2013年5月27日月曜日

『本当のブランド理念について語ろう』

P&Gなどで実績を積み、「世界の大企業のGMO(グローバル・マーケティング・オフィサー)に上り詰めた人」であり、現在は企業のコンサルティングや大学院で教鞭を執っているジム・ステンゲル氏の著作。
Facebookで勧められていたのでそのままAmazonで購入。
個人が購買活動をするにあたって、誰から勧められたかというのは非常に重要なファクターである。

閑話休題。

ステンゲル氏は自らP&Gにて「ジフ」「ダブ」「パンパース」といった世界的ブランドを再構築する実績を積み、「ブランド理念」こそが世界で成功を収める企業と相関があることを確認し、自ら「ブランド」=「ビジネス」だと思っていると述べている。

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10年の調査により、ブランド理念の面でとくに優れていると判断できた50のブランド「ステンゲル50」の投資利益率(ROI)の伸び率の平均は、「S&P500」の構成企業の平均より4倍高かった。
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私は、「ブランド」と「ビジネス」を同義語として用いている。 あるビジネスの未来にとって最も重要な人たちにとっては、ブランドこそがビジネスの本質だ。 複数の企業が競い合う市場で利益獲得と事業の成長を牽引し、社員、顧客、取引相手、投資家に対してライバル企業との違いを示せる要因は、ブランドなのである。

1980年、S&P500を構成する企業の株式時価総額のほぼ全てが、現金、オフィスや工場といった不動産、設備、在庫など、目に見える資産で構成されていた。 しかし、2010年、その割合は40〜45%まで落ち込んでいる。残りの55〜60%は目に見えない資産だ。そのうちの半分をブランド価値が占めている。株式時価総額全体に占める割合でいうと、30%以上がブランド価値ということになる。

 一言で言えば、企業やビジネスの実力はブランドの実力で決まるようになった。ブランドほど、ビジネスリーダーにとって強力な武器になりうるものはない。 だからこそ、私は全てのビジネスリーダーに対して、ブランドを率いるブランドリーダーとしての自覚をもって考え、行動するよう呼びかけている。
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ステンゲル氏は「ブランド理念」という高次の理念を提唱している。

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有効なブランド理念は、そのブランドのビジネスに関わる人たちがどういう価値を重んじているかを明瞭に描き出す。そういう理念は、企業が顧客を深く理解することを可能にし、どういう顧客を最良の顧客と位置づけ、その顧客層とどういう価値観を共有するのかという問いに、ライバルと異なる独自の答えを導きだす道を開く。
また、そのブランドがどのような類似化ポイント(顧客の選択肢に加わるために最低限満たす必要がある要素)と差別化ポイント(ほかのブランドより好ましいと顧客に評価されるために必要な要素)を現在持っていて、将来新しく確立しうるのかを浮き彫りにする。

ブランド理念は、単なる金額や数字の目標であってはならない。金額や数字だけでは、人々のやる気をかき立てて大きな成果をあげさせることも、有能な人材を引き寄せ、つなぎとめることも出来ない。

業界の先頭を走る急成長ブランドは、人間にとって大切な5つの基本的価値のいずれかに関わるブランド理念をもっている。
具体的には次の5つの方法のいずれかにより、人々の生活をよりよいものにしようとしている。
①喜びを感じさせる〜人々が幸せや喜び、無限の可能性を体験する後押しをする
②結びつくことを助ける〜人々が他の人たちや世界と有意義な形で結びつく能力を高める
③探究心を刺激する〜人々が新しい世界や新しい経験に乗り出すのを助ける
④誇りをかき立てる〜人々が自信や力、安心感、活力を高めることを可能にする
⑤社会に影響を及ぼす〜現状を揺さぶり、新しいビジネスの枠組みを打ち出すなどして、社会全体に好ましい影響を与える。
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ステンゲル氏は「ビジネス・アーティスト」という新しいリーダー像をつくりあげている。

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<ステンゲル研究の4つの発見>
発見1 ブランド理念は、最も急速に成長を遂げているビジネスの原動力である。
発見2 最も急速に成長を遂げているビジネスは、人間にとって大切な5つの基本的価値のいずれかに関わるブランド理念をもっている。
発見3 最も急速に成長を遂げているビジネスを動かすのは、ビジネス・アーティスト(ブランド理念を主たる表現手段として用いるリーダー)である。
発見4 ビジネス・アーティスト達には、いくつかの活動に卓越しているという共通点がある。これらの活動がコンピューターのOSのように高成長を生み出し、持続させる土台になっている。


「スター・ブランドは、芸術的で創造的な精神からしか生まれない。」
by 仏高級品ブランド複合企業モエエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンのベルナール・アルノーCEO兼会長
アルノーは傘下の全てのビジネスで、ビジネス運営者の役割とアーティストの役割を別々の人物に担わせている。
このリーダーシップ・ビジネスモデルは、どの業種のビジネスにも有効だ。一人で二役をこなせる人物もいるが、そういうケースは少ない。
リーダーとして成功するためには、自分の強みがビジネス運営者の面とアーティストの面のどちらにあるのかを見極めた上で、もう一方の役割を担える人物を見つけ、その人物に権限を与えることが重要だ。


業界の先頭を走る急成長を実現するために、ビジネス・アーティストは次の4つの問いを絶えず自問し続けなければならない。
・わが社の未来にとって最も重要な人々(社員、取引先、消費者、投資家)のことをどの程度理解できているか?
・わが社とわがブランドは、どのような価値を実践しているのか?
・わが社とわがブランドは、どのような価値を実践したいのか?
・わが社はどのように、これらの問いに対する答えを実際の活動に反映させているのか?
すべてシンプルな問いだが、これらの問いに答え、その答えに基づいて行動することは簡単ではない。しかし、その難しい課題に取り組むことを通じて、ブランドと企業は力を手に出来る。


ビジネス・アーティスト達は次の五種類の活動に卓越している。
この共通点はビジネスリーダーが満たすべき重要な条件と言っていい。
・人間にとって大切な5つの基本的価値のいずれかに関わるブランド理念を発見(もしくは再発見)する。
・ブランド理念を軸に、企業文化を構築する。
・ブランド理念を社内外に発信し、社員と顧客の両方と共有する。
・ブランド理念に沿って、理想に近い顧客体験を提供する。
・ブランド理念に照らして、ビジネスの進歩の度合いと社員の仕事ぶりを評価する。
(実はこの5項目は後述の”ブランド理念の木”の”葉”にあたる)
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ステンゲル氏は”ブランド理念の木”という生命体的なビジネス概念についても述べている。

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<ブランド理念の木>
”ブランド理念の木”の根っこは二つの要素で構成される。
1つは、社内の人々がいだく信念(それは、たいていブランドの歴史に由来する)
もう1つは、そのブランドが顧客や消費者と共有する価値観である。
この二つの要素が生き生きと相互に作用しあうことにより、”ブランド理念の木”は地面につなぎ止められて、しっかりと支えられる。

ブランド理念、言い換えれば、そのブランドが世界に提供する高次の恩恵は、ブランドの歴史に根ざすべきものだ。それは、”人々の生活をよりよいものにする”ことを目指す創業の理念を出発点とし、その後も絶えず磨きをかけられていく。これまでそのビジネスを担ってきた人たち、特に歴代のリーダーたちの信念や願望、価値観がそこに吹き込まれる

”ブランド理念の木”の最も土台の部分をなすのは、ブランドが奉仕する人々である。
どういう層を対象にビジネスを行うのかは厳選すること。
これはある程度の規模を持った層を対象にする必要がある。
自分のビジネスが人間にとって本当に重要な領域で活動しているかどうかを点検するためには、ブランド理念が人間にとって大切な五つの基本的価値〜喜び、結びつき、探求、誇り、社会への影響〜に根ざしているかどうかを確認すればよい。

”ブランド理念の木”の幹を構成するのは、ライバルとの「差別化ポイント」そしてライバルから遅れをとってはならない「類似化ポイント」(市場に参入してライバルと肩を並べて競い合うための最低条件といってもいいし、ライバルの強みを無力化するために到達すべき水準といってもいい)だ。

”ブランド理念の木”の葉はビジネス・アーティストが卓越している、発見、構築、発信、提供、評価の5つの活動である。

”ブランド理念の木”という比喩は、単なる言葉遊びではない。
樹木という生命体になぞらえることにより、ビジネスの未来にとって重要なすべての人々の存在を考慮にいれ、その人たちの相互の関係を描き出せる。
また、ビジネスを成長させるために調和をとる必要のある要素を木の根、幹、枝、葉の関係として描くことを通じて、それらの要素の動的な相互作用を表現できる。その中には、企業の内部の要素(ほとんどの場合、顧客には見えない)と、対外的な要素(商品やサービス、顧客とのコミュニケーションの取り方など)の両方が含まれる。
そして、ビジネスを一本の樹木と考えれば、ビジネスを顧客と社員とライバル企業で構成されるエコシステム(生態系)の 中に存在するものとして位置づけられる。

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ステンゲル氏が原則として述べているの上記の内容で、それを繰り返し色んな会社の事例、自分の経験を通して繰り返し丁寧に述べている。

いくつか面白いと思ったポイントを紹介する。
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<企業文化を築く10の手法>
1 人々の行動の背中を押せるブランド理念を掘り起こし、それを実践する。
2 自分が何を大切にしているかを社内外にはっきり伝える。
3 達成したい目標のために組織を設計する。
4 チームを整備する、それも迅速に。
5 あらゆるタイプのイノベーションを後押しする。
6高い基準を設定する。
7 常にスタッフをトレーニングする。
8 象徴的な活動を行い、人々の興奮を生み出す。
9 勝者のように考え、勝者のように行動する。
10 どういう「遺産」を残したいかを意識して行動する。
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そしてイノベーションについては、ステンゲル氏は三種類あるとし、それをショットガン方式で並行して実践すべきだと述べている。

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ブランド理念を出発点に複数のイノベーションを同時に推進する方針を明確に打ち出すべきだ。いかなる企業やブランドも、三種類のイノベーションを並行して全て推進するのが重要だということだ。
1つは、持続的イノベーション(製品やサービスの日常的・継続的改良を行う)
もう1つは、商業的イノベーション(製品やサービスそのものは変更せず、マーケティングによって新しい需要を生み出す。既存製品の新しい用途や新しい使用局面を提案するなど)。
そして三つ目は、破壊的イノベーション(新しいビジネスのジャンルを発明、再発見し、ビジネスモデルを変更する)

大事なのは、常にいくつものイノベーションに取り組み、特定の1つのタイプのイノベーションに依存しすぎないことだ。
P&Gでは、社内の全ての部門に対し、イノベーション野ポートフォリオの内訳を示すように要求していた。実は、イノベーションのタイプ毎の理想的な比率も決めてあった。
その比率とは、持続的イノベーション:60%、商業的イノベーション:20%、破壊的イノベーション:20%である。
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その他、諸々参考になった点。
○リーダーは、スタッフの中の誰に手柄をもたせ、誰をヒーローとして位置づけるかを決めなくてはならない。この選択も極めて大きな象徴的意味を持つ。
○企業文化を築く上で核となる要素は、その会社の人事方針だ。自社にとって最良の人材を選ぶことをおこたってはならない。それさえ押さえておけば、ほかの問題は自ずと解決する。
○理念を原動力とするビジネスは、ファスト・プロトタイピング、ないしデザイン思考を実践するのがことのほか得意だ。ブランド理念が組織のあり方と組織内の人々の活動に深く浸透しているほど、コラボレーションを通じたイノベーションを実践しやすく、しかもそれを素早く進めやすい。
○成果をあげているリーダーは、それぞれ自分なりのスタイルを持っているが、企業文化やチームの文化に関しては誰もが同じような行動をとっていた。 単にブランド理念の実戦に向けて高い水準の行動を要求するだけでなく、その目標を達成させるために、人々の潜在能力を引き出しているのである。
○コミュニケーションはあらゆる人間関係を動かす血液のようなもの。その意味で、コミュニケーションに関して企業が最もお手本にすべきなのは愛情ある人間関係だ。
○完璧な体験よりも理想的な体験
○アップルがこれまでに行った最高の「広告」は、アップルストアの店舗だ。

アップルストアの話しは結構奥が深い。単純に”売る”ためのストアではなくして、それでいて売上の最高面積効率をたたき出しているという。


最後に、感動企業ザッポスの10のコアバリューについて。
<ザッポス 10のコアバリュー>
1 サービスを通じて、Wow!を届けろ。
2 変化を受け入れ、変化を押し進めろ。
3 楽しいことを生み出せ。それと、ちょっとヘンテコなことも。
4 冒険しろ。創造的であれ。やわらかい頭をもて。
5 成長と学習を追い求めろ。
6 コミュニケーションを通じて、オープンで嘘のない関係を築け。
7 前向きなチームをつくり、家族のような関係を育め。
8 少ない資源で、多くのことをやり遂げよ。
9 情熱的であれ。強い意志を持て。
10 謙虚であれ。
この10か条はあらゆる業種のあらゆる企業にとって有効な行動指針だ。この点は、社内の企業文化が保守的だろうと革新的だろうと関係ない。

日本にザッポスが上陸したら、いの一番に利用してみたい。


全体を通して、原理原則からその事例に絡めて説明されており非常に納得できるものであった。
さっそく今会社で取り組んでいる”ブランド”に反映していきたい。

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