2013年10月5日土曜日

『アイデアは地球を救う』

電通ダイバーシティ・ラボの北本さんからご紹介を受けた本。

ソーシャルデザインという「希望をつくる仕事」、すなわち社会の抱える課題に気がついて実行するのは普通の社会人にもできるんだと気づかせてくれる本。

<ソーシャルデザインの現場で発揮されるチカラ> というのが面白い。
ソーシャルデザイン向きかどうかを判断できるというものだ。
1.感知力(問題に気づく)
 ・好奇心が旺盛である
 ・自分の長所を知っている
 ・気持ちに素直である
 2.理解力(詳しく知る・感じる)
 ・視野が広い
 ・裏付け情報を調査する
 ・できることを知っている
 3.協働力(仲間を増やす)
 ・共有するのが好き
 ・派閥をつくらない
 ・友達が多い
 4.構想力(アイデアを発明する)
 ・発想力に自信がある
 ・言葉を考えるのが好き
 ・ミステリーを解くのが好き
 5.改善力(アイデアを磨く)
 ・Win-Winの構想をつくれる
 ・感情に働きかける
 ・人脈を活用する
 6.実行力(実行する・アクションする)
 ・粘り強い
 ・参加のハードルを下げる
 ・新しい流れをつくる
 7.継続力(ふりかえる・つなぐ・まわす)
 ・成果を可視化する
 ・持続可能な仕組みを作る
 ・長期的展望をもつ

さぁ、どの程度あてはまっているか。自己診断だと正しくない場合もあるので、他者評価も聞いてみたいところ。
でも、これらってソーシャルデザインに関わらず、コンピューターが発達して単純作業を人間から奪っている昨今の業務全般に必要とされている資質ではないか?



ソーシャルデザインのたくさんの事例が記載されていて、各々「背景と課題」→「アイデア」→「結果」という流れでまとめられている。
「背景と課題」というところでは社会が抱える様々な課題が数値的にも浮き彫りにされていた。

<乳がん>
・日本では、女性の15人に一人が乳がんになると言われている。
・30歳代から60歳代の女性のがん死亡原因の第1位は乳がんで、亡くなる女性の数は年々増加している。乳がんはごく早期に発見できればその95%は治すことが出来るとも言われているが、乳がんの検診の受診率が低く(約10%)、気づいた時には進行していたケースが多い。

<教育>
・世界では約1億人の子供達が学校に通えずにいる。
・15歳以上の人口のうち、6人に1人(7億7500万人を超える人々)が読み書きができないと言われていて、そのうちの2/3が女性。
・日本では7人に1人の子供が、学校で学習するための資金的支援を必要としている。

<犬猫>
・オーストラリアでは、知られることのないまま、毎年10万以上もの保護された犬が安楽死を遂げている。
・日本では殺処分される犬猫の数は年間約20万。
<水環境>
・世界人口の約8人に1人が安全な飲料水を得ることができていない。
・世界人口の40%近い人が自宅のトイレや公衆便所など衛生施設を利用できていない。
・2030年には世界人口の47%(2人に1人)が水不足の厳しい地域で暮らしていると予想される。

<エネルギー>
・1960年には58%だった日本のエネルギー自給率は、2008年にはわずか4%に。

<生物多様性>
・生命が誕生してから38億年。地球上には知られているだけで約3,000万種類の生き物がいると言われている。
・生物種の絶滅スピードは、人間のいなかった時代の1000倍とも言われている。
・両生類の42%、鳥類の40%で個体種が減少。植物の23%が絶滅危種にあり、漁業資源の14%が崩壊。珊瑚礁は2050年までに絶滅するかもしれないと予想されている。

<女性妊娠時>
・世界では毎日、約800人の女性が妊娠や出産が原因で命を落としている。そのうち、約99%が途上国の女性。

<多様化>
・LGBT(Lesbian,Gay,Bisexual,Transgender)の頭文字をとった、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)を総称する言葉。日本におけるLGBTの推定人口割合は5.2%と言われている。
・ジェンダーギャップ指数(男女格差)ランキングで、日本は135カ国中101位という低い順位。
・日本人のおよそ5%が、何らかの障害を有していると言われている。
・2040年、日本人の3人に1人が65歳以上の高齢者になる。


ソーシャルデザインの色んなアイデアが紹介されているのだが、その中で一番面白いと感じたものをご紹介。

<Smoking KIds>
タイでは、子供達が間違った行いをしていたら大人が指摘し、ただすという文化がある。 タイのオフィス街や繁華街の路上でタバコを吸っている大人たちのもとに、突然タバコを手にした幼い子供達が「ライターを貸してくれ」とやってくる。
もちろん、どの大人もライターを貸したりはしない。そして、子供達に、喫煙は悪いことだ、有害なことだと諭す。
「タバコを吸うと早死にするぞ」「肺がんになるわ」
すると子供達は自分の健康を心配してくれた大人達に手紙を渡して立ち去る。
そこにはこんなメッセージが。
「あなたは僕のことを心配してくれるのに、なぜ自分のことは心配しないの?」
ほとんど全ての大人が、その手紙をみて吸っていた煙草を捨てた。手紙を捨てた人はいなかった。
このキャンペーンは、リアルな禁煙へのメッセージを喫煙している本人に認識させるという、喫煙のための最も効果的な方法だった。

ここにあるのは、「愚行権」といったような”言い訳”ではない。
教えることこそが一番学ぶことである、というのを体現しているアイデアであるのが素晴らしい。


「今の小学生が大人になる頃には、2/3の子供が今は存在しない職業に就く」という予測があるらしい。
聞いた時には、そりゃ多すぎではないのか?と思ったが、ソーシャルデザインの事例を見ているとそうなる予感がしてこなくもない。
後は、このソーシャルデザインのアイデアをいかにビジネスモデルとして成立させるかだ。
それには老練な大人のノウハウが活きてくる気がしている。




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