2013年5月27日月曜日
『本当のブランド理念について語ろう』
P&Gなどで実績を積み、「世界の大企業のGMO(グローバル・マーケティング・オフィサー)に上り詰めた人」であり、現在は企業のコンサルティングや大学院で教鞭を執っているジム・ステンゲル氏の著作。
Facebookで勧められていたのでそのままAmazonで購入。
個人が購買活動をするにあたって、誰から勧められたかというのは非常に重要なファクターである。
閑話休題。
ステンゲル氏は自らP&Gにて「ジフ」「ダブ」「パンパース」といった世界的ブランドを再構築する実績を積み、「ブランド理念」こそが世界で成功を収める企業と相関があることを確認し、自ら「ブランド」=「ビジネス」だと思っていると述べている。
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10年の調査により、ブランド理念の面でとくに優れていると判断できた50のブランド「ステンゲル50」の投資利益率(ROI)の伸び率の平均は、「S&P500」の構成企業の平均より4倍高かった。
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私は、「ブランド」と「ビジネス」を同義語として用いている。 あるビジネスの未来にとって最も重要な人たちにとっては、ブランドこそがビジネスの本質だ。 複数の企業が競い合う市場で利益獲得と事業の成長を牽引し、社員、顧客、取引相手、投資家に対してライバル企業との違いを示せる要因は、ブランドなのである。
1980年、S&P500を構成する企業の株式時価総額のほぼ全てが、現金、オフィスや工場といった不動産、設備、在庫など、目に見える資産で構成されていた。 しかし、2010年、その割合は40〜45%まで落ち込んでいる。残りの55〜60%は目に見えない資産だ。そのうちの半分をブランド価値が占めている。株式時価総額全体に占める割合でいうと、30%以上がブランド価値ということになる。
一言で言えば、企業やビジネスの実力はブランドの実力で決まるようになった。ブランドほど、ビジネスリーダーにとって強力な武器になりうるものはない。 だからこそ、私は全てのビジネスリーダーに対して、ブランドを率いるブランドリーダーとしての自覚をもって考え、行動するよう呼びかけている。
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ステンゲル氏は「ブランド理念」という高次の理念を提唱している。
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有効なブランド理念は、そのブランドのビジネスに関わる人たちがどういう価値を重んじているかを明瞭に描き出す。そういう理念は、企業が顧客を深く理解することを可能にし、どういう顧客を最良の顧客と位置づけ、その顧客層とどういう価値観を共有するのかという問いに、ライバルと異なる独自の答えを導きだす道を開く。
また、そのブランドがどのような類似化ポイント(顧客の選択肢に加わるために最低限満たす必要がある要素)と差別化ポイント(ほかのブランドより好ましいと顧客に評価されるために必要な要素)を現在持っていて、将来新しく確立しうるのかを浮き彫りにする。
ブランド理念は、単なる金額や数字の目標であってはならない。金額や数字だけでは、人々のやる気をかき立てて大きな成果をあげさせることも、有能な人材を引き寄せ、つなぎとめることも出来ない。
業界の先頭を走る急成長ブランドは、人間にとって大切な5つの基本的価値のいずれかに関わるブランド理念をもっている。
具体的には次の5つの方法のいずれかにより、人々の生活をよりよいものにしようとしている。
①喜びを感じさせる〜人々が幸せや喜び、無限の可能性を体験する後押しをする
②結びつくことを助ける〜人々が他の人たちや世界と有意義な形で結びつく能力を高める
③探究心を刺激する〜人々が新しい世界や新しい経験に乗り出すのを助ける
④誇りをかき立てる〜人々が自信や力、安心感、活力を高めることを可能にする
⑤社会に影響を及ぼす〜現状を揺さぶり、新しいビジネスの枠組みを打ち出すなどして、社会全体に好ましい影響を与える。
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ステンゲル氏は「ビジネス・アーティスト」という新しいリーダー像をつくりあげている。
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<ステンゲル研究の4つの発見>
発見1 ブランド理念は、最も急速に成長を遂げているビジネスの原動力である。
発見2 最も急速に成長を遂げているビジネスは、人間にとって大切な5つの基本的価値のいずれかに関わるブランド理念をもっている。
発見3 最も急速に成長を遂げているビジネスを動かすのは、ビジネス・アーティスト(ブランド理念を主たる表現手段として用いるリーダー)である。
発見4 ビジネス・アーティスト達には、いくつかの活動に卓越しているという共通点がある。これらの活動がコンピューターのOSのように高成長を生み出し、持続させる土台になっている。
「スター・ブランドは、芸術的で創造的な精神からしか生まれない。」
by 仏高級品ブランド複合企業モエエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンのベルナール・アルノーCEO兼会長
アルノーは傘下の全てのビジネスで、ビジネス運営者の役割とアーティストの役割を別々の人物に担わせている。
このリーダーシップ・ビジネスモデルは、どの業種のビジネスにも有効だ。一人で二役をこなせる人物もいるが、そういうケースは少ない。
リーダーとして成功するためには、自分の強みがビジネス運営者の面とアーティストの面のどちらにあるのかを見極めた上で、もう一方の役割を担える人物を見つけ、その人物に権限を与えることが重要だ。
業界の先頭を走る急成長を実現するために、ビジネス・アーティストは次の4つの問いを絶えず自問し続けなければならない。
・わが社の未来にとって最も重要な人々(社員、取引先、消費者、投資家)のことをどの程度理解できているか?
・わが社とわがブランドは、どのような価値を実践しているのか?
・わが社とわがブランドは、どのような価値を実践したいのか?
・わが社はどのように、これらの問いに対する答えを実際の活動に反映させているのか?
すべてシンプルな問いだが、これらの問いに答え、その答えに基づいて行動することは簡単ではない。しかし、その難しい課題に取り組むことを通じて、ブランドと企業は力を手に出来る。
ビジネス・アーティスト達は次の五種類の活動に卓越している。
この共通点はビジネスリーダーが満たすべき重要な条件と言っていい。
・人間にとって大切な5つの基本的価値のいずれかに関わるブランド理念を発見(もしくは再発見)する。
・ブランド理念を軸に、企業文化を構築する。
・ブランド理念を社内外に発信し、社員と顧客の両方と共有する。
・ブランド理念に沿って、理想に近い顧客体験を提供する。
・ブランド理念に照らして、ビジネスの進歩の度合いと社員の仕事ぶりを評価する。
(実はこの5項目は後述の”ブランド理念の木”の”葉”にあたる)
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ステンゲル氏は”ブランド理念の木”という生命体的なビジネス概念についても述べている。
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<ブランド理念の木>
”ブランド理念の木”の根っこは二つの要素で構成される。
1つは、社内の人々がいだく信念(それは、たいていブランドの歴史に由来する)
もう1つは、そのブランドが顧客や消費者と共有する価値観である。
この二つの要素が生き生きと相互に作用しあうことにより、”ブランド理念の木”は地面につなぎ止められて、しっかりと支えられる。
ブランド理念、言い換えれば、そのブランドが世界に提供する高次の恩恵は、ブランドの歴史に根ざすべきものだ。それは、”人々の生活をよりよいものにする”ことを目指す創業の理念を出発点とし、その後も絶えず磨きをかけられていく。これまでそのビジネスを担ってきた人たち、特に歴代のリーダーたちの信念や願望、価値観がそこに吹き込まれる
”ブランド理念の木”の最も土台の部分をなすのは、ブランドが奉仕する人々である。
どういう層を対象にビジネスを行うのかは厳選すること。
これはある程度の規模を持った層を対象にする必要がある。
自分のビジネスが人間にとって本当に重要な領域で活動しているかどうかを点検するためには、ブランド理念が人間にとって大切な五つの基本的価値〜喜び、結びつき、探求、誇り、社会への影響〜に根ざしているかどうかを確認すればよい。
”ブランド理念の木”の幹を構成するのは、ライバルとの「差別化ポイント」そしてライバルから遅れをとってはならない「類似化ポイント」(市場に参入してライバルと肩を並べて競い合うための最低条件といってもいいし、ライバルの強みを無力化するために到達すべき水準といってもいい)だ。
”ブランド理念の木”の葉はビジネス・アーティストが卓越している、発見、構築、発信、提供、評価の5つの活動である。
”ブランド理念の木”という比喩は、単なる言葉遊びではない。
樹木という生命体になぞらえることにより、ビジネスの未来にとって重要なすべての人々の存在を考慮にいれ、その人たちの相互の関係を描き出せる。
また、ビジネスを成長させるために調和をとる必要のある要素を木の根、幹、枝、葉の関係として描くことを通じて、それらの要素の動的な相互作用を表現できる。その中には、企業の内部の要素(ほとんどの場合、顧客には見えない)と、対外的な要素(商品やサービス、顧客とのコミュニケーションの取り方など)の両方が含まれる。
そして、ビジネスを一本の樹木と考えれば、ビジネスを顧客と社員とライバル企業で構成されるエコシステム(生態系)の 中に存在するものとして位置づけられる。
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ステンゲル氏が原則として述べているの上記の内容で、それを繰り返し色んな会社の事例、自分の経験を通して繰り返し丁寧に述べている。
いくつか面白いと思ったポイントを紹介する。
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<企業文化を築く10の手法>
1 人々の行動の背中を押せるブランド理念を掘り起こし、それを実践する。
2 自分が何を大切にしているかを社内外にはっきり伝える。
3 達成したい目標のために組織を設計する。
4 チームを整備する、それも迅速に。
5 あらゆるタイプのイノベーションを後押しする。
6高い基準を設定する。
7 常にスタッフをトレーニングする。
8 象徴的な活動を行い、人々の興奮を生み出す。
9 勝者のように考え、勝者のように行動する。
10 どういう「遺産」を残したいかを意識して行動する。
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そしてイノベーションについては、ステンゲル氏は三種類あるとし、それをショットガン方式で並行して実践すべきだと述べている。
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ブランド理念を出発点に複数のイノベーションを同時に推進する方針を明確に打ち出すべきだ。いかなる企業やブランドも、三種類のイノベーションを並行して全て推進するのが重要だということだ。
1つは、持続的イノベーション(製品やサービスの日常的・継続的改良を行う)
もう1つは、商業的イノベーション(製品やサービスそのものは変更せず、マーケティングによって新しい需要を生み出す。既存製品の新しい用途や新しい使用局面を提案するなど)。
そして三つ目は、破壊的イノベーション(新しいビジネスのジャンルを発明、再発見し、ビジネスモデルを変更する)
大事なのは、常にいくつものイノベーションに取り組み、特定の1つのタイプのイノベーションに依存しすぎないことだ。
P&Gでは、社内の全ての部門に対し、イノベーション野ポートフォリオの内訳を示すように要求していた。実は、イノベーションのタイプ毎の理想的な比率も決めてあった。
その比率とは、持続的イノベーション:60%、商業的イノベーション:20%、破壊的イノベーション:20%である。
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その他、諸々参考になった点。
○リーダーは、スタッフの中の誰に手柄をもたせ、誰をヒーローとして位置づけるかを決めなくてはならない。この選択も極めて大きな象徴的意味を持つ。
○企業文化を築く上で核となる要素は、その会社の人事方針だ。自社にとって最良の人材を選ぶことをおこたってはならない。それさえ押さえておけば、ほかの問題は自ずと解決する。
○理念を原動力とするビジネスは、ファスト・プロトタイピング、ないしデザイン思考を実践するのがことのほか得意だ。ブランド理念が組織のあり方と組織内の人々の活動に深く浸透しているほど、コラボレーションを通じたイノベーションを実践しやすく、しかもそれを素早く進めやすい。
○成果をあげているリーダーは、それぞれ自分なりのスタイルを持っているが、企業文化やチームの文化に関しては誰もが同じような行動をとっていた。 単にブランド理念の実戦に向けて高い水準の行動を要求するだけでなく、その目標を達成させるために、人々の潜在能力を引き出しているのである。
○コミュニケーションはあらゆる人間関係を動かす血液のようなもの。その意味で、コミュニケーションに関して企業が最もお手本にすべきなのは愛情ある人間関係だ。
○完璧な体験よりも理想的な体験
○アップルがこれまでに行った最高の「広告」は、アップルストアの店舗だ。
アップルストアの話しは結構奥が深い。単純に”売る”ためのストアではなくして、それでいて売上の最高面積効率をたたき出しているという。
最後に、感動企業ザッポスの10のコアバリューについて。
<ザッポス 10のコアバリュー>
1 サービスを通じて、Wow!を届けろ。
2 変化を受け入れ、変化を押し進めろ。
3 楽しいことを生み出せ。それと、ちょっとヘンテコなことも。
4 冒険しろ。創造的であれ。やわらかい頭をもて。
5 成長と学習を追い求めろ。
6 コミュニケーションを通じて、オープンで嘘のない関係を築け。
7 前向きなチームをつくり、家族のような関係を育め。
8 少ない資源で、多くのことをやり遂げよ。
9 情熱的であれ。強い意志を持て。
10 謙虚であれ。
この10か条はあらゆる業種のあらゆる企業にとって有効な行動指針だ。この点は、社内の企業文化が保守的だろうと革新的だろうと関係ない。
日本にザッポスが上陸したら、いの一番に利用してみたい。
全体を通して、原理原則からその事例に絡めて説明されており非常に納得できるものであった。
さっそく今会社で取り組んでいる”ブランド”に反映していきたい。
Facebookで勧められていたのでそのままAmazonで購入。
個人が購買活動をするにあたって、誰から勧められたかというのは非常に重要なファクターである。
閑話休題。
ステンゲル氏は自らP&Gにて「ジフ」「ダブ」「パンパース」といった世界的ブランドを再構築する実績を積み、「ブランド理念」こそが世界で成功を収める企業と相関があることを確認し、自ら「ブランド」=「ビジネス」だと思っていると述べている。
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10年の調査により、ブランド理念の面でとくに優れていると判断できた50のブランド「ステンゲル50」の投資利益率(ROI)の伸び率の平均は、「S&P500」の構成企業の平均より4倍高かった。
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私は、「ブランド」と「ビジネス」を同義語として用いている。 あるビジネスの未来にとって最も重要な人たちにとっては、ブランドこそがビジネスの本質だ。 複数の企業が競い合う市場で利益獲得と事業の成長を牽引し、社員、顧客、取引相手、投資家に対してライバル企業との違いを示せる要因は、ブランドなのである。
1980年、S&P500を構成する企業の株式時価総額のほぼ全てが、現金、オフィスや工場といった不動産、設備、在庫など、目に見える資産で構成されていた。 しかし、2010年、その割合は40〜45%まで落ち込んでいる。残りの55〜60%は目に見えない資産だ。そのうちの半分をブランド価値が占めている。株式時価総額全体に占める割合でいうと、30%以上がブランド価値ということになる。
一言で言えば、企業やビジネスの実力はブランドの実力で決まるようになった。ブランドほど、ビジネスリーダーにとって強力な武器になりうるものはない。 だからこそ、私は全てのビジネスリーダーに対して、ブランドを率いるブランドリーダーとしての自覚をもって考え、行動するよう呼びかけている。
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ステンゲル氏は「ブランド理念」という高次の理念を提唱している。
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有効なブランド理念は、そのブランドのビジネスに関わる人たちがどういう価値を重んじているかを明瞭に描き出す。そういう理念は、企業が顧客を深く理解することを可能にし、どういう顧客を最良の顧客と位置づけ、その顧客層とどういう価値観を共有するのかという問いに、ライバルと異なる独自の答えを導きだす道を開く。
また、そのブランドがどのような類似化ポイント(顧客の選択肢に加わるために最低限満たす必要がある要素)と差別化ポイント(ほかのブランドより好ましいと顧客に評価されるために必要な要素)を現在持っていて、将来新しく確立しうるのかを浮き彫りにする。
ブランド理念は、単なる金額や数字の目標であってはならない。金額や数字だけでは、人々のやる気をかき立てて大きな成果をあげさせることも、有能な人材を引き寄せ、つなぎとめることも出来ない。
業界の先頭を走る急成長ブランドは、人間にとって大切な5つの基本的価値のいずれかに関わるブランド理念をもっている。
具体的には次の5つの方法のいずれかにより、人々の生活をよりよいものにしようとしている。
①喜びを感じさせる〜人々が幸せや喜び、無限の可能性を体験する後押しをする
②結びつくことを助ける〜人々が他の人たちや世界と有意義な形で結びつく能力を高める
③探究心を刺激する〜人々が新しい世界や新しい経験に乗り出すのを助ける
④誇りをかき立てる〜人々が自信や力、安心感、活力を高めることを可能にする
⑤社会に影響を及ぼす〜現状を揺さぶり、新しいビジネスの枠組みを打ち出すなどして、社会全体に好ましい影響を与える。
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ステンゲル氏は「ビジネス・アーティスト」という新しいリーダー像をつくりあげている。
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<ステンゲル研究の4つの発見>
発見1 ブランド理念は、最も急速に成長を遂げているビジネスの原動力である。
発見2 最も急速に成長を遂げているビジネスは、人間にとって大切な5つの基本的価値のいずれかに関わるブランド理念をもっている。
発見3 最も急速に成長を遂げているビジネスを動かすのは、ビジネス・アーティスト(ブランド理念を主たる表現手段として用いるリーダー)である。
発見4 ビジネス・アーティスト達には、いくつかの活動に卓越しているという共通点がある。これらの活動がコンピューターのOSのように高成長を生み出し、持続させる土台になっている。
「スター・ブランドは、芸術的で創造的な精神からしか生まれない。」
by 仏高級品ブランド複合企業モエエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンのベルナール・アルノーCEO兼会長
アルノーは傘下の全てのビジネスで、ビジネス運営者の役割とアーティストの役割を別々の人物に担わせている。
このリーダーシップ・ビジネスモデルは、どの業種のビジネスにも有効だ。一人で二役をこなせる人物もいるが、そういうケースは少ない。
リーダーとして成功するためには、自分の強みがビジネス運営者の面とアーティストの面のどちらにあるのかを見極めた上で、もう一方の役割を担える人物を見つけ、その人物に権限を与えることが重要だ。
業界の先頭を走る急成長を実現するために、ビジネス・アーティストは次の4つの問いを絶えず自問し続けなければならない。
・わが社の未来にとって最も重要な人々(社員、取引先、消費者、投資家)のことをどの程度理解できているか?
・わが社とわがブランドは、どのような価値を実践しているのか?
・わが社とわがブランドは、どのような価値を実践したいのか?
・わが社はどのように、これらの問いに対する答えを実際の活動に反映させているのか?
すべてシンプルな問いだが、これらの問いに答え、その答えに基づいて行動することは簡単ではない。しかし、その難しい課題に取り組むことを通じて、ブランドと企業は力を手に出来る。
ビジネス・アーティスト達は次の五種類の活動に卓越している。
この共通点はビジネスリーダーが満たすべき重要な条件と言っていい。
・人間にとって大切な5つの基本的価値のいずれかに関わるブランド理念を発見(もしくは再発見)する。
・ブランド理念を軸に、企業文化を構築する。
・ブランド理念を社内外に発信し、社員と顧客の両方と共有する。
・ブランド理念に沿って、理想に近い顧客体験を提供する。
・ブランド理念に照らして、ビジネスの進歩の度合いと社員の仕事ぶりを評価する。
(実はこの5項目は後述の”ブランド理念の木”の”葉”にあたる)
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ステンゲル氏は”ブランド理念の木”という生命体的なビジネス概念についても述べている。
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<ブランド理念の木>
”ブランド理念の木”の根っこは二つの要素で構成される。
1つは、社内の人々がいだく信念(それは、たいていブランドの歴史に由来する)
もう1つは、そのブランドが顧客や消費者と共有する価値観である。
この二つの要素が生き生きと相互に作用しあうことにより、”ブランド理念の木”は地面につなぎ止められて、しっかりと支えられる。
ブランド理念、言い換えれば、そのブランドが世界に提供する高次の恩恵は、ブランドの歴史に根ざすべきものだ。それは、”人々の生活をよりよいものにする”ことを目指す創業の理念を出発点とし、その後も絶えず磨きをかけられていく。これまでそのビジネスを担ってきた人たち、特に歴代のリーダーたちの信念や願望、価値観がそこに吹き込まれる
”ブランド理念の木”の最も土台の部分をなすのは、ブランドが奉仕する人々である。
どういう層を対象にビジネスを行うのかは厳選すること。
これはある程度の規模を持った層を対象にする必要がある。
自分のビジネスが人間にとって本当に重要な領域で活動しているかどうかを点検するためには、ブランド理念が人間にとって大切な五つの基本的価値〜喜び、結びつき、探求、誇り、社会への影響〜に根ざしているかどうかを確認すればよい。
”ブランド理念の木”の幹を構成するのは、ライバルとの「差別化ポイント」そしてライバルから遅れをとってはならない「類似化ポイント」(市場に参入してライバルと肩を並べて競い合うための最低条件といってもいいし、ライバルの強みを無力化するために到達すべき水準といってもいい)だ。
”ブランド理念の木”の葉はビジネス・アーティストが卓越している、発見、構築、発信、提供、評価の5つの活動である。
”ブランド理念の木”という比喩は、単なる言葉遊びではない。
樹木という生命体になぞらえることにより、ビジネスの未来にとって重要なすべての人々の存在を考慮にいれ、その人たちの相互の関係を描き出せる。
また、ビジネスを成長させるために調和をとる必要のある要素を木の根、幹、枝、葉の関係として描くことを通じて、それらの要素の動的な相互作用を表現できる。その中には、企業の内部の要素(ほとんどの場合、顧客には見えない)と、対外的な要素(商品やサービス、顧客とのコミュニケーションの取り方など)の両方が含まれる。
そして、ビジネスを一本の樹木と考えれば、ビジネスを顧客と社員とライバル企業で構成されるエコシステム(生態系)の 中に存在するものとして位置づけられる。
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ステンゲル氏が原則として述べているの上記の内容で、それを繰り返し色んな会社の事例、自分の経験を通して繰り返し丁寧に述べている。
いくつか面白いと思ったポイントを紹介する。
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<企業文化を築く10の手法>
1 人々の行動の背中を押せるブランド理念を掘り起こし、それを実践する。
2 自分が何を大切にしているかを社内外にはっきり伝える。
3 達成したい目標のために組織を設計する。
4 チームを整備する、それも迅速に。
5 あらゆるタイプのイノベーションを後押しする。
6高い基準を設定する。
7 常にスタッフをトレーニングする。
8 象徴的な活動を行い、人々の興奮を生み出す。
9 勝者のように考え、勝者のように行動する。
10 どういう「遺産」を残したいかを意識して行動する。
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そしてイノベーションについては、ステンゲル氏は三種類あるとし、それをショットガン方式で並行して実践すべきだと述べている。
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ブランド理念を出発点に複数のイノベーションを同時に推進する方針を明確に打ち出すべきだ。いかなる企業やブランドも、三種類のイノベーションを並行して全て推進するのが重要だということだ。
1つは、持続的イノベーション(製品やサービスの日常的・継続的改良を行う)
もう1つは、商業的イノベーション(製品やサービスそのものは変更せず、マーケティングによって新しい需要を生み出す。既存製品の新しい用途や新しい使用局面を提案するなど)。
そして三つ目は、破壊的イノベーション(新しいビジネスのジャンルを発明、再発見し、ビジネスモデルを変更する)
大事なのは、常にいくつものイノベーションに取り組み、特定の1つのタイプのイノベーションに依存しすぎないことだ。
P&Gでは、社内の全ての部門に対し、イノベーション野ポートフォリオの内訳を示すように要求していた。実は、イノベーションのタイプ毎の理想的な比率も決めてあった。
その比率とは、持続的イノベーション:60%、商業的イノベーション:20%、破壊的イノベーション:20%である。
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その他、諸々参考になった点。
○リーダーは、スタッフの中の誰に手柄をもたせ、誰をヒーローとして位置づけるかを決めなくてはならない。この選択も極めて大きな象徴的意味を持つ。
○企業文化を築く上で核となる要素は、その会社の人事方針だ。自社にとって最良の人材を選ぶことをおこたってはならない。それさえ押さえておけば、ほかの問題は自ずと解決する。
○理念を原動力とするビジネスは、ファスト・プロトタイピング、ないしデザイン思考を実践するのがことのほか得意だ。ブランド理念が組織のあり方と組織内の人々の活動に深く浸透しているほど、コラボレーションを通じたイノベーションを実践しやすく、しかもそれを素早く進めやすい。
○成果をあげているリーダーは、それぞれ自分なりのスタイルを持っているが、企業文化やチームの文化に関しては誰もが同じような行動をとっていた。 単にブランド理念の実戦に向けて高い水準の行動を要求するだけでなく、その目標を達成させるために、人々の潜在能力を引き出しているのである。
○コミュニケーションはあらゆる人間関係を動かす血液のようなもの。その意味で、コミュニケーションに関して企業が最もお手本にすべきなのは愛情ある人間関係だ。
○完璧な体験よりも理想的な体験
○アップルがこれまでに行った最高の「広告」は、アップルストアの店舗だ。
アップルストアの話しは結構奥が深い。単純に”売る”ためのストアではなくして、それでいて売上の最高面積効率をたたき出しているという。
最後に、感動企業ザッポスの10のコアバリューについて。
<ザッポス 10のコアバリュー>
1 サービスを通じて、Wow!を届けろ。
2 変化を受け入れ、変化を押し進めろ。
3 楽しいことを生み出せ。それと、ちょっとヘンテコなことも。
4 冒険しろ。創造的であれ。やわらかい頭をもて。
5 成長と学習を追い求めろ。
6 コミュニケーションを通じて、オープンで嘘のない関係を築け。
7 前向きなチームをつくり、家族のような関係を育め。
8 少ない資源で、多くのことをやり遂げよ。
9 情熱的であれ。強い意志を持て。
10 謙虚であれ。
この10か条はあらゆる業種のあらゆる企業にとって有効な行動指針だ。この点は、社内の企業文化が保守的だろうと革新的だろうと関係ない。
日本にザッポスが上陸したら、いの一番に利用してみたい。
全体を通して、原理原則からその事例に絡めて説明されており非常に納得できるものであった。
さっそく今会社で取り組んでいる”ブランド”に反映していきたい。
2013年5月26日日曜日
気仙沼往訪
仕事の関係で気仙沼へ行ってきた。
3/11から既に2年以上が経過しているが、被災地に足を踏み入れたのは震災後初めてである。
半年前の被災地復興支援ワークショップに参加して、被災地で頑張っていらっしゃるNPOの方々から
「真の復興はこれから。そのためにどうしたらいいのか、継続的な観点でアイデア・支援が欲しい。」
ということを聞いていたが、実際に現地でみて認識が強まった。
3/11から既に2年以上が経過しているが、被災地に足を踏み入れたのは震災後初めてである。
半年前の被災地復興支援ワークショップに参加して、被災地で頑張っていらっしゃるNPOの方々から
「真の復興はこれから。そのためにどうしたらいいのか、継続的な観点でアイデア・支援が欲しい。」
ということを聞いていたが、実際に現地でみて認識が強まった。
南町紫市場。プレハブでお店が並んでいる。
港町周辺で新設されているのはプレハブばかり。
鉄筋コンクリート造の建物は震災前にあったもので、
大抵外壁部に痛々しく看板があったと思われる痕が残っていたりする。
鹿折唐桑駅の脇にある第十八共徳丸。
こんな大きな船が内陸1km近くも離れているこの場所まで
運ばれたという事実、津波のパワーを身をもって実感。
第十八共徳丸の周辺。
流された建物の基礎のみ。
お供え物がされている区画もある。
新緑の季節に合せて咲いている菜の花の美しさが一層哀しい感じ。
港周辺。
プレハブの復興屋台村がある以外は、更地が多い。
気仙沼はそれまで、サメ、カツオ、メカジキなどで日本一の水揚げ量を誇っていた。
フカヒレも日本一の生産量だったこともあり、
サメの博物館があった。今は閉館中。
3/11当日の津波の様子をYouTube等で見ると、この博物館が目印となる。
気仙沼魚市場。
ここは補修が完了していて業務が行われているが、
隣の建物がまだ工事中だったり、復旧中であることが伺われる。
「津波がこの高さまで来ました」
と記す魚市場の看板。
行ってみて、まだまだこれからが本当の復興なんだと感じた。
また、地域の方と話しをしてみて
「復興支援ということでワンポイント支援で終わりにならない、継続的なお付き合いを意識して欲しい」
という意向を強く感じた。
”復興支援”というだけではなく、”地方活性化”と合せて何ができるのかを考えていかなければならないと思った。
2013年5月12日日曜日
『執事のダンドリ手帳』
執事サービスということを行う会社があるのにちょっとびっくりし、執事という職業(正式にはバトラーというらしい)に興味を持ったので読んでみた。
○ダンドリのポイントは「優先順位をつけて、無駄なことはしない」 そして「まとめられるものは全部まとめてしまう」こと。
○人に応じて、仕事に応じてそれぞれ異なった「完璧」を目指すことが、ダンドリに必要。 その完璧さを目指すために何よりも大切なのが「思いやり」。
○人が不安になるときというのは、往々にして「見通しがついていない時」。うまくいくかわからない、間に合うかわからない、そういった焦りが不安に変わり、冷静さを失わせてしまう。 だからこそ、状況を整理することが大切。
○ 「張り切るより割り切る」ことがダンドリをする上で重要なスタンス。
○仕事の絡んだ接待のポイントは「マイナスポイントを作らない」こと。
中華料理は要注意。中国には「日本的」なホスピタリティの文化があまりないので、食器を静かにそっと置くとか、優しく笑顔で話すという接客スタイルがない。
などなど。
すすぎ洗いをする際には、50〜60℃の少し熱めのお湯を使った方が、洗った後の水切れが良くなり手にも優しい、などもっと細かな話しもたくさん載っていた。
わがままなクライアントが多いなか、執事業を遂行するのは結構大変そうだが、大切なのは「思いやり」というところに、やはりバトラーはサービス業だと感じた。
○ダンドリのポイントは「優先順位をつけて、無駄なことはしない」 そして「まとめられるものは全部まとめてしまう」こと。
○人に応じて、仕事に応じてそれぞれ異なった「完璧」を目指すことが、ダンドリに必要。 その完璧さを目指すために何よりも大切なのが「思いやり」。
○人が不安になるときというのは、往々にして「見通しがついていない時」。うまくいくかわからない、間に合うかわからない、そういった焦りが不安に変わり、冷静さを失わせてしまう。 だからこそ、状況を整理することが大切。
○ 「張り切るより割り切る」ことがダンドリをする上で重要なスタンス。
○仕事の絡んだ接待のポイントは「マイナスポイントを作らない」こと。
中華料理は要注意。中国には「日本的」なホスピタリティの文化があまりないので、食器を静かにそっと置くとか、優しく笑顔で話すという接客スタイルがない。
などなど。
すすぎ洗いをする際には、50〜60℃の少し熱めのお湯を使った方が、洗った後の水切れが良くなり手にも優しい、などもっと細かな話しもたくさん載っていた。
わがままなクライアントが多いなか、執事業を遂行するのは結構大変そうだが、大切なのは「思いやり」というところに、やはりバトラーはサービス業だと感じた。
『なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編』
新規ビジネスを色々考える部門にいる、という話しをしたところ勧められた本。
具体的な事例を基に、原理原則を述べている。
<ビジネスモデルを考える視点>
①顧客の再定義
②顧客価値の再定義:主にメーカー用:サービス・ドミナント・ロジック
③顧客価値の再定義:主にサービス業用:マイナスの差別化(サービスを絞り特化する) ④顧客の経済性
⑤バリューチェーンのバンドリング/アンバンドリング
⑥経営資源の持ち方(ヒト、モノ)
⑦定番の収益モデル
顧客の定義ひとつとっても色々ある。B2CとかB2B、はたまたB2B2Cとかで分類していたが、色んな捉え方がありそうだ。
①顧客をバイヤー、ペイヤー、ユーザーに分類する考え方
②同様な分類として、DMU(Decision Making Unit:意思決定者)、PU(Purchasing Unit:購買者)、CU(Consuming Unit:使用者)という呼び方もある。
③また、生産財の場合には、購買決定プロセスはより複雑であり、ユーザー、バイヤー、アナライザー(技術的な分析をする人)、インフルエンサー(専門的なアドバイスをする人)、ゲイトキーパー(供給者と購買セクションをつなぐ人)、ディサイダー(決定者)という分類がある。
モノを「サービス経済の一形態」と捉えるのが「サービス・ドミナント・ロジック(SDL)」である。この考え方によれば、全ての企業は顧客にサービスを提供しているのであり、そこにモノの受け渡しが付随しているのが製造業だと位置づけられる。
「顧客の経済性」には二種類ある。1つは顧客のトータルコストが安くなることであり、もう1つは、顧客のコストが固定費から変動費に変わることである。
2つ目の固定費から変動費に変わるという「顧客の経済性」は新しい概念であった。
<ヒト〜属人性の排除>
ヒトに関しては、サービス業では末端の一人の行動で顧客満足が大きく左右される。
スカンジナビア航空の『真実の瞬間』・・サービス業において顧客が満足するか不満になるかは、従業員が顧客と接する15秒間で決まってしまう。
青梅慶友病院・・サービス業は、たった一人の愚行で、その企業の評価がゼロになってしまうことがある。(「100−1=0」と表現)
<モノ〜見える差別化、見えない効率化>
全てを差別化するとコストが合わなくなり、全てを効率化すると差別化ができない。こうしたトレードオフに対応するため、モノに関しては「見える所は差別化、見えない所は効率化」という二刀流での対応が必要。
そして効率化に関してはドラッカーさんの「コスト削減の最も効率的な方法は、活動そのものをやめてしまうことである」 というのが至言。
効率化の要諦は、やめるか、自分ではやらないことである。
<「売り切らない」モデルの特徴>
①景気の影響を受けにくい
②顧客により近づける
③顧客リストをアクティブに維持
④ソフト・サービス事業の拡張
⑤製品改良ノウハウの蓄積
⑥バージョンアップが容易
⑦中古市場のコントロールが可能
サービス型事業には以上のような利点があるが、これまで売り切りをしてきた企業が「売り切らない」サービス型事業に転換し、利用料課金に移行する場合には、売上の一時的減少に直面する。
リクルートは、紙媒体からネット媒体への変換に際して、社内のカニバリゼーションを是とした。仮に社内でカニバリが起きても、結果的には市場で価値の高い方が生き残ればよいと考えたことで見事にネット媒体への転身を図った。
昨日の同期会でグローバルに活躍している外資の人間から、「最近の日本人は、ビジネスセンスがなさ過ぎる。もっと常にビジネスの種を考えていないと」という話しを聞いた。
センスは常日頃から考え続けることから身に付くのかもしれない。
具体的な事例を基に、原理原則を述べている。
<ビジネスモデルを考える視点>
①顧客の再定義
②顧客価値の再定義:主にメーカー用:サービス・ドミナント・ロジック
③顧客価値の再定義:主にサービス業用:マイナスの差別化(サービスを絞り特化する) ④顧客の経済性
⑤バリューチェーンのバンドリング/アンバンドリング
⑥経営資源の持ち方(ヒト、モノ)
⑦定番の収益モデル
顧客の定義ひとつとっても色々ある。B2CとかB2B、はたまたB2B2Cとかで分類していたが、色んな捉え方がありそうだ。
①顧客をバイヤー、ペイヤー、ユーザーに分類する考え方
②同様な分類として、DMU(Decision Making Unit:意思決定者)、PU(Purchasing Unit:購買者)、CU(Consuming Unit:使用者)という呼び方もある。
③また、生産財の場合には、購買決定プロセスはより複雑であり、ユーザー、バイヤー、アナライザー(技術的な分析をする人)、インフルエンサー(専門的なアドバイスをする人)、ゲイトキーパー(供給者と購買セクションをつなぐ人)、ディサイダー(決定者)という分類がある。
モノを「サービス経済の一形態」と捉えるのが「サービス・ドミナント・ロジック(SDL)」である。この考え方によれば、全ての企業は顧客にサービスを提供しているのであり、そこにモノの受け渡しが付随しているのが製造業だと位置づけられる。
「顧客の経済性」には二種類ある。1つは顧客のトータルコストが安くなることであり、もう1つは、顧客のコストが固定費から変動費に変わることである。
2つ目の固定費から変動費に変わるという「顧客の経済性」は新しい概念であった。
<ヒト〜属人性の排除>
ヒトに関しては、サービス業では末端の一人の行動で顧客満足が大きく左右される。
スカンジナビア航空の『真実の瞬間』・・サービス業において顧客が満足するか不満になるかは、従業員が顧客と接する15秒間で決まってしまう。
青梅慶友病院・・サービス業は、たった一人の愚行で、その企業の評価がゼロになってしまうことがある。(「100−1=0」と表現)
<モノ〜見える差別化、見えない効率化>
全てを差別化するとコストが合わなくなり、全てを効率化すると差別化ができない。こうしたトレードオフに対応するため、モノに関しては「見える所は差別化、見えない所は効率化」という二刀流での対応が必要。
そして効率化に関してはドラッカーさんの「コスト削減の最も効率的な方法は、活動そのものをやめてしまうことである」 というのが至言。
効率化の要諦は、やめるか、自分ではやらないことである。
<「売り切らない」モデルの特徴>
①景気の影響を受けにくい
②顧客により近づける
③顧客リストをアクティブに維持
④ソフト・サービス事業の拡張
⑤製品改良ノウハウの蓄積
⑥バージョンアップが容易
⑦中古市場のコントロールが可能
サービス型事業には以上のような利点があるが、これまで売り切りをしてきた企業が「売り切らない」サービス型事業に転換し、利用料課金に移行する場合には、売上の一時的減少に直面する。
リクルートは、紙媒体からネット媒体への変換に際して、社内のカニバリゼーションを是とした。仮に社内でカニバリが起きても、結果的には市場で価値の高い方が生き残ればよいと考えたことで見事にネット媒体への転身を図った。
昨日の同期会でグローバルに活躍している外資の人間から、「最近の日本人は、ビジネスセンスがなさ過ぎる。もっと常にビジネスの種を考えていないと」という話しを聞いた。
センスは常日頃から考え続けることから身に付くのかもしれない。
2013年5月7日火曜日
絵本作家原画版画と絵本展
「絵本作家原画版画と絵本展」がそごう柏店でやっていて、面白いとの話しを聞いたので見に行ってみた。
その場で絵本読み放題&絵本販売。
でもコンテンツは素晴らしいのに、プロモーションと展示の仕方のせいか、入場無料なのに思ったほど人が来ていない感じでもったいなし(柏でやっても高島屋がやったら500円とれたのでは?)
ボーネルンドの遊び場もあったけど、絵本系のコンテンツだけで十分秀逸だった。
事前のプロモーションと、展示の仕方(正直空いた販売スペースを無理クリ展示スペースにしている感じがアリアリ。お金使わなくてももう少し見せ方の工夫ができたのでは?)には更なる工夫があるとより良いと感じた。
次回に期待(って次回あるのか?)
柏そごうの10階。正直ちょっと雰囲気は出てない。
岩井俊雄氏の『100かいだてのいえ』の巨大絵本展示販売。
屏風みたいな大きさ。
バムとケロの人気シリーズも原画展示。
谷川俊太郎氏の詩に宇野亜喜良氏の挿絵の『おおきなひとみ』。
ちょっとエロティックな雰囲気をまとって素敵な絵本。
個人的には一番やられてしまった絵本。
佐野洋子女史の『100万回生きたねこ』
理屈はないけど妙なところで共鳴。
くわナよしゆき氏のワークショップと氏のライフワーク(?)のドラム缶作品。
素晴らしいです。
その場で絵本読み放題&絵本販売。
でもコンテンツは素晴らしいのに、プロモーションと展示の仕方のせいか、入場無料なのに思ったほど人が来ていない感じでもったいなし(柏でやっても高島屋がやったら500円とれたのでは?)
ボーネルンドの遊び場もあったけど、絵本系のコンテンツだけで十分秀逸だった。
事前のプロモーションと、展示の仕方(正直空いた販売スペースを無理クリ展示スペースにしている感じがアリアリ。お金使わなくてももう少し見せ方の工夫ができたのでは?)には更なる工夫があるとより良いと感じた。
次回に期待(って次回あるのか?)
2013年5月6日月曜日
『リーダーはストーリーを語りなさい』
P&Gコンシューマー&コミュニケーション研究所所長のポール・スミスが、ストーリーテリングの重要性とその技術について記載した本。
国際的な企業や組織の多くが、上層部の管理職を「コーポレート・ストーリーテラー」に任命し、重要なストーリーを伝えさせているのだそうだ。
・ナイキでは、幹部全員がこのコーポレート・ストーリーテラーに任命されている。
・キンバリークラークは、2日間のセミナーを開催し、ストーリーを編み出す13段階のプログラムを教え、これを活用してプレゼンテーションを行わせている。
・3Mは、何年も前からプレゼンでの箇条書きを禁じ、”戦略的ストーリー”を書くべしと奨励している。
・P&Gはハリウッド映画監督に依頼して、幹部にストーリーテリングのテクニックを教えている。
・モトローラではコーポレート・ストーリーテラーが即興劇などに参加し、技術に磨きをかけている。
・ノートルダム大学やデポール大学など先見の明のあるビジネススクールは、経営学のカリキュラムにストーリーテリングのコースを設けている。
<ストーリーテリングの歴史>
ストーリーテリングの専門家ジャック・マグワイアによると、
①まだ印刷技術が誕生していなかった時代、人々のコミュニケーションの手段はほぼ口頭に限られていた。そのためストーリーを伝えるのは日々の仕事を行う上でも欠かせない手段だった。有史以来、ストーリーテリングとリーダーシップは切っても切れない関係にあった。 活版印刷が普及するまで、ストーリーテリングはどこの国でも独自の伝統とともに存在していた。 ケルト文化のストーリーテリングには吟遊詩人やドルイド僧の存在が欠かせず、誇大スカンジナビアの人々はサガ(散文物語)を語り、イスラムの人々はスーフィー(神秘主義修行者)の教えに、モンゴルやシベリアの人々はシャーマンの話に耳を傾けた。
②こうして数千年かけてストーリーテリングは発展を遂げたものの、仕事の場で活用される機会は減り始めた。仕事上のコミュニケーションは形式張ったものとなり、情報はデータベース化されるようになった。報告書やマニュアルと言ったものがじわじわとストーリーテリングにかわり、1900年代に入ると職業の専門化がこの傾向に拍車をかけた。
③かくして誇り高きストーリーテリングは社会的ステータスを失った。 では、いつ頃から復活の兆しを見せ始めたのだろう? ストーリーテリングがビジネスの世界で真剣に取り上げられるようになったのは1990年代に入ってから。まず、複数の学術論文が、職場におけるストーリーテリングの有効性を報告した。 ここ20年ほど、特にこの10年で、リーダーシップをとるにあたって、ストーリーテリングは経営幹部にとって欠かせないツールとなり、正当な評価を取り戻した。
ここでも、人間の脳の進化が科学技術の進化においつかず、脳の進化に合わせて技術活用法の先祖還りを起こしているということではないだろうか。 100年前に比べて世の中の情報量は凄まじい勢いで増加しているが、それを処理する脳の能力が追いつかない。そのため、脳は流れいく情報についてはスルーし、信頼のおけるフィルターのかかった情報だけを取得するように対応し始めている。 FB等のSNSでも友達の数の平均が130人というのは、古来人間(脳)が理解できる人数が150人程度ということと関連があるのかも知れない。
<面白い話しはどんな風に出来ているか>
ハリウッドの脚本家に投げかければ、ストーリーには6つの構成要素、設定、きっかけ、最初のターニングポイント、クライマックス、最後の対決、解決、があるという返答が返ってくる。 認知心理学者に尋ねれば、設定、主な登場人物、対立と問題解決、発端となる出来事、感情の呼応、試み、結果、反応、結論に分けられるというかもしれない。 しかし、ビジネスリーダーがストーリーを語る際に求められるのはごくシンプルな構成だ。 「はじまり」「真ん中」「終わり」だ。 別な呼び方で呼べば、「背景」「動き」「結末」となる。
「背景」
背景はストーリーに必然性をもたらす。そこでは、次の四つが説明されなければならない。この話しは、いつ、どこで起こったのか?主人公は誰なのか?その主人公は何を望んでいるのか?誰が、あるいは何が、邪魔をしているのか?
1.いつ、どこで 聞き手が、この話しが事実なのか、フィクションなのか判断できる。 2.主人公 聞き手が主人公に一体感をもてること。
3.主人公の目的 聞き手にとっても価値ある目標でなければならない。
4.邪魔者 敵役のいないストーリーは、ストーリーにあらず。
「動き」
主人公と悪役とが対決することが大事。だが、もっとも重要なのは、そこに必ず教訓が含まれていること。
「結末」
結末では3つの目的を達成しなければならない。物語がどう終わるかを伝え、聞き手に学んでもらいたい正しい教訓を述べ、そもそも、なぜこのストーリーを話したのかという理由に立ち戻る。
企業理念を浸透させるにもストーリーテリングは非常に有効である。 企業理念は、現実に行動で示されない限り言葉の羅列にすぎない。ストーリーによって、企業理念が実践された事例を伝えることができる。
今会社でクレド活動というものをやっているが、今ひとつ活性化していない。 ストーリーテリングの力を活用するともっと活性化するのではないか。
この本を読んで早速子供の教育(なぜ勉強しなければならないか)にストーリーテリングを活用してみた。
成果はどうだろうか。しばらく観察期間が必要か。
国際的な企業や組織の多くが、上層部の管理職を「コーポレート・ストーリーテラー」に任命し、重要なストーリーを伝えさせているのだそうだ。
・ナイキでは、幹部全員がこのコーポレート・ストーリーテラーに任命されている。
・キンバリークラークは、2日間のセミナーを開催し、ストーリーを編み出す13段階のプログラムを教え、これを活用してプレゼンテーションを行わせている。
・3Mは、何年も前からプレゼンでの箇条書きを禁じ、”戦略的ストーリー”を書くべしと奨励している。
・P&Gはハリウッド映画監督に依頼して、幹部にストーリーテリングのテクニックを教えている。
・モトローラではコーポレート・ストーリーテラーが即興劇などに参加し、技術に磨きをかけている。
・ノートルダム大学やデポール大学など先見の明のあるビジネススクールは、経営学のカリキュラムにストーリーテリングのコースを設けている。
<ストーリーテリングの歴史>
ストーリーテリングの専門家ジャック・マグワイアによると、
①まだ印刷技術が誕生していなかった時代、人々のコミュニケーションの手段はほぼ口頭に限られていた。そのためストーリーを伝えるのは日々の仕事を行う上でも欠かせない手段だった。有史以来、ストーリーテリングとリーダーシップは切っても切れない関係にあった。 活版印刷が普及するまで、ストーリーテリングはどこの国でも独自の伝統とともに存在していた。 ケルト文化のストーリーテリングには吟遊詩人やドルイド僧の存在が欠かせず、誇大スカンジナビアの人々はサガ(散文物語)を語り、イスラムの人々はスーフィー(神秘主義修行者)の教えに、モンゴルやシベリアの人々はシャーマンの話に耳を傾けた。
②こうして数千年かけてストーリーテリングは発展を遂げたものの、仕事の場で活用される機会は減り始めた。仕事上のコミュニケーションは形式張ったものとなり、情報はデータベース化されるようになった。報告書やマニュアルと言ったものがじわじわとストーリーテリングにかわり、1900年代に入ると職業の専門化がこの傾向に拍車をかけた。
③かくして誇り高きストーリーテリングは社会的ステータスを失った。 では、いつ頃から復活の兆しを見せ始めたのだろう? ストーリーテリングがビジネスの世界で真剣に取り上げられるようになったのは1990年代に入ってから。まず、複数の学術論文が、職場におけるストーリーテリングの有効性を報告した。 ここ20年ほど、特にこの10年で、リーダーシップをとるにあたって、ストーリーテリングは経営幹部にとって欠かせないツールとなり、正当な評価を取り戻した。
ここでも、人間の脳の進化が科学技術の進化においつかず、脳の進化に合わせて技術活用法の先祖還りを起こしているということではないだろうか。 100年前に比べて世の中の情報量は凄まじい勢いで増加しているが、それを処理する脳の能力が追いつかない。そのため、脳は流れいく情報についてはスルーし、信頼のおけるフィルターのかかった情報だけを取得するように対応し始めている。 FB等のSNSでも友達の数の平均が130人というのは、古来人間(脳)が理解できる人数が150人程度ということと関連があるのかも知れない。
<面白い話しはどんな風に出来ているか>
ハリウッドの脚本家に投げかければ、ストーリーには6つの構成要素、設定、きっかけ、最初のターニングポイント、クライマックス、最後の対決、解決、があるという返答が返ってくる。 認知心理学者に尋ねれば、設定、主な登場人物、対立と問題解決、発端となる出来事、感情の呼応、試み、結果、反応、結論に分けられるというかもしれない。 しかし、ビジネスリーダーがストーリーを語る際に求められるのはごくシンプルな構成だ。 「はじまり」「真ん中」「終わり」だ。 別な呼び方で呼べば、「背景」「動き」「結末」となる。
「背景」
背景はストーリーに必然性をもたらす。そこでは、次の四つが説明されなければならない。この話しは、いつ、どこで起こったのか?主人公は誰なのか?その主人公は何を望んでいるのか?誰が、あるいは何が、邪魔をしているのか?
1.いつ、どこで 聞き手が、この話しが事実なのか、フィクションなのか判断できる。 2.主人公 聞き手が主人公に一体感をもてること。
3.主人公の目的 聞き手にとっても価値ある目標でなければならない。
4.邪魔者 敵役のいないストーリーは、ストーリーにあらず。
「動き」
主人公と悪役とが対決することが大事。だが、もっとも重要なのは、そこに必ず教訓が含まれていること。
「結末」
結末では3つの目的を達成しなければならない。物語がどう終わるかを伝え、聞き手に学んでもらいたい正しい教訓を述べ、そもそも、なぜこのストーリーを話したのかという理由に立ち戻る。
企業理念を浸透させるにもストーリーテリングは非常に有効である。 企業理念は、現実に行動で示されない限り言葉の羅列にすぎない。ストーリーによって、企業理念が実践された事例を伝えることができる。
今会社でクレド活動というものをやっているが、今ひとつ活性化していない。 ストーリーテリングの力を活用するともっと活性化するのではないか。
この本を読んで早速子供の教育(なぜ勉強しなければならないか)にストーリーテリングを活用してみた。
成果はどうだろうか。しばらく観察期間が必要か。
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