フェルミ推定の重要性を指摘した細谷功氏の著作。
会社と人間の老化に関するメタファーをもとに、組織も老化現象を起こすのが必然であるということを述べた本。
「会社あるある」が著書内の至る所で論理的に語られている。
「あるある」で済んでいるうちはいいのだが、経営者とするとこの「組織の老化」をどうしていったらいいのかを真剣に考える必要がある。
そんな答えが簡単に出るようなら苦労はしないのだが、それを導く一助になる本。
「老化」を「後戻りのできない『不可逆プロセス』の進行」と定義する。
それは「数が増える」「均質化する」「複雑化する」ことで劣化する現象で、具体的には以下のようなことが起こる。
・ルールや規則の増加 ・部門と階層の増殖
・外注化による空洞化
・過剰品質化
・手段の目的化
・顧客意識の希薄化と社内志向化
・「社内政治家」の増殖
・人材の均質化・凡庸化
・性悪説化(加点主義→減点主義)
・形式主義化(中身重視→形式重視)
これらは不可逆プロセスで、人間も組織も決してこのプロセスを後戻りして「若返る」ことはない。
人間ではあまりに当たり前のこの法則が、会社という組織体では当たり前ではなく、すべての会社は永遠の命を持っていて成長し続けるという前提で動いているように見えるのは何とも不思議である。
この幻想の原因は一言で言えば「資産の負債化に気づかない」ことである。
もちろんここでいう不可逆プロセスは悪いことばかりではない。「成長」というのも、まさに後戻りしない不可逆プロセスだからだ。
実は「成長」と「老化」という不可逆プロセスは紙一重で、端的に言えば、「完成されるまでの不可逆プロセス」が成長であり、「完成後の不可逆プロセス」が老化である。
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不可逆プロセスの「メカニズム」は、会社という組織に内在する様々な「非対称性」によって生じる。
「非対称性」を時間軸に適用したものが「不可逆性」、つまり後戻りができないということ。
さらに元をたどれば、その非対称性は人間が持つ心理的特性と自然界が持つ物理的特性からきている。
心理的特性とは、「見えないものより見えるものに重きを置く」「以前にやったことを繰り返そうとする」「何かを得ることへの期待より、失うことへの恐れの方が大きい」という誰もが避けることのできない性質である。
また、物理的特性とは、会社を一つの大きな集団として見た場合に複雑さや乱雑さが増し、均質化されてくることである。(一般に「エントロピー増大の法則」と言われる)
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物理における普遍的なルールである万有引力の法則や、量子力学、あるいは相対性理論といったものは、基本的には時間を逆戻しにしても成立する。
これに対して、時間に対する不可逆性を表現しているのが熱力学の第二法則、一般に「エントロピー増大の法則」と言われるものである。
エントロピーは、元は熱力学の世界を説明するために導入された物理量である。熱エネルギーから力学的エネルギーへの不可逆性(力学的エネルギーは100%熱エネルギーに変えられるが、逆は真ではなく、熱エネルギーを力学的エネルギーに変換する際には必ずロスが発生することを指す)を説明するためにも用いられる。
またごく乱暴に定性的な表現をすれば「乱雑さ」を表現する量であると言われている。
このエントロピーという物理量が、物質もエネルギーも出入りしない閉じた一つの系(孤立系)においては時間とともに減少することはなく、増加の一方をたどる、というのが「エントロピー増大の法則」である。
つまり、ある閉じた世界の乱雑性は、時間とともに必ず増大していくことを意味する。
熱力学でエントロピーというと、外部とエネルギーや物質の出入りがない状態(孤立系)での乱雑さの度合いを指しているが、組織の場合、「成果につながらないエネルギー」とも定義できる。
部門間の対立、誤った判断、不満を抱く従業員、器量の足りないリーダー、歯車が狂った組織、現実にそぐわない制度、時代遅れの戦略、不安に覆われた企業文化。。。これらは全て企業のエントロピーを増大させる。言い換えれば秩序を乱すのだ。
「エントロピー増大の法則」の一つの側面には「乱雑性が増大していく」ことがあげられる。
この「乱雑性が増える」とは、一人一人の従業員の方向性がバラバラになることを意味する。
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「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則と同様に、
「ルーティンワークはクリエイティブワークを駆逐する」
その理由①規則の増加は止められない、②柔らかいクリエイティブワークはかたいルーティンワークに追いやられる、③組織内の評価のされ方で、ルーティンワークをサボれば明確な減点だが、クリエイティブワークをやらなくても減点にはなりにくい。
クリエイティブワークにおいては、作業リストを用意するのが難しく、いわば「頼まれもしない仕事をいかに能動的かつ個性的にやるか」が勝負。
クリエイティブワークは、「やるべきことをやっていない」を可視化するのが非常に難しい性質を持っている。
同様に「かたいものはやわらかいものを駆逐する」。
大企業病の例としてよくあげられる「減点主義」こそ、ルーティンワーク増加の原因であり、また結果でもあると言ってもいいだろう。
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ブランド力を高めることが「会社の老化」に貢献してしまっている。
それは社員の「依存心の増加」である。
「ブランドを築くために」働くのと、「出来上がったブランドの下で」働くとでは、ほぼ正反対の意識になる。
依存心の強い社員が増えれば経費を水膨れさせるばかりか、イノベーションを阻害するようになる。
「大学生の人気就職先ランキングの上になったらその会社はもう落ち目だ」と言われることがあるが、その原因の一つがブランドのジレンマにあると言っていい。
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ブランドが老化の促進になるとはびっくり。
よく会社は神輿に喩えられる。2割の社員が実質支えているというような話もまことしやかに語られる。ブランドをつくる(もしくは維持する)意識を持つ(神輿を担ぐ)社員と、ブランドに依存する(神輿にぶら下がる)社員との違いだとも言えるが、ブランドがその依存を強める方向に働くという観点はなかった。
外注化の動きも(ゆっくりとではあるが確実に)会社の老化に貢献している。
単なる「作業」、いわゆる「手足を動かす」だけの業務が真っ先に外注化の対象に選ばれる。要するに「口は出すが手足は動かさない」という方向にどんどん進んでいく。
これはまさに「人間の老化過程」と同じである。
それでも、それで浮いた時間を付加価値の高い仕事に振り向けられていれば救いはあるが、実際は「外注管理」という名の思考停止に陥ってしまう。
単なる手配師となり、コアの業務もいつの間にか外注先に移っているという悲劇も他人事ではない。
このようにすっかり「空洞化」してしまった会社や事業部に配属になった新卒社員などはさらに悲劇である。先述の「ブランドによる勘違い」とは別の意味での「勘違い」が起こる危険性がある。
自らのコアスキルが全くない状態で、発注先の関連会社に対しての「管理」が求められ、会社の看板だけで権威づけをした状態で、実際には何倍も仕事のことを知っている多数の外注先を管理しなければならなくなる。
このような状況でも外部サプライヤーからは、顧客としての一応の敬意を払われるから、「勘違い」モードに入る危険性があることは容易の予想される。
大企業で伝統的な事業を担当している「花形部門」に配属された若手が辿る道は、業界が違っても似たようなものだろう。
これは本人の自覚もさることながら、職場としても、育成計画やローテーションを考える上で十分に留意する必要がある。
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まさにこれは会社のあるあるネタである。
とはいえ、業務進捗に際してはついついやってしまうことでもある。
常にハンズオンの意識を持って業務を進めることが必要だということだと思っている。
「ソリューションビジネス」とは、真に顧客の視点に立って(「提供者側の論理」ではなく)顧客の課題を解決するというアプローチ。
「物売り」の延長に「ソリューション売り」があるというのは大きな誤解。
物売りとソリューションビジネスには、基本的なところでの価値観の相違があり、ソリューションビジネスが成長するにつれてどのビジネスでも一つの大きな壁に突き当たる。それは「自社製品をどこまで『売り付けるか』」ということである。
これは製造業のみならず、パッケージソフトウェアでも金融商品でも「自社商品」を持っている全ての会社が直面している生々しい課題と言える。
製造業において、「ソリューションビジネス」が利益を上げて独り立ちしていくことはできないということをリサーチデータから示したのが、ジェームズ・A・アレキサンダーとマーク・ホーデスで、著書”S-Business”の中で、そのギャップを示している。
製品販売中心から、サービスに「軸足を移せていない」限りは新しいビジネスモデルへの転換は起こせない。基本的にカニバリズム(共食い)という利益相反が起こるからである。
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「サービス産業化」というテーマは旬なテーマなので、どの会社においても検討されている内容であろう。
「自社製品を売りつける」という発想があるうちは、真のソリューションサービス化(サービスにて利益を出すこと)は難しいというのが結論だ。
では、どうすればいいのか。
著者は、「新しいコンセプトを持った船を用意する」ことでリセットをかける、ということを挙げているが、そう簡単にはいかない話だ。
これもいろいろな方法論(成功実績)が出てくると、それだけでコンサルテーマとなりそうなネタだ。
「閉じた系」である日本は「成長」も奇跡的に早かった代わりに「老化」も急速に進んでいる。
人材についても、これまでの日本の成功パターンを支えてきたのは大量かつ均質なレベルの高い「オペレーション型人材」であった。
「与えられた枠の中を最適化する」ことにかけて、日本は圧倒的な実力を持っていると言っても良い。
ところが「資産の負債化」が起こっている。
「枠内の最適化能力」という知的資産は「枠そのものを再定義する」というニーズに対しては、枠を破る発想ができないという点でむしろ負債に働くことが多いのだ。
人々に特徴がなくなって平均化し、尖った人が少なくなり、リーダーも「誰がやっても同じ」という雰囲気が蔓延し、複雑な規制にがんじがらめにされて、批判ばかりで有効な代案が少なく、何事にも「分かりやすさ」が求められる。
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日本は確かに海外の国に比べると「閉じた系」である。言語(日本語)の壁もそうだし、組織的にも良きにつけ悪しきにつけ「ムラ社会」がベースとなっている。
「成長」も早かったが、放っておくと「老化」も早いというのは非常に説得力がある。
成長は早く、老化を遅くするための手段を考える必要があるということだ。
やはり日本は「課題先進国」、と妙に納得。
「思考停止」とは何だろうか。
ここでは、「上位概念で考えられなくなること」と定義する。逆に言えば、「考える」という行為は「上位概念」を扱う思考であるということだ。
老化に拍車をかける要因の一つが「思考停止」である。
自分を客観的に見られなくなり、手段が目的化し、部分最適に陥り、表面事象だけに目を奪われる。思考停止すれば老化が進み、老化が進めばさらに思考停止するという悪循環に陥る。
逆に言えば、「考える」ことによって老化の速度を抑制することができる。社員の思考力を向上させ、考える組織にすることが、老化を遅らせながら世代交代をうまく行う上で必須である。
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・「多様な評価指標」+減点主義=人材の凡庸化
この本の内容は色んな業界の人から「当社(うちの業界)のことですか?」と聞かれたそうだ。
まさにどの会社にもあるあるネタなのであろう。
会社の寿命は30年などとまことしやかに言われるが、会社(組織)も世代交代を行わないと、いずれ滅びるというのはその通りだろう。
頭を使って考え、対応することで老化現象を食い止めつつ、次の世代の主力となる事業を育てるためにはどうしたらいいのか。
大いなる実証実験。やってみたいものだ。
会社と人間の老化に関するメタファーをもとに、組織も老化現象を起こすのが必然であるということを述べた本。
「会社あるある」が著書内の至る所で論理的に語られている。
「あるある」で済んでいるうちはいいのだが、経営者とするとこの「組織の老化」をどうしていったらいいのかを真剣に考える必要がある。
そんな答えが簡単に出るようなら苦労はしないのだが、それを導く一助になる本。
「老化」とは
>>>>>「老化」を「後戻りのできない『不可逆プロセス』の進行」と定義する。
それは「数が増える」「均質化する」「複雑化する」ことで劣化する現象で、具体的には以下のようなことが起こる。
・ルールや規則の増加 ・部門と階層の増殖
・外注化による空洞化
・過剰品質化
・手段の目的化
・顧客意識の希薄化と社内志向化
・「社内政治家」の増殖
・人材の均質化・凡庸化
・性悪説化(加点主義→減点主義)
・形式主義化(中身重視→形式重視)
これらは不可逆プロセスで、人間も組織も決してこのプロセスを後戻りして「若返る」ことはない。
人間ではあまりに当たり前のこの法則が、会社という組織体では当たり前ではなく、すべての会社は永遠の命を持っていて成長し続けるという前提で動いているように見えるのは何とも不思議である。
この幻想の原因は一言で言えば「資産の負債化に気づかない」ことである。
もちろんここでいう不可逆プロセスは悪いことばかりではない。「成長」というのも、まさに後戻りしない不可逆プロセスだからだ。
実は「成長」と「老化」という不可逆プロセスは紙一重で、端的に言えば、「完成されるまでの不可逆プロセス」が成長であり、「完成後の不可逆プロセス」が老化である。
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不可逆プロセスのメカニズム
>>>>>不可逆プロセスの「メカニズム」は、会社という組織に内在する様々な「非対称性」によって生じる。
「非対称性」を時間軸に適用したものが「不可逆性」、つまり後戻りができないということ。
さらに元をたどれば、その非対称性は人間が持つ心理的特性と自然界が持つ物理的特性からきている。
心理的特性とは、「見えないものより見えるものに重きを置く」「以前にやったことを繰り返そうとする」「何かを得ることへの期待より、失うことへの恐れの方が大きい」という誰もが避けることのできない性質である。
また、物理的特性とは、会社を一つの大きな集団として見た場合に複雑さや乱雑さが増し、均質化されてくることである。(一般に「エントロピー増大の法則」と言われる)
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エントロピー増大の法則
>>>>>物理における普遍的なルールである万有引力の法則や、量子力学、あるいは相対性理論といったものは、基本的には時間を逆戻しにしても成立する。
これに対して、時間に対する不可逆性を表現しているのが熱力学の第二法則、一般に「エントロピー増大の法則」と言われるものである。
エントロピーは、元は熱力学の世界を説明するために導入された物理量である。熱エネルギーから力学的エネルギーへの不可逆性(力学的エネルギーは100%熱エネルギーに変えられるが、逆は真ではなく、熱エネルギーを力学的エネルギーに変換する際には必ずロスが発生することを指す)を説明するためにも用いられる。
またごく乱暴に定性的な表現をすれば「乱雑さ」を表現する量であると言われている。
このエントロピーという物理量が、物質もエネルギーも出入りしない閉じた一つの系(孤立系)においては時間とともに減少することはなく、増加の一方をたどる、というのが「エントロピー増大の法則」である。
つまり、ある閉じた世界の乱雑性は、時間とともに必ず増大していくことを意味する。
熱力学でエントロピーというと、外部とエネルギーや物質の出入りがない状態(孤立系)での乱雑さの度合いを指しているが、組織の場合、「成果につながらないエネルギー」とも定義できる。
部門間の対立、誤った判断、不満を抱く従業員、器量の足りないリーダー、歯車が狂った組織、現実にそぐわない制度、時代遅れの戦略、不安に覆われた企業文化。。。これらは全て企業のエントロピーを増大させる。言い換えれば秩序を乱すのだ。
「エントロピー増大の法則」の一つの側面には「乱雑性が増大していく」ことがあげられる。
この「乱雑性が増える」とは、一人一人の従業員の方向性がバラバラになることを意味する。
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悪貨は良貨を駆逐する
>>>>>「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則と同様に、
「ルーティンワークはクリエイティブワークを駆逐する」
その理由①規則の増加は止められない、②柔らかいクリエイティブワークはかたいルーティンワークに追いやられる、③組織内の評価のされ方で、ルーティンワークをサボれば明確な減点だが、クリエイティブワークをやらなくても減点にはなりにくい。
クリエイティブワークにおいては、作業リストを用意するのが難しく、いわば「頼まれもしない仕事をいかに能動的かつ個性的にやるか」が勝負。
クリエイティブワークは、「やるべきことをやっていない」を可視化するのが非常に難しい性質を持っている。
同様に「かたいものはやわらかいものを駆逐する」。
大企業病の例としてよくあげられる「減点主義」こそ、ルーティンワーク増加の原因であり、また結果でもあると言ってもいいだろう。
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ブランド
>>>>>ブランド力を高めることが「会社の老化」に貢献してしまっている。
それは社員の「依存心の増加」である。
「ブランドを築くために」働くのと、「出来上がったブランドの下で」働くとでは、ほぼ正反対の意識になる。
依存心の強い社員が増えれば経費を水膨れさせるばかりか、イノベーションを阻害するようになる。
「大学生の人気就職先ランキングの上になったらその会社はもう落ち目だ」と言われることがあるが、その原因の一つがブランドのジレンマにあると言っていい。
>>>>>
ブランドが老化の促進になるとはびっくり。
よく会社は神輿に喩えられる。2割の社員が実質支えているというような話もまことしやかに語られる。ブランドをつくる(もしくは維持する)意識を持つ(神輿を担ぐ)社員と、ブランドに依存する(神輿にぶら下がる)社員との違いだとも言えるが、ブランドがその依存を強める方向に働くという観点はなかった。
外注化
>>>>>外注化の動きも(ゆっくりとではあるが確実に)会社の老化に貢献している。
単なる「作業」、いわゆる「手足を動かす」だけの業務が真っ先に外注化の対象に選ばれる。要するに「口は出すが手足は動かさない」という方向にどんどん進んでいく。
これはまさに「人間の老化過程」と同じである。
それでも、それで浮いた時間を付加価値の高い仕事に振り向けられていれば救いはあるが、実際は「外注管理」という名の思考停止に陥ってしまう。
単なる手配師となり、コアの業務もいつの間にか外注先に移っているという悲劇も他人事ではない。
このようにすっかり「空洞化」してしまった会社や事業部に配属になった新卒社員などはさらに悲劇である。先述の「ブランドによる勘違い」とは別の意味での「勘違い」が起こる危険性がある。
自らのコアスキルが全くない状態で、発注先の関連会社に対しての「管理」が求められ、会社の看板だけで権威づけをした状態で、実際には何倍も仕事のことを知っている多数の外注先を管理しなければならなくなる。
このような状況でも外部サプライヤーからは、顧客としての一応の敬意を払われるから、「勘違い」モードに入る危険性があることは容易の予想される。
大企業で伝統的な事業を担当している「花形部門」に配属された若手が辿る道は、業界が違っても似たようなものだろう。
これは本人の自覚もさることながら、職場としても、育成計画やローテーションを考える上で十分に留意する必要がある。
>>>>>
まさにこれは会社のあるあるネタである。
とはいえ、業務進捗に際してはついついやってしまうことでもある。
常にハンズオンの意識を持って業務を進めることが必要だということだと思っている。
ソリューションサービスビジネス
>>>>>「ソリューションビジネス」とは、真に顧客の視点に立って(「提供者側の論理」ではなく)顧客の課題を解決するというアプローチ。
「物売り」の延長に「ソリューション売り」があるというのは大きな誤解。
物売りとソリューションビジネスには、基本的なところでの価値観の相違があり、ソリューションビジネスが成長するにつれてどのビジネスでも一つの大きな壁に突き当たる。それは「自社製品をどこまで『売り付けるか』」ということである。
これは製造業のみならず、パッケージソフトウェアでも金融商品でも「自社商品」を持っている全ての会社が直面している生々しい課題と言える。
製造業において、「ソリューションビジネス」が利益を上げて独り立ちしていくことはできないということをリサーチデータから示したのが、ジェームズ・A・アレキサンダーとマーク・ホーデスで、著書”S-Business”の中で、そのギャップを示している。
製品販売中心から、サービスに「軸足を移せていない」限りは新しいビジネスモデルへの転換は起こせない。基本的にカニバリズム(共食い)という利益相反が起こるからである。
>>>>>
「サービス産業化」というテーマは旬なテーマなので、どの会社においても検討されている内容であろう。
「自社製品を売りつける」という発想があるうちは、真のソリューションサービス化(サービスにて利益を出すこと)は難しいというのが結論だ。
では、どうすればいいのか。
著者は、「新しいコンセプトを持った船を用意する」ことでリセットをかける、ということを挙げているが、そう簡単にはいかない話だ。
これもいろいろな方法論(成功実績)が出てくると、それだけでコンサルテーマとなりそうなネタだ。
閉じた系「日本」
>>>>>「閉じた系」である日本は「成長」も奇跡的に早かった代わりに「老化」も急速に進んでいる。
人材についても、これまでの日本の成功パターンを支えてきたのは大量かつ均質なレベルの高い「オペレーション型人材」であった。
「与えられた枠の中を最適化する」ことにかけて、日本は圧倒的な実力を持っていると言っても良い。
ところが「資産の負債化」が起こっている。
「枠内の最適化能力」という知的資産は「枠そのものを再定義する」というニーズに対しては、枠を破る発想ができないという点でむしろ負債に働くことが多いのだ。
人々に特徴がなくなって平均化し、尖った人が少なくなり、リーダーも「誰がやっても同じ」という雰囲気が蔓延し、複雑な規制にがんじがらめにされて、批判ばかりで有効な代案が少なく、何事にも「分かりやすさ」が求められる。
>>>>>
日本は確かに海外の国に比べると「閉じた系」である。言語(日本語)の壁もそうだし、組織的にも良きにつけ悪しきにつけ「ムラ社会」がベースとなっている。
「成長」も早かったが、放っておくと「老化」も早いというのは非常に説得力がある。
成長は早く、老化を遅くするための手段を考える必要があるということだ。
やはり日本は「課題先進国」、と妙に納得。
思考停止
>>>>>「思考停止」とは何だろうか。
ここでは、「上位概念で考えられなくなること」と定義する。逆に言えば、「考える」という行為は「上位概念」を扱う思考であるということだ。
老化に拍車をかける要因の一つが「思考停止」である。
自分を客観的に見られなくなり、手段が目的化し、部分最適に陥り、表面事象だけに目を奪われる。思考停止すれば老化が進み、老化が進めばさらに思考停止するという悪循環に陥る。
逆に言えば、「考える」ことによって老化の速度を抑制することができる。社員の思考力を向上させ、考える組織にすることが、老化を遅らせながら世代交代をうまく行う上で必須である。
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加点主義と減点主義
・「多様な評価指標」+加点主義=人材の多様化・「多様な評価指標」+減点主義=人材の凡庸化
この本の内容は色んな業界の人から「当社(うちの業界)のことですか?」と聞かれたそうだ。
まさにどの会社にもあるあるネタなのであろう。
会社の寿命は30年などとまことしやかに言われるが、会社(組織)も世代交代を行わないと、いずれ滅びるというのはその通りだろう。
頭を使って考え、対応することで老化現象を食い止めつつ、次の世代の主力となる事業を育てるためにはどうしたらいいのか。
大いなる実証実験。やってみたいものだ。
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