地方移住の勧め。
特に団塊の世代向けということで、その理由が分かりやすく書かれている。
少子高齢化問題の基礎数値を頭に入れるためにも非常に分かりやすい本。
さらに世界標準ではないが、20%もしくは21%を超えると”超高齢社会”と呼ぶ人もいる。
国立社会保障・人口問題研究所によると、日本は2012年時点で、高齢化率は24.1%。2024年には30%を超え、35年には三人に一人が65歳以上となる33.4%、そして61年には40%にも達すると予測されている。
日本は高齢化のスピードも急激。
日本は1970年に高齢化率が7%を超えて「高齢化社会」に突入したが、1994年には14%に達し「高齢社会」に突入した。
高齢化率が7%から14%に至るまでの年数を「倍加年数」と呼び、高齢化のスピードを表す指標として用いられる。その倍加年数が、日本ではわずか24年。
かつて高齢化先進国と言われた欧州各国でも、ドイツが40年、イギリスが46年、イタリアが61年、スウェーデンが85年、フランスが114年。
さらに日本は、「超高齢社会」すなわち高齢化率21%に達するまでの期間もわずか13年で、いまも驚くべきスピードで高齢化が進行中。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の人口は2026年に1億2000万人を下回り、48年には1億人を割り込んで、60年には8674万人になると予測されている。
2010年から60年にかけて、毎年平均80万人(累計4000万人)が減少していく計算。
「団塊の世代」が生まれたのは1947年から1949年までの第一次ベビーブーム期だが、この期間の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生む子供の人数)は4.32人で年間約270万人の子供が生まれていた。
第二次ベビーブーム(1971年から74年のいわゆる「団塊の世代ジュニア」)期間にも年間約200万人の子供が生まれ、出生率は2.14人だった。
ところが、その後は出生率の低下とともに出生数の減少が続き、1975年に出生率が2.0人を下回り、出生数も年間200万人を割り込んだ。
現在の出生数は年間107万人前後、出生率1.3人前後で推移している。近年では出生率の大幅な低下は収まっているが、それでも回復の兆しは見られない。
「人口置換水準」(人口を維持するために必要な合計特殊出生率)である2.07人を回復しない限り、出生率は減少を続け、2060年頃には年間48万人の子供しか生まれなくなると推計されている。
第一の山は、1961年をピークとする山で、高度経済成長期の人口流入。この時期、東京圏や大阪圏、名古屋圏は年間65.1万人という極めて大量の転入超過となり、それが現代まで続く三大都市圏を形成した。東京圏の人口伸び率は年2.8%。
第二の山は、80年から92年の13年間。この時期は87年をピークとする”バブル期”にあたる。この13年間の三大都市圏への転入超過は112万人。東京圏の人口伸び率は年0.8%。
ここでの特徴は、東京圏が134万人の転入超過だったのに対し、大阪圏、名古屋圏では人口がほぼ横ばい。つまり大都市圏への人口集中と言っても、この時期は”東京圏への一極集中”が起きたわけだ。
さらに東京圏の中での人口移動をみると、この時期には東京都区部から周辺三県への転出超過も起きた。つまり、首都圏ではこの時期に「郊外化」「ドーナツ化現象」が進行したわけだ。
第三の山は、2007年をピークとして現在も継続している人口の流れ。1998年からの11年間、三大都市圏への転入超過は106万人。特に東京圏では121万人の転入超過となり、ここでも第二の山と同様に東京圏への一極集中が継続している。東京圏の人口伸び率は0.6%。
この時期に特徴的なことは、「ドーナツ化現象」の流れが解消され、周辺三県から東京都への転出超過が発生していることだ。それまでとは逆に、東京圏の中でも東京都への一極集中が起こっているのだ。
規模は小さいながらも大阪圏や名古屋圏でも、大阪市や名古屋市への転入超過が起き、三大都市圏では都市居住傾向が発生していることが分かる。
現役世代は、年金自体の将来に大きな不安を抱えながら年金保険量を支払わねばならず、雇用そのものも不安定。子育て世代はその経済的な負担にあえぎ、仕事と家事・育児の両立に苦労している人も大勢いる。若い非正規雇用の人々の中では、結婚や出産をあきらめざるを得ない人も増える一方で、貧困や格差が増々厳しさを増している。
そんな現役世代の状況に比べると、今の高齢者は恵まれている。
高齢者世帯(65歳以上の人のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の人が加わった世帯)の年間所得は2010年で307.2万円。
これは全世帯平均(538.0万円)の半分強だが、平均世帯人員が少ないので、世帯人員一人あたりでは197.4万円となり、全世帯平均(200.4万円)と大差はない。
「格差社会」化が進行し、若年層の非正規雇用率が高まった結果、年間所得が200万円以下の「ワーキングプア」の総数は、約1850万人にも達していると言われている。
高齢者は自分で好きに使える可処分所得が多い「豊かな世代」なのだ。
地方ではすでに人口減少によって若者層が減少し、高齢化が相当進行している。これに対して東京都をはじめとする大都市圏では、まさにこれから急速に高齢者が増加し、大都市圏は高齢者で溢れ返ることになる。
都市部高齢者には”介護難民”の危機が迫る。
厚生労働省「都市部の高齢化対策に関する検討会」という有識者検討会の報告書によると「大都市部においては、地価が高く、特に東京23区では施設整備が進みにくい面があり、設備整備率は低くなっている。このため、在宅介護の割合が高くなっているが、必ずしも在宅サービスの利用環境が整っているとは言えない」
「サービスを提供する人材の確保も大きな課題となっている。もともと全産業の中で高い傾向にある介護関係職の有効求人倍率については、都道府県ごとに大きな差があるが、愛知県、東京都は全国平均を大きく上回っており、総じて都市部での人材確保は難しくなっている」
施設やそこでのサービスに従事するスタッフ不足のために、「それなりのお金はあるのに、行き場がない」という事態に陥る危険がある。
「移住」は、急激な都市の高齢化、迫り来る介護難民化に対する”生活防衛”の手段というだけではない。
日本の社会保障制度の見直しについて、その負担の将来世代への先送りを少しでも少なくするため、「社会保障の受給者も含めた『現在の世代(高齢者など)』の負担増」を求める姿勢が明確にされている。
社会保障制度そのものの危機を回避するために、高齢者は”自助努力”と”生活防衛”の必要に迫られている。
・持ち家比率が9割近くに達している。
・高学歴化、サラリーマン化、都市化といった戦後の変化を象徴し、大量消費社会を担ってきた。
・テレビの普及からインターネット社会までを駆け抜けてきた、戦後の時代や文化・社会現象、そしてレジャーや消費のスタイルを常にリードしてきた世代。
・「社会性」が強い。「今後参加したい社会活動」というアンケートでは、「趣味、スポーツ活動」に次いで、「一人暮らしなど見守りが必要な高齢者の支援をする活動」が第2位。
「団塊の世代」は人口が大都市圏に向けて大規模に移動した都市化の象徴。そのことを逆に言えば、大都市圏在住者の「団塊の世代」は地方出身者が多く、”ふるさと”を持っている可能性が高いということだ。ゆかりのある地方がある分、地方に移住しやすい人々だと言える。
高齢者のニュー・ジェネレーションである「団塊の世代」は、人生90年時代の人生モデルを作り上げるのに最も相応しい世代。
経済的余力があって社会貢献意識が高く、社会で培った能力を持ち、現役世代と比較しても遜色のない準現役世代。
その世代だからこそ、介護難民化の危機を抱えた大都市圏を飛び出して移住することで、老後の”生活防衛”を図りつつ社会貢献するということが可能なのだ。
ということで数字の引用も分かりやすく、長野県佐久市への移住した人の事例紹介もあり、「団塊の世代よ、地方へ移住しよう!」という呼びかけがなされている。
正直、少子高齢化に対する根本的な課題解決策になっているとは思えないが、東京一極集中含めた課題への対症療法としては他の方策よりも分かりやすく、実現性も高いものに思われる。
「団塊の世代」の方々、よろしくお願いします。
特に団塊の世代向けということで、その理由が分かりやすく書かれている。
少子高齢化問題の基礎数値を頭に入れるためにも非常に分かりやすい本。
<高齢化>
国連では高齢化率(65歳以上の割合)が7%を超えると”高齢化社会”、14%を超えると”高齢社会”と呼ぶ。さらに世界標準ではないが、20%もしくは21%を超えると”超高齢社会”と呼ぶ人もいる。
国立社会保障・人口問題研究所によると、日本は2012年時点で、高齢化率は24.1%。2024年には30%を超え、35年には三人に一人が65歳以上となる33.4%、そして61年には40%にも達すると予測されている。
日本は高齢化のスピードも急激。
日本は1970年に高齢化率が7%を超えて「高齢化社会」に突入したが、1994年には14%に達し「高齢社会」に突入した。
高齢化率が7%から14%に至るまでの年数を「倍加年数」と呼び、高齢化のスピードを表す指標として用いられる。その倍加年数が、日本ではわずか24年。
かつて高齢化先進国と言われた欧州各国でも、ドイツが40年、イギリスが46年、イタリアが61年、スウェーデンが85年、フランスが114年。
さらに日本は、「超高齢社会」すなわち高齢化率21%に達するまでの期間もわずか13年で、いまも驚くべきスピードで高齢化が進行中。
<少子化>
少子化の影響から、日本の総人口は2008年から人口減少期に突入した。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の人口は2026年に1億2000万人を下回り、48年には1億人を割り込んで、60年には8674万人になると予測されている。
2010年から60年にかけて、毎年平均80万人(累計4000万人)が減少していく計算。
「団塊の世代」が生まれたのは1947年から1949年までの第一次ベビーブーム期だが、この期間の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生む子供の人数)は4.32人で年間約270万人の子供が生まれていた。
第二次ベビーブーム(1971年から74年のいわゆる「団塊の世代ジュニア」)期間にも年間約200万人の子供が生まれ、出生率は2.14人だった。
ところが、その後は出生率の低下とともに出生数の減少が続き、1975年に出生率が2.0人を下回り、出生数も年間200万人を割り込んだ。
現在の出生数は年間107万人前後、出生率1.3人前後で推移している。近年では出生率の大幅な低下は収まっているが、それでも回復の兆しは見られない。
「人口置換水準」(人口を維持するために必要な合計特殊出生率)である2.07人を回復しない限り、出生率は減少を続け、2060年頃には年間48万人の子供しか生まれなくなると推計されている。
<一極集中>
戦後の東京への人口集中の歴史を振り返ってみると、三つの山を形成している。第一の山は、1961年をピークとする山で、高度経済成長期の人口流入。この時期、東京圏や大阪圏、名古屋圏は年間65.1万人という極めて大量の転入超過となり、それが現代まで続く三大都市圏を形成した。東京圏の人口伸び率は年2.8%。
第二の山は、80年から92年の13年間。この時期は87年をピークとする”バブル期”にあたる。この13年間の三大都市圏への転入超過は112万人。東京圏の人口伸び率は年0.8%。
ここでの特徴は、東京圏が134万人の転入超過だったのに対し、大阪圏、名古屋圏では人口がほぼ横ばい。つまり大都市圏への人口集中と言っても、この時期は”東京圏への一極集中”が起きたわけだ。
さらに東京圏の中での人口移動をみると、この時期には東京都区部から周辺三県への転出超過も起きた。つまり、首都圏ではこの時期に「郊外化」「ドーナツ化現象」が進行したわけだ。
第三の山は、2007年をピークとして現在も継続している人口の流れ。1998年からの11年間、三大都市圏への転入超過は106万人。特に東京圏では121万人の転入超過となり、ここでも第二の山と同様に東京圏への一極集中が継続している。東京圏の人口伸び率は0.6%。
この時期に特徴的なことは、「ドーナツ化現象」の流れが解消され、周辺三県から東京都への転出超過が発生していることだ。それまでとは逆に、東京圏の中でも東京都への一極集中が起こっているのだ。
規模は小さいながらも大阪圏や名古屋圏でも、大阪市や名古屋市への転入超過が起き、三大都市圏では都市居住傾向が発生していることが分かる。
<高齢者=社会的弱者?>
「高齢者」は社会的弱者ではない。現役世代は、年金自体の将来に大きな不安を抱えながら年金保険量を支払わねばならず、雇用そのものも不安定。子育て世代はその経済的な負担にあえぎ、仕事と家事・育児の両立に苦労している人も大勢いる。若い非正規雇用の人々の中では、結婚や出産をあきらめざるを得ない人も増える一方で、貧困や格差が増々厳しさを増している。
そんな現役世代の状況に比べると、今の高齢者は恵まれている。
高齢者世帯(65歳以上の人のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の人が加わった世帯)の年間所得は2010年で307.2万円。
これは全世帯平均(538.0万円)の半分強だが、平均世帯人員が少ないので、世帯人員一人あたりでは197.4万円となり、全世帯平均(200.4万円)と大差はない。
「格差社会」化が進行し、若年層の非正規雇用率が高まった結果、年間所得が200万円以下の「ワーキングプア」の総数は、約1850万人にも達していると言われている。
高齢者は自分で好きに使える可処分所得が多い「豊かな世代」なのだ。
<なぜ「移住」?>
多くの人間が「少子高齢化」と聞いて地方の過疎地域をイメージするが、実は過疎地域は今後は首都圏ほど高齢者は増えない。地方ではすでに人口減少によって若者層が減少し、高齢化が相当進行している。これに対して東京都をはじめとする大都市圏では、まさにこれから急速に高齢者が増加し、大都市圏は高齢者で溢れ返ることになる。
都市部高齢者には”介護難民”の危機が迫る。
厚生労働省「都市部の高齢化対策に関する検討会」という有識者検討会の報告書によると「大都市部においては、地価が高く、特に東京23区では施設整備が進みにくい面があり、設備整備率は低くなっている。このため、在宅介護の割合が高くなっているが、必ずしも在宅サービスの利用環境が整っているとは言えない」
「サービスを提供する人材の確保も大きな課題となっている。もともと全産業の中で高い傾向にある介護関係職の有効求人倍率については、都道府県ごとに大きな差があるが、愛知県、東京都は全国平均を大きく上回っており、総じて都市部での人材確保は難しくなっている」
施設やそこでのサービスに従事するスタッフ不足のために、「それなりのお金はあるのに、行き場がない」という事態に陥る危険がある。
「移住」は、急激な都市の高齢化、迫り来る介護難民化に対する”生活防衛”の手段というだけではない。
日本の社会保障制度の見直しについて、その負担の将来世代への先送りを少しでも少なくするため、「社会保障の受給者も含めた『現在の世代(高齢者など)』の負担増」を求める姿勢が明確にされている。
社会保障制度そのものの危機を回避するために、高齢者は”自助努力”と”生活防衛”の必要に迫られている。
<なぜ「団塊の世代」?>
「団塊の世代」の特徴・持ち家比率が9割近くに達している。
・高学歴化、サラリーマン化、都市化といった戦後の変化を象徴し、大量消費社会を担ってきた。
・テレビの普及からインターネット社会までを駆け抜けてきた、戦後の時代や文化・社会現象、そしてレジャーや消費のスタイルを常にリードしてきた世代。
・「社会性」が強い。「今後参加したい社会活動」というアンケートでは、「趣味、スポーツ活動」に次いで、「一人暮らしなど見守りが必要な高齢者の支援をする活動」が第2位。
「団塊の世代」は人口が大都市圏に向けて大規模に移動した都市化の象徴。そのことを逆に言えば、大都市圏在住者の「団塊の世代」は地方出身者が多く、”ふるさと”を持っている可能性が高いということだ。ゆかりのある地方がある分、地方に移住しやすい人々だと言える。
高齢者のニュー・ジェネレーションである「団塊の世代」は、人生90年時代の人生モデルを作り上げるのに最も相応しい世代。
経済的余力があって社会貢献意識が高く、社会で培った能力を持ち、現役世代と比較しても遜色のない準現役世代。
その世代だからこそ、介護難民化の危機を抱えた大都市圏を飛び出して移住することで、老後の”生活防衛”を図りつつ社会貢献するということが可能なのだ。
ということで数字の引用も分かりやすく、長野県佐久市への移住した人の事例紹介もあり、「団塊の世代よ、地方へ移住しよう!」という呼びかけがなされている。
正直、少子高齢化に対する根本的な課題解決策になっているとは思えないが、東京一極集中含めた課題への対症療法としては他の方策よりも分かりやすく、実現性も高いものに思われる。
「団塊の世代」の方々、よろしくお願いします。