2018年5月13日日曜日

『世界で一番やさしい 会議の教科書 実践編』

生涯で会議に費やす時間は3万時間に及ぶらしい。
一日10時間働くとしても、約8年分。。
この会議の生産性を上げるためのノウハウ本。
ファシリテーターとして参加する場合にも、隠れファシリテーターとして参加する場合にも、実戦の仕方についてまで記載されており、非常に実用性の高い本。
本を読んでいて、自分のメンバーに読ませたいと思う本が時々あるが、この本は是非読ませたいと思った。

<ファシリテーションの本質>

ファシリテーションとは「ゴールを達成するために、人々の能力を最大限に引き出す技術」のこと。
ゴールがない活動をファシリテーションする(容易にする、促進する)ことはできない。逆に言えば、ゴールがある活動なら、何でもファシリテーションできる。

<ファシリテーションのスタイルと8つの基本動作>

1.「確認する」ファシリテーション
 基本動作① 終了時に、決まったこととやるべきことを確認する
 基本動作② 開始時に、会議の終了条件を確認する
 基本動作③ 開始時に、時間配分を確認する
2.「書く」ファシリテーション
 基本動作④ 会議中に、議論を可視化する
3.「準備する」ファシリテーション
 基本動作⑤ 会議前に、準備する
4.「矢面に立つ」ファシリテーション
 基本動作⑥ 会議中に、全員から主張を引き出す
 基本動作⑦ 会議中に、対話を促し合意形成する
 基本動作⑧ 会議後に、振り返りをする


<終了条件の確認>

目から鱗だったのが、「開始時に、会議の終了条件を確認する」ということ。
当たり前のようだが、会議の目的が「〜すること」で表現されていてはだめ。
特に代表的なNGワードは「〜を共有すること」「〜を議論すること」。
することは手段であり、目的にはなり得ない。
会議の目的は「終了条件」で考える。「どんな状態になったら、この会議は終われるのか」ということ。
会議は何らかの「状態の変化を起こす」ためにやっているはず。

〔終了条件を考えるコツ〕
・「すること」ではなく、終了条件で考える
・「すること」が頭に浮かんだら、「その結果、どういう状態を作りたいのか」と自問する
・終了条件は、終了したかどうかを判定しやすい形で表現する

終了条件は、会議によって「何を変化させたいか」を考えてみることから始めてみると設定しやすい。
変化させたい対象は、人の状態、物理的なモノ、そして意思・合意、の3つ。


<議論の可視化>

発言を書かない会議は「目隠し将棋と同じ」というのも言い得て妙。
「各自が手元でメモを取ればいい」というのも実はナンセンス。同じ内容を、自分だけがわかるようにメモしているのは無駄が多い。


<3つの基本的な質問>

〔ファシリテーターの基本的な3つの質問〕
①発言を正確に理解する質問:「具体的には?」 抽象的な表現だと参加者の理解がバラバラになる。
②発言の真意を理解する質問:「なぜそう思うのですか?」 発言の後ろにある背景を尋ね、確認する
③漏れがないか確認する質問:「ほかにありませんか?」 発言に漏れがないか確認できるとともに、そのまま芋づる式に他の発言を引き出す。

<対話を促し合意形成する>

質問や意見が出たら、話を横に振るだけ。これで全員の議論が活性化された状態を作れる。
会議はファシリテーターだけで作るものではない。参加者全員で作るものだ。だから、必ずしもファシリテーターが答える必要はない。
むしろ答えるのを我慢して、別の参加者に振った方が良い。
個人に立脚した発言、つまり質問、意思表明、提案の3つの発言が出たら、横に振ることを考える。
「こういう意見が出ましたが、●●さんはどう思いますか?」と話を横に振る。
これで1つの意見を触媒にして、全員で議論する構図となる。

ファシリテーターをやっていると、ついつい質問には自分で答えなきゃと思ってしまうが、むしろ参加者に答えてもらった方が議論の活性化に繋がって良い、と言うのも新鮮な考え方。


<合意形成の氷山モデル>

「合意形成の氷山モデル」を意識しながら議論を進める。
氷山の上に見えているのは、「意見やアイデア」。分かりづらい時には「具体的には?」という質問で霧を晴らしていく。
氷山の下は発言者の「経験や価値観。氷山の上に見えている意見やアイデアは、その人の過去の経験や価値観が土台となって出てきている。「なぜそう思うのか?』という質問で紐解いていく。
明らかになった各自の氷山を、「話を横に振る」ことで他者にぶつける。
意見を引き出す場合は、まず氷山全体が明らかになるように質問をし、対話を促す場合は、氷山の『下』同士をぶつけ合うように議論を促す。
シンプルに、常に氷山モデルをイメージしながら参加者を観察し、発言や主張を引き出す。引き出したら横に振る。ファシリテーターが行うことはこれだけで良い。
更に言うと、ファシリテーターがあまり介入しなくても、参加者同士が理解し合い、自然に合意形成できる状況を作るのが最も重要。

<場面に応じた質問の仕方>

◯オープンクエスチョンが有効なのは、場が温まって、参加者をちょっとつつけばパッと意見が出てくるような雰囲気の時だけ。
冷え切った雰囲気の時は、名指しで答えやすい質問(クローズドクエスチョン)をするのが良い。
◯何を考えれば良いのかイメージしやすい質問をする。
コツは、相手が頭を使う余地を狭めていくこと。思考の変数を減らすと言っても良い。
◯今日話をしているのは、全体のどの部分なのか、わかるようにしてから質問する。


<問題解決の5階層>

第1階層「事象」:単なる事実であり、人の主観は入らない。
第2階層「課題」:現状の困りごと。解決したいと考えること。
第3階層「原因」:課題が発生している理由、背景。
第4階層「施策」:課題を解決し、現状を目指す姿に近づけるための打ち手。
第5階層「効果」:施策を実行するには投資が必要になる。リスクも伴う。得られる効果の大きさも施策ごとに異なる。

議論には上記5つの階層がある。5つの階層のうち、下の階層の議論の認識があっていないと、それより上の階層の認識は合わない。
話が噛み合わないのなら、下の階層の議論を先にやるべき。
得てして「施策」と「効果」がごっちゃになる。
そして、問題解決の5階層の先には、実現したい世界や目指すべき姿がある。この意義や目的が一致していないと噛み合わせは悪くなる議論が空転する。


<定例報告会>

会社でも毎週行うグループ会ではプロジェクトの進捗状況確認があるのだが、この進め方については色々と悩んでいたら、やはり「プロジェクトの進捗報告会」「定例報告会」は難易度が高いのだそうだ。
「定例会は進捗を報告すること」だと思い込んでいるが、「すること」は目的たり得ない。
目的として、どんな状態を作りたいのか、を定義する必要がある。
例えば、「解決すべきことを見つけ、外部のテコ入れが必要かどうかを見極めた状態を作ること」を定例会の目的とするとか。
そうすると進捗を確認するのも、課題を確認するのも、全ては「解決すべきことは何か?」「問題解決を各チームに任せておいて大丈夫か?」「チームメンバー以外の人が介入する必要はないのか?」を見極めるため。

終了条件を上記のように設定したなら、それ以外のことは極力やらないようにする。
「チームの状況はどうか」
「予定通りに進んでいないことは何か」
「解決すべき課題は何か」
にフォーカスして確認すべき。
「手伝わなくて大丈夫か?」「解決の勝算はあるのか?」「根深い問題なきがするけど、あの人を巻き込まなくてもいいのか?」 といった質問やアドバイスが活発に飛び交うのが正しい定例会の姿。

本を読んでから、少しずつ実際の会議でも導入し始めているが、著者も「分かること」と「できること」には大きな隔たりがある、と言っている。
隔たりを少なくすべく日々精進しよう。

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