2012年10月27日土曜日

『経営学を「使える武器」にする』

経営コンサルタント高山信彦氏の著書。
単なる研修に終わらず、実際にその会社の経営戦略を練り上げるところまで行う「コンサル」を行うらしい。

「古典を馬鹿にしてはいけない。最新の経営理論以前に、古典とされるような経営理論が実践できていない会社がたくさんある。」
という高山氏の意見には全く同感である。
難しいハイレベルの経営に至る以前に、もっと基本的なところで足踏みしている会社の方が多いのではないか。

「経営戦略とは、環境適応パターンを長期的な時間軸で示す構想であり、企業内の意思決定の指針になるもの」
とされている。
個人的には、環境適応パターンを長期的な時間軸で生き残ってきたお手本は生物だと思っているので、経営戦略においては生物の進化論についても洞察を深める必要があると感じている。

著者は「組織は何のために階層構造をとるのか。」と質問している。
指揮系統を明確にするためか?1つの目的を効率的に遂行するためか?ヒントとして、組織の階層の差とは何かを考えよ、としている。「責任と権限」?「経験の差」?「深い業務知識」?答え。組織の階層差の違いは「抽象化・概念化」の差。と言う訳で、組織はなぜ階層構造をとるのか、という問いの答えは、「それぞれの階層で起きる問題をそれぞれの現場で解決するため」。

課長は係長の延長では駄目だし、部長は課長の延長では駄目。役員は部長の延長では駄目。
各々の階層で解決できる問題を解決するために階層構造をとっているということか。
役職が上がるに従ってより高度な課題を解決する必要があるということだ。



事業戦略論の4つのアプローチ
<利益の源泉が外重視か内重視か>×<要因に注目するか、プロセスに焦点をあてるか>
①「ポジショニングアプローチ』(外重視×要因注目)
②「資源アプローチ」(内重視×要因注目)
③「ゲームアプローチ」(外重視×プロセス焦点)
④「学習アプローチ」(内重視×プロセス焦点)

(一番重要なのがポジショニングアプローチ。)


経営資源の量×質で分類した企業の各々の基本戦略
①リーダー(量大×質高)
②チャレンジャー(量大×質低)
③ニッチャー(量小×質高)
④フォロワー(量小×質低)

チャンレンジャーの基本戦略は差別化。チャレンジャーの差別化に対抗するリーダーの戦略が同質化。だから「マネシタ電器」はリーダーの基本戦略として正当。
チャレンジャーはリーダーに対して戦いを挑む一方、ニッチャーは決して戦いを挑まない。
裏を返せば、リーダーはチャレンジャーに対しては徹底的に対抗する反面、ニッチャーに対しては取り立てて反応しない。
ホンダのインサイトに対してはトヨタはプリウスの値下げで対抗したが、ポルシェがどんな車をだそうともトヨタは特に対抗措置はとらない。
フォロワー戦略は、とにかく安く。


というのだそうだ。

STP+4Pなどの基本的な理論の他、著者独自のやり方と思われる「業界セグメント分析」(「魚群探知機」という喩えが面白い)から徹底的なVOC(Voice of Customer )取得(顧客の顧客にも話を聞く。)という手法が斬新であった。

経営方針を考えるにあたっては、「How」はいらない、「What」を考えるのだ、というのも非常に勉強になった。

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