マイクロ法人をつくることで
①法人で生活費を損金とし、個人で給与所得控除を受けることで、経費を二重に控除する。
②家族を役員や従業員にして、役員報酬や給与を法人の損金にしつつ給与所得控除を得る。
③自営業者や中小企業向けに日本国が用意した優遇税制を活用する。
ということが実現できる、という橘玲氏のノウハウ本です。
脱線して述べられるテーマのひとつひとつが面白いのが橘氏の面目躍如という感じです。
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かつてこの国では、サラリーマンは「社畜」と呼ばれていた。
ところが今やリベラル派の人達が「非正規社員を正規社員にせよ」と大合唱している。
驚くべきことにこの国では、いつのまにか社畜=奴隷こそが理想の人生になってしまったのだ。
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というシニカルな言い回しにより、昨今の非正規社員問題についてメスを入れます。
年功序列の企業社会を”「年功序列とともに」という上映時間40年という長尺映画を上映している「終身雇用劇場」という映画館”というメタファーで描き、アメリカでは全就業者数の1/4、約3300万人の「フリーエージェント」(会社に雇われない生き方を選択した人達)がいて、1300万社のマイクロ法人があり、11秒に一社の割合で自宅ベースのミニ会社が生まれているという事実が紹介されます。
日本でもクリエイティブクラスの人達がもっと独立してもいいのではないか、ということです。
次いで「法人とは」というテーマに移り、法人擬制説と法人実在説について述べられます。
世界における株式会社の歴史、それから日本における商法改正の歴史、株式会社と有限会社のとらえられ方の変遷、2005年の商法改正でできた”合同会社”がアメリカと異なりパススルー課税が認められないため、実際には株式会社とかわらないものとなってしまった話などが分かり易く書かれています。
企業統治における日米の差異、スターウォーズになぞらえた「エンロン」という帝国の物語、西原理恵子の脱税物語など、脱線しつつもテーマにひとつ筋が通っている感じがするのはさすがです。
後半は簿記やら不動産証券化の内容やらもでてくるのですが、わかりやすい事例なのでとても理解しやすいものとなっています。
○日本の株式市場における、時価よりも低い価格での第三者割り当て増資は究極のインサイダー取引である。
○税の世界では、節税と脱税の境界がしばしば問題になる。善意と悪意の差は説明可能性(アカウンタビリティ)にあることになる。
○内部留保とは、経営者が株主にかわって株主のお金を運用することに他ならない。ファイナンス理論の原則からは、会社はすべての利益を株主に還元する(配当性向100%)か、全額を内部留保する(配当性向0%)のいずれかになる。
など、曖昧な日本の制度についてバッサリやっているのも、実務をあまり知らない立場からすると成る程という感じです。
大学の講義においても、脱線の仕方で教授の力量がわかったりしますが、この脱線力は中々のものです。
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