2013年3月3日日曜日

『仏の心で鬼になれ。』

東レインターナショナル、蝶理の社長を歴任した田中健一氏の著書。
一応、「上司道」を極める、という啓発本なのだが、物語としても相当面白い。
これがまた事実というのが、小説よりも奇なり、という感じだ。

2003年3月28日午前11時。東レの榊原社長(現会長)に呼ばれて、社長室でいきなり問答無用の蝶理の社長就任の依頼。しかも明日、新社長発表の記者会見までセットされている。
30年間赤字のオンボロ商社。
1000億円の借金を1年で400億に圧縮するという、どう見ても無理な再建計画。。
それからの1年が物語風に書かれつつ、『上司道』の要諦が述べられている。


「上司には部下を幸せにする義務だけあって、不幸にする権利はない」
礼儀の分からんやつに仕事はできん。だから部下に礼儀は根気よく躾ける。ついて来れない部下は「失格」と扱ってかまわん。
「君の仕事の問題点はなんや?そして、どうしたらそれを解決できる?」
人間は、自分の頭で理解できていないことは、うまく説明できない。
本当に本質を理解していたら、ど素人相手でも手短かに説明できるもの。

世間が人となりについて評価を下すのを保留してくれるのは最大で100日。100日で人は相手の評価を確定させる。つまり、100日以内で「こいつはやるな!」と思われんかったらアウト。
最初に味方になってくれるのは「数字」
部下のモチベーションを上げるには、邪魔をしているものを取り除いてあげることが重要。
人間は皆、人の役に立ちたい、利益を出して会社に貢献したいと思っている。誰だって前向きに仕事に取り組みたいと思っている。
だから、部下のモチベーションが下がっているときには、「何か、部下の邪魔をしているものがあるのではないか?」と考えた方がいい。

部下のモチベーションを上げるには、邪魔をしているものを取り除いてあげることが重要。
人間は皆、人の役に立ちたい、利益を出して会社に貢献したいと思っている。誰だって前向きに仕事に取り組みたいと思っている。
だから、部下のモチベーションが下がっているときには、「何か、部下の邪魔をしているものがあるのではないか?」と考えた方がいい。



いろいろ教訓がある中で、気に入ったのが以下の内容。

我々は、劇的な改革を賞賛する。
もちろん、組織の危機を脱するリーダーシップは賞賛に値するものだろう。
しかし、「劇的なもの」にばかり注目してしまうと、一番大切なものを忘れてしまう。
「戦わずして勝つ」
これこそ、最上の将軍だということだ。
大手術をせんでも生き延びる。激しい戦闘をせんでも自然に勝ち残る。そういう組織こそ最高の組織だし、そういう組織をつくるのがリーダーの仕事。
そのためにはヒーローはいらん。
必要なのは組織の「免疫力」だ。
人間の体と一緒で、組織には、毎日問題の種が飛び込んできている。それを一人一人の社員がつぶしていく。そして、日々、業務を改善していく。こういう免疫力が機能していれば、会社が危機に陥ることはない。
ニュースで話題になるのは大手術をした医者だが、一番大切なのは免疫力をつけて、医療が不要の身体を維持することにある。
そういう組織にするのが、会社の第一義の目標と思う。


結局、田中氏は1年で1000億の借金を400億まで削減する。
それどころか、社長就任して1年目の6月には完済。月次決算は一度も赤字にならず、利益目標も超過。株価は底値から12倍近くに。
こういう「劇的」なことをやってのけた人が、
「一人の百歩より、100人の一歩」
「凡事徹底」
とかを言うのは本当に説得力がある。


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