2018年4月8日日曜日

『シミュレーション思考』

グローバルマクロ戦略マネジャーの塚口直史氏の著作。

ストーリーに自分の時間とお金を投資すること。こうした行動につながる思考を「シミュレーション思考」と位置付ける。
「世界に対する好奇心」、地理と政治を結びつける「地政学」、私たちの経済生活の基盤をよく知るための「お金の歴史」の3つの柱こそ、シミュレーション思考に欠かせない。

ということで、著者の職業柄もあり、ちょっと金融的な発想が多い。

<「ドライバー」を見つける>

ファンドマネジャー同士のミーティングでよく出てくる言葉「ドライバー」。
「今のドライバーは?」というような形で使う。
「最も影響を与えているものを見つけ出す」そのポイントになるのがドライバー。
ドライバーを掴むためには、物事を全体でとらえる能力が必要。
生き馬の目を抜く世界のヘッジファンドマネジャーが最も大切にしている視点は、国内の企業の動向ではなく、通貨デリバティブ市場でドル需要がどう変化しているか、ということ。
というのも、国際投資を行うにあたっては、常にドル金利の推移を意識して運用を行っていく必要があるから。
情報収集においては、その目的を絞ること。そして情報収集には時間と労力をかけず、情報を集めた後の分析とドライバーを発見することが重要。
さらに情報分析に基づいて、少しでもいいのですぐに何らかの行動を起こすこと。
行動することで、気づきのチャンスにたくさん出会うことができる。また、人に意見を聞くことで、客観性を身につけることができる。

<最低5つのストーリーを描く>

まずは最低5つのストーリーを描くことを習慣にする。
できればその5つのストーリーは各々が影響し合わない、非相関なものが最良。
違ったなと思ったらすぐに別のストーリーに切り替えることができるようにしておく。投資の世界で言う「損切り」と言う行為。間違えてもすぐに立ち直ることができれば大きなダメージにはならない。常に正しい答えが出せるわけではない。正しさを求めるよりも常に立ち直るタフさの方が大切。
ストーリーに当たりも外れもある中で、説明責任を真剣に尽くし、次の一手を打ち続けること。その結果、一定のスパンではプラスのリターンを挙げることができる。

常に20%以上のリターンを出し続ける人の考え方の肝なのかもしれない。
常にプランBを持って、間違えてもすぐに立ち直るタフさにより、次の一手を打っていくということ。
5つも持つ必要があったり、それが非相関なものがいいというのは金融系ならではの発想。

<バブル経済の見極め>

バブル経済がいつ破裂するのかを探るために、注意深く見守っている市場は「海外絵画市場」。
バブル期にはいわゆる「名画買い」がほぼ必ずと言ってもいいほど起きている。


国家破綻ということが現実となったギリシャ危機、関東大震災後の金融がどうなったか、など歴史から学べ、ということと、「地政学」という歴史と地理と政治を掛け合わせたような学問から、自らストーリーを考えよう、という非常に知的な内容であった。
2016年に書かれているので、現在の北朝鮮問題など、ちょっと違う方向性を持ってきてたりもするが、そのズレがまた読んでいて面白い。

金融系の職業ではないが、楽しみながら世界的なストーリーを考えて、投資も行なっていければ。

0 件のコメント: