファミリーユースの場合、入居者が引っ越すのを待ってから空き家の状態で売れば、自宅用として購入する買い手が出てくる。多くの場合その方が高値がつく。
この投資用の収益物件と実需用のファミリーユース物件の価格差はアービトラージの代表例と言える。
投資用と実需用のアービトラージを利用して、オーナーチェンジ物件を買って空きになるまで待ち、入居者が出て行ったら売る、という売買を繰り返して利益を上げ成長したのが、ジャスダックに上場しているスター・マイカ株式会社である。同社はこの独自の視点による運用で時価総額120億円まで成長したが、その後ビジネスモデルを真似されて伸び悩んでいる。
【不動産アービトラージその2】
「タワーマンションの高層階の北向き物件は、中古になった時に値上がりする傾向が強い」
2006年〜2010年の東京23区の中古マンション販売事例6万8683戸を調べ、方角別に中古騰落率を調査したところ、結果は北向きが11.0%値上がりしているのに対し、南向きは1.9%値下がりしていた。南北の騰落率差は12.9%に達しており、北向き物件を購入した方が1割以上お得だったのである。
新築時には、実物を見る前に購入を検討する。北向き物件は「日照ゼロ」ということで敬遠されることになり、デベロッパーは売りやすくするために「南北格差」を10〜20%設定する。
一方、中古物件の購入は実物を内覧した上で判断される。その際、北向き物件は開口部の間口が違う。
スタイルアクトのデータベースをもとに、75㎥の間取りの場合の主開口部の長さを方角別に算出すると、南向き物件の7.1m(7m×11m)に対し、東と西は7.9m、北向き物件は9.1m(9m×8m)と突出していた。これはデベロッパーが単価を高く設定できる南向き住戸を少しでも増やそうとした結果である。
うーん、北向き住戸の値付けについては認識していたけど、正直間口の広さにまで考えが及んでなかった。やられた感あり。
その他に、恥ずかしながらとても勉強になったこと。
◯賃料の下落率はざっくり10年で10%程度。
首都圏の家賃は過去20年間ほとんど横ばいで推移している。
本来統計上、家賃は消費者物価に連動することが判明しており、給与水準との間にも連動性が見られる。近年の日本で家賃が変わらなかったのは、過去20年間、消費者物価も給与水準も変わらなかったためと考えられる。
◯東京に人が集まるのは、そこに職があるから。大学生は3年で就職活動を行うので、大学3年時点で企業がどれだけの数、社員を募集するかで、卒業後に東京に流入してくる新卒の数が決まってくる。このため、大卒に対する有効求人倍率は、その2年後の流入人口の多寡に直結している。
(大卒の有効求人倍率が、2年後の単身者向け賃貸市場の需給の指標となる)
◯不動産価格と明確に連動している金融的な指標がある。市場のお金の量を示す、マネーストック(名目貨幣残高)である。
日銀短観(全国企業短期経済観測調査)の中の「貸出態度指数」というデータは、スタイルアクトで作成している「新築マンション価格インデックス」とほぼ連動している。
要は金融が緩和され、市場のマネーの量が増えると、不動産価格は上がるということだ。
◯「マンションは、エリア・価格帯に関わらず、坪当たり年に4万円値下がりする」
この法則は、過去20年のマンションデータ1万8千棟のデータを集計してマンションの値下がりの傾向を分析たものとのこと。
不動産会社の中でも中古案件の下落率ってよく分からない世界だったので、一つの指標(法則)を示されて目から鱗。
「湾岸タワーを自宅として転売を続けるべし」という結論に対しては異論がなくもないが、全体的に一般個人にも分かりやすいように書かれていて面白い。
実際にどうするかはやはり個人の価値観の違いということか。
不動産アービトラージの項で、著者が述べている内容に対してはちょいと耳が痛い。
「タワーマンション高層階の北向き物件についてのアービトラージは今後もしばらく続くだろう。なぜなら値付けを行うデベロッパーの担当者は、このことに気がついていない可能性が高いからだ。これが業界の実態である。不動産業界はいまだに「経験と勘と度胸」の世界なのだ。」
「士別れて三日なれば刮目して相待つべし」と言えるよう頑張ろう。
色々知らないビックリなことも書いてあって、恥ずかしながら非常に勉強になった。
基本的には日本の不動産を巡る7つのメガトレンドを示した上で、
「不動産投資は自宅で」「買うなら湾岸タワー」というのが著者の主張。
<7つのメガトレンド>
①デフレからインフレへこれから数年は不動産でどう資産を形成するかを考える時期だと言える。
②人口増加から減少へ
今後、郊外では住宅に買い手がつかない状況となるだろう。
③相続対策需要の増加
東京都心部では、今から30年は続く「相続税対策特需」がある。
④資金の出し手の国際化
円安も進行し、外国人投資家の目からみれば、東京の不動産はまさにお買い得。
⑤不動産評価方法の変化
取引事例比較法から収益還元法へ。
⑥新築購入リスクの増加
これから数年間、新築で売り出されるマンションは、中古物件になったとき大きく値下がりする可能性が高い。
⑦自宅購入者の情報力向上
売る側と買う側の情報格差が縮小。
まぁ、正直このあたりは知ってるよ〜(もしくは言ってることは分かるよ〜)、という感じだが、相続対策需要の増加などは数字で説明されるとなるほどという感じ。
<相続対策需要の増加>
◯日本国民の個人金融資産を保有年代別に分けると、60歳以上は1000兆円以上を保有している。この1000兆円が保有者の死亡に伴う相続により、1世代およそ30年間をかけて次世代に移転されることになる。それだけで毎年33兆円。不動産を合わせると年間50兆円にも達する。 この巨大マネーの流れが相続対策用不動産の需要を生む。◯国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」における推計では、現在およそ130万人の年間死亡者数は今後年を追って増加し、2040年頃に168万人〜165万人でピークを迎える。その後は漸減するものの、2060年になっても150万人を超えている。
2014年現在を上回る相続需要がこの先、30年以上続くのだ。
某高額物件仲介会社さんのチラシだと「相続税圧縮率」という指標が案件ごとに記載されていてビビったが、それも上記のような世の中の流れを捉えての話ということだ。
<不動産アービトラージ>
アービトラージとは「サヤ抜き」という意味。【不動産アービトラージその1】
賃貸に出ている物件を入居者がいる状態で売却することを「オーナーチェンジ」と呼ぶ。 オーナーチェンジの場合、買い手は投資家となるため、利回りだけが注目され、価格は完全な収益還元法で決まる。
しかし賃貸物件ではあっても、ファミリーユースの場合、入居者が引っ越すのを待ってから空き家の状態で売れば、自宅用として購入する買い手が出てくる。多くの場合その方が高値がつく。
この投資用の収益物件と実需用のファミリーユース物件の価格差はアービトラージの代表例と言える。
投資用と実需用のアービトラージを利用して、オーナーチェンジ物件を買って空きになるまで待ち、入居者が出て行ったら売る、という売買を繰り返して利益を上げ成長したのが、ジャスダックに上場しているスター・マイカ株式会社である。同社はこの独自の視点による運用で時価総額120億円まで成長したが、その後ビジネスモデルを真似されて伸び悩んでいる。
【不動産アービトラージその2】
「タワーマンションの高層階の北向き物件は、中古になった時に値上がりする傾向が強い」
2006年〜2010年の東京23区の中古マンション販売事例6万8683戸を調べ、方角別に中古騰落率を調査したところ、結果は北向きが11.0%値上がりしているのに対し、南向きは1.9%値下がりしていた。南北の騰落率差は12.9%に達しており、北向き物件を購入した方が1割以上お得だったのである。
新築時には、実物を見る前に購入を検討する。北向き物件は「日照ゼロ」ということで敬遠されることになり、デベロッパーは売りやすくするために「南北格差」を10〜20%設定する。
一方、中古物件の購入は実物を内覧した上で判断される。その際、北向き物件は開口部の間口が違う。
スタイルアクトのデータベースをもとに、75㎥の間取りの場合の主開口部の長さを方角別に算出すると、南向き物件の7.1m(7m×11m)に対し、東と西は7.9m、北向き物件は9.1m(9m×8m)と突出していた。これはデベロッパーが単価を高く設定できる南向き住戸を少しでも増やそうとした結果である。
うーん、北向き住戸の値付けについては認識していたけど、正直間口の広さにまで考えが及んでなかった。やられた感あり。
その他に、恥ずかしながらとても勉強になったこと。
◯賃料の下落率はざっくり10年で10%程度。
首都圏の家賃は過去20年間ほとんど横ばいで推移している。
本来統計上、家賃は消費者物価に連動することが判明しており、給与水準との間にも連動性が見られる。近年の日本で家賃が変わらなかったのは、過去20年間、消費者物価も給与水準も変わらなかったためと考えられる。
◯東京に人が集まるのは、そこに職があるから。大学生は3年で就職活動を行うので、大学3年時点で企業がどれだけの数、社員を募集するかで、卒業後に東京に流入してくる新卒の数が決まってくる。このため、大卒に対する有効求人倍率は、その2年後の流入人口の多寡に直結している。
(大卒の有効求人倍率が、2年後の単身者向け賃貸市場の需給の指標となる)
◯不動産価格と明確に連動している金融的な指標がある。市場のお金の量を示す、マネーストック(名目貨幣残高)である。
日銀短観(全国企業短期経済観測調査)の中の「貸出態度指数」というデータは、スタイルアクトで作成している「新築マンション価格インデックス」とほぼ連動している。
要は金融が緩和され、市場のマネーの量が増えると、不動産価格は上がるということだ。
◯「マンションは、エリア・価格帯に関わらず、坪当たり年に4万円値下がりする」
この法則は、過去20年のマンションデータ1万8千棟のデータを集計してマンションの値下がりの傾向を分析たものとのこと。
不動産会社の中でも中古案件の下落率ってよく分からない世界だったので、一つの指標(法則)を示されて目から鱗。
「湾岸タワーを自宅として転売を続けるべし」という結論に対しては異論がなくもないが、全体的に一般個人にも分かりやすいように書かれていて面白い。
実際にどうするかはやはり個人の価値観の違いということか。
不動産アービトラージの項で、著者が述べている内容に対してはちょいと耳が痛い。
「タワーマンション高層階の北向き物件についてのアービトラージは今後もしばらく続くだろう。なぜなら値付けを行うデベロッパーの担当者は、このことに気がついていない可能性が高いからだ。これが業界の実態である。不動産業界はいまだに「経験と勘と度胸」の世界なのだ。」
「士別れて三日なれば刮目して相待つべし」と言えるよう頑張ろう。