2013年3月31日日曜日

『統計学が最強の学問である』

Googleのチーフ・エコノミストであるハル・ヴァリアン博士は、2009年1月にマッキンゼー社の発行する論文誌においてこう語った。
「私はこれからの10年間で最もセクシーな職業は統計家だろうって言い続けているんだ。( I keep saying the sexy job in the next ten years will be statisticians.)」
これからは統計リテラシーが必要なのであろう。
自分の業務においても統計リテラシーがないと、統計に騙されることが多いような気がする。(大抵後で気がつく)

著者の西内啓氏は東大医学部卒で生物統計学専攻とあるから、ビジネスを直接やられたことはないと思われるが、よくある研究のための研究としての統計から脱却するために3つの問いが必要だとしている。


データをビジネスに使うための「3つの問い」
【問1】何かの要因が変化すれば利益は向上するのか?
【問2】そうした変化を起こすような行動は実際に可能なのか?
【問3】変化を起こす行動が可能だとして、そのコストは利益を上回るのか?
この3つの問に答えられた時点ではじめて「行動を起こすことで利益を向上させる」という見通しがたつ。


後半はちょっと専門的は話が多い(それでも相当噛み砕いて説明されていると思われる)のだが、前半はとっつきやすいネタも多く引き込まれる。

あみだくじ必勝法
あみだくじは全て同じ確率ではない。
「紅茶を先に入れたミルクティー」か「ミルクを先に入れたミルクティー」か判別できる婦人の話。さて、本当か嘘か。現代統計学の父 ロナルド・A・フィッシャーはどうやって判別したのか。
「ミシンを2台買ったら1割引というキャンペーン」

さて、このキャンペーンうまくいったかどうか。


ランダム化比較実験は、小さなコストとリスクで「あえて間違いを犯す」こともできる。
というのが、リーンスタートアップの考え方における、小さくプロトタイプで試してみるという考え方とリンクしていて非常に参考になった。
4月からは新規事業系に特化して業務を行うことになったので、この本は参考にしていきたい。

2013年3月3日日曜日

ニュータイプおたく

ここのところ、なぜか連続しておたく系のイベント(行動)が多く、おたくも進化していることを感じた。
”おたく”の強みはバックグラウンドストーリーを持っていること、弱みはそのストーリーを共有していない人々とのコミュニケーションがとれないことだと思っていたが、強みに更なる磨きをかけているようである。


おたくの聖地、秋葉原のコスプレ居酒屋Littel BSD
実は創業9年の老舗(?)。メイン顧客層はやっぱり”おたく”。
メイドカフェの発展(大人)版。
2Dの世界だけでなく、3Dのメイドにお酒をサーブしてもらうのだ。


コスプレ軍団のバックグラウンドストーリーは、「人間界に来た小悪魔ちゃん」
人間が許しを得ずに彼女達の写真を撮ったりすると魔界に帰ってしまうらしい。
写真は「小悪魔のおにぎり」@380円也。目の前で小悪魔ちゃんが握ってくれる。
他にも、小悪魔ちゃん達が「うんしょ、うんしょ」とかけ声を掛けながら
絞ってくれるグレープフルーツサワーなどあり。
でもお酒は全般的に甘すぎ。



ダイバーシティ東京のガンダムカフェ。


やっぱりガンダムの世界をベース(バックグラウンド)としたメニュー構成。
ディズニーもそうだが、確立したバックグラウンドストーリーがあると企画に軸があって強い。

ダンスエボリューションアーケード。
踊っているのは、どうみてもダンスの巧い”ゲームおたく”。
周囲はすごい観客でその視線を浴びながらプレーするのだが、
拍手がでたりするとはにかみながら、また最後尾に並ぶ。
結構、礼儀正しい。


という訳で、ニュータイプおたくは、別のやり方で一般人とコミュニケーションをとり始めている。
強みをより活かし、弱みを補完するという戦略は生き残りにおいて有効な戦略である。
”ニュータイプおたく”は変化しながら、一般にも受け入れられていくのかも知れないと思った。



『仏の心で鬼になれ。』

東レインターナショナル、蝶理の社長を歴任した田中健一氏の著書。
一応、「上司道」を極める、という啓発本なのだが、物語としても相当面白い。
これがまた事実というのが、小説よりも奇なり、という感じだ。

2003年3月28日午前11時。東レの榊原社長(現会長)に呼ばれて、社長室でいきなり問答無用の蝶理の社長就任の依頼。しかも明日、新社長発表の記者会見までセットされている。
30年間赤字のオンボロ商社。
1000億円の借金を1年で400億に圧縮するという、どう見ても無理な再建計画。。
それからの1年が物語風に書かれつつ、『上司道』の要諦が述べられている。


「上司には部下を幸せにする義務だけあって、不幸にする権利はない」
礼儀の分からんやつに仕事はできん。だから部下に礼儀は根気よく躾ける。ついて来れない部下は「失格」と扱ってかまわん。
「君の仕事の問題点はなんや?そして、どうしたらそれを解決できる?」
人間は、自分の頭で理解できていないことは、うまく説明できない。
本当に本質を理解していたら、ど素人相手でも手短かに説明できるもの。

世間が人となりについて評価を下すのを保留してくれるのは最大で100日。100日で人は相手の評価を確定させる。つまり、100日以内で「こいつはやるな!」と思われんかったらアウト。
最初に味方になってくれるのは「数字」
部下のモチベーションを上げるには、邪魔をしているものを取り除いてあげることが重要。
人間は皆、人の役に立ちたい、利益を出して会社に貢献したいと思っている。誰だって前向きに仕事に取り組みたいと思っている。
だから、部下のモチベーションが下がっているときには、「何か、部下の邪魔をしているものがあるのではないか?」と考えた方がいい。

部下のモチベーションを上げるには、邪魔をしているものを取り除いてあげることが重要。
人間は皆、人の役に立ちたい、利益を出して会社に貢献したいと思っている。誰だって前向きに仕事に取り組みたいと思っている。
だから、部下のモチベーションが下がっているときには、「何か、部下の邪魔をしているものがあるのではないか?」と考えた方がいい。



いろいろ教訓がある中で、気に入ったのが以下の内容。

我々は、劇的な改革を賞賛する。
もちろん、組織の危機を脱するリーダーシップは賞賛に値するものだろう。
しかし、「劇的なもの」にばかり注目してしまうと、一番大切なものを忘れてしまう。
「戦わずして勝つ」
これこそ、最上の将軍だということだ。
大手術をせんでも生き延びる。激しい戦闘をせんでも自然に勝ち残る。そういう組織こそ最高の組織だし、そういう組織をつくるのがリーダーの仕事。
そのためにはヒーローはいらん。
必要なのは組織の「免疫力」だ。
人間の体と一緒で、組織には、毎日問題の種が飛び込んできている。それを一人一人の社員がつぶしていく。そして、日々、業務を改善していく。こういう免疫力が機能していれば、会社が危機に陥ることはない。
ニュースで話題になるのは大手術をした医者だが、一番大切なのは免疫力をつけて、医療が不要の身体を維持することにある。
そういう組織にするのが、会社の第一義の目標と思う。


結局、田中氏は1年で1000億の借金を400億まで削減する。
それどころか、社長就任して1年目の6月には完済。月次決算は一度も赤字にならず、利益目標も超過。株価は底値から12倍近くに。
こういう「劇的」なことをやってのけた人が、
「一人の百歩より、100人の一歩」
「凡事徹底」
とかを言うのは本当に説得力がある。