2009年11月22日日曜日

『リフレクティブ・マネジャー』

”一流は常に内省する”とサブタイトルのついたこの本、「働く大人の学び」に関する本である。
教育というと、やはり学校教育に関する研究が多く、企業における人材育成に関する研究はほとんどない。
それについて20歳も歳の離れた中原淳と金井壽宏が連歌方式(?)で企業における学びについて語っていくのが面白い。
諸々の教育理論についての紹介があり、協調学習の入門編としては非常にすぐれていると思う。

マネジャーについて、
「忙しいから大きな絵が描けないのではなく、絵が描けていないからひたすら振り回され忙しく感じる。
優れたジェネラルマネジャーほど、アクションを通じてのアジェンダ構築がうまく、頭の中が整理されていて、より遠くを見ている。
だからひとつの指示や決定に迷いや誤りがなく、それらはちゃんとアジェンダに沿って決められている。
その姿は、見かけ上は無慈悲なほど目まぐるしくても、本人は自分の意思でそうしているのだ」
というコッターの主張は若干耳の痛い話ながらその通りだと思う。

○大人の学びには"unlearn"(学びほぐし)が大切であり、その際には「ジレンマ」「葛藤」「焦燥感」といったネガティブな局面がともなうこと。
○トップダウンでもボトムアップでもない、ミドル・アップ・ダウン・マネジメントが重要であること。
○宮大工の世界でも、能の世界でも、観阿弥世阿弥の時代から、技術や技能の継承においては、先輩が後輩の目の前で実際にやってみせる側面からの刺激と、先輩が後輩に見せながら大事なことを言葉で伝える口伝とが同時に行われてきたこと。実地にやってみせることと、「要約ラベル」とも呼ばれるキーワードで盗むヒントを言語化することの両方が大切であること。
などなど、企業における人材育成に関するヒントが満載である。

development というとすぐ「開発」と訳される。carrier development→「キャリア開発」、leader ship development→「リーダーシップ開発」と訳されるのだが、経営学の中でも人材育成に関しては developmentを「発達」「育成」と置き換えると「キャリア発達」「リーダーシップ育成」となってより本質を理解しやすくなるのではないか、という話があった。

これからはディベロッパーと呼ばれる企業は”都市開発”だけでなく、人材に関してもdevelopし、”人材育成”についても本業としていく必要があるのかも知れないと痛切に思った。

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