2013年9月30日月曜日

『無印良品は、仕組みが9割』

良品計画会長の松井忠三氏の著作。
無印良品といえば、マス媒体に頼らずにブランド化を達成した珍しい企業というイメージがあるが、その裏には地道とも言えるマニュアル文化があった、という話し。

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無印良品の店舗で使っているマニュアル、MUJIGURAM。
店舗開発部や企画室など、本部の業務をマニュアル化した、業務基準書。
この2つのマニュアルには、経営から商品開発、売り場のディスプレイや接客まで、すべての仕事のノウハウが書かれている。
MUJIGURAMは2000ページ分にもおよぶ。(業務基準書はその3倍!)
これほどの膨大なマニュアルをつくったのは、「個人の経験や勘に頼っていた業務を”仕組み化”し、ノウハウとして蓄積させる」ため。
個人の経験と勘を蓄積するのは、チームの実行力を高めるため。
「それぐらい、口で言えばわかるのでは?」と思われるようなことまで明文化する。これは”仕事の細部”こそ、マニュアル化すべきだという考えがあるから。
マニュアルは毎月、更新されていく。

マニュアルを作れる人になるのが、無印良品で目指すところ。
マニュアルは社員やスタッフの行動を制限するためにつくっているのではない。むしろ、マニュアルをつくり上げるプロセスが重要で、全社員・全スタッフで問題点を見つけて改善していく姿勢を持ってもらうのが目的。

機動力のある現場にするためには、仕事を標準化すること。
お客様がどこの無印良品に行っても同じ商品を同じサービスで受けられるようにする最低限の基準を定めるため。
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マニュアル化というと、画一的な管理をイメージするが、無印良品におけるマニュアルは日々更新される柔軟なものである。そして、どの店舗(どの顧客コンタクトポイント)でも同様の商品、サービスを提供できるのでブランド戦略としても有効だと言える。

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仕事の「何、なぜ、いつ、誰が」を具体的に記載することで、会社の理念や価値観を統一する。
コミュニケーションとは「言えば伝わる」のだと思いがちだが、実際には言ってもなかなか伝わらない。
明文化して初めて意識できる。
さらにそれを繰り返し教えることで、本当の意味で「体得した」というレベルになる。
仕事の基準はリアルタイムで改善するのがポイント。
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マニュアルの話しの他に、松井氏の経営理念が随所に書かれている。
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優秀な人材は簡単に集まってくるものではない。
無印良品では、「人材委員会」「人材育成委員会」という二つの機関をつくっている。
人材委員会は異動や配置を検討し、人材育成委員会は研修などを計画する。
人材は適材適所で育つ。
人材育成はそれぞれの組織に合った方法があるが、いずれにしても重要なのは「組織の理念や仕組みを身体にしみ込ませた人材」を育てること。
一般的な「出来る社員」を育てても、自社に貢献するわけではない。

人は一度の失敗からは学ばない。二度失敗してようやく学ぶもの。
一度失敗して改善されなかった場合、多くの場合はそこで直らないものなのだとあきらめるのかもしれない。けれど、二度失敗して初めて問題の深刻さに気づき、原因が何なのかを探れる姿勢になれる。

社内のITシステム構築時は「7割できていればよし」。後は使いながら機能を変更したり追加したりする。 特にITの分野は変化が激しいので、開発に数ヶ月かかっていたら、その間に求めれる機能が違ってしまう。走りながら考えないと間に合わない。

行き過ぎたホウ・レン・ソウは、人の成長の芽を摘んでしまう行為。

あせらず、くさらず、おごらず

莫煩悩・・鎌倉時代の幕府の執権 北条時宗は、モンゴル帝国に侵攻される元寇に悩まされていた。二度目の元寇の前、建長寺を訪ねて無学祖元に教えを請うた時、祖元は「莫煩悩」と書いて時宗に渡した。
煩悩するなかれ。迷わず、悩まず、ただ一心に目の前のことに取り組めという教え。
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マニュアルというものもちゃんとした理念をもって継続的に活用することで血の通ったものとなり、ひいてはブランド構築にも繋がっていくという事実(無印良品はそれを実践しブランド構築を行えている!)が新鮮であった。






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