2016年2月11日木曜日

『23区格差』

会社の先輩から「面白い」と手渡された本。
「常識」とは逆に、定住率が高い区こそ「負け組」に、定住率が低い区こそ「勝ち組」になっている、ということを様々なデータと事例にて述べている。
全体を貫く趣旨もさることながら、個別の23区トリビアが非常に面白い。

<「定住率」という過ち>

国連の定義では、高齢化率が21%を超えると「超高齢社会」と呼ぶ。
2010年の我が国の高齢化率は23.0%。東京23区は20.2%。国全体では既に超高齢社会に突入し、東京23区も一歩足を踏み入れた状態にある。 先進国が高齢化していくのは、ある意味でやむを得ない面もある。『国連統計』によると、2010年のイタリア、ドイツの高齢化率はともに20.4%。日本ほどではないにしても、やはり高齢化が深刻であることに変わりはない。
日本の高齢化問題は、比率の高さ以上にそのスピードの速さに特徴がある。1990年から2010年までの20年間で、高齢化率が12.1%から23.0%へと約11ポイントも上昇。同じだけ高齢化率が上がるのに、イタリアは50年、ドイツでは60年以上を要している。
ところが、都心3区、千代田区・中央区・港区は近年高齢化率が低下している。

人口が増えることは、まちが若返ることを意味する。そうなれば高齢化率が改善されるか、改善されないにしてもその進行が抑制される。逆に人口が減ると高齢化が進む。これが常識的なメカニズム。
人口が増えると言っても、自然増では高齢化率に影響を及ぼさない。社会増(転入ー転出)による新陳代謝による人口増が高齢化率に影響を及ぼすのだ。

まちの新陳代謝を生み出すことが、高齢化対応の特効薬になる。
もちろん、全国レベルでみると高齢者は一方的に増えていくのだから、どこかで高齢化の進展が抑制されると、別のどこかでそのしわ寄せを受け、格差が拡大することになる。

「定住できるまち」とは、不動産広告のキャッチコピーとして定番だ。それ以上に、市区町村の施策においても、定住こそが絶対的な到達点とされる。こうして、我々の意識も「定住信仰」に縛られてきた。
なるほど、定住は右肩上がりの時代には意味を持っていた。安心して長く住める。住む価値がある、そんなまちこそが高い価値を持ち得た。しかし、社会全体がシュリンクを始めると、定住の負の側面が一気に顕在化してくることがある。「団地問題」はその象徴だ。

「常識」と逆に、定住率が高い区こそ「負け組」に、定住率が低い区こそ「勝ち組」になっている。定住率の向上を錦の御旗のように掲げる研究者や政治家や行政マンは、この結果にどうコメントするだろうか。
仮に人口が増えていなくても、転出入が多く、新陳代謝が活発であれば、まちの活気が維持される。当然のことながら、こうした新陳代謝を受け入れるためには、その受け皿となる住宅がなければならない。
中古住宅の転売市場が未成熟な我が国で、まちの新陳代謝、つまり人々の住み替え移動の受け皿となっているのは賃貸住宅、より正確にいうと賃貸マンションに代表される民間の賃貸住宅である。
2005〜2010年の5年間で、東京23区の人口は45万人も増えた。子供の独立など世帯の分離があるため、世帯の増加数は、人口を上回る52万世帯。このうち、持家の増加が吸収したのは3分の1の17万1千世帯にとどまり、およそ3分の2にあたる33万4千世帯は民間賃貸住宅の増加が吸収している。

まとめると、まちの活性化のためには新陳代謝が必要で、そのためには中古住宅の転売市場が未成熟な日本では、賃貸住宅という「リソース」が定住向けの持家よりも必要である、ということ。


<23区トリビア>

◯実は、東京23区の中で、渋谷のように区の名前、駅の名前、中心となるまちの名前の3つが一致している区はさほど多くなく、他には新宿区と中野区しかない。(練馬区は東武練馬駅もありちょっと違う)
区の名前と同じ駅名なら、品川、目黒、板橋がある。しかし実際には、品川駅は港区に、目黒駅は品川区に、板橋駅は板橋区、北区、豊島区の3区の境界に位置する。
ちなみに、新橋は港区、八重洲は中央区、有楽町・神田・秋葉原は千代田区にある。
◯2011年3月を境として、外国人達の東京脱出が起こった。 この影響を最も強く受けたのは、区民の10人に一人が外国人という新宿区。1997年以降一貫して増加を続けていた人口が2011年には減少へと転じている。
ただし、この動きは風評被害の側面も強かったためか、概ね2年で収束した。 新宿区の人口増加率を2008〜2010年(震災前)、2010年〜2012年(震災直後)、2012年から2014年(現在)の3区分で比較すると、2.5%→0.1%→2.3%と完全に戻っている。
◯刑法犯認知件数と、飲食店数の相関係数は0.26。酒場・バー・クラブなどの飲酒系飲食店数との相関係数は0.30。コンビニエンスストアとの相関係数は0.82。
「コンビニが多いまちは犯罪が多い」という相関がある。
◯2010年の『国勢調査』でも、「標準世帯」とされる夫婦と子供の世帯(27.9%)よりも、一人暮らし(32.3%)の方が多くなった。
一人暮らしのうち、学生の年代に相当する21歳以下の割合はわずかに6%しかない。20代以下にまで広げても22%にとどまり、30代が16%、40代が12%、50〜64歳が20%、65歳以上が30%。今や一人暮らしは、あらゆる世代に共通した存在である。
ここには、家族を単位に行動するという人間の生物学的な特徴が、現代の日本では通用しなくなったという事実が示されている。
その中でも、時代の先端を突き進むのが東京。 2010年の東京23区の一人暮らし世帯の割合は49.1%にのぼり、夫婦と子供の世帯(21.5%)の2倍を超える。
◯昼間の人口が一番多いのは港区。港区の昼間人口がトップに立つのは2005年。
現在港区に集まる企業活動の中で、特に集中度が高いのが情報通信業。
民間放送業においては、在京民放キー5局のすべてが港区に本社をおき、23区で働く民放社員の77%が港区に集まっている。ただし、これも21世紀にはいってからの話しで、フジテレビが新宿区の河田町からお台場に移転するのは1997年、日本テレビが千代田区麹町から汐留に移転するのは2003年。
(後はテレビ朝日が六本木、TBSが赤坂、テレビ東京が虎ノ門)
◯女性を100としたときの男性の割合を性比という。我が国の平均は94.8、東京23区は97.3と女性の方が多い。これは女性の方が長生きだから。
5歳未満の幼児の性比は、全国、東京23区とも104.8で男性の方が多い。生まれて来る子供に男性の方が多いのは、生物学的に男の方が死亡率が高いことを見越した、神の摂理によるものだ。
区別に見ると、性比が低く、男性に比べて女性が多い区は、目黒区、港区、渋谷区、文京区、世田谷区の順。これは「住みたい区ランキング」結果と似ている。
女性が好むのは「三高」の区。正しくは、千代田区と中央区を除いた「三高のブランド住宅区」となる。(目黒、港、文京)
一方、男性が好むのは、江戸川区を除くと都心への通勤が便利な区が並ぶ。(台東、千代田、豊島、江戸川、中野)
「三高ブランド住宅区」に住みたいと望む気持ちは男女に共通している。
女性にはこれを実現させる実行力があり、男性は、希望はあくまで希望に留め、実利を優先する。男と女の間に横たわる本質的な違いが性比の差を生んでいるとするなら、何とも奥が深い結果。

これだけ「東京」にお世話になっていながら、意外と知らない内容も多く楽しく読めた。

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