地方再生を目指している人が仕切りと話題にすることもあり、遅まきながら読むことにした。
「ちまちま節約するな。どんどんエネルギーや資源を使え。それを遥かに上回る収益をあげればいいのだ。規模を大きくするほど利益は増えていく。それが『豊か』ということなのだ」
今の経済は、このような暮らしぶりを奨励している。
既に、アメリカから派生したマネー資本主義が色々な部分で破綻を来たし始めていることは、リーマンショックから始まる世界金融危機により認識され始めている。
世界はマネー資本主義の次なるパラダイムを模索しているが、マネー資本主義の代替となるものは未だに現れていない。
「里山資本主義」とは、お金の循環がすべてを決するという前提で構築された「マネー資本主義」の経済システムの横に、こっそりと、お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方だ。
お金が乏しくなっても水と食糧と燃料が手に入り続ける仕組み、いわば安心安全のネットワークを、あらかじめ用意しておこうという実践だ。
著者は「里山資本主義」の手本として、国内では岡山県の真庭市、海外ではオーストリアを挙げる。
オーストリアの事例を見ていこう。
◯マネーの嵐が吹きすさぶヨーロッパのど真ん中に、その影響を最小限に食い止めている国がある。それがオーストリアだ。失業率はEU加盟国中最低の4.2%。一人当たりの名目GDP(国内総生産)は4万9688ドルで世界11位(日本は17位)。対内直接投資額は、2011年に前年比3.2倍の101億6300万ユーロ。対外直接投資額も3.8倍の219億500万ユーロと、対内・対外ともリーマンショック直前の水準まで回復した。
◯なぜ、人口1000万人に満たない小さな国、オーストリアの経済がこれほどまでに安定しているのか。その秘密こそ、里山資本主義なのだ。国土はちょうど北海道と同じくらいの大きさで、森林面積でいうと、日本の約15%に過ぎない。
◯4年に一度、世界最大規模の林業機械の展示会「オーストロフォーマ(austrofoma)」が開催される。森林マイスター制度を有し、現在、オーストリアのエネルギー生産量の約28.5%は再生可能エネルギーによってまかなわれている。
EUは、2030年までにバイオエネルギーの割合を34%にする目標を掲げており、オーストリアもこれを目標としている。
「現在、森林は我が国(オーストリア)において二番目の外貨の稼ぎ手になりました。木材関連産業だけで、年間30億〜40億ユーロの貿易黒字が計上されています。森林が1年間に生長する量の70%しか利用していないにもかかわらず、です。 今後は、森林生長量の100%ギリギリまで利用できないかと考えています。」
◯オーストリアは、世界でも珍しい「脱原発」を憲法に明記している国家である。
◯世界中から年間3万人もの視察が殺到する町、ギュッシング市。ギュッシングでは、エネルギー自給率72%を達成した。人口4000人。
◯CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)。木材を垂直水平に張り合わせた集成材。コンクリート並の強度を誇る。オーストリアの法律では現在9階建てまでCLTで建てることが認められている。
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オーストリアの林業は、資本となる”山林”を殖す段階にあるが、今後は山林を殖すことなく毎年殖える分だけを利用するという「利子で食べていく」という発想を持っているというのが新鮮だった。
なるほど、持てる資産を食いつぶす限り、それが石化燃料であろうが、木材であろうがいずれなくなってしまう。石化燃料と木材が異なるのは、木材は適切なメンテナンスを行えば資産が減ることはない。
◯日本で「デフレ」と言われているものの正体は、不動産、車、家電、安価な食品など、主たる顧客層が減り行く現役世代であるような商品の過剰供給を、機械化され自動化されたシステムによる低価格大量生産に慣れきった企業が止められないことによって生じた、「ミクロ経済学上の値崩れ」である。
従ってこれは、日本経済そのものの衰退ではなく、過剰供給をやめない一部企業(多数企業?)と、不幸にもそこに依存する下請け企業群や勤労者の苦境に過ぎない。
そしてその解決は、それら企業が合理的に採算を追求し、需給バランスがまだ崩れていない、コストを価格転嫁できる分野を開拓してシフトして行くことでしか図れない。
同じく人口の成熟した先進工業国である北欧やドイツの大企業、イタリアの中小企業群などは、まさにそのような道を進んでいる。
◯実際問題、日本の1400兆円とも1500兆円とも言われている個人金融資産の多くを有する高齢者の懐に、お金(=潜在的市場)は存在する。
大前研一氏のブログによれば、彼らは死亡時に一人平均3500万円を残すというのだが、これが正しければ年間100万人が死亡する日本では、年間35兆円が使われないまま次世代に引き継がれているという計算になる。日本の小売り販売額(=モノの販売額。飲食や宿泊などのサービス業の売上は含まない)が年間130兆円程度だから、その35兆円のうち、1/3でも死ぬ前に何かを買うのに回してもらえれば、この数字は1割増となってバブル時も大きく上回り、大変な経済成長が実現することになってしまう。
あらゆる手段を使って高齢富裕層から女性や若者にお金を回すこと(正道は女性や若者の就労を促進し、給与水準を上げてお金を稼いでもらうこと)こそが、現実的に考えた「デフレ脱却」の手段なのである。
◯日本全体の合計特殊出生率(女性一人が生涯に産む子供の数)は、ここ数年少し回復してきたがそれでも1.4を割り込んでおり、日本最低の東京都では1.1という水準だ。この結果足元では、年間1.6%減少のペースで14歳以下人口が減っている。このままいけば、今後60年程度で日本から子供がいなくなってしまう状態だ。
現に過去35年の間に日本で毎年生まれる子供は4割も減ってしまったという事実がある。
子供だけではなく生産年齢人口(15歳〜64歳人口)も、1995年から2010年の15年間にもう7%も減っている。これが更に今後50年間でほぼ半減となることも、もう誰にも止められない状況だ。
移民の本格導入は、この問題を全く解決しない。移民も、移住先の国民と同化すればするほど出生率も移住先の国民と同レベルにまで、急速に低下するからである。日本より出生率の低いシンガポールでは、居住者の3割が外国人という状況だが、日本同様の子供の減少が続いている。
◯よく誤解されているのだが、若い女性が働くと子供が減るのではなく、むしろ若い女性が働いていない地域(首都圏、京阪神圏、北海道の人口の半分が集まる札幌圏など)ほど出生率が低く、夫婦とも正社員が当たり前の地方の県の方が子供が生まれていることは、統計上も明らかである。
もう少し定性的に言えば、通勤時間と労働時間が長く、保育所は足りず、病気の時などのバックアップもなく、子供を産むと仕事を続けにくくなる地域ほど、少子化が進んでいる。保育所が完備し、子育てに親世代や社会の支援が厚く、子育ての中の収入も確保しやすい地域ほど、子供が生まれているのだ。
少子化というのは結局、日本人と日本企業(特に大都市圏住民と大都市圏の企業)がマネー資本主義の未来に対して抱いている漠然とした不安・不信が、形となって表に出てしまったものなのではないかと筆者は考えている。未来を信じられないことが原因で子孫を残すことをためらうという、一種の「自傷行為」なのではないかと。
◯少子化は日本だけで起きているのではない。マネー資本主義が貫徹されているという意味では日本以上である韓国も台湾もシンガポールも、前述の通り日本より出生率が低い。
同じく凄まじいマネーの暴風が吹き荒れている中国でも、沿海部の出生率はもう東京よりも低くなっている可能性がある。上海の出生率は0.7という話を聞いたことがあるが、これは3世代で人口が1/8に縮小してしまうという驚異的な水準だ。
ロシアや東欧でも、突如マネー資本主義の暴風にさらされたソ連邦崩壊以降、著しい出生率の低下が報告されている。
であるとすればこそ解決は、マネー資本主義とは違う次元のところに存在する。里山資本主義の普及と活用にあるはずだ。
里山資本主義は、大都市圏住民が水と食糧と燃料の確保に関して抱かざるを得ない原初的な不安を和らげる。それだけでなく里山資本主義は、人間らしい暮らしを営める場を、子供を持つ年代の夫婦に提供する。
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「デフレ」に対する「ミクロ経済学上の値崩れ」でしかないという喝破は、『デフレの正体』を著述した著者ならでは、と言った感じだが、少子高齢化の根本原因(Root Cause)が「マネー資本主義の未来に対して抱いている漠然とした不安・不信」であるという観点が面白い。
その根本原因に対する方策が「里山資本主義」しかないのか。それはこれから我々が試行錯誤して見つけていかねばならないテーマなのかもしれない。
浜矩子 同志社大学教授が面白い喩えを言っているらしい。
「グローバル時代は強いものしか生き残らない時代だという考え方自体が、誤解だと思うのです。多くの相手をつぶしたヤツが一番偉い、みたいな感覚でグローバル時代を見る人たちの頭の中は時代錯誤と言えます。我々は、グローバルジャングルに住んでいます。ジャングルは、別に強いものしかいない世界ではありません。百獣の王のライオンさんから小動物達、草木、果てはバクテリアまでいる。強いものは強いものなりに、弱いものは弱いものなりに、多様な個性と機能を持ち寄って、生態系を支えている。これがグローバル時代だと思います。」
この喩えにはちょっと批判がある。
ジャングルと人間のグローバル時代で異なるのが、ジャングルでは必要以上の殺生はしないが、人間のお金に対する欲望は無尽蔵であり、取れる人間が必要以上にマネーを貪るという現実である。
インテリジェンスの第一人者、佐藤優氏が
「情報提供相手に与える便益として大きく女、飯(酒)、金があるが、金だけはやめておけ。他の二つは無尽蔵には求めることができず限度があるが、金は無尽蔵に求め始め限度というものがない」
と書いていたことがあり、さもありなんと思った次第だ。
百獣の王が、必要以上に弱いものから搾取する(殺し始める)ジャングルでは食物連鎖は成り立たず、いずれ百獣の王も含めて滅びてしまうことになるであろう。
実際に起こったリーマンショックは正にそういう事態ではないか。
グローバル化とは、海の向こうのジャングルで起こっていることが、気がつくと自分のジャングルにも大きな影響を及ぼすようになっているということだ。
人間のグローバル時代は今そうなっている。だから不安・不信が募って世界的に少子化となっているということではないか。
言われてみて、なるほどと目から鱗だったのは
◯エネルギーを外から買うとグローバル化の影響は免れない。熱を制するものはエネルギーを、そして経済を制する。
ということ。
橘玲氏が『(日本人)』で、
「グローバル化が大きな海で世界がつながることだとすると、世界に台風が起こった瞬間に(そしてその台風は自分がどう生活していようと全く関係のないところで発生する)海では強風と嵐が吹き荒れ、それをしのげるのは島として存在するのが”共同体”(現状では”国家”がその単位)である」という趣旨のことを述べている。
分かりやすく世界の台風から逃れるには、エネルギー的に外界と一定の距離をおいていないと(自立していないと)ダメだということだ。
「人類は「懐かしい未来」に向かっている」
「懐かしい未来」とはスウェーデンの女性環境活動家、ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ氏の言葉。
人類が猿から進化して以来、文明がすごい勢いで発達したのはここ2百年程度である。
正直、人間の脳の進化は現代の文明の進歩についていっていない。
これからはITの力を借りて、「懐かしい(と脳が感じる超ハイテク)未来」を作り上げていくことになるのだろう。
「ちまちま節約するな。どんどんエネルギーや資源を使え。それを遥かに上回る収益をあげればいいのだ。規模を大きくするほど利益は増えていく。それが『豊か』ということなのだ」
今の経済は、このような暮らしぶりを奨励している。
既に、アメリカから派生したマネー資本主義が色々な部分で破綻を来たし始めていることは、リーマンショックから始まる世界金融危機により認識され始めている。
世界はマネー資本主義の次なるパラダイムを模索しているが、マネー資本主義の代替となるものは未だに現れていない。
「里山資本主義」とは、お金の循環がすべてを決するという前提で構築された「マネー資本主義」の経済システムの横に、こっそりと、お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方だ。
お金が乏しくなっても水と食糧と燃料が手に入り続ける仕組み、いわば安心安全のネットワークを、あらかじめ用意しておこうという実践だ。
著者は「里山資本主義」の手本として、国内では岡山県の真庭市、海外ではオーストリアを挙げる。
オーストリアの事例を見ていこう。
<オーストリアの事例>
>>>>>◯マネーの嵐が吹きすさぶヨーロッパのど真ん中に、その影響を最小限に食い止めている国がある。それがオーストリアだ。失業率はEU加盟国中最低の4.2%。一人当たりの名目GDP(国内総生産)は4万9688ドルで世界11位(日本は17位)。対内直接投資額は、2011年に前年比3.2倍の101億6300万ユーロ。対外直接投資額も3.8倍の219億500万ユーロと、対内・対外ともリーマンショック直前の水準まで回復した。
◯なぜ、人口1000万人に満たない小さな国、オーストリアの経済がこれほどまでに安定しているのか。その秘密こそ、里山資本主義なのだ。国土はちょうど北海道と同じくらいの大きさで、森林面積でいうと、日本の約15%に過ぎない。
◯4年に一度、世界最大規模の林業機械の展示会「オーストロフォーマ(austrofoma)」が開催される。森林マイスター制度を有し、現在、オーストリアのエネルギー生産量の約28.5%は再生可能エネルギーによってまかなわれている。
EUは、2030年までにバイオエネルギーの割合を34%にする目標を掲げており、オーストリアもこれを目標としている。
「現在、森林は我が国(オーストリア)において二番目の外貨の稼ぎ手になりました。木材関連産業だけで、年間30億〜40億ユーロの貿易黒字が計上されています。森林が1年間に生長する量の70%しか利用していないにもかかわらず、です。 今後は、森林生長量の100%ギリギリまで利用できないかと考えています。」
◯オーストリアは、世界でも珍しい「脱原発」を憲法に明記している国家である。
◯世界中から年間3万人もの視察が殺到する町、ギュッシング市。ギュッシングでは、エネルギー自給率72%を達成した。人口4000人。
◯CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)。木材を垂直水平に張り合わせた集成材。コンクリート並の強度を誇る。オーストリアの法律では現在9階建てまでCLTで建てることが認められている。
>>>>>
オーストリアの林業は、資本となる”山林”を殖す段階にあるが、今後は山林を殖すことなく毎年殖える分だけを利用するという「利子で食べていく」という発想を持っているというのが新鮮だった。
なるほど、持てる資産を食いつぶす限り、それが石化燃料であろうが、木材であろうがいずれなくなってしまう。石化燃料と木材が異なるのは、木材は適切なメンテナンスを行えば資産が減ることはない。
<デフレと少子高齢化について>
>>>>>◯日本で「デフレ」と言われているものの正体は、不動産、車、家電、安価な食品など、主たる顧客層が減り行く現役世代であるような商品の過剰供給を、機械化され自動化されたシステムによる低価格大量生産に慣れきった企業が止められないことによって生じた、「ミクロ経済学上の値崩れ」である。
従ってこれは、日本経済そのものの衰退ではなく、過剰供給をやめない一部企業(多数企業?)と、不幸にもそこに依存する下請け企業群や勤労者の苦境に過ぎない。
そしてその解決は、それら企業が合理的に採算を追求し、需給バランスがまだ崩れていない、コストを価格転嫁できる分野を開拓してシフトして行くことでしか図れない。
同じく人口の成熟した先進工業国である北欧やドイツの大企業、イタリアの中小企業群などは、まさにそのような道を進んでいる。
◯実際問題、日本の1400兆円とも1500兆円とも言われている個人金融資産の多くを有する高齢者の懐に、お金(=潜在的市場)は存在する。
大前研一氏のブログによれば、彼らは死亡時に一人平均3500万円を残すというのだが、これが正しければ年間100万人が死亡する日本では、年間35兆円が使われないまま次世代に引き継がれているという計算になる。日本の小売り販売額(=モノの販売額。飲食や宿泊などのサービス業の売上は含まない)が年間130兆円程度だから、その35兆円のうち、1/3でも死ぬ前に何かを買うのに回してもらえれば、この数字は1割増となってバブル時も大きく上回り、大変な経済成長が実現することになってしまう。
あらゆる手段を使って高齢富裕層から女性や若者にお金を回すこと(正道は女性や若者の就労を促進し、給与水準を上げてお金を稼いでもらうこと)こそが、現実的に考えた「デフレ脱却」の手段なのである。
◯日本全体の合計特殊出生率(女性一人が生涯に産む子供の数)は、ここ数年少し回復してきたがそれでも1.4を割り込んでおり、日本最低の東京都では1.1という水準だ。この結果足元では、年間1.6%減少のペースで14歳以下人口が減っている。このままいけば、今後60年程度で日本から子供がいなくなってしまう状態だ。
現に過去35年の間に日本で毎年生まれる子供は4割も減ってしまったという事実がある。
子供だけではなく生産年齢人口(15歳〜64歳人口)も、1995年から2010年の15年間にもう7%も減っている。これが更に今後50年間でほぼ半減となることも、もう誰にも止められない状況だ。
移民の本格導入は、この問題を全く解決しない。移民も、移住先の国民と同化すればするほど出生率も移住先の国民と同レベルにまで、急速に低下するからである。日本より出生率の低いシンガポールでは、居住者の3割が外国人という状況だが、日本同様の子供の減少が続いている。
◯よく誤解されているのだが、若い女性が働くと子供が減るのではなく、むしろ若い女性が働いていない地域(首都圏、京阪神圏、北海道の人口の半分が集まる札幌圏など)ほど出生率が低く、夫婦とも正社員が当たり前の地方の県の方が子供が生まれていることは、統計上も明らかである。
もう少し定性的に言えば、通勤時間と労働時間が長く、保育所は足りず、病気の時などのバックアップもなく、子供を産むと仕事を続けにくくなる地域ほど、少子化が進んでいる。保育所が完備し、子育てに親世代や社会の支援が厚く、子育ての中の収入も確保しやすい地域ほど、子供が生まれているのだ。
少子化というのは結局、日本人と日本企業(特に大都市圏住民と大都市圏の企業)がマネー資本主義の未来に対して抱いている漠然とした不安・不信が、形となって表に出てしまったものなのではないかと筆者は考えている。未来を信じられないことが原因で子孫を残すことをためらうという、一種の「自傷行為」なのではないかと。
◯少子化は日本だけで起きているのではない。マネー資本主義が貫徹されているという意味では日本以上である韓国も台湾もシンガポールも、前述の通り日本より出生率が低い。
同じく凄まじいマネーの暴風が吹き荒れている中国でも、沿海部の出生率はもう東京よりも低くなっている可能性がある。上海の出生率は0.7という話を聞いたことがあるが、これは3世代で人口が1/8に縮小してしまうという驚異的な水準だ。
ロシアや東欧でも、突如マネー資本主義の暴風にさらされたソ連邦崩壊以降、著しい出生率の低下が報告されている。
であるとすればこそ解決は、マネー資本主義とは違う次元のところに存在する。里山資本主義の普及と活用にあるはずだ。
里山資本主義は、大都市圏住民が水と食糧と燃料の確保に関して抱かざるを得ない原初的な不安を和らげる。それだけでなく里山資本主義は、人間らしい暮らしを営める場を、子供を持つ年代の夫婦に提供する。
>>>>>
「デフレ」に対する「ミクロ経済学上の値崩れ」でしかないという喝破は、『デフレの正体』を著述した著者ならでは、と言った感じだが、少子高齢化の根本原因(Root Cause)が「マネー資本主義の未来に対して抱いている漠然とした不安・不信」であるという観点が面白い。
その根本原因に対する方策が「里山資本主義」しかないのか。それはこれから我々が試行錯誤して見つけていかねばならないテーマなのかもしれない。
浜矩子 同志社大学教授が面白い喩えを言っているらしい。
「グローバル時代は強いものしか生き残らない時代だという考え方自体が、誤解だと思うのです。多くの相手をつぶしたヤツが一番偉い、みたいな感覚でグローバル時代を見る人たちの頭の中は時代錯誤と言えます。我々は、グローバルジャングルに住んでいます。ジャングルは、別に強いものしかいない世界ではありません。百獣の王のライオンさんから小動物達、草木、果てはバクテリアまでいる。強いものは強いものなりに、弱いものは弱いものなりに、多様な個性と機能を持ち寄って、生態系を支えている。これがグローバル時代だと思います。」
この喩えにはちょっと批判がある。
ジャングルと人間のグローバル時代で異なるのが、ジャングルでは必要以上の殺生はしないが、人間のお金に対する欲望は無尽蔵であり、取れる人間が必要以上にマネーを貪るという現実である。
インテリジェンスの第一人者、佐藤優氏が
「情報提供相手に与える便益として大きく女、飯(酒)、金があるが、金だけはやめておけ。他の二つは無尽蔵には求めることができず限度があるが、金は無尽蔵に求め始め限度というものがない」
と書いていたことがあり、さもありなんと思った次第だ。
百獣の王が、必要以上に弱いものから搾取する(殺し始める)ジャングルでは食物連鎖は成り立たず、いずれ百獣の王も含めて滅びてしまうことになるであろう。
実際に起こったリーマンショックは正にそういう事態ではないか。
グローバル化とは、海の向こうのジャングルで起こっていることが、気がつくと自分のジャングルにも大きな影響を及ぼすようになっているということだ。
人間のグローバル時代は今そうなっている。だから不安・不信が募って世界的に少子化となっているということではないか。
言われてみて、なるほどと目から鱗だったのは
◯エネルギーを外から買うとグローバル化の影響は免れない。熱を制するものはエネルギーを、そして経済を制する。
ということ。
橘玲氏が『(日本人)』で、
「グローバル化が大きな海で世界がつながることだとすると、世界に台風が起こった瞬間に(そしてその台風は自分がどう生活していようと全く関係のないところで発生する)海では強風と嵐が吹き荒れ、それをしのげるのは島として存在するのが”共同体”(現状では”国家”がその単位)である」という趣旨のことを述べている。
分かりやすく世界の台風から逃れるには、エネルギー的に外界と一定の距離をおいていないと(自立していないと)ダメだということだ。
「人類は「懐かしい未来」に向かっている」
「懐かしい未来」とはスウェーデンの女性環境活動家、ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ氏の言葉。
人類が猿から進化して以来、文明がすごい勢いで発達したのはここ2百年程度である。
正直、人間の脳の進化は現代の文明の進歩についていっていない。
これからはITの力を借りて、「懐かしい(と脳が感じる超ハイテク)未来」を作り上げていくことになるのだろう。
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