2013年11月30日土曜日

酵素ダイエット講習

簡単な酵素ダイエット講習を受ける機会があった。
特にダイエットをしようと思っている訳ではないが、酵素について学べるいい機会だったので拝聴した。

講師は一般社団法人日本ナチュラルビューティスト協会の高島さん。

・酵素は、人間のあらゆる生命活動に関わっている。
・酵素は全ての食べ物に含まれるが、48℃以上加熱すると死滅する。

・体内酵素は「消化」(食べ物を消化して栄養を全身に届ける)と「代謝」(デトックスや細胞の再生、免疫力を高める、エネルギーを燃やす)の二つの働きをしている。
・酵素量は加齢とともに減少する。消化酵素は加齢時にも減少させることができないので優先的に残されるため、代謝酵素が減少し不足する。
・代謝酵素を食物酵素として外部から補う必要がある。
・人間は死んでも、土に還る分の酵素は残している。
・食品添加物や抗生物質はたくさんの消化酵素を必要とする。

・空腹時に特定の食べ物を食べたくなるのは、その食べ物を分解する酵素が不足して栄養素を吸収できない栄養不足状態だから。でも特定の栄養素を摂り過ぎると特定の部位で毒素や死亡として蓄積してしまう。。
という訳で空腹時食べたくなるものによって、将来なりがちな体型が分かるということらしい。
将来の体型:空腹時に食べたい物→不足している酵素→不足している栄養素
①全体ポッチャリ マンゴー型:チョコ、カップケーキ、クリームパン、麺類→炭水化物分解酵素→糖質
②下半身ポッチャリ 洋梨型:揚げ煎餅、ドーナツ、ポテトチップス→脂肪分解酵素→脂肪
③お腹ポッコリ リンゴ型:唐揚げ、フランクフルト、チーズ、ナッツ→タンパク質分解酵素→タンパク質
④ほっそりだけど疲れやすいバナナ型:乳製品、ヨーグルト、プリン→乳糖分解酵素、酵素全般→栄養全般

<ナチュラルハイジーン>・・1日の生理リズム
排泄:午前4時〜昼12時・・消化酵素が不要な果物など、朝はそんな食べなくてOK。
栄養補給と消化:昼12時〜午後8時・・小腹が空いたらドライフルーツや果物を食べる。チョコを食べる前にはバナナを食べる。食事は野菜から。焼肉だったらキムチから。揚げ物だったらキャベツから。
吸収と代謝:午後8時〜午前4時


酵素って、とっても重要なんですな。
食べ方によっても酵素の消費量が変わったり、足りない酵素によって食べたいものが変わってきたり。
酵素を考慮した食生活に明日から切り替えよう。(ダイエットは特にしないけどね)



2013年11月24日日曜日

情報の重要性

会社でHOLOS-BRAINSの細田収さんのセミナーを受けた。
細田さんは住友不動産から東京海上日動あんしん生命に転職し、成果を出した人らしい。
「心理学と脳科学の観点からの営業セミナー」ということで興味を持って受講した。


売り手と買い手に別れて、売り手は1,000円の価値を売り込むトークを4分間で行い、買い手がジャッジするというペアワークを行った。
これは、「売り込み」という行為を行うにしても、まず商品の説明を行うのではなく、相手のニーズ、嗜好を聞くことから入るべし、ということに気づくワークだったようだ。

この日の最大の気付きがあったのは、以下のワーク。
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あるメーカーが新商品のパンフレットを企画制作することになり、2社の印刷会社に声をかけたところ、A印刷とB印刷の営業パーソンがそれぞれ訪問してきた。

それぞれの営業パーソンが聞いて帰ったことは以下の通り。
A印刷:パンフレットサイズ、色数、部数、納期、納品場所
B印刷:新商品の特徴、客層とニーズ、販売方法、競合メーカー、販売時期

さて、A印刷、B印刷にそれぞれ期待することは何か?また、そこにはどんな違いがあるか?
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A印刷には、印刷業務そのもの、価格(安さ)を期待し、B印刷にはクリエイティブな紙面を期待する、ということで、営業サイドがヒアリングする内容で相手の期待する内容が異なってくるというもの。

このワークで気付いたのは、営業場面に関わらず、相手がどんな情報を持っているか(持っていると思うか)によって期待する内容が異なってくるということ。
新入社員の提案と、中堅社員の提案では、提案内容が同じであっても取り上げられる確率が断然異なるのは、提案の内容以前に、持っているだろうと思われている情報量が異なることによる「期待度」の違いからではないだろうか。

情報を持っている(少なくとも持っているように振る舞う)という行為は相手の自分に対する期待度を上げ、自分のプレゼンを受け入れやすくするためには必須のこと、というわけだ。

顧客にとって営業マンが、その業界の情報をもっているのは当たり前で、業界以外の情報・知識をどれだけ持っているかによって、営業マンに期待する付加価値度合いが変わってくるということらしい。
情報過多の時代。情報の取得能力よりも情報の選別能力の方が重要であると言われているが、周りから「情報を持っていると思われる」ことは相変わらず非常に重要ということだ。

その他にも、「販売代理人」と「購買代理人」という概念も参考になった。
これからの営業は、会社サイドの売り込み(販売代理人)ではなく、顧客サイドの目線をもった「購買代理人」として振る舞う必要があるというものだ。


細川氏、不動産業から保険業界へ転職ということで、どちらにも精通していて面白いトピックを色々話してくれた。
◯保険会社は自分が採用(ヘッドハンティング)してきた人間は、自分で育成する。
◯保険業界の考え方としては、「商品は常に顧客のライフプラン上にある」。なので契約してからがスタート。
◯表面的なニーズに対する対応は常に比較にさらされる。顧客の真のニーズを発見することが重要。
 ☞情報過多時代においては、課題解決能力よりも問題発見能力の方が大切という、ダニエル・ピンクの主張とも合致する。

リアルな世界がネット世界に喰われつつある。保険業界もその一つ。
しかし、細川氏の見立てでは、不動産業界は宅建業法がある(宅建業法に守られている)のでネット世界には喰われないとのことであった。
ネット世界で勝負すると、スピード感がリアル世界の何倍にも加速する。新規参入組にはチャンスであり、既存組にとっては脅威である。
医薬品業界が色々理屈をつけてネット販売を不可とし対面販売にこだわるのも、そう言った理由があるのかもしれない。

当初、期待した心理学、脳科学との関連部分は時間の関係もあって、あまり聞くことができなかったが、それ以外の点で気付きの多いセミナーであった。




2013年11月16日土曜日

顔の見える商品・サービス


近くの高級スーパーでみつけたポップ。
「エクアドル産なのに田辺さん」というところに違和感あってちょっと笑ってしまった。

前に『人を動かす、新たな3原則』の投稿でも書いた(http://omachido.blogspot.jp/2013/11/blog-post_10.html)が、顔が見えるということが非常に重要ということで、最近は「◯◯さんの××」というコピーに加えて、その◯◯さんの顔写真が載っているポップが添えられているケースがよく見られる。

今回のちょっと違和感がある「エクアドル産 田辺さんのバナナ」というコピーに持った違和感を何故か考えていて思った。
これが「エクアドル産 ガブリエルさんのバナナ」だとどうなのだろうか。
(ちなみにエクアドルはカトリックの国なので、ヨハネ、ガブリエル、ヤコブと言った名前が多いらしい)
日本人だと「ガブリエルさん」のイメージが湧かないのでフックとしての効果は薄れるのかもしれない。
これは日本人だと、顔写真のないが「田辺さん」であってもイメージが湧くからなのではないか。
顔写真があった方がよりイメージが湧く(というよりそのまま)ので、それが「顔が見える」という意味でベストだが、なくても「◯◯さん」と書くとなんとなくの人のイメージを出せるということなのであろう。

広告効果として考えると
①顔写真付きの「◯◯さん」
②顔写真なしの「◯◯さん」(日本人名)
③顔写真なしの「◯◯さん」(エクアドル人名)
という順だと思うが、バナナのケースでは、顔写真付きだったら「◯◯」は「ガブリエルさん」の方が「田辺さん」よりも広告効果が高いのではないか。

広告効果はさておき、田辺さんがエクアドルで作ったバナナなので、「エクアドル産 田辺さんのバナナ」という記載になっている訳で、これが広告効果の高さに鑑みて「ガブリエルさんのバナナ」となっていたら、今流行の(?)食品偽装になっちゃうか。




2013年11月10日日曜日

『ゲームのルールを変えろ』

ネスレ日本の代表取締役兼CEOの高岡浩三氏の著作。

キットカットのプロモーション戦略の話しなど、マーケティングについて書かれていたのが面白そうで購入した。
読み続けると氏の主張は
「戦後成功してきた『ニッポン株式会社モデル』からの脱却には人材がキーポイント。そして、そのためにマーケティングの発想が必要」
ということであって膝を打つ感じであった。

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「ニッポン株式会社モデル」
戦後日本は焦土と化した。
その直後から、日本は先進諸国に「追いつき、追い越せ」とばかりにしゃかりきになって復興への道を突き進む。その結果、世界に類を見ない急激な右肩上がりの成長を遂げるが、それを支えた要因はいくつかある。
銀行のメインバンク制によって資金を手当し、稼いだ利益の株主への還元を押さえるシステムが功を奏した。これにより、将来の収益を生み出す設備投資に資金を振り向けることが可能となった。(現在の日本において、あらゆる産業での利益率がグローバルスタンダードと比較して圧倒的に低いのは、これに起因している)
加えて労働者のコストが安かったことも寄与した。
刻苦勉励という日本人特有の気質によって、成長を体現するために欠かせない労働の質が極めて高かったことも無視できない。これには当時の日本の教育システムが重要な役割を担った。
人と違う人はいらない。リーダーは必要ない。人をきちんと動かすことが出来るマネージャーがいればいい。
こうしたシステムと相まって、戦後半世紀で5000万人の人口増加がもたらされたこともあり、日本は世界で戦う競争力を身につけることができた。高度成長の波に乗ってGDPを世界第二位まで上げ、経済大国として確子たる地位を築く。

しかし、労働力のコスト優位性がなくなり、人口増加もストップした1980年代後半のバブル絶頂期を過ぎると、急激に競争力を失うことになる。
本来であれば、その時点で何かを変えるべきだった。だが、日本企業の経営者はそれまで成功していたニッポン株式会社モデルを変えようとはしなかった。。


ニッポン株式会社モデルからの脱却は、人材がキーポイントになる。
企業とは人が中心にいる世界だ。採用の問題しかり、育成の問題しかり、評価の問題しかり、労働組合の問題しかり。真っ先に人の問題にメスを入れるべきである。

その時に欠かせないのがマーケティングの発想である。人の問題とマーケティングという組み合わせは意外に思うかもしれないが、マーケティングの導入こそあらゆる問題を解決する突破口になる。
マーケティングとは、「経営そのもの」であると自分は理解している。 ニッポン株式会社モデルの根本的な問題は、マーケティングに無知なことだ。
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確かに、人材の課題とマーケティングという一見無関係な二つが実は関連しており、どちらも非常に重要であるという指摘は珍しい。そして個人的には非常に腑に落ちる意見である。


「人材の課題」について著者は「人材育成」だけが大切とは言う言い方をあまりしない。
それは「リーダーの育成が課題である」との認識だからだ。
「リーダー」の資質は誰もが持っているものではないということなのかもしれないし、人材流動性の高い外資ならではの感覚なのかもしれない(著者は「ネスレ日本」は外資にあって外資あらず、雇用に関して非常に日本的な会社であると述べているが)。
著者のリーダーシップ論を見ていく。
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リーダーシップで重要なのは、リスクヘッジをしながら新機軸を打ち出す能力。

リーダシップとは、多くの人を束ねて自分が打ち出した考えを「やらせる」度量だと誤解されている節もあるが、これは違う。
リーダーは、自分の考えたこと、主張したことを「やってみせる」のが最低条件になる。

リーダーシップを発揮して変革へ踏み出そうとすると、必ず反対される。
真っ先に反対するのは社長、部長、課長など、自分より上の人間だ。彼らは、過去に生み出された現在進行中のモデルの完璧な遂行によって評価され出世した人間である。自分の下の人間が新しいことを始めようとした時、自分を否定されたと感じて不愉快になるからだ。
それと同時に、過去の自分がうまくやってきたことについては絶対的な自信を持っている彼らも、未体験のビジネスでは下の人間と同じ土俵で勝負することとなる。未体験への不安から認めることを躊躇するのだ。
プロの経営者としてニッポン株式会社モデルを本気で変えるのであれば、まずはその悪しき習慣から手を付ける必要がある。

「リーダーをつくれる人間」 これが、ネスレにおけるリーダーの定義だ。
ニッポン株式会社モデルから脱却させ、次世代のリーダーが育つ土壌を整えることが、プロの経営者としての責務なのである。
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破綻をきたしたニッポン株式会社モデルではマネージャーは量産されたが、リーダーを育てることはしなかった。
グローバルで戦うためにもリーダー育成が日本の最重要課題ということだ。


ネスレという会社についても様々な観点から述べられている。
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ネスレが事業を進めるか否かの決断をする場合は、大げさではなく、過去の歴史を1000年単位でみる。そのうえで、 これから先50年の人口動態などに鑑みて、その国が発展していくのか、それとも衰退していくのかという視点をベースに検討する。
ヨーロッパを拠点とするネスレは、非常に長期的な視点を重視する企業。その意味では、超短期で利益を追求するアメリカ型資本主義と一線を画す。

ネスレの株主総会は、プロの経営者が長期的視点に立ったビジョンを策定する。それを7時間、8時間という長い時間をかけて丁寧に株主に説明し、コミットメントをもらうというスタイル。

ネスレでは、ブランドごとに損益計算書をもっている。

ネスレの行動哲学は” Think Globally,Act Locally.”

ネスレは昔から「ブランドマネジャー制」を設けている。
社内的には、「ビジネス・エグゼクティブ・マネジャー:BEM)と呼ばれるカテゴリーブランドのトップが、カテゴリーブランドを1つの企業に見立てて販売戦略を立て、損益を全て管理する。

3・11震災時の方針として、日本人以外の社員を国外に帰還させる会社が多い中、
「外国人であっても帰ることは許さない。日本の力になりなさい。それがネスレだ」
3/11の地震発生から1時間後、スイス本社の副社長の口から出てきた言葉。
これはインターナショナルスタッフとして日本に来ている外国人はお客様ではないという考え方の表れ。現地に同化する。それがネスレのカルチャー。

ネスレグループでは、企業が負うべき責任として「共通価値の創造:CSV」というコンセプトを戦略に掲げ、グローバルに展開している。
この柱は3つ。
1つは、栄養。昨今子供の栄養の過不足が問題になっている。
2つ目は水資源。水は世界的に枯渇しつつあり、砂漠化の進行は待ったなしの状況。
3つ目が地域・農業開発。 ネスレが最も懸念しているのは、資源の枯渇である。 新興国が豊かになるにつれ、世界の人口は爆発的に増加している。食料危機はすぐそこまで来ている。
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ネスレ日本での高岡氏の活躍として、マギーブイヨンのクロスマーチャンダイジングの話し、キットカットのプロモーションの話し、ネスカフェアンバサダーモデルの導入などがあって読み物としても非常に楽しい。

○イノベーションとは、思いつきを行動に起こすか起こさないかである。
○失敗の定義とは何か。それはおそらく、失敗から何も学ばないことだ。
○本当のブランドを持つことが、(事業において)絶対的優位に立つ条件だ。
などの格言も実際の経験とセットで語られると説得力が違う。

高岡さん、機会があったら是非お会いした人だ。



『人を動かす、新たな3原則』

モチベーション3.0のダニエル・ピンク氏の最新刊。
内容がスゴく濃いし、目から鱗の知見が満載の良書。

ダニエル・ピンク氏によると、今我々の大半は実は意識せずに広義の「セールス」(売らない売り込み)を行っているらしい。

クァルトリクス社による職場の実態調査によると、
1 現在、職場で過ごす時間の40%が、売らない売り込み〜購入行為に誰一人関与せずに、他人を説得し、影響を与え、納得させること〜にあてられている。広範な職業にわたって、一時間ごとに約24分が人を動かすことに費やされている。
2 たとえかなりの時間を費やす必要があるとしても、この側面は仕事で成功を収めるうえで不可欠だとみなされている。
ということが判明した。

以下の四つの質問をしてみて欲しい。
1 商品やサービスの購入を人に勧めることで生計をたてているか?
2 独立して働くか、副業であっても何か自分で事業を営んでいるか?
3 仕事にスキルの弾力性が求められるか?つまり、境界と役割を超える力、専門外の領域で働く能力、終日、多様な業務をこなす能力が求められるか?
4 教育か医療の分野で働いているか?
全ての質問にNOでなければ、あなたは「売らない売り込み」のセールスの仕事をしているということだと、著者は言う。


セールスの取引の金言ABC「Always Be Closing(必ず契約をまとめろ)」、は一部ものしかセールスに関わっていない、買い手が最小限の選択肢や情報の非対称性に直面している時代の過去の金言である。
現在では、同調力(Attunement)、浮揚力(Buoyancy)、明確性(Clarity)という三つの特質が21世紀の環境で効果的に人を動かすために必要とされる新たな条件だ。
ちょっと正直、無理クリABC合わせにした感も否めないが、内容的には納得だ。


【同調力】
わずかでも力を付与された感覚を味わった者は、他の人の観点に同調しにくく(「視点取得」ができにくく)なる(それに、おそらくできなくなる)ということが調査結果から分かっている。

<視点取得と共感>
視点取得は認知的能力で、主に思考に関するもの。一方共感は感情的な反応で、主に感情に関するもの。非常に近いが、完全に同じではない。
視点取得と共感のどちらがより交渉における成果を上げるかという実験が、ガリンスキーとウィエイアム・マダックスにより行われた。
結果、視点取得の立場を取る者が、自身の物質的利益を犠牲にすることなく、最高レベルの経済的効率性を獲得した。一方、共感も有効ではあるが、視点取得ほどではなく、創造的解決策と自己利益の両方を見いだそうとすると不利になる場合もあった。
最終的には、相手の頭の中に入り込む方が、自分自身の心の中に相手を入れるよりも、利益をもたらすということだ。

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外向的な人がセールスパーソンに最適という概念はほぼ自明の理とされているが、実は、その概念が真実だという証拠はほとんどない。
外向性は販売量とは何の関係もない。
それどころか、外向的傾向が強すぎると、実際には成績の低下に繋がる恐れがあることが、その他の調査により裏付けられるようになってきた。
セールスパーソンに一番打撃を与える行動は、情報に疎いことではなく、行き過ぎた自己主張と熱意のせいで、顧客に頻繁に接触を図ることだ。外向的な人は、自分で自分の足を引っ張る傾向がある。
内向的な人は「検査向き」で、外向的な人は「対応向き」という人もいる。
もっとも同調力があるのは、両向型のタイプだ。
両向型の分布は全人口の中で最も数の多い。すなわち、我々の大半は生まれながらにセールスパーソンなのである。
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実は外向的な人が必ずしも営業向きではない、というのは薄々感じていたことではあった。車にしても、保険にしてもスーパー営業マン(ウーマン)は必ずしも押しの強い人ではなく、顧客の話しをよく聞き、そしてちゃんと顧客のためのコンサルを行う人だからだ。
(全体的なボリューム層である)両向型のタイプが、実は「セールス」に必要な「同調力」を最ももっているということだ。


【浮揚力】
訪問販売に出ると、いつも「拒絶の大海」に直面する。
この拒絶の大海の真ん中で沈まずに浮かぶ方法が、他者を動かす上で必要不可欠な二番目の特質だ。これを「浮揚力」と名付けた。

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ポジティブなセルフトークはネガティブなセルフトークよりも効果的だ。
ところが、それよりも効果的なセルフトークは、単に感情面を変化させるにとどまらない。言語学上の分類も変わる。平叙文から疑問文になるのだ。
イリノイ大学のイブラヒム・シネイ、ドロレス・アルバラチン、南ミシシッピー大学のケンジ・ノグチが2010年に実施した一連の実験で「疑問文形式のセルフトーク」の有効性が確認された。
その理由は二つからなる。一つには、疑問文という形式が、答えを引き出す役目を果たしているからだ。しかもその答えの中に、任務実行の戦略が含まれるのだ。
二つ目の理由もこれに関連する。疑問文形式のセルフトークは、自発的、または内発的動機による目標追求の理由を考えるように促す可能性がある。

豊富な調査結果が証明するように、外部からの圧力よりも内部からの選択に動機づけられた方が、積極的に行動する傾向がある。
断言的なセルフトークは、動機を回避する恐れがある。質問形式のセルフトークは、行動選択の理由を引き出し、その理由の大半は自己の内部から生じていることを思いださせる。
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ポジティビティ研究の第一人者 ノースカロライナ大学のバーバラ・フレドリクソンによるとネガティブな感情は次第に人の視野を狭め、当座の生存を目的とした行動へと駆り立てる(怖いから逃げる、頭に来たから闘う)。 対照的に、ポジティブな感情はこれと相反する方向に働く。ほかのどのような行動が可能か着想する力を拡張し、意識を幅広い思考に向けて開放させ、我々の受容力と想像力を高めるらしい。

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ポジティビティの黄金比率 ポジティブな感情とネガティブな感情の比率が3対1を上回ると一般的に人生を謳歌できるようになる。
一方でフレドリクソンとロサダは上限があることにも気づいた。
比率が高すぎる場合は、低すぎる場合と同様に非生産的になる。
比率が11対1に達すると、ポジティブな感情は有益どころか有害な影響を及ぼすようになった。人生が底抜けの楽天家による無知の祭典と化し、自己欺瞞が自己鍛錬を抑え込むようになる。
「適切なネガティビティ」は必要不可欠。それなしでは、ふるまいのパターンは硬直化する。ネガティブな感情は、自分の行動に対するフィードバックや、機能することと機能しないことに関する情報、向上する術を教えてくれるのだ。
人々の健全なポジティビティ比率を、フレドリクソンは、矛盾する二つの力、つまり浮力と重力の調和とみなす。
「浮力は、人を高く押し上げる目に見えない力で、重力はこれと反対に作用し、地上に引きつける力だ。抑制のない軽さは、浮ついた、地に足のつかない、非現実的な状態にする。抑制のない重厚さは、度重なる苦難に倒れて立ち上がれなくする。それでも、この二つが適切に組み合わさると、二つの相反する力により、沈まずに浮揚したままでいられる」

「この人たちの心を動かすことができるだろうか?」
社会科学者が突き止めたように、疑問文形式のセルフトークは断定的セルフトークよりも有益であることが多い。
けれども、質問を投げかけたら、迷子の風船のようにただ宙に浮いたままにしておいてはいけない。その質問にこたえること〜率直に文字にして。
質問に対する答えがイエスの理由を五つ書き出す。
その理由から、任務遂行に必要となる効果的な戦略に気づいて、単なるアファーメーションよりも、確固とした揺るぎない基盤が得られる。
求めよ(ask)、さらば与えられん。
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【明確性】
明確性とは、見えていなかった様相を明らかにして、おかれた状況を理解できるようにする能力で、それまで存在に気づかなかった問題を突き止める能力のことだ。

優れたセールスパーソンは問題解決に長けた人だと、長年にわたり言われてきた。
しかし、特定の人だけではなく誰もが情報を豊富に入手できる現代社会では、その能力の重要性は以前よりも低い。
自分の問題を正確に把握していれば、たいていは誰の助けも借りずに、自力で必要な情報を探して決断を下せるものだ。

一方で、本当の問題を取り違えているとき、はっきり把握していないとき、あるいは皆目検討がつかないときに、他者の助けは大いに役に立つ。
そのような時、人の心を動かすために必要なのは、他人の問題を”解決”する能力よりも、問題を”発見”する能力なのである。

「発見された問題の質は、得られた解決策の質を予見させる」
人を動かすために”問題を認識する”には、長年利用されてきた二つのスキルを今までとは逆さまにする必要がある。
一つ目のスキル。かつて、優秀なセールスパーソンは情報を”入手”することに長けていた。現在、優秀なセールスパーソンは情報を”監督する”ことに長じていなければならない。
二つ目のスキル。かつて、優秀なセールスパーソンは疑問に”答える”ことに長けていた。 現在、優秀なセールスパーソンは、”訊ねる”ことが得意でなければならない。
可能性を明らかにし、隠れた論点をあぶり出し、思いもよらない問題を見つけ出すとういことだ。そのためには、訊ねるべき質問がある。

情報過多の時代においては「情報を入手すること」ではなく、”キュレーション(情報を収集して分類し、新しい価値を持たせて共有すること)”が重要になる。
建築家ミース・ファン・デル・ローエが建物の設計について語った言葉は、そのまま現代の人間にも当てはまる。「少ない方が豊かになれる」


面白かった知見をいくつか紹介したい。

<メールの件名ピッチ>
著者は「ピッチ」という言い方で、相手に対して投げかける言葉の「投げかけ方」の重要性にも言及している。
その中のひとつに「メールの件名ピッチ」というのがある。
カーネギーメロン大学の三人の教授が、メールの件名が及ぼす影響について検証した。
被験者は「仕事に直接影響するメールを読む」傾向と、「内容に関してある程度不確実に感じるとき、すなわり、どんなことが書かれているのか『好奇心』を抱く時に、メールを開ける可能性が高くなる傾向がある」ということが判明した。
「有用性」は、多数のメールが届いている時に影響力を及ぼす一方で、「好奇心」は、処理すべきメールがあまりないときに受信者の注意を引きつける。
被験者は有用なメールを外発的理由から開封した。これには利害が関与するからだ。その他のメールは内発的理由から開封した。ただ好奇心をそそられたからだ。
外発的動機に内発的動機を加えるとかえって裏目に出やすいことが多数の調査からわかっている。「機能性に優れ安価なコピー機をお探しの方へ」にするか「コピー機の革命!」のどちらかにすべきで、「キャノンIR2545はコピー機に革命を起こす」とすべきではない。
有用性と好奇心の他に、3つ目の要因として具体性が挙げられる。超具体的に「ゴルフスイングの改善のために」→「半日でゴルフスイングを改善できる四つのヒント」
など。

<ピクサーピッチ>
著者はいくつか、このピッチの事例を挙げているのだが、その中の一つがこの「ピクサーピッチ」。
元ピクサーのストーリー担当 エマ・コーツ ピクサーの映画は、ストーリーテリングの深部構造において、次の順で展開する6つの文章を含む。
昔々、〜〜〜。毎日、〜〜〜。ある日のこと、〜〜〜。そんなわけで、〜〜〜。そんなわけで〜〜〜。そしてついに〜〜〜。
この六文形式は、心に訴えるし融通も利く非常に活用度の高いテンプレート。

<顔の見える効果〜”奉仕”というモチベーション>
優秀な放射線医と平均的な放射線医を隔てるスキルの一つに、「偶発的所見」の発見ということが挙げられる。これは医師が想定していなかった異常、治療中の症状に関連しない異常を画像に発見することだ。
顔写真がCT画像の横に現れるように設定して、画像診断後、医師たちにアンケートをとったところ、医師たちは全員「写真を見たあとで患者に対して一層の共感を抱いた」と答え、画像検証に一層細心の注意を払ったと答えた。
実はこの実験はその後の真の実験を検証するためのもので、3ヶ月後に同じ画像を、今度は顔写真なしで診断させたところ、顔写真がある時に発見された偶発的所見の80%は、顔写真が削除された場合に報告されなかった。
患者を無名の一症例ではなく、1人の人間として対応することの重要性が明らかになったというわけである。
人間は主に自己の利益によって動機づけられると考えがちだが、我々は誰もが、社会科学的な用語でいえば「プロソーシャル(向社会的)」とか「自己超越的」と言った理由でも行動することが、数多くの研究から分かっている。

<意欲を起こさせるインタビュー>
「意欲を起こさせるインタビュー」の第一人者、エール大学研究科学者 マイケル・パンタロン が開発した、 のらりくらりと試験前に勉強をしない子供に対する質問。
そういう子供たちに「さぁ、勉強するんだ」とか「頼むから勉強してくれ」とは言ってはならない。
代わりに、二つの質問を投げかける。
質問1「1が『これっぽっちも勉強するつもりはない』で、10が『勉強する気満々』だとしたら、1〜10の間の数字で表すと、どのくらい勉強するつもりがある?」
子供が答えたら次の質問をする。
質問2「どうしてもっと低い数字を選ばなかったの?」
「これは誰もが不意打ちを食らう質問だ」とパンタロンは著書”Instant Influence”で述べている。
選んだ数字が、もっと低い数字でない理由を訊ねることが、変化のきっかけとなる。
何かの行動や観念を拒んでいる人の大半は、二元的なイエス、ノーの立場はとらない。
行動に移したいという欲求を相手がわずかにでも抱いているなら、1〜10のうちどこに位置するか訊ねることで、一見「ノー」だった姿勢が、実際には「たぶん」だということが明らかになる。
更に重要なのは、子供が3ではなく、4を選んだ理由を説明するとき、勉強する理由を告げ始めたことになるという点だ。現在の振る舞いを防衛する態度から、ある程度であれ、異なる振る舞いを望む理由を述べるという態度に変化した。
パンタロンによれば、これによって勉強に対する個人的、肯定的、内発的動機が明確になり実際に本人が勉強する可能性も高まるという。

これを、数ヶ月後に中学受験を控えているのに、中々エンジンのかかり具合にムラのある我が家の子供に対して実践してみた。
「1は中学受験をしない子レベル。10は100%フル稼働で頑張っている状態として、今の頑張りを1〜10までで表してみて。」
「・・2。。」
1は中学受験をしない子レベルという設定だったので、次の「なんでもっと低い数字を言わなかったの?」という次の質問をすることが出来ず完敗。
現実は中々想定通りに行かない。。(泣)

2013年11月4日月曜日

『ロスジェネの逆襲』

池井戸潤、半沢直樹シリーズ第3弾。テレビドラマの続きということで、読みたいと思っていたら会社のメンバーが貸してくれた。

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1994年から2004年に亘る就職氷河期に世の中にでた若者たち。その彼らを後の某全国紙の命名により「ロスト・ジェネレーション」略してロスジェネ世代と呼ぶようになる。
身を削るような就職活動をくぐり抜けて会社に入ってみると、そこには大した能力もないくせに、ただ売り手市場だと言うだけで大量採用された危機感なき社員たちが中間管理職として幅をきかせていた。バブル入社組である。
大量採用のおかげで頭数だけはいるバブル世代を喰わすため、少数精鋭のロスジェネ世代が働かされ、虐げられている。

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昭和63年に三菱銀行に入校した著者(まさにバブル世代)ならではの書きようだが、今回はロスジェネ世代が主人公とも言える。


相変わらずどんでん返しが続く展開だが、その要所要所で著者の池井戸潤の価値観が登場人物によって語られる。

大勝負が終わって沙汰を待つ段階で、半沢(バブル世代)が森山(ロスジェネ世代)に語るセリフ。
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「世の中を儚み、文句をいったり腐してみたりする——。でもそんなことは誰にだって出来る。お前は知らないかも知れないが、いつの世にも、世の中に文句ばかりいている奴は大勢いるんだ。だけど、果たしてそれに何の意味がある。例えばお前達が虐げられた世代なら、どうすればそう言う世代が二度と出てこないようになるのか、その答えを探すべきなんじゃないのか」
「あと十年もすれば、お前達は社会の真の担い手になる。そのとき、世の中のあり方に疑問を抱いてきたお前達だからこそ、できる改革があると思う。その時こそ、お前達ロスジェネ世代が社会や組織に自分達の真の存在意義を認めさせるときだと思うね。
オレたちバブル世代は既存の仕組みに乗っかる形で社会に出た。好景気だったが故に、世の中に対する疑問や不信感というものがまるでなかった。つまり、上の世代がつくりあげた仕組みに何の抵抗も感じず、素直に取り込まれたわけだ。だが、それは間違っていた。そして間違っていたと気づいた時には、もうどうすることも出来ない状況に置かれ、追いつめられていた。」
「だが、お前たちは違う。お前たちには、社会に対する疑問や反感という、我々の世代にはないフィルターがあり根強い問題意識があるはずだ。世の中を変えていけるとすれば、お前たちの世代なんだよ。失われた十年に世の中に出た者だけが、あるいは、さらにその下の世代が、これからの十年で世の中を変える資格が得られるのかもしれない。ロスジェネの逆襲がこれからはじまるとオレは期待している。だが、世の中に受け入れられるためには批判だけじゃダメだ。誰もが納得する答えが要る」
「批判はもう十分だ。お前たちのビジョンを示して欲しい。なぜ、団塊の世代が間違ったのか、なぜバブル世代がダメなのか。果たしてどんな世の中にすれば、みんなが納得して幸せになれるのか?会社の組織も含め、お前たちはそういう枠組みが作れるはずだ」
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半沢は、半沢が考える「枠組み」を聞かれ、「あるのは信念だけ」と答える。
「正しいことを正しいといえること。世の中の常識を組織の常識を一致させること。ただ、それだけのことだ。ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価される。そんな当たり前のことさえ、今の組織はできていない」


そして中野渡頭取の言葉。
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「どんな場所であっても、また大銀行の看板を失っても輝く人材こそ本物だ。真に優秀な人材とはそういうものなんじゃないか」
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これはドラマで半沢直樹自身が同期の近藤直弼に向かって同様の内容を言っていた。

手に汗握る展開の物語の内容についてはネタバレになるのでここでは割愛。
でも第3作も面白かった!