2009年6月21日日曜日

『フィッシュボーンノート術』

あるアメリカの公的機関の情報によると
・『ニューヨークタイムス』1週間の情報量は、18世紀の個人が一生かけて得る情報よりも多い。
・今年生まれる新しい情報の量は過去5000年間に人類すべてが生み出したすべての情報よりも多い。
そして、独の心理学者エビングハウスによると、人間は記憶してから1時間後には56%を、1日後には74%を忘れてしまう。。

というわけで、わかりやすくて記憶の構造化につながりやすいノート術ということで『フィシュボーンダイアグラム』の出番です。

実はこれ、日本では”特性要因図”といい、東京大学名誉教授の故石川馨先生(QCサークル活動の生みの親といわれているらしい)が考案したもので、日本発のダイアグラムだそうです。

一般的には魚の頭を右にすることが多いようですが、著者によるとノートが左から右に書いていくことを考えると、常にテーマが見えるようにということで左が頭であるべしとのことでした。
マインドマップほど拡散する内容ではなくて、因果関係が比較的明確な場合に優れたダイアグラムであると感じます。
日本発というのが気に入ったのでしばらく試してみようと思っています。

『銀座ミツバチ物語』 

千葉大学の三輪正幸先生からミツバチ関係でご推薦いただいた本の一冊です。
1日40万人もの人が行き交う街、銀座。
都内でも有数の商業エリアですが、その銀座のビルの屋上で養蜂が行われて話題となっています。
その「銀座ミツバチプロジェクト」の仕掛け人、田中淳夫さんがちょっとやってみようかということでプロジェクトを立ち上げ、思いもよらないことの連続で人の輪が大きくなっていく様が描かれています。
取れたハチミツを活かすための人の輪。一般の人からは「蜂の専門家」と思われることから広がる人の輪。都市と自然とを結ぶサスティナブルな取り組みを行う組織との人の輪。。
養蜂を通じて、コミュニティがどんどん広がっていくのを見ると『養蜂』という活動の潜在パワーを考えざるを得ません。

実はミツバチがカラスの天敵たりうるといった意外な結果やら、ミツバチの生態に関する知識も諸々織り交ぜ楽しく読める本となっています。
ハチミツはエジプトのミイラの腐敗防止としても活用されていただとか、ローマ時代はその殺菌作用のため戦争時には必携の品だったとか、ナポレオンの紋章はミツバチだったとか、歴史的な雑学知識も豊富になります。

スズメバチと同様、ミツバチも働き蜂は雌です。
雄は交尾だけが仕事なので普段は何もせずにプラプラと「髪結いの亭主」よろしく働き蜂が集めて来た蜜にあずかります。
いざ交尾の時期となっても女王蜂とめでたく交尾できるのは数匹から10匹。めでたく相手(女王蜂)に選ばれた雄蜂の運命は、交尾の瞬間、生殖器が取れてその場でお陀仏となります。
交尾できなかった雄はまた巣に戻ってくるのですが、冬の準備に入って女王蜂が順調に産卵している状態が確かめられると、雄蜂はお役御免となり、働き蜂に担がれて雄蜂は巣外に放り出されます。
男子の本懐を遂げて即死するか、それとも生きながらえて秋口に居場所を失いおっぽりだされるか。いずれにしても、男はつらいよ、です。

知れば知るほど、ミツバチの世界も奥が深く、普段外で飛んでいるミツバチが可愛く思えて来ます。
柏の葉のはちみつクラブも頑張ってもらいたいものです。

2009年6月20日土曜日

『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』

神永正博さんという東北学院大学準教授の書いたわかりやすい統計の本。
人の解釈を鵜呑みにするのではなく、生データにあたる重要性を示しています。

「若者の読書離れは本当か」「小泉改革は格差を拡大したのか」など、世に言われている仮説が本当かどうかをデータで検証しつつ、データを読み解く方法を示していきます。

面白かったのは、LTCM(Long Term Capital Management)の破綻の原因となった理論の話。
LTCMはショールズとマートンという二人のノーベル経済学賞受賞者だけでなく、200人近い社員のほとんどが博士号をもち、天才トレーダー、ローレンス・ヒリブランド、元FRB副議長のデビット・マリンズも在籍するというドリームチームの天才集団でしたが、たった1回の失敗で1998年に破綻してしまいました。
この破綻の原因となったのが、「株価の動きが、正規分布を使って書ける」という仮定。
実際には株価の動きは”正規分布”よりも”べき分布”に近く、”稀にしか起きない現象”が結構大きな確率であるいわゆる”fat tail”であったために、天才集団が”何万年に1回も起きないと考えていた大変動”がおきてしまい、その資産のほとんどすべてを失ってしまいました。

この「べき分布」(またの名を『パレート分布』)とは、株価だけでなく、自然界のさまざまな現象を支配する確率法則で、正規分布とはまったく違う性質をもっています。
正規分布との最大の違いは、平均や分散が存在しない場合があること。
モデルで平均や分散の存在が仮定されているのであれば、たくさんデータをとっていったとき、そのデータの平均(標本平均)や分散がだんだん一定の値(真の値)に近づいていいかなければなりませんが、株価のように、ときおりものすごく大きく変動するものに対しては、平均や分散が存在しないことがあります。
株価の場合で言うと、平均が一定の値に近づいても、分散がそうならないことがあるとのことです。

分散投資(ポートフォリオを組む)という方法がリスクヘッジ策としてとられることが多いですが、この理論も「ポートフォリオに組み入れる株や債券の価格分布が、それぞれ平均、分散をもつ」ということが前提となっているので、”極めて稀に起こる極端な現象”が私たちの想像以上に頻繁に起きる経済現象においては必ずしも必勝法ではないとのことです。

①人が解釈を加える前の生データをみて自分で考える。
②自分の仮説に反するデータも集める。
③重要な数値は頭にいれておく。
という教えはとても大切だと思いました。

2009年6月15日月曜日

柏の葉はちみつクラブ 採蜜編

先日、千葉大学の徳山先生、三輪先生からミツバチの生態から養蜂、そしてその意義に関するレクチャーを受けました。
その時に「今度柏の葉はちみつクラブで初めての採蜜がありますので是非来て下さい」とお誘いを受けたので行って来ました。

ミツバチ(働き蜂)の一生は大体35日程度だそうですが、1匹の働き蜂は一生涯で約5 mlの蜜を集めます。働き蜂は全てメスで、オスは全体の1割程度しかいないそうです。
ミツバチの行動範囲は半径3kmですので、柏の葉周辺の花から蜜をせっせせっせと集めていることになります。


採蜜は宇宙服のような格好をして巣箱から巣を取り出して、遠心分離機(といっても手動のドラム缶みたいなもの。数が出ないからか、これでも市価8万円とかするそうです。)にかけて、それを濾過します。
この日はほぼ4ℓ採取できました。

終わった後は、KFVのキッチン会議室で取れ立てのハチミツを賞味。
とれたハチミツは菜の花、梅、アカシア、クローバー、クリの5種類の花蜜がメイン。
ちょっと、強めの味がはいっていたのは栗の花だそうです。
三輪先生曰く、ハチミツも劣化するので採れたてが一番美味しいとのこと。

『養蜂』は都市(人)と自然(緑)をつなぐ意味合いがある他、好奇心を醸成しやすいので環境教育やコミュニティ醸成につなげやすく、地産地消といった食育にも展開できる非常に優れた活動である、というお話を聞きつつ採れたてのハチミツ付きパンをほうばったのでした。











千葉大学でとれたハチミツ。春から秋にかけてハチミツの色が濃くなるそうです。

2009年6月14日日曜日

『吉越式利益マックスの部下操縦術』


元トリンプ・インターナショナル社長の吉越さんが経営者向けでなく、中間管理職向けとして書いた本です。
「報連相は不要」「部下は衆人環視のもと叱るべし」「部下は教育することができない」など正直、納得できない内容が多かったのですが,19年間増収増益という実績を誇った吉越氏の考え方(本意)を知りたいと思い読んでみました。

「ホウレンソウ不要」については、代わりに”デッドライン”を設けて仕事を任せるという趣旨で、仕事の進め方含め部下に任せるということだそうです。役員クラスであれば可能ですが、新人を含め指導、戦力化していく必要のある現場の中間管理職向けにしては少々難しいお題のような気がします。

「部下は衆人環視のもと叱るべし」については、失敗の共有化という趣旨であり、常に衆人環視のもとで部下を叱ることを行っていれば、怒られた部下のモチベーション低下も最小限で済むのかもしれないと思いました。

「部下は教育することができない」という内容については、
『部下は「育てる」ものではないのです。成長する人間は放っておいても成長していきます。上司の仕事は、その成長を妨げるような会社のシステムを取り除き、のびのびと自分の限界にチャレンジできるような「場」を提供してあげることです。』
とあるので、”自己の限界にチャレンジできる「場」の提供”を部下を育てること(≒教育)と整理すると納得感があります。
吉越氏は、”教育”を「形式知」を伝えるものではなく”暗黙知”を伝えることという整理をしているようで、『仕事は教えられるものでなく、見て盗むものだ』という発言につながっているのでしょう。

19年という期間実績を出し続けるということは、まぐれでできるものではありません。
日本の良い部分は残しながら外資の厳しさを取り入れてきた吉越式。もっと研究されてもいいのかも知れません。

○英語力、経理知識など他社でも通用する能力を磨くこと。
○アウトプットを減らさずにライフワークバランスを実現すること(所詮仕事はゲーム)。
○できるマネジャーの資質は「厳しさ」。人柄は温厚であっても鋭利に研ぎすまされたEdgeをもっている。部下に盗まれるような技を身につけること。
など、見倣わなければならない内容もたくさんでした。