「新たな価値創造を行うには」
各企業で新規事業が検討されるが、中々うまくいっていることが少ない。
そのための方法論について、物語形式で楽しく理解できる秀逸な本。
新たな価値の創造に挑むべく行動を起こすと、2つの壁にぶち当たる。
1つ目は「新たな価値をどうすれば発想できるか?」という壁。
2つ目は「誰もが初めて聞くような画期的な新価値を、組織でどうやって意思決定するのか?」
現在仕事で、1つ目の壁をクリアしたと思ったら、2つ目の壁を目の前にしており、「なるほど、これは新価値創造アルアルなのだ」と納得しつつ、ではどうしていったら良いのか、ヒントがあるのではないかと思い手にとった。
一つは演繹。もう一つは帰納。
演繹と帰納の他に、第三の推論方法がある。これはシャーロック・ホームズが推理するときに駆使している推論方法で「アブダクション(仮説的推論)」と呼ばれる。
驚くべき「事実」(観察により違和感のある事実)が観察される。しかし、もし「仮説」が真であれば、「事実」は当然のことである。よって、「仮説」が真である、と考えるべき理由がある。と考えるというもの。
海王星が見つかったのも、「今までの理論では合わない星の動き(驚くべき事実)」から「まだ発見されていない星(海王星)の存在(仮説)」が推定され、現実に見つかったというアブダクションによるものである。
https://omachido.blogspot.com/2015/04/blog-post.html
実は、①アブダクションと②統合(ヘーゲルの弁証法におけるアウフベーヘン)と③リフレーム(ビジネスにおいてそれまで常識とされていた解釈やソリューションの枠組み(フレーム)を、新しい視点・発想で前向きに作り直すこと)の3つは同時に起こる。
そして「リフレームされたインサイト」すなわち、「意外な真相」「隠れた事実」が見つかる。
インサイトとは「複数の事実を俯瞰し、統合することで生まれる新たな仮説の中で、本質的だと確信できるもの。」
新たな事業、新施策に向けての発想のタネのようなものか。
リフレームされたインサイトの質は3つの側面で評価される
①新規性:これまでの常識と異なるか?
②妥当性:確からしさは高そうか?
③汎用性:そのインサイトが適用できる範囲は広いか?
オポチュニティとは、「市場の状況」のことではなく、「市場において受け入れられるチャンスがある、抽象的な価値」のことを意味する。
フォーサイト・クリエーションのプロセスは、気づきに始まり、インサイトを出し、そこからフォーサイトを生む、という流れ。
気づきを得るためには「気づき力」が必要だし、インサイトを生み出すには「仮説構築能力」が必要。そしてフォーサイトを生み出すには「クリエイティビティ」が必要。
これら3つの能力は今後も人間にしかできない仕事として残っていく可能性が高い。
「気づき力」→「好奇心」、「仮説構築力」→「なぜなぜ思考」「根源(根本的)思考」、「クリエイティビティ」→「遊び心」と考えると、このAI時代に子供に身につけさせなければならないのは、「好奇心」「思考力」「遊び心」と言った所か。
①Simple Problem(単純な問題):課題もソリューションも明快
②Complex Problem(複雑な問題):課題もソリューションも明快ではなく、解くことが困難な問題(ただし、解はある)
③Wicked Problem(厄介な問題):課題もソリューションも明確ではない上に、そもそも何が問題なのかを定義することが困難な問題
子育てにたとえると
①Simple Problem(単純な問題):子供が泣いているからミルクをあげよう
②Complex Problem(複雑な問題):子供を安全に育てるにはどうすればいいだろう?
③Wicked Problem(厄介な問題):子供をどういう人間に育てればいいだろう?
Wicked Problemには誰もが納得するような正解はない。自分(自社)の意志がなければ決めることができない。
多くの企業や組織は、新価値創造がWicked Problem ではなくて、Complex Problem だと勘違いしている。
「新価値創造」と「プレゼントを贈ること」は似ている。 喜んでもらえるプレゼントを贈るためには、贈る相手のことを深く理解する必要がある。
新しい価値には正解はない。正解のないところに新たな軸を生み出すのが新価値創造。
そして、良いプレゼントを贈るためには、どういう価値を相手に届けたいのかという贈り手の意志が重要。
つまり、良いプレゼントというのは、「贈る相手の深い理解」と「送り手である自分たちの意志」が統合されたもの。
新価値創造においては、自社の「ブランディング」、「強み」へのメタ認知が必要。
それに「オポチュニティ(市場の洞察に基づく市場機会)」を加えて3つ(「オポチュニティ」「ブランディング」「ストレングス」)を統合する必要がある。
(👉マーケットには3つ、自社、競合、顧客の3者しかいない、という話と似ている。オポチュニティ(顧客への提供価値)、ブランディング(自社のありたい姿)、ストレングス(競合との比較)と整理して考えると分かり易い)
主な3つの壁としては
①意思決定の壁 ②リソースの壁 ③横連携の壁
である。
新価値創造を成し遂げるためには打たれ強くないといけない。 新しい価値が実現する時には、以下のようなプロセスを経るものだからである。
①無視される(話を聞いてもらえない)
②怒られる(言うことが軽い、上手くいくはずがない、と叱られる)
③「それがうまくいくことは、最初から分かっていた」と言われる(成果が出ると、評価が変わる)
結局は、自己効力感、他己実現、チャレンジ精神のマインドセットを持てるかどうか。
ここでも、同志社女子大学 上田信行先生から教わったgrowth mindsetが重要であるとされている。
https://omachido.blogspot.com/2009/07/blog-post_1672.html
このマインドセットを維持するには2つの重要な要素がある。
その一つ目は環境。心理的安心が確保されている環境でないと、クリエイティブな発想はできない。その心理的安心のある環境というのは「個々人を信じてもらえること」「ボケても大丈夫」の2つが保証された「場」。
もう一つの要素は、仲間。一人ぼっちではマインドセットは維持できない。
「場」だけでなく、「仲間」も重要だということだ。
「アブダクション」という普通の人が聞いたことがないような内容(自分は中西先生のワークショップで初めて知った)が8つの重要なファクターの一つとなっていたり、シャーロック・ホームズの話が頻繁に出てきたりで非常に親近感を持ちながら読み進めることができた。
前段の「新たな価値をどう発想するか」については一定の方法論が提示されていると思われるが、
後段の「新価値をどう組織で意思決定するのか」については、トップでないとできない方法論が多く、まだまだ課題も多いと感じた。
日々の業務に目を戻すと、説得の壁の他にもまだまだ壁があることが示唆されていて、それはギョッとする内容であったが、一つ一つgrowth mindsetでもってクリアしていこう。
各企業で新規事業が検討されるが、中々うまくいっていることが少ない。
そのための方法論について、物語形式で楽しく理解できる秀逸な本。
新たな価値の創造に挑むべく行動を起こすと、2つの壁にぶち当たる。
1つ目は「新たな価値をどうすれば発想できるか?」という壁。
2つ目は「誰もが初めて聞くような画期的な新価値を、組織でどうやって意思決定するのか?」
現在仕事で、1つ目の壁をクリアしたと思ったら、2つ目の壁を目の前にしており、「なるほど、これは新価値創造アルアルなのだ」と納得しつつ、ではどうしていったら良いのか、ヒントがあるのではないかと思い手にとった。
<アブダクション>
世の中で一般的に知られている「推論」には2種類ある。一つは演繹。もう一つは帰納。
演繹と帰納の他に、第三の推論方法がある。これはシャーロック・ホームズが推理するときに駆使している推論方法で「アブダクション(仮説的推論)」と呼ばれる。
驚くべき「事実」(観察により違和感のある事実)が観察される。しかし、もし「仮説」が真であれば、「事実」は当然のことである。よって、「仮説」が真である、と考えるべき理由がある。と考えるというもの。
海王星が見つかったのも、「今までの理論では合わない星の動き(驚くべき事実)」から「まだ発見されていない星(海王星)の存在(仮説)」が推定され、現実に見つかったというアブダクションによるものである。
https://omachido.blogspot.com/2015/04/blog-post.html
<リフレームされたインサイト(新たな洞察を得る)>
答えから考えずに、気づきから始めて洞察を得るというのは非常に良いアプローチ。実は、①アブダクションと②統合(ヘーゲルの弁証法におけるアウフベーヘン)と③リフレーム(ビジネスにおいてそれまで常識とされていた解釈やソリューションの枠組み(フレーム)を、新しい視点・発想で前向きに作り直すこと)の3つは同時に起こる。
そして「リフレームされたインサイト」すなわち、「意外な真相」「隠れた事実」が見つかる。
インサイトとは「複数の事実を俯瞰し、統合することで生まれる新たな仮説の中で、本質的だと確信できるもの。」
新たな事業、新施策に向けての発想のタネのようなものか。
リフレームされたインサイトの質は3つの側面で評価される
①新規性:これまでの常識と異なるか?
②妥当性:確からしさは高そうか?
③汎用性:そのインサイトが適用できる範囲は広いか?
<フォーサイト(新たな展望を生む)>
フォーサイトを考えるとき、最初は「プロジェクトのゴール(会社の未来を支える新しい価値を創造すること)」と「インサイト」を統合して、オポチュニティ(市場機会)を発想することから始める。オポチュニティとは、「市場の状況」のことではなく、「市場において受け入れられるチャンスがある、抽象的な価値」のことを意味する。
フォーサイト・クリエーションのプロセスは、気づきに始まり、インサイトを出し、そこからフォーサイトを生む、という流れ。
気づきを得るためには「気づき力」が必要だし、インサイトを生み出すには「仮説構築能力」が必要。そしてフォーサイトを生み出すには「クリエイティビティ」が必要。
これら3つの能力は今後も人間にしかできない仕事として残っていく可能性が高い。
「気づき力」→「好奇心」、「仮説構築力」→「なぜなぜ思考」「根源(根本的)思考」、「クリエイティビティ」→「遊び心」と考えると、このAI時代に子供に身につけさせなければならないのは、「好奇心」「思考力」「遊び心」と言った所か。
<新価値創造>
問題には3種類ある。①Simple Problem(単純な問題):課題もソリューションも明快
②Complex Problem(複雑な問題):課題もソリューションも明快ではなく、解くことが困難な問題(ただし、解はある)
③Wicked Problem(厄介な問題):課題もソリューションも明確ではない上に、そもそも何が問題なのかを定義することが困難な問題
子育てにたとえると
①Simple Problem(単純な問題):子供が泣いているからミルクをあげよう
②Complex Problem(複雑な問題):子供を安全に育てるにはどうすればいいだろう?
③Wicked Problem(厄介な問題):子供をどういう人間に育てればいいだろう?
Wicked Problemには誰もが納得するような正解はない。自分(自社)の意志がなければ決めることができない。
多くの企業や組織は、新価値創造がWicked Problem ではなくて、Complex Problem だと勘違いしている。
「新価値創造」と「プレゼントを贈ること」は似ている。 喜んでもらえるプレゼントを贈るためには、贈る相手のことを深く理解する必要がある。
新しい価値には正解はない。正解のないところに新たな軸を生み出すのが新価値創造。
そして、良いプレゼントを贈るためには、どういう価値を相手に届けたいのかという贈り手の意志が重要。
つまり、良いプレゼントというのは、「贈る相手の深い理解」と「送り手である自分たちの意志」が統合されたもの。
新価値創造においては、自社の「ブランディング」、「強み」へのメタ認知が必要。
それに「オポチュニティ(市場の洞察に基づく市場機会)」を加えて3つ(「オポチュニティ」「ブランディング」「ストレングス」)を統合する必要がある。
(👉マーケットには3つ、自社、競合、顧客の3者しかいない、という話と似ている。オポチュニティ(顧客への提供価値)、ブランディング(自社のありたい姿)、ストレングス(競合との比較)と整理して考えると分かり易い)
<マインドセット>
新たな価値創造を実現する際にはいくつもの壁がある。主な3つの壁としては
①意思決定の壁 ②リソースの壁 ③横連携の壁
である。
新価値創造を成し遂げるためには打たれ強くないといけない。 新しい価値が実現する時には、以下のようなプロセスを経るものだからである。
①無視される(話を聞いてもらえない)
②怒られる(言うことが軽い、上手くいくはずがない、と叱られる)
③「それがうまくいくことは、最初から分かっていた」と言われる(成果が出ると、評価が変わる)
結局は、自己効力感、他己実現、チャレンジ精神のマインドセットを持てるかどうか。
ここでも、同志社女子大学 上田信行先生から教わったgrowth mindsetが重要であるとされている。
https://omachido.blogspot.com/2009/07/blog-post_1672.html
このマインドセットを維持するには2つの重要な要素がある。
その一つ目は環境。心理的安心が確保されている環境でないと、クリエイティブな発想はできない。その心理的安心のある環境というのは「個々人を信じてもらえること」「ボケても大丈夫」の2つが保証された「場」。
もう一つの要素は、仲間。一人ぼっちではマインドセットは維持できない。
「場」だけでなく、「仲間」も重要だということだ。
「アブダクション」という普通の人が聞いたことがないような内容(自分は中西先生のワークショップで初めて知った)が8つの重要なファクターの一つとなっていたり、シャーロック・ホームズの話が頻繁に出てきたりで非常に親近感を持ちながら読み進めることができた。
前段の「新たな価値をどう発想するか」については一定の方法論が提示されていると思われるが、
後段の「新価値をどう組織で意思決定するのか」については、トップでないとできない方法論が多く、まだまだ課題も多いと感じた。
日々の業務に目を戻すと、説得の壁の他にもまだまだ壁があることが示唆されていて、それはギョッとする内容であったが、一つ一つgrowth mindsetでもってクリアしていこう。
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