2014年6月29日日曜日

『わたし、解体はじめました』

お世話になっているE社の齋藤社長から薦められた本の1冊目。
3/11の時に、「絶対に生き抜いてやる」と目覚めて解体の道の転がり込んだ著者(当時25歳の一般女性)の解体から狩猟をやるまでの道のりを綴った本。

「命をいただく」ということがどういうことなのかを改めて認識させられる。

鶏を絞めて食べるということ。それだけを見ると残酷なように映るかもしれないが、「命を奪って食べる」よりも「さっきの鶏が自分の一部になった」という感覚なのだそうだ。
この辺の感覚は、週刊少年ジャンプで人気の漫画「トリコ」で描かれている世界と共通のものがあるかもしれない。
トリコの世界でもレベルの高い食材は自らを高める(グルメ細胞を活性化する)という設定となっている。

そして著者は、もっと自分が「一動物である」ということを感じたいということで、狩猟の世界に足を踏み入れる。
狩猟免許を取得して「猟師」となる。

猟においては、「止めさし」という行為が必要となる。これは獲物にとどめを刺すこと。
手負いの獣にとどめを刺すのは実は非常に危険を伴う行為である。
罠をしかけてイノシシを獲る場合には、頭を狙って打ち、脳しんとうを起こさせてから心臓を刺す、もしくは首の頸動脈のあたりを切ることで失血させるやり方をとる。
この際に、遠慮や迷いがあると、却って獣を苦しませることになるという。

猟師になるのと同時に著者が目標としたのが、「食べる」の最初から最後までを実践するというもの。
生き物を飼って、自分で育ててから食べるということ。
著者は烏骨鶏のひなを2匹育てることにする。
愛着が湧いてしまうから名前はつけない方がいいと言われていたが、著者は2匹に名前を付けて育てる。
1匹は途中で猫にさらわれるというアクシデントがあったものの、もう1匹は無事(?)解体と相成るのだが、この過程の心理描写がすごい。
正直、個人的には共感できるレンジを上回っていて、同じことが「人」に対してでもできてしまうのではないか?などと考えてしまったが、これは体験した人にしか分からないのかも知れない。

著者は解体ワークショップを多数行っていて、参加者にヒアリングをすると、「生き物」がどのタイミングで「食べ物」と思えるのかは、人それぞれらしい。
いままでのところ、解体の様子にショックを受けて、お肉を食べられなくなってしまった人はいないとのこと。

解体のプロセスでどのタイミングで「生き物」が「食べ物」に変わるのかが人それぞれだとすると、逆に生まれてくる時にどのタイミングで「生き物」(すなわち自分の子供)になるのかも人それぞれなのかと以下の新出生前診断の記事を読んで思った。


以下 140627の日経新聞の記事引用
妊婦の血液からダウン症など胎児の染色体異常を調べる新出生前診断について、診断した病院グループは27日、昨年4月の開始からの1年間に7740人が利用し、「陽性」と判定された142人の妊婦のうち、羊水検査などで異常が確定したのは113人だったと発表した。このうち97%にあたる110人が人工妊娠中絶をしていた。
 確定診断前の中絶が2人、陽性判定を知る前に中絶した人が1人いたことも明らかになった。
 病院グループは、日本医学会の認定を受けて実施している国内37医療機関の実績を集計した。7740人が診断を受けたのは昨年4月から今年3月。受診者の平均年齢は38.3歳で、妊娠週数は13.3週だった。出産時に35歳以上が目安となる「高齢妊娠」を理由に診断を受けた人が9割以上を占めた。
 受診者の1.8%に当たる142人が陽性と判定され、このうち126人が羊水検査などの確定診断を受けた。診断結果が「異常あり」だったのは113人。内訳はダウン症が70人、心臓疾患などを伴う異常は43人だった。
 113人中、人工妊娠中絶した人は110人を占めた。このうちダウン症の異常が確定した人が69人で、その他が41人。異常が確定した後も妊娠を継続している人もいる。
 一方、新出生前診断で「陽性」と判定され、その後の確定診断を受けないまま中絶した妊婦が2人いたほか、1人は陽性との判定結果を知る前に中絶していた。受診前に遺伝カウンセリングを受けたが、診断自体を取りやめた人も複数いたという。


いずれにせよ、「命」とは、「我々が生きるとはどういうことなのか」という哲学的な問題を自然に考えてしまう良書であった。


2014年5月25日日曜日

第5回つなぐLab 『女性に優しい社会』とは

立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科特任准教授の中西紹一先生によるワークショップ第5弾。
今回のテーマは『これからの女性支援を考える』

某T社さんのワーキングマザーをターゲットとしたと思われるCMを見て、何に違和感を感じて、どういう領域に女性が進出するといいのかという議論を行った。

参加者のうち8割くらいが女性だったこともあり、(個人的には滅多に機会のない)女性のセキララな意見が聞けて面白かった。

CMを見た感想として
「男性から見たママ像ベースだが、何を誰に言いたいのか分からない」
「家事は女性がするものという前提条件が刷り込まれている」
「女性にとって現代の三種の神器はルンバ、食洗機、全自動洗濯機なのに、それが分かっていない」
「リアリティがなく、生活感もないので、心に響かない」
と言った意見が出ていた。

次に、何故このようなCMとなってしまったのかを想像しようというセッションになった。
自分は結構このフローは分かっていたが、逆に参加者の大半がクライアントと広告代理店、そしてクリエイターの役割、立場の違いについて分かってないことにちょっとビックリした。

セッションの中で面白いと思った意見を列挙すると
「女性向けのリサーチは企業も行っているが、そのリサーチは役立っているとは言えない」
「女性だからといって「ママ」が分かっているとは限らない。むしろ今の企業で生き残っているのは「男性化した女性」だけ」
「日本では専業主婦→ワーキングマザーという流れが主流だが、アメリカでは働いていた女性が専業主婦となるケースが増えてきている(『ハウスワーク2.0』)。」
「アベノミクスでは、2020年に女性管理職を30%という数値目標を掲げているが、その任にない人まで女性管理職となると今度は女性の自殺率が増えたりするのではないか」
「被災地では、子供のみならず女性も見かけなくなった。」
「天下り文化とは、『稼がなくてはならない』という男性主体の文化が生み出したもの」


男性=女性という二項対立で考えることが我々の意識の中に埋め込まれている、という中西先生の話しがあった後も、
「(女性に優しい社会にするには)女性はどの領域に進出すべきか」
という議論について、女性も含めて全員が「女性」=「働く女性」という前提で話しをし始めていたことに「無意識下に埋め込まれた前提の重さ」を感じた気がした。


女性は政治領域にも進出すべきだという意見がある一方、「今の女性政治家は変な人ばかり。機能しているとは言えない」という厳しい声も女性からあがっていて面白かった。


「女性に優しい社会をつくるのには、制度で守るのではなく、関係で守る必要がある」
「多様性(diversity)をパワーに変えていくことがこれからの社会では必須となる」
というような意見が最後にでて、なるほどという感じであった。
非常に勉強になった。



『スタンフォードの自分を変える教室』

自分の行動を変えたいと思っている人は多いが、失敗する人も多い。
単に意志の力とされたりするが、これを何故失敗してしまうのかという理論とやり通すための実践できる方法をセットで解説している本。

ちょっと長くなるがポイントを記載していきたい。

時代をさかのぼること10万年前のホモサピエンスになったと想像して欲しい。
ほんの数世代前前までは、生きていく上で重要なことはごくわずかだった。
①食べ物をみつける。
②繁殖する。
③人食いワニとの遭遇を避ける。
しかし、いまやあたなは密接な結びつきをもつ部族の中で暮らしており、生き残っていくためには、仲間のホモサピエンスの力を借りなければならない。
つまり、④「他人を激怒させないようにすること」が生き残るための心得に加わった。

現代の我々が持っている意志力は、大昔の人間達が仲間とうまく付き合い、親やパートナーとしてやっていくために、必要に迫られて身につけた能力。
そのために人間の脳は、前頭前皮質、ちょうと額と目の後ろに位置する脳の領域を進化させた。 進化の歴史が始まって以来、前頭前皮質の主な役割は身体の動きをコントロールすることだった。歩いたり、走ったり、いわば自己コントロールの原型みたいなもの。

人類が進化するにつれて前頭前皮質は大きくなり、脳の他の領域との連携も良くなった。 スタンフォード大学の神経生理学者ロバート・サポルスキーは、現代の前頭前皮質の主な役割は、脳にやるべきことをやるようにしむけることだと言っている。
前頭前皮質は灰白質からなる一つの塊ではなく、おもに3つの領域に分かれている。
前頭前皮質の上部左側の領域は「やる力」を司っている。そのおかげで、退屈な仕事や難しい仕事、あるいはストレスの多い仕事でもちゃんと着手してやり遂げることができる。 反対の右側は「やらない力」を司っており、衝動や欲求を感じてもすぐに流されないようにしている。
3つ目の領域は、前頭前皮質の中央の少し下の方に位置しており、目標や欲求を記録する場所。これによってあなたの「望むこと」が決まる。この部分の細胞が即座に反応すればするほど、行動を起こしたり、誘惑をはねのけたりするモチベーションが上がる。
前頭前皮質のこの領域は、あなたが本当に望むことを忘れない。

<闘争・逃走ストレス反応>
サバンナでサーベルタイガーを発見した瞬間を想像して欲しい。
目からの情報は、まず脳の扁桃体という場所へ送られる。扁桃体はいわばあなた専用の警報装置のようなもの。この警報装置は脳の中央に位置し、迫り来る緊急事態を察知する役目を果たす。ちょうど脳の真ん中にあるため、危険を察知した場合に脳の他の領域や体中へ信号を送りやすい。
警報装置は、その信号を速やかに脳の他の領域や体に送り、ただちに闘争・逃走反応に移る準備を命じる。
すると、ストレスホルモンが副腎から分泌され、エネルギー〜すなわち脂肪と糖分〜が肝臓から血液中に分泌される。呼吸器系では肺が膨らみ、体内に酸素が充分に行き渡るようにする。心臓血管系はフル回転し、戦うにせよ逃げるにせよ、血中のエネルギーが必要な筋肉に行き渡るようにする。つまり、体中の細胞が指令をうけた状態となる。
また、警報システムは脳内化学物質に複雑な変化を生じさせ、前頭前皮質、つまり衝動をコントロールする脳の領域の働きを妨げる。
つまり、闘争・逃走反応は、あなたがもっとも衝動的にあるように仕向けるのだ。
闘争・逃走反応はエネルギー管理本能とも言えるだろう。限られた身体的、精神的エネルギーをどのように使うべきかを決定するのだ。

一方、ケンタッキー大学の心理学者スーザン・C・セガストロームが打ち出した<休止・計画反応>というものもある。
こちらは闘争・逃走反応と違って、外的な脅威を認識したときではなく、内なる葛藤を認識した場合に起こる。
前頭前皮質は、自己コントロールの指示を出し、心拍数や血圧や呼吸など自動的な機能を司る脳の領域の働きを鈍らせる。(つまり、休止・計画反応は闘争・逃走反応とは正反対のことをさせる)

意志の強さは「心拍変動」というものでわかり、測定することができる。
休止・計画反応を測定するために最もよい生理学的な方法は、心拍変動と呼ばれるもの。 ストレスを感じると交感神経系が活発になる。これは戦ったり逃げたりするための基本的な生理状態の一部。心拍数が増加し、変動は低下する。つまり、心拍数は増加したままになり、闘争・逃走反応につきものの不安や怒りの感情が体に表れる。
逆に、自制心をうまく発揮できた時には副交感神経系が活発になり、ストレスを和らげ、衝動的な行動を抑える。心拍数は減少するが、変動は上昇する。このような状態になると、気持ちが静まって落ち着く。

心拍変動は意志力の指標として非常に優れているため、それによって誰が誘惑に勝てそうか、あるいは負けそうかも予測できる。
元アルコール依存症患者で、お酒を見た時に心拍変動が上昇する人は、禁酒を続けられる確率が高いという。 こうした発見を踏まえ、心理学者たちは心拍変動を意志力の体内「保有量」と呼ぶようになり、自己コントロール能力を生理学的に測定することにした。
呼吸のペースを1分間に4回〜6回に抑えると前頭前皮質が活性化し、心拍変動も上昇する。 神経生理学者がエクササイズを始めたばかりの人たちの脳を調べたところ、灰白質(つまりは脳細胞)と白質(脳細胞の上にある絶縁体で、脳細胞がすみやかに効率よく連絡し合うのを助ける)の両方が増えていた。
脳は瞑想と同様にエクササイズによって、より大きくなり、より速く働くようになるが、その効果が最も顕著に表れるのは前頭前皮質なのである。

という脳科学的な理論を知ってから、どういう時に意志力が弱くなるのかが述べられている。


スタンフォード大学経営学部教授 ババ・シヴによると
「人は気が散っている時ほど誘惑に負けやすい」
誰かの電話番号を思い出そうとしながらデザートを選んでいる学生は、フルーツよりもチョコレートケーキを選ぶ確率が50%も高くなる。
また上の空で買い物をしている人は店頭販売にひっかかりやすい傾向にある。

睡眠不足が慢性化すると、ストレスや欲求や誘惑に負けやすくなる。そして、感情をコントロールしたり、意識を集中させたり、「やる気」のチャレンジに取り組むのも難しくなる。
睡眠不足の状態では体や脳の主要なエネルギー源であるグルコースを使用することができない。疲れていると、血液中のグルコースが細胞に中々吸収されない。そのため細胞がエネルギー不足となり、疲労を感じる。体や脳がエネルギーを欲しがるため、甘いものやコーヒーが飲みたくなる。
でも、糖分やコーヒーでいくらエネルギーを補給しても、それを効率よく使うことができないため、体や脳は充分なエネルギーをとることができない。
これは自己コントロールにとっては困った状態。 脳が使用できるエネルギーはただでさえ限られているのに、自制心を発揮するには多くのエネルギーが必要だから。
なかでもとりわけエネルギーを消費する前頭前皮質は、このエネルギー危機の影響をもろに受ける。
睡眠の研究者はこの状態を「軽度の前頭前野機能障害」などと呼んでいるほどだ。
睡眠不足の状態で目を覚ますと、一時的に脳に障害を負ったような状態になる。
研究によれば、睡眠不足が脳に与える影響は、軽度の酩酊状態と同じであることが分かっている。これでは、自己コントロールなど到底望めない。

長い目でみた場合、ストレスほどあっという間に意志力を弱らせるものはない。ストレスに対する生理機能と自己コントロールの生理機能は、一緒には成立しない。

①気が散っている状態、②寝不足状態、③ストレス下、というのは意志力が弱くなる状態とのことだ。

これに対抗する手段としては、著者は瞑想やエクササイズなどを挙げている。


<モラル・ライセンシング>
初めて知って面白かったのが「モラル・ライセンシング」という概念。
人は何かよいことをすると、いい気分になる。そのせいで自分の衝動を信用しがちになる。多くの場合、悪いことをしたって構わないと思ってしまう。
プリンストン大学の女性差別的な質問を行った後の就職面接候補者選定実験。 人種差別的な態度についての質問のあと、人種マイノリティへの差別意識が表れる実験を行った時にも同様の現象が起きた。 心理学者たちは、人はいったん意見を表明したら、その後もその意見に従って行動するものだと思っていた。しかし、終始一貫した行動をとりたいという我々の望みには、例外があることを突き止めた。
こと善悪の問題に関しては、大抵の人は道徳的に完全でありたいなどとは思っていない。だから、少し良いことをすると、今度は自分の好きなように行動してもいいと思ってしまう。

このモラル・ライセンシングのせいで、悪いことをするだけではなく、良いことをするように求められた時に責任逃れをするようにもなる。
寄付金の依頼を受けた時に、自分が以前に気前よく寄付したことを思い出した人たちは、そのような過去の良い行いを思い出さなかった人たちに比べ、寄付した金額が6割も低いという結果がでている。

モラル・ライセンシング効果は、世間一般にモラルが高いと信じられている人たち(牧師、家庭の大切さを説く政治家、腐敗を厳しく追及する司法長官など)がひどい不品行を行いながらも自分に対してそれを正当化する理由を説明できるかもしれない。
我々は、しようと考えただけで、した気になってしまう。
我々が実際にどれほどよい行いをして、どんなご褒美をもらうべきかについて、脳はまともな判断をしていない。我々は、ただ良いことをした「気」になっただけで、自分は良い人間だと思ってしまう。意志力のチャレンジを道徳上の問題として考えてしまうと、我々は自己批判に陥りがちになり、意志力のチャレンジは目標達成に役立つということを見失ってしまう。

香港科技大学とシカゴ大学の研究で、誘惑に負けなかった時のことを学生たちに思い出してもらったところ、ライセンシング効果が生じ、その後70%の学生が自分を甘やかすような行動をとった。 しかし、学生たちに「なぜ」誘惑に負けなかったのかと理由を尋ねたところ、ライセンシング効果は見られず、今度は69%の学生は誘惑に負けなかった。
研究者らが発見したこの単純な方法は、まるで魔法のように学生たちの自制心を向上させ、自分自身の大きな目標にふさわしい選択をさせるのに役立った。

「なぜ」という理由を思い出すのが効果的なのは、それによって自分を甘やかすような報酬についての感じ方が変わってくるからだ。

ニューヨーク市立大学バルーク校のマーケティング研究者たちの研究によると、実はメニューにヘルシーな品物が載っているだけで、チーズバーガーとフライドポテトを注文したくなる。 マクドナルドのメニューにヘルシーな品物を加えたとたん、ビッグマックの売上が驚異的に伸びたというレポートを実証したものだ。
人は目標にふさわしい行動をとる機会が訪れただけでいい気分になってしまい、実際に目標を達成したような満足感を覚えてしまう。
そうしてヘルシーなものを選ぶという決心はどこかへ吹き飛び、まだ満たされていない欲求〜目先の楽しみ〜が最優先になる。
ヘルシーな食べものを注文しなくては、という決心は弱まり、ジャンクフードを食べたい欲求が強くなる。すると、まったくおかしなことに、メニューの中でもとりわけ動脈を詰まらせ、お腹を出っ張らせ、寿命を縮める原因になりそうな食べ物を選んでしまう。
こうした研究結果を受け、公衆衛生当局が学校のカフェテリアや自動販売機やチェーン店のレストランにも最低一つはヘルシーなメニューを用意するように指導しているのはいかがなものかと疑問視する動きも出てきた。
ヘルシー志向がもっと大幅に普及し、全てのメニューが全体的にヘルシーになるのでもない限り、却って何の対策も打たない場合よりも人々の選択に悪影響を及ぼす恐れがある。

これは実は「意志が強い」と思っている人ほど陥りがち。
メニューにサラダが載っていなかった場合、自称「意志力の鉄人」たちが最も太りそうなものを選ぶ割合は10%に過ぎなかったが、メニューにサラダが載っている場合は、50%もの人が一番太りそうなものを選んだ。おそらく、ヘルシーなものは今度選べばいいやと思って、フライドポテトを注文したのだろう。

このことは、我々が後で行うはずの選択について考える時に犯しがちな、根本的な間違いを示している。 我々は、明日は今日と違う選択が出来るに違いないと思うが、そうはいかない。
イエール大学の実験 学生に脂肪ゼロのヨーグルトとミセス・フィールズのクッキーのどちらかを選ばせた。 次の週の実験でも同じ二つの選択肢から選べると聞いた場合、83%の学生はクッキーを選んだ。
これに対し、お菓子が出てくる実験が1回限りだと思っていた学生の場合、クッキーを選んだのは57%。
実のところ、翌週も同じ選択肢が待っていると聞いた学生のうち67%が「次回はもっと良い選択をする」としていた。
ところが、その翌週に同様の実験を行ったところ、前回と異なる選択をした学生はわずか36%という結果。
「後で挽回できる」と思ってしまうと、自分に甘い選択をしても気がとがめなくなってしまう。

モラル・ライセンシングに対する行動経済学者 ハワード・ラクリンの提言。
「ある行動を変えたい場合、その行動自体を変えるのではなく、日によってばらつきがでないように注意する。」
 そうすると「明日からちゃんとやればいいや」という言い訳ができなくなる。
なるほど、ボラティリティを下げるような行動を心がけるということは「モラル・ライセンシング」や後述の「どうにでもなれ効果」にも有効な手段と言えそうだ。


<金魚鉢(フィッシュ・ボウル)>
報酬系による「報酬の予感」は、依存症の克服にも利用されている。
アルコールや薬物の依存症に最も効果的な方法のひとつは「金魚鉢(フィッシュ・ボウル)」と呼ばれている。
薬物検査に合格した患者達は、ボウルの中に入っているたくさんの紙切れの中から1枚を選んでとることができる。 紙切れのうち半分は、1ドルから20ドルまでの賞金の当たりくじになっている。そして、たった1枚だけ100ドルの当たりくじが入っている。
半分の紙切れは賞金ゼロだが、代わりに「その調子で頑張ろう」などのメッセージが書いてある。
ある実験では、金魚鉢のご褒美作戦を行った場合、患者の83%が12週間の治療を最後まで続けたのに対し、金魚鉢のご褒美なしで通常の治療を行った患者では、最後まで治療を受けた人はたったの20%だった。 また、金魚鉢作戦を行った患者の8割が全ての薬物検査に合格したのに対し、通常の治療を行った患者で全ての検査に合格したのはその半分の4割だった。
治療が終了した後も、金魚鉢作戦のグループは、もう金魚鉢のご褒美はもらえなくなったのに、通常の治療を行った患者に比べ、再発の可能性もはるかに低かった。 驚いたことに、薬物検査に合格したら定額の報奨金をもらえる仕組みよりも、金魚鉢作戦の方が効果があった。
そんな訳で、企業では一番下っぱの社員にさえ、「いつかCEOになれる可能性はある」と思わせるのは非常に大事。


<恐怖管理理論>
人間は自分の死を考えるとき恐怖を感じる。死の恐怖を感じたことで、我々の中には無力感を打ち消そうとする、やむにやまれぬ衝動が生まれる。それで、何でもいいから安心感や安らぎを与えてくれるもの、自分が強くなったように感じさせてくれる、お守りのようなものにすがりつく。
いつかは死ぬ運命にあることを思い出すとき、我々はありとあらゆる誘惑に負けそうになる。楽しい気分になれるものでほっと一息ついて、希望や安心感を得ようとするからだ。 だからテロや殺人事件の残酷なニュースの合間にも(合間だからこそ)CMは流れる。
スーパーで買い物をする人たちを対象にした実験では、参加者に自分の死について考えてもらったところ、買い物リストが長くなったり、甘いものや好物を普段より余計に買いたくなったりするという結果が出ている。
葬儀業者がスーパーのカート置き場の脇でパンフレットを配布しているのはそういう訳。 別の実験では、人が死亡したニュースをテレビで見た視聴者は高級車やロレックスの時計など、贅沢品の広告に購買意欲をそそられることが分かった。 ロレックスをしていればミサイル攻撃から身を守れる訳ではないが、そういう品物を所有することで自己のイメージが高まり、パワフルになった気がするというわけだ。
3/11の大震災の直後の東北で、ベンツやロレックスが売れまくったというのは、単に補助金という臨時収入が入ったということではなく、こういった脳の仕組みによるものか。

死亡の危険性をうたうタバコの警告表示は、喫煙者にストレスや恐怖を与える。公衆衛生当局の狙い通りだ。
しかし、残念なことに、不安にかられた喫煙者達が頼ったのはお決まりのストレス解消法、すなわち喫煙だった。
喫煙者の脳が「<警告>タバコはガンの原因になる」というメッセージを認識し、自分の死に向き合ったとしても、脳のどこかから叫び声が聞こえる。「心配ご無用。タバコを吸えば気分がよくなるよ!」
恐怖管理が起きると、我々は誘惑になびくだけでなく、物事を先伸ばしにしがちになる。


<どうにでもなれ効果>
前の晩に飲み過ぎたせいでひどく落ち込んだ人ほど、その日の夜も、また翌日の夜も飲み過ぎてしまう。 誘惑に負けたことで自己嫌悪に陥り、気晴らしに何かしたくなる。
最も簡単で手っ取り早い気晴らしの方法は、落ち込む原因をつくった、まさにそのものだったりする。はめを外して、落ち込んで、さらにはめを外すという悪循環。
実は慰めの言葉で「どうにでもなれ効果」が緩和される。
意志力を強化するには自分にもっと厳しくするしかないと思っているかもしれないが、それは間違いである。
数々の研究でも明らかになっている通り、自己批判はつねにモチベーションの低下や自己コントロールの低下を招く。
また、自己批判はつねにうつ病の最大の予兆。
驚いたことに、罪悪感を抱くよりも自分を許す方が責任感が増す。
研究者たちの発表によれば、失敗したことについて、自分に思いやりを持って振り返った場合の方が自分を厳しく批判した場合よりも、失敗したのは自分のせいだったのだと認めやすくなる。その方が、他人の意見やアドバイスに対しても進んで耳を貸せるようになり、失敗の経験から学ぶことも多くなる。
自分を許すことで失敗から立ち直れる理由の一つは、自分を許すことによって恥の意識や苦しみに苛まれることなく、事実をありのままに見つめられるようになること。
「どうにでもなれ効果」は、失敗したあとに感じる嫌な気持ちから逃れようとする反応だが、そもそも罪悪感や自己批判に悩まされなければ逃げる必要もない。


この本は10章からなっていて、10週間分の講義の内容をまとめていて、どこから読んでもOKとされている。
こんな授業があったら確かに色んな人たちから人気の授業になるであろうと思った。

2014年4月29日火曜日

『なぜ人と組織は変われないのか』

最近の研究によると、食生活を改めたり、もっと運動したり、喫煙をやめたりしなければ心臓病で死にますよと専門医から警告された時、実際にそのように自分を変えることが出来る人は、7人に1人にすぎないと言う。 残りの6人も自己変革の重要性を理解していない訳ではない。自分を変える背中を押すインセンティブも極めて強い。どこをどう変えればいいかは、医師から明確に指示されている。それなのに、自分を変えられない人が7人のうち6人、約85%もいるのだ。
心臓病で死ぬ危険があっても生活習慣を改めない人たちがそうだったように、リーダーと組織のメンバーが変革を成し遂げることを妨げている要因は、基本的に意志の欠如ではない。
本当の問題は、自分が本心からやりたいと望んでいることと、実際に実行できることの間にある大きな溝だ。

「変われないのは意志が弱いからだ」という思考停止状態から一歩進んで、時には免疫機能が健康を脅かす場合もあるように、実は 「免疫機能」のようなものがその人を守ろうとしていることにより「変わること」ができないのではないか、という仮説をもとに作られた理論。
著者はその「変革を阻む免疫機能」について多くのクライアントのコンサルを行うことにより変わっていくための手法として確立し、その内容を著している。

大人の知性は思春期以降も伸びていく。
いまや脳科学の世界でも「脳の可塑性」という考え方が認められており、人間の脳には生涯を通じて適応を続ける驚異的な能力が備わっていると考えられている。


大人の知性には3つの段階がある。
その知性の3段階の特徴は以下の通り。
<環境順応型知性(ソーシャライズド・マインド)>
・周囲からどのように見られ、どういう役割を期待されるかによって、自己が形成される。
・帰属意識を抱く対象に従い、その対象に忠実に行動することを通じて、一つの自我を形成する。
・順応する対象は、主に他の人間、もしくは考え方や価値観の流派、あるいはその両方である。
<自己主導型知性(セルフオーサリング・マインド)>
・周囲の環境を客観的に見ることにより、内的な判断基準(自分自身の価値基準)を確立し、それに基づいて、周りの期待について判断し、選択を行える。
・自分自身の価値観やイデオロギー、行動規範に従い、自律的に行動し、自分の立場を鮮明にし、自分に何が出来るかを決め、自分の価値観に基づいて自戒の範囲を設定し、それを管理する。こうしたことを通じて、一つの自我を形成する。
<自己変容型知性(セルフトランスフォーミング・マインド)>
・自分自身のイデオロギーと価値基準を客観的に見て、その限界を検討できる。あらゆるシステムや秩序が断片的、ないし不完全なものだと理解している。これ以前の段階の知性の持ち主に比べ、矛盾や反対を受け入れることができ、一つのシステムを全ての場面に適応せずに複数のシステムを保持しようとする。
・一つの価値観だけいだくことを人間としての完全性とはき違えず、対立する考え方の一方に組するのではなく、両者を統合することを通じて、一つの自我を形成する。

ワシントン大学文章完成テスト(WUSCT)、主体客体インタビューの二つの手法を用いた調査結果によると、 二つの研究は全く別個の被験者を対象にした調査をメタ分析したものだが、結論は一致していて、被験者の過半数(6割近く)は自己主導型知性の段階に達していない。
(いずれの研究も大卒中流層の専門職の割合が大きいので、社会の全ての層を調べれば、この段階に達していない人の割合はもっと大きいと予想される)
そして、自己主導型知性より上に到達している人の割合は、極めて小さい(6〜7%)


今日の世界で直面する課題の多くは、既存の思考様式のままで新しい技術をいくらか身につけるだけでは対応できない。
そうした課題をリーダーシップ論の研究者ロナルド・ハイフェッツは「適応を要する課題」と呼び、「技術的な課題」と分類している。
適応を要する課題に、技術的なアプローチではなく適応型のアプローチで対処するにはどうすればいいのか。
研究によれば、適応を要する課題に対処するために必要なのは、第一に、適応型のアプローチで問題を明確に定義すること。そして第二に、適応型のアプローチで問題の解決策を見いだすことだ。
第一の点は、今直面していることを解決する上で、自分の現段階の知性がどのような点で不十分なのかを正しく把握することを意味する。そして第二の点は、必要に応じて自分を変えることに他ならない。


とはいえ知性を高めるプロセスは単純なものではない。思考と感情の両方を動員しなければ、それは成し遂げられない。
では、具体的には何が必要なのか。 発達心理学者達の75年あまりの研究成果を一言で言うと、人間の知性を高めるために必要なのは「適度な葛藤」ということになる。

ここで「免疫マップ」なるものが登場する。
<免疫マップ>
1 改善目標
2 阻害行動(改善目標の達成を妨げる要因)
3 裏の目標
4 強力な固定観念

これを自ら内省し埋めていくことで気づきが得られ、変革への一歩を踏み出すことができる。
このマップの埋め方は様々な実例とともに述べられていて非常に分かりやすい。


本当の変化と成長を促したければ、リーダー個人の姿勢と組織文化が発達志向である必要があると著者はいう。
<本当の発達志向の姿勢の7つの要素>
①人間が思春期以降も成長できるという前提に立つ。人は大人になってからも成長し続けるべきだと考える。
②技術的な学習課題と適応を要する学習課題の違いを理解する。
③誰もが成長への欲求を内面に抱いていることを認識し、その欲求を育む。
④思考様式を変えるには時間がかかり、変化がいつも均一なペースで進むとは限らないことを理解する。
⑤思考様式が思考と感情の両方を形作ることを理解し、思考様式を変えるためには「頭脳」と「ハート」の両方にはたらきかける必要があると認識する。
⑥思考様式と行動のいずれか一方を変えるだけでは変革を実現できないと理解する。思考様式の変革が行動の変革を促進し、行動の変革が思考様式の変革を促進するのだと認識する。
⑦思考様式の変革にはリスクがついて回ると理解し、メンバーがそういう行動に乗り出せるように安全な場所を用意する。


著者は組織においても同じ手法が活用できるとしているのだが(そしてそれはそうだと思う)、個人の事例は非常に分かりやすく紙面を割いているのに対し、組織の事例はほとんど書かれていない(組織の方が、類型化しづらいからだろうか)。


変われない理由を、自らを嫌なものから守る「免疫機能」によるものとして、それを具体的な手法として確立しているのはスゴい。
あとがきで「これは文字通り、我々のこれまでの研究者人生全てを費やして書いた本だ」と言い切ってしまうだけのことはある。
非常に参考になる本であった。

2014年4月27日日曜日

『売る力』

千趣会マーケティングサポート 中山悦二郎さんご紹介の2冊目。
セブン−イレブンの鈴木敏文さんの著作は昔から好きで、セブン−イレブン研究として様々な著作を読んだが、ご本人の書いた最新作ということで非常によくまとまっていて、分かりやすく、それでいて奥の深い本であった(流石、中山さんのお勧め本!)。

「売る力」とは、お客様から見て「買ってよかった」と思ってもらえる力である。 だから、売り手は常にお客様の求めるものを叶える「顧客代理人」でなければならない。

この本では、以前に鈴木氏が対談をした有名人の取り組みを引きながら、事例として挙げている。(取り上げなかったが、以前中山さんからその著作を推奨された立命館大学大学院教授でありマーケティング・コンサルタントのルディー和子さんも出てくる)


<秋元康 編>
・お笑いの世界でも「普遍的な笑い」と「飽きられる笑い」がある。
たけしなどは、話題になっている「ネタ」を「変わらない視点」を通して語るのでいつまでも飽きられない。
新しいものを生み出すときには、長い間処方して体質改善する「漢方薬」のように長期的に持続する姿勢、すなわち変わらない「視点」を基盤としてもち、その上で「抗生物質」のように即効性のある要素、つまり、新しい「ネタ」を取り込むのが理想。
・柳の下にドジョウは二匹いるかもしれないが、二匹目のドジョウは小振り。ひまわりがブームになっているときには、タンポポの種を撒こう。
・「ココアとバターと文庫本」
 新しいものを生み出すイノベーションには二つあって、一つはこれまで存在しなかった概念のものを生み出すこと。もう一つは既存の概念のものに新しい意味を付け加えて革新すること。
ヨーロッパでは、冬にはココアに少量のバターを入れる飲み方がある。よりコクが増して美味しくなる。「秋から冬の夜長には、ひとかけらのバターを入れた温かいココアを片手に文庫本を読もう」という新しい提案。これは組み合わせにより新しい意味が生まれ、別の意味を持つようになる「予定調和を壊す」事例。


<旭山動物園 前園長 小菅正夫 編>
「形態展示」から「行動展示」へと切り替えることで瀕死の動物園を日本有数の動物園へと奇跡の復活をさせた園長先生。
・動物たちの魅力を来園客に伝えるには、何よりも動物達が楽しく一日を過ごせるようにすることが大切。でも動物は一つの仕掛けを楽しんでいてもすぐに飽きてしまう。
・「お客様の立場で」という観点で動物園を見直してみたら、動物がみんなお客様におしりを向けていた。
動物達にとって、普段エサを運んだり、世話をしてくれる飼育係も、痛い注射を打ちにくる獣医師もみんな裏側からやってくる。動物達にしてみれば、お客様の側には特に用がないので、常に裏側に注意を集中させていた。
それまでは、お客様に「動物は寝てばかりいて面白くない」と言われてもピンとこなかった。
考えてみると、自分達の前では、動物達は美味しいものが食べられるとか、いやな注射を打ちにきたということで、いつでも緊張感を持って活き活きとしていた。いわば特等席で動物を見ていたことに気がついた。
そこで、以降は、お客様の側から動物に近づいていき、世話をするように変えた。すると、動物達はすぐにこの変化を察知して、今度はお客様の方に、いつ飼育係がくるか、いつ獣医師が来るかと緊張感をもって注意を向けるようになった。
・「動物達は自由がなくてかわいそう」という意見にも最初は反発を感じていた。
しかし、動物の生きる目的は究極的には繁殖であり、目的に向かって命を維持するために食べる。自然界では一日のすべてをこの目的にあて、達成された時に喜びを感じる。
それが動物園では、食べ物は与えられるだけで達成感はなく、24時間のうち食餌の時間はたったの30分。それ以外の時間は何もすることがない。これはものすごい拷問ではないか、と気づいた。
これがきっかけで、行動展示が生まれていく。 食餌の時間に、動物本来の動きを引き出してみせる方法が考案された。

<経営コンサルタント 内田和成 編>
・「異業種間競争の時代」では、消費者起点で新たな事業連鎖を考えることが重要。
「事業連鎖」とは消費者が商品・サービスを購入するまでの、アフターサービスを含めた川上から川下にいたる流れの中で、様々な事業のつながりいう。
異業種間競争の時代になると、企業内の閉じた活動の範囲内で価値を生み出そうとする従来の考え方ではなく、既存の活動範囲や自分の業界を超えて、新たな事業連鎖を生み出す動きがドンドン活発になってくる。
他社との競争なら追い越した時点がゴールとなるが、顧客ニーズは変化し続けるので、この競争にゴールはない。これからもお客様を起点とした新たな事業連鎖が生まれ続けるということ。
・「明日の顧客のニーズ」はアンケートでも聞いても分からない。 必要になるのは、「仮説を立てる」という仕事の仕方。
 POSシステムは「明日の顧客」のデータは出してくれない。 「素人の目線」、普通の生活感覚で考えることが大切。
・「成功の復讐」
過去の成功体験が「よいパラダイム」として人や組織に染み込んでいると、変化に直面した時にその成功体験に足を縛られてしまうということを「成功の復讐」という。
 ダイバーが潜っているとき、水深50メートルほどの深さの海底にビールのバドワイザーの缶が落ちていて、赤いロゴマークが目立ったのですぐに目に入ったという話し。実はその位の水深だと、光の屈折の関係で赤い色は見えないはず。正確には、本当は濃いグレーに見えるはずのものが、グレーに見えず赤に見えてしまった。それほど人の思い込みは強いという逸話。

<佐藤可士和 編>
・「『当たり前』とは『あるべき姿』のことで、いわば理想型です。『当たり前』のことができるのはものすごくレベルの高いこと」
自分都合の範囲内での「当たり前」ではなく、相手にとって「当たり前」のことを愚直なまでに積み上げていくことが大切。
「当たり前」のことを徹底して実行し、積み重ねていくと、あるとき爆発点に達し、非凡化する。非凡化することで大きな成果に結びつく。
・「伝わらないのは存在しないのと同じ」
・「ブランドデザインは根底に流れるフィロソフィがないとできない」


その他、鈴木敏文語録。
・変わらない「視点」の基本は、常に「お客様の立場で」考えること。
売り手は「お客様のために」ではなく、「お客様の立場で」考えなければならない。
「お客様のために」となると、無意識のうちに「売り手の立場で」考えた思い込みや決めつけがある。
「お客様の立場で」考える時には、時には、売り手としての立場や過去の経験を否定しなければならない。
・6割のお客様が「手軽さ」、4割が「上質さ」を求めているとして、6割のお客様に対して売り手の9割が商品を供給すると、そのマーケットはたちまち飽和状態となり、価格競争に陥る。
・真の競合相手は競合他社ではなく、絶えず変化する顧客ニーズである。
・「メリハリ消費」「ごほうび消費」
現代の消費者は「消費を正当化する理由」を求めている。
消費が、単にモノそのものを買うのではなく、イベント性を持つようになっている。 モノを買うのではなく、コトを買う。
・「ペンシル型消費」
 ある商品の売れ行きが突然動き始めたら、商品を一気に市場に投入し、広告を打ち、情報発信に注力して、爆発点にもっていく。幻冬舎の見城さんが行っているようなきめ細やかな戦略は、消費者相手に商品を売るあらゆる業種で求められる。商品のライフサイクルが「ペンシル型」になっているからだ。
その昔の型からの推移を模式化すると、「富士山型」→「茶筒型」→「ペンシル型」となる。
 ピークの期間が極端に短いのが「ペンシル型」。ライフサイクルが短命化し、人気商品の交代が激しくなっている。よそが売れているのを見てから仕入れていたのでは、ニーズがピークのときに売り逃しを起こし、ピークが過ぎてから商品が大量に入ってきて売れ残ってしまう。
 お客様の潜在的なニーズはここにあると仮説を立てて開発した新商品や、あるいは、売れ行きのカーブに立ち上がる兆しが見えて、これが新しい売れ筋ではないかと仮説を立てた商品は、思い切って市場や店頭に投入する。同時に売れ行きの落ち始めた死に筋を排除する。
 ペンシル型消費に対して、ペンシル型のマーケティング戦略をとり、機会ロスと廃棄ロスを極力小さくしていく。
特に重要なのは機会ロス。機会ロスが小さくなればなるほど、お客様は欲しい商品を欲しいだけ手に入れることができ、売り手も多くの売上を得ることが可能となり、互いの利益を一致させることができるようになる。
・「積極的にお客様に近づく」
消費が飽和状態になり、現代の消費者は何を買っていいか迷っているといわれる。しかし、それは売り手側から見た見方で、「迷っている」というよりは「確認したい」という意識が非常に強まっているように感じる。
今は、自分のニーズを本当に満たしていないと購買行動に移らない。だから、お客様は、売り手側が自分たちの求める価値を理解し、その商品が本当に自分のニーズを満たしてくれているのかどうか確認したい。つまり、選択を納得できる理由がそこにあるかどうかを確認したい。
 別の言い方をすれば、売り手と自分が一方通行の関係ではなく、互いに情報と価値観を共有できているかどうかを確認したいのだ。
 接客で大切なのは、お客様との「対話」 コミュニケーションのあり方には、双方向のコミュニケーションにより価値や情報を共有する「対話」レベル、売り手側の都合だけで一方的に伝達しようとする「一方通行」レベル、送り手も受け手も盛り上がるが肝心なことは何も伝わっていない「漫談」レベル、送り手だけが送っているつもりで受けては何も聞いていない「ひとり言」レベルなどがあるが、お客様と「対話」ができているかどうかが大切。
・お客様は期待した以上の価値を感じて初めて満足する。その期待度は一定ではなく常に増幅し、食べ物ならば以前は「おいしいもの」のレベルが次は「当たり前」になり、やがて「飽きるもの」に変わる。
一度得たお客様のロイヤルティを維持していくことは非常に難しい。
明日の満足のためには、常にプラスオンされたものが求められる。プラスオンの積み上げこそが重要。


その他セブン−イレブンの現状のお話。
・セブンイレブンの全店平均日販は2009年度約62万円。2012年は約67万円と3年間で大きな伸びを示した。
「コンビニで食事用の買い物をする」という新しい提案が実を結んだ。主に高齢者や40歳以上の女性の増加のおかげ。
2012年度は大手コンビニエンスチェーンの中でセブンイレブンだけが既存店売上高伸び率でプラス。
・2千名を超えるOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)全員を全国各地から隔週で東京の本部へ集めて、1日がかりの会議(FC会議)を行い、最新の情報提供や成功事例の共有などを行い、会長講話に通してコンビニ経営の基本を繰り返し説き血肉化させていく。(その昔は毎週という話しだったが、最近は隔週でやっているようだ)
・セブン&アイ・ホールディングスは、「変化への対応」と「基本の徹底」という二本柱をスローガンに掲げる。


スゴいと感じたのは以下のエピソード。
弁当をセブンイレブンで客として購入し、レベルが落ちていてお客様に提供すべきではないと判断すれば、即刻店頭から撤去の指示を出す。
北は北海道から南は九州まで、1万5千店を超える全ての店頭から、本部の負担で20分以内で撤去させる。「お客様の立場で」あらゆる面から徹底して追求し、決して妥協しない。 それが全店平均日販約67万円と、他の大手チェーンを12万以上引き離すセブンイレブンの「売る力」の強さになって表れている。

自ら説明責任をしょっているからこの判断ができるのだろう。
相変わらずマーケットと闘っている経営者を具現化している人だと思った。

2014年4月20日日曜日

『時給800円から年商10億のカリスマ所長になった28の言葉』

44歳まで専業主婦、それから駅弁販売のパートを始め、52歳で正社員。 2007年営業所長となって年商10億円のカリスマ所長となり、2012年8月29日 第190回「プロフェッショナル 仕事の流儀」で放映もされた三浦由紀江女史の著作。

会社の仕事でお世話になった千趣会マーケティングサポートの中山悦二郎さんから、うちのメンバーにお勧めいただいた珠玉の2冊のうちの1冊。

信条が、
「事実を冷静に受け止め、反省するけど後悔しない。常に前向きに楽しく、楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる。」
「仕事を楽しんでいる人にはかなわない」
という三浦女史のやり方は非常に前向きで参考になる。

<接客のポイント3つ>
①動きながらお客様を待つ。
②売りたい気持ちを抑えてお客様に近づく
③一人称でささやく
こと。

<クレーマー対応の3つのコツ>
・相手の言葉をおうむ返ししながら「申し訳ございません」と頭を下げる
・自分からは何も話さず、相手にどんどんしゃべらせる
・レシートとデータが保管してあることを伝え、相手を動揺させる

など具体的なコツの他、

<グチる時の3か条>
1 外に漏れない相手にだけ愚痴る(親友、夫、妻など)
2 3分間だけ愚痴る。
3 笑いながら愚痴る(もしくは最後に笑う)

<心のスイッチ切り替え術>
その1 相手のことをすごく気の毒な人だと思う
その2 自分のせいだと思わない
その3少し時間を置くと、自分の落ち度も見える

など心の持ちようについてのコツも書かれている。

成長するためには、素直さが必要。でも、素直なだけではいい仕事はできない。
100%楽しみながら結果を残すためには、素直であると同時に、負けず嫌いでなくてはならない。
サッポロビール元社長の 寺坂史明氏からもらった言葉ということで『素直な負けず嫌い』というのがあるらしい。
いい仕事をしてもらいたいなら、普段は素直で人当たりがいいけれども、心のうちに静かなる競争心を隠している人を見つけなければならないというものだ。
これはその昔聞いた、NHKの連ドラの主役を務めるには「花があるだけではなく、鬼が棲んでいなければならない」というのと同じ意味合いだと思われる。
では、どうやったらそのような『素直な負けず嫌い』が採用できるのか。
その方法は確立されていないけれども、スポーツをやっている人は負けず嫌いである可能性が高いとのこと。
単純すぎるかもしれないが、勝負にこだわってスポーツをやってきた人には素直さと忍耐力、負けず嫌いな性質がかなりの確率で備わっている。


その他、正に現場から営業所長まで幅広く経験した三浦さんならではの知見が随所に分かりやすく落とし込まれた良書であった。


人事異動

サラリーマンという職業に人事異動というものはつきものである。
実はこの4月1日に異動の辞令をもらった。
年初の抱負(http://omachido.blogspot.jp/2014/01/blog-post.html)で「ギアは(苦労したけど)入れ替えたので後はやるだけ」と思っていたら、またしてもギアの入れ替えからやることになった。

宮仕えの身からすると、また新たな業務に向けて頑張るのみなのだが、そんなこんなもあって、ブログの更新(そしてさらに言うと読書による情報インプットも)がすっかりご無沙汰となってしまっている。

今回の辞令は(3年前の辞令と違って)個人的には時期も含めて青天の霹靂系。
よく言われるように企業の人事というのは所詮「玉突き」ということで、今回のように個人的には望んではいなかったし、組織的にも必要だったのか?という疑念があればあるほど「玉突き」理論を考えてしまう。
この玉突き理論、どこから(誰から)「玉突き」が始まっているのかを邪推してしまうものなのだが、結論が出る訳でもなく結局はグルグルと回っている感じである。

辞令がでてからの約1ヶ月半は週末もほとんど休みなく(3月の三連休に奈良に家族旅行に行ったのだが、これを家族サービスカウントとすると)動き回っていて、右肩の痛みがひどく整骨院に行っても痛みが取れないレベルとなってしまっている。。

年初の抱負を考えたときとは違う状況ではあるが、「一所懸命」ということを異動先にて実践していきたい。