2012年5月26日土曜日

『成功するポイントサービス』

ポイントサービスに関する様々な実態および知見が書かれた本。
スマートシティを研究すると地域通貨的なことは避けて通れない感じもあり、勧められて読んでみた。 

ポイントサービス=お金+α
+αは「そのポイントを貯める楽しみ、使う喜び」「その企業・ブランド・店舗への帰属感」「そのポイントサービスがもたらす限定感・優越感」など、いわゆる『精神的インセンティブ』 。
ポイントサービス=『金銭的インセンティブ』+『精神的インセンティブ』といいかえてもよい。


 知らなかったのは会計上の取り扱いが近々変更になるということ。
今まで多くの企業は、過去の発行数や交換数に応じて「販促引当金」という形で計上してきているはず。
商品券やプリペイドカード発行時に届出が必要などと規制する「前払式証票法」のように、ポイントサービスに関する法律や専用の会計基準が存在せず、企業が自社の判断基準や慣習で計上しているのが実態。
 IFIRS(国際財務報告基準)ではこの計上方法が根本から変わる。
発行したポイント数に相当する全額を売上から除外して、負債に計上しなくてはならなくなる。そして、ポイントが使われたときか、有効期限を超えて失効した時にはじめて売上に計上できることになる。いままではポイント発行分も含めて「売上」となっていたが、IFRSでは、使われるか失効しないと売上にならない。

ポイントが引当金として計上されているのであろうことは想像していたが、その引当金を売上に計上するルールが各社バラバラというのは知らなかった。セゾンの永久不滅ポイントのようなものは、いつまで引当金として計上しておけばいいのだろうか。色々奥は深そうだ。


 ポイントサービス系のコンサル業務を通じて得られた知見として、各部分を「統合」する役割が必須であること、分析ツールも結局は使う「人」によるということが挙げられている。

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ポイントサービスは、システム面においては、「顧客管理機能」と「ポイント管理機能」さえ存在すれば稼働させることが可能。
導入にあたって基幹システム会社にまずは相談するが、SaaS型などで導入する方が安価であり、最近主流となりつつあるので、別会社と付き合うこととなる。
また、リアル店舗でポイントカードを発行する場合には、ポイントカードおよびリーダー・ライターなどのカードや端末類が必要となり、当然機器メーカーやカード製造会社が絡んでくる。
ポイントサービス運用の失敗は、いくつかの典型的な要因が存在するが、何より根本的な問題は、支援会社がそれぞれの領域ごとに複数存在し、各支援会社がバラバラに動かざるを得ないこと。そこに諸悪の根源がある。ポイントサービス全体を見渡す視点をもたないままサービスを開始してしまえば、運用後一気にしわ寄せがくる。
各支援会社が自分たちの責任の範囲内でのみバラバラに業務を行う。その支援会社をまとめてコントロールしようとする人はどこにもいない。。

分析ソフトはあくまで「あるパターンの分析ができます」というもの。 人工頭脳のように、これとこれを分析すれば、このようなことが分かりますと教えてくれるものでは決してない。 要は何を分析するかを決めるのは、人間=担当者ということ。
だから担当者に、店舗に関する、商品販売に関する、そして顧客に関する何らかの仮説がなければ、分析内容は決まるはずがない。


ポイントサービス全体設計として、①ポイントサービスを導入する目的は何か。②その目的に対し、どんな××を構築すればいいのか。についてはきちんと整理をしておく必要がある。

ポイントサービスを成功させる上で最も大切なのは、ポイントサービスのプログラム内容(特典、交換商品、サービス内容)、施策内容、見え方・見せ方、つまり「ソフト」(生活者接点)領域に関わる部分である。
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といったポイントサービスに関わる知見が事例とともに記載されている。


最後。ポイントサービスの効能は二つ。
①自社の顧客に対するCRM
 ②他社からの誘客戦略
どちらを目的とするのかは明確にしてポイントサービス全体戦略を構築するのが大切とのこと。
ポイントサービスも通貨と同じ複雑系で、どうするとどうなっていくのかが非常に読みにくい。
常に指標を把握しながら方向を見定めていくことを「人」が行っていくことが必要ということか。

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