2009年11月28日土曜日

『のめり込む力』

ワトソンワイアットのコンサルタント川上真史さんの書いた本。
実は会社で川上さんの研修を受けていて、本の内容の半分くらいは研修のときの内容であった。
つまらない研修が多い中で非常にためになる研修であったと記憶している。
ミハイ・チクセントミハイがフローの研究をするにあたって、「”外的報酬”と”内的報酬”だけでは説明のつかない熱中状態を研究し、それを”フロー状態”と名付けた」という話を聴いていたので、それとの関連性も気になり購入した。

よく動機付けを語る時に引き合いに出される『マズローの欲求五段階説』が自他ともに認める誤りであるということが明記されている。
(マズロー自身も「研究が不完全なうちに世の中に勝手に広まってしまった」と困惑しているらしい)
確かに「衣食住足りて礼節を知る」ではないが、”足りないもの”が無くなった現代日本において、必ずしも自己実現欲求が起こっていないことはマズロー説が完全でないことの証明となってしまっている。

欧米では、職場環境の改善やキャリアアップのための支援などを計画的に行うとともに、それらも「報酬」として捉えて、トータルに報酬制度を設計していこうとする「トータル・リウォーズ」(Total Rewards)の考え方が出てきた。
昇給、昇進といった外的報酬の他に、キャリアアップ支援、仕事の機会といった内的報酬を合わせて「報酬」であるとする考え方だ。

内的報酬には、「仕事のテーマではなく、仕事のプロセスに面白さ、興味深さを見いだしていこう」というエンゲージメントの観点が必要であり、そのエンゲージメントには「活力」「献身」「熱中」の3つの必要要素があると言っている。
「活力」はいわゆる”やる気”である。
「献身」はちょっとわかりづらいが、仕事をやりながら誇りが感じられる状態。”プライド”と言い換えてもいいもの。後ででてくる自尊感情にもつながってくるのかと感じた。
「熱中」については”没頭”すること。
「熱中」をフロー状態に近いものと考えると、チクセントミハイが外的報酬、内的報酬の訳では説明のつかない強いモチベーション状態を”フロー”としたのに対して、ここでは内的報酬のベースとなるエンゲージメントの一必要要素として”フロー”に近いものが設定されているようだ。

仕事にエンゲージメントするには「成果を生み出している実感」が必要である。とはいえ、常に大きな成果を生み出せる人は本当に一握りしかいないので、”小さな成果”を生み出していることを感じる必要性がある。
その「小さな成果に対する認知力」は「顧客からの強い感謝を得た経験」の有無によるところが大きいそうだ。
顧客からの強い感謝の念を受ける経験は、すなわち自尊感情にもつながる。
人材育成においても非常に大切なポイントではないだろうか。

”シナジー”の考え方にも触れられている。
”協調すること”と”シナジーを生むこと”は似て非なるものであり、協調だけでは新しいものを生み出すことはできない。
「自尊感情」と「共感性」、この2つの高さがシナジーを生む。
これからの国際社会においても絶対不可欠な2要素であると思う。

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