2010年2月21日日曜日

『ザグを探せ!』

商品、機能、広告、メッセージ、メディアの5つの分野において市場は極度に”氾濫”(クラッター)しており、その中でブランドを確立するためには「他者との差別化」、それも”過激なまでの差別化”が必要であるというブランディングの本。
『ザグ』とは、みんなが『ジグ』なら『ザグ』で行くべしという、「差別化」を象徴的に語ったワードである。

今日の最も強力な競争の障壁は、消費者が情報の氾濫から身を守るためにつくる”心の壁”だ。その最強の障壁が、企業ではなく個人の手に委ねられる時代が来ている。企業側ではなく、消費者が頭の中につくるこの小さな”箱”が、ブランドの境界を決めるのだ。

情報の氾濫する時代においては、まずは消費者にメッセージが自らに関わりのあるものであるということを認識させるところから入る必要がある。
そのための手法が17のチェックポイント形式で述べられている。

面白かった点を羅列する。
・似たような商品であふれかえる市場において消費者が求めているのは、商品の機能やサービスのメリットではなく、それを利用、活用したときの『集団としてのアイデンティティ』(「この商品を買ったら、どんな自分になれるんだろう?」)である。(Unique Buying Tribe)
・誰もいないところを狙う(差別化)のと同時に、時代の先端をいく必要がある。実は、その”リーダー”になるのは、そんなに難しいことではない。パレード(時代のトレンド)を見つけて、その先頭に立てばよい。
・チョキ企業(得意技:フォーカス)、グー企業(得意技:勢い)、パー企業(得意技:規模)はジャンケンの関係にある。通常チョキ企業→グー企業→パー企業と成長するが、規模の成長には限界があり、不安定状態の時期になると、パー企業においてもフォーカスが必要となる。

”商品・サービス”をイメージして書かれているのか、”企業ブランド”をイメージして書かれているのかがちょっとわかりづらい感はあるものの、普段わかったつもりになっている『差別化』について、より重要性を認識した。

2010年2月20日土曜日

電気自動車

東京電力さんのご好意で電気自動車に乗る機会があった。

高速充電だと10分の充電で40km、30分でフル充電となり160km走行が可能になっているそうだ。
一般家庭だと単相200Vで7時間、100Vだと14時間でフル充電となる。
夜間の7割引の電力で7時間充電して乗った場合には@1円/1km(1kmあたりの走行電力が1円!)となるらしい。
3万km乗っても、3万円しかかからないということになる。

いいことづくめの大本営発表数字ばかり聞いても仕方がないので、ネガティブチェックもさせてもらったところ、
高速充電器は350万円。フル充電時でも冷暖房利用時の走行距離は80〜100kmになる。
電気自動車の本体価格は459万円。そのうちリチウムイオン電池が200万円ということで4割以上を占める。
ランニング負担もこの電池が厳しく、10年程度はもつと言われながらもメーカー保証は5年しかない。

とはいえ、電気自動車は一般車両との差額の半分は補助金がつくようになっているので、実質負担は300万ちょっとくらいになるし、リチウムイオン電池が性能アップ&コストダウンしてくると、急激に本体価格も下がり普及してくる可能性を秘めている。

乗った感じはゴーカート。加速は結構しっかりしていて、車マニアでなければ充分実用的なレベル。
音は静かで、アクセルを踏んだときの反発がないのでちょっと違和感を覚えた(多分乗ったらすぐなれるレベル)。


実は東京電力さんの千葉火力発電所内で試乗させてもらったのだが、本業の発電の話も知らないことが多くて面白かった。
・火力発電といっても、現在は石油よりもLNGを利用する割合が高いこと。
・熱効率(使用した燃料がどの程度電気エネルギーに変換されたか)は最新設備で6割程度。古い設備もあるので東京電力全体で見ると約5割であること。
・電力量構成比でみると、東京電力は既に原子力が38%を占めること。また、Co2削減25%を本当に達成するためには、今日本全体で約3割の原子力比率を4割にアップさせる必要があること。(ちなみにフランスの原子力比率は7〜8割で、EU各国に電気を輸出しているらしい)
・柏崎刈羽原子力発電所は800万キロワットの出力をもつ世界最大の原子力発電所であること。地震でストップしたときには、順調に削減できていたCo2排出原単位がキープできず、炭素クレジットを活用したこと。

電気は社会インフラであることを再認識させられた。

2010年2月13日土曜日

『アイデアのちから』

マルコム・グラッドウェル氏の『ティッピング・ポイント』に爆発的に売れる3つの法則というのがある。
第一原則:少数者の法則。第二原則:粘りの要素。第三原則:背景の力。
このうち第二原則の”粘りの要素”について掘り下げた本。





記憶に焼き付くアイデアの6原則
原則1:単純明快である(Simple)
原則2:意外性がある(Unexpected)
原則3:具体的である(Concrete)
原則4:信頼性がある(Credential)
原則5:感情に訴える(Emotional)
原則6:物語性がある(Story)

ということで頭文字をとって”SUCCES”ということなのだが、よくある当て字法則にはない奥深さがある。

人に記憶させ行動させるには、聴き手を以下の状況にする必要がある。
1.関心を払う
2.理解し、記憶する
3.同意する、あるいは信じる
4.心にかける
5.そのアイデアに基づいて行動できるようになる

実はこの状況に持っていくための法則こそが上記6原則なのだそうだ。
1.関心を払う☞意外性がある
2.理解し、記憶する☞具体的である
3.同意する、あるいは信じる☞信頼性がある
4.心にかける☞感情に訴える
5.そのアイデアに基づいて行動できるようになる☞物語性がある
※「単純明快さ」は主に自分で「答え」を出す段階で必要であるが、全段階を通じて有効である。

実は、メッセージを相手に届けるプロセスには二つの段階がある。
自ら「答え」を出す段階と、それを「他者に伝える」段階だ。
問題は「答え」を出す段階では強みになったものが、「他者に伝える」段階では裏目に出てしまうことだ。
「答え」を出すには専門知識が必要だが、専門知識は”知の呪縛”と切っても切りはなせない。他人が知らないことを熟知してしまう余り、それを知らないということがどんなことか忘れてしまうのだ。
 
原則が非常にシンプルであり、また事例が豊富なので読んでいて納得感がある。

実は、勧められた本を間違って注文してしまった本なのだが、怪我の功名であった。

2010年2月7日日曜日

i-phone

13年間ドコモだった携帯電話会社をソフトバンクに乗り換えた。
理由はi-phoneが欲しかったからだ。
似たようなスマートフォンがドコモから出るのをずっと我慢してきたが、エクスペリア4月販売の発表で逆にこれ以上のものが無さそうだと判断した。

事前に、乗り換えにより月々の料金がどうなるであるとか、手続きがどうであるかを確認したが、大きな支障はなさそうだったので申し込んだが、正直最後まで悩んでいた。

結局、妻がコストコで申し込むとコストコのクーポン(しかもお釣りは現金バック)1万円が手に入ることを聞きつけてきて、32Gのi-phoneを申し込んだ。(結局、更に基本料10ヶ月分割引もついた)
ドコモから電話番号はそのままの”ナンバーポータビリティ”を利用するので、予約番号なるものを取得する必要があったのだが、この手続き(オペレーターのやりとり)は非常に巧みにマニュアル化されていて、ドコモは単純に応じたりはしない。
ポイントの残高、10年超の履歴クリアなど、ドコモをやめるデメリットを逐一あげて「ご了解いただいてますでしょうか?」と聞いてくる。
また、ドコモで別機種にした場合のメリット(ちなみに変更前の機種はなんとMOVAだった)も伝えながら「ご理解いただいておりますでしょうか?」
こちらは情報としては知っている内容ばかりで、意思決定して電話をしている話なので惑うことはなかったが、
「お客様のご自宅でのソフトバンクの電波状況はご確認いただいておりますでしょうか?」の質問にはちょっと意表をつかれた。
通常、自分の自宅でこれから入るキャリアの電波状況がどうなっているかなんていちいち確認しないし(当然大丈夫だと思っている)、向こうはこちらの住所を知っているので、ソフトバンクの電波が入らないのを知っている親切心というわけではなく、単なる脅し(もしくは時間稼ぎ)の意味で確認をしている。(実際、後でわかるが自宅では何の問題もなくソフトバンクの電波は入る)
妻がこちらの契約にぶら下がっていて、ドコモのままなのだが、「奥様のご契約が○○の場合、このようになる恐れがありますがご確認はされてますでしょうか?」と聞いてくるので、最後は「そんなのそちらでわかるでしょう!」とちょっといらついてしまった。

無事予約番号をもらい、今度はソフトバンク側の手続きをしてちょっとびっくりしたのが、免許証などの本人確認資料は提出するものの、ハンコをつく書類がひとつもない。
印を押すところがあっても、サインでOKなのだ。
これは、購入手続きとしては相当心理的ハードルが低くて済む。
結局この日は、一銭もお金を払うことなく(そして、ハンコを押すことなく)i-phoneを手に入れた。さらに言うと、コストコのクーポンもらっているので逆にお金をもらった感じだ。
ある意味恐ろしいビジネスである。

コストコの女性店員によると、一度自宅のパソコンで登録してから、ソフトバンクショップで連絡先のデータを移動する必要があるという。
非常に丁寧に教えてくれたが、正直、自分の母の年代では恐らく理解不能で諸々の機能は使うことができないであろう。

一度家に帰って、自宅MACで登録を終了し、近くのソフトバンクショップへ。
この、連絡先リストの移行についても、ショップの店員が行ってくれるのは旧携帯電話→ソフトバンクのデータベースまで。
その先、ソフトバンクデータベース→新携帯電話については、「代行はやらない決まりとなっておりまして。。」と一切やってくれなかった。
このやってくれない部分の手続きについては、きっちりマニュアル化されていて、知識があれば何の問題もないのであるが、老人だったりしたらやってあげないと一苦労であろうと感じた。
この”代行しない”というのは、ショップ単体で考えると、お金にならない無料サービスについて手間をかけるのはムダ、ということになろうが、ソフトバンク全体でみれば、必要な業務であると思った。(ちなみにドコモだったらやっている)

ドコモのオペレーターによる引き止め作戦についてもびっくりしたし、悩んでいた割りに非常にあっさりと手続き自体が終わったのにもびっくりした。
その後の手続きについてオールインワンになっていない点は疑問に思った。
非常に勉強になった。








音楽のチカラ

仕事で初めてTVCMを作成することになった。
たった15秒の中で伝えたいことを示さなければならない。
諸々盛り込もうとすると、却ってピントがずれて伝わらないらしく、如何にテーマを絞れるかで出来がかわってくるのだそうだ。
絵コンテを見て、音楽サンプルを聴いて完成形をイメージするのだが、これが非常に難しい。
音楽については、PD(Public Domain)曲(著作権消滅曲)をベースにアレンジすることになったのだが、ベースの曲を聴いて、次にアレンジの方向性の曲を聴いて、最終形の曲のイメージを頭の中で一体化できない。
「どちらかというとアレンジ曲の方をイメージしてもらった方が間違いがないです。」
とアドバイスをもらった。要はアレンジ曲の歌詞と音階がベース曲のものを想像せよ、ということらしい。
たった15秒だと映像のイメージと合わせて音楽の影響はとても大きい。
そう思うと、音楽はまさしく”形のない作品”であり、アレンジを加えた時点で原曲とは別物であり、クリエイティビティが必要とされる。
歌手を”アーティスト”と呼ぶ理由がよくわかった感じだ。

2010年2月4日木曜日

『クラッシュ・マーケティング』

『ハイパワー・マーケティング』を著したジェイ・エイブラハム氏の続編ということで、推薦されて読んでみた。
「マーケティングは支出ではなく、投資である」という考え方がベースになっている。


マーケティングは「一対多」であるのに対し、営業活動は「一対一」。
マーケティングの広範なアピールを個々の買い手に向けた特定のメッセージに変換するのが営業マンの仕事。”マーケティング”を”取引”に転換するためには、”コンサルティング営業”が不可欠である。
そしてコンサルティング営業は、誰もが持っている人間の基本的感情である「共感」に基づいている。

コンサルティング営業のプロセスとしては、まず取引の成立要件を「絞り込む」こと。
次に、絞り込みの段階で出た全ての要件を満たすことができたら、商品またはサービスを購入するという確約をクライアントからもらい、「仮クロージング」する。
最後に、解決策となる商品またはサービスを「提示」する。
すなわち「絞り込み」☞「仮クロージング」☞「提示」というプロセスが大切。(最後にクロージングしようとするとそこで落ちる)

・共感は、あらゆるビジネス戦略の基礎だ。一言で言えば、あなたはクライアントと恋に落ちなければならない。
・医者のように営業する。(自分の腕に自信があることを見せて信用を得て、問題を総合的に診断し、拒絶される不安や躊躇なしに解決策を呈示する。)
など、なるほどと思わせる内容が多い。(まとめると”恋人を診察する医者”?)


<景気のいいときも悪いときも毎年必ず実践すべき3つのこと>
①売っている商品やサービスそれぞれにつき、新しい市場に少なくとも一つ進出する。
②既存顧客向けに新しい商品またはサービスを最低一つ投入する。
③数限りない基盤や顧客の中から、最適なベネフィットを得られると思われる新しい事業を収益ベースで1件は獲得する。
ということで成長志向の教書かと思いきや、
「イノベーションを行う前には必ず”最適化”(optimization)を行い事業効率をあげなければならない」など現実的な教えも多い。

ビジネスを大きくする方法はたった三つしかない。
①クライアントの数を増やす。
②クライアントあたりの平均販売額を増やす。
③クライアントの購入する頻度を増やす。
などは至ってシンプルかつ現実的な指摘である。

マーケティングの本でありながら、
「21世紀の優れた起業家が持つべき最大の資質は、他者と創造的に協力する能力である。」
ということも述べられている。
そのコラボレーションを成功させるカギは、
①これまで彼らがやってきたことに対して、敬意、称賛、評価、共感を表しつつ、
②彼らがまだ提供されていない、達成していないものの中で何を一番求め必要としているか正確に把握し、あなたの見通し、計画、戦略が他のどの選択肢よりも優れた方法で早く簡単にかれらにそれらをもたらすことを示す。
とある。

マーケティングがベースであるが、すこし広範なものも含めたバイブルとして秀逸であった。