脳科学をマーケティングに利用した場合の効果と限界を分かりやすく示した本。
最初のページに「あなたは、今 ニューロマーケティングに引っ掛かりました!」とあって、その理由がツラツラと記載されている。
実際手に取って見てしまっているので、「しまった、一本取られた!」という感じである。
しかしながら、そのカラクリはリアルな違和感でフックをかけて、アフォーダンスに訴えるというもので本の本題ではない。
脳科学の進歩により、fMRI(核磁気共鳴画像法)で脳活動を調べることができるようになった。
そのおかげで、マーケティングに脳科学を利用できるようになってきた。
ファンが自分の好きなブランドにかかわる画像を見ている時には、「記憶」に関係する海馬と、比較的に肯定的な意思決定で活動しやすい左背外側前頭前皮質が活性化した結果を受けて、『ブランドロイヤリティとは、やはり「記憶」であり、肯定的な「選択」でもある。』と言ったことが科学的に言えるようになってきている。
しかしながら、脳活動を調べるにあたってはまだまだ、数を調べるのには時間もお金もかかるという限界を著者は指摘していて、速度が求められる場合にはニューロマーケティングは役に立たないとしている。
そこで著者が提唱するのは、マーケティング担当者自身がセンサーとなることだ。
人の脳はセンサーになることができる。また、センサー化することは対象を観察することになって、本当にユーザーを好きになること、仕事を好きになることにもつながっていく。
事例として、保育園のキラキラ率調査として保母さん達が子供達の目のキラキラ率を定量的に調べるようにするというものが挙げられている。
手段として、子供達の目のキラキラ度を観察することが、結果としてターゲットである子供達を観察することにつながり、機械同等、いや機械以上の気づきを与えてくれるというもので、素晴らしい提案である。
脳科学で分かったネタとしては、「人の顔のポスターでは右側の顔をどう見せるかに配慮が必要」というのがある。
人の表情を読む力は進化的に発達してきたと考えられる。
特に発達してきたのは側頭葉の下側の紡錘状回という場所。(車好きの人は、車の区別をこの紡錘状回で行っているらしい)
紡錘状回と右前頭葉は、情動の活動に関係する扁桃体と直結している。
紡錘状回や右前頭葉は右側にあるので、視野の左半分、すなわち顔の右側(向かって左側)を優先的に処理し、そちらの表情で顔を判断しがち。
モナリザの謎の微笑みは向かって左側は笑っておらず、向かって右側が微妙に笑っているため笑いの表情がストレートに伝わらず、謎と感じる。
ポスターなどをつくるときには、顔の右側(向かって左)をどう消費者に見せるかが重要、とのことだ。
また、<選好における視線の「雪崩現象」>というのもある。
どちらが好きか写真を選ばせると、決断の1秒ほど前に、選ぶ方に視線が吸い寄せられるというものだ。
嫌いな方を選ぶ時、特徴抽出時には、この目線の雪崩現象は起こらないらしい。
すなわち、「見ることは好きになること」といことなのだが、眼球や首がある方向を向くこと(定位反応)を伴うことが選好度には必要。
(そちらを向いたのだから何か意味があるのだろう、長く見たからそちらの方が好きなのだろう、という行動の跡づけ解釈をするらしい)
どのようなビジネスにおいても、そのサービス、商品、販促物などを実際首を動かして顧客にみてもらうことが大切。
実はパチンコをやっている人の脳は鎮静化しているのだそうだ。
(徐波化と呼ばれる、リラックスした時に出るα波、深い瞑想状態やまどろみ状態ででるθ波が多くでる状態になる)
脳は、ワクワクする(興奮)快感【刺激の快】と、ホッとする(癒し)快感【癒しの快】の二つの快感で商品やサービスにはまっていく。
興奮状態をより強く出すためにも鎮静状態が必要なのだそうだ。
この脳科学を用いたマーケティングに関してはまだまだこれから進んでいく分野と思われる。
研究対象としては面白い分野ではなかろうか。
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