2013年9月17日火曜日

『戦略を、実行できる組織、実行できない組織。』

今自分が仕事で非常に悩んでいる内容について、示唆に富む内容を与えてくれた素晴らしい本。

実行の4つの規律(4Dx)4Disciplines of eXecutionを実践することで、戦略を実行に移すことが出来るというものだ。





ミッション
  ↓
ビジョン
  ↓
戦略(サイン型、行動変化 、竜巻)
  ↓
総合的な戦い(WIG)
  ↓
 局地戦
チームレベル

リーダーがチームや組織を大きく前進させるためにとるイニシアチブは、大きく2つに分けられる。
ひとつは承認してサインすればすむ戦略(サイン型戦略)。
もうひとつは、行動の変化を求める戦略(行動変革型戦略)である。

面白いのは「竜巻」という概念。
実行を邪魔する本当の敵は、日常業務である。これを「竜巻」と名付ける。
竜巻と戦略目標は全く別物である。それどころか、時間、資源、労力、注意を奪い合い敵対関係にある。

サイン型戦略はリーダーの決断があれば実行することができる。
4Dxは竜巻に巻き込まれながら、行動変革型戦略をいかに実行するのかの方法論である。


実行の4つの規律(4Dx)4Disciplines of eXecutionについて具体的に述べる。

第1の規律:最重要目標にフォーカスする
チームがより多くのことを達成するために、リーダーはより少ないことにフォーカスする必要がある。
これを最重要目標(Wildly Important Goal:WIG)と名付けて、何よりも重要な目標であることをチームにはっきりと示す。

最重要目標を決める時の問いかけは、「何が最も重要か?」(「最も重要な優先課題は何か?」)ではない。
最初に問うべきは、「他のすべての業務が現在の水準を維持するとして、変化することで最大のインパクトを与えられる一つの分野は何か?」である。
一つか二つの最重要目標を決めてしまったら、チームがそれ以外のことをないがしろにするのではないかと心配したくなるかもしれない。しかしチームの労力の80%は竜巻を維持することに使えるのだから、そんな心配が無用だ。


第2の規律:先行指標に基づいて行動する
目標に到達したいなら、インパクトの強い活動を特定し、それを実行する必要がある。
どのような戦略を推進するのであれ、その進捗と成功は、二種類の指標で測られる。
遅行指標と先行指標である。
遅行指標とは、最重要目標を追跡する測定基準。売上高、利益、マーケットシェア、顧客満足度は全て遅行指標。これらの指標のデータを手にした時には、そのデータをたたき出した活動は全て過去のものとなっている。
先行指標は、基本的に遅行指標を成功に導く新たな活動を測定する。
適切な先行指標には2つの基本的な特徴がある。目標達成を予測できること、そしてチームのメンバーが影響を及ぼせること。


第3の規律:行動を促すスコアボードをつける
第3の規律は、意欲的に取り組むための規律。
リーダーはコーチ用の複雑なスコアボードを好むものだが、選手専用のスコアボードはシンプルでなければならない。

「選手のスコアボードの根本的な目的は、選手に勝ちたい気持ちを起こさせること」
スコアをつけなけば練習だけで終わる。


第4の規律:アカウンタビリティのリズムを生み出す 第4の規律で戦略実行を現実のものにする。 第4の規律はアカウンタビリティ(報告責任)の原則に基づいている。お互い報告する責任を負い、その責任を一貫して果たさなければ、目標は竜巻に吹き飛ばされてしまう。
アカウンタビリティのリズムとは、最重要目標に取り組むチームが、定期的かつ頻繁にミーティングをもつことを意味する。
ミーティングは少なくとも週1回、長くても20〜30分程度が理想。
チームのメンバーはお互いにリズムよく定期的に報告しあえなくてはならない。毎週、「スコアボードに最大のインパクトを与えるために、竜巻の外で来週できる一つか二つの重要なことは何か」という簡潔明瞭な質問に一人ひとり答える。 前週の約束を果たしたかどうか、スコアボード上で先行指標と遅行指標はどう動いたか、来週は何をするのかを、メンバー一人ひとりが数分以内にまとめて報告する。
第4の規律の秘訣は、定期的なリズムを維持すること、そしてそれぞれのメンバーが自ら約束をすること。


すなわち、実行の原則は、フォーカス、レバレッジ、エンゲージメント、アカウンタビリティの4つである。


<プロセス指向の先行指標に関する注意事項>
◎WIGが何かのプロセスに関係しているのであれば、仕事をプロセスのステップに分けてみることは効果的である。
プロセスのどこかに必ず、テコの作用点がある。パフォーマンスが伸び悩んでいるステップだ。そこを先行指標にすれば、チームはそのテコの作用点に力を集中的にかけることができる。
☞これはエリヤフ・ゴールドラット氏の制約理論(Theory of Constrraints)におけるボトルネックを先行指標とするということと同じ考え方。

◎プロジェクトのマイルストーンは適切な先行指標か?
WIGが一つのプロジェクトなら、プロジェクトのマイルストーンも効果的な先行指標になるが、マイルストーンが6週間未満の細切れ短期間のものだと、一般的には先行指標として十分に機能しにくい。
☞プロジェクト型の場合もボトルネックとなるプロセスを先行指標として設定することで全体のプロジェクトの進捗をコントロールできることになる。これはプロジェクトのスケジュール管理を行うにあたって、一番ネックになる行程を常に監視しつづけることで、全体スケジュールを管理するという考え方であり、自分もマンションの工程管理では活用させていただいた考え方だ。


理屈上では非の打ち所のないこの方法も、実際ではWIGの設定の仕方は仮説に基づく”賭け”である。著者達はそれを素直に認めている。
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組織全体の最上位WIGを選ぶのは、一足の靴を買う時と似ていなくもない。履いて少し歩いてみなければ、自分の足にしっくりするかどうかはわからない。
だから、WIGの決定をチームに急がせてはならない。しっくりなじむWIGを選び、各チームのリーダーに少し試させてみる。
そうしてはじめて、各チームは組織のWIGの達成に貢献できるチームWIGを検討できる
組織全体に試してみて、どこかぎくしゃくしていると感じたら、その時は別のWIGを選べばいい。
最上位のWIGは組織として真剣に取り組む最重要目標であるから、経営陣としてもただ一つに決めることには少なからず躊躇するものである。多くの組織が本当のフォーカスを決められない理由はここにある。WIGを選んだ後でも再考できる自由があれば、チームは心置きなくこのステップに取り組めるだろう。
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やはり、ここまで方法論が確立していても最後のところは「やってみなはれ」の精神なのだ。


そして、最後に関心したのが、実際に企業にこのプロセスを定着させるやり方だ。
フランクリン・コヴィー社では、コンサルタントが4Dxを教えながら組織全体で立ち上げる方法はとらず、リーダーが自分のチームに4Dxを導入できるようにコンセプトを教え、認定するプロセスに重点を置くことにした。(リーダー認定)
・後で自分が教えなければならないことを学ぶとなると、誰でも真剣に学ぶものである。実際、何かを学ぶのに最も効果的な方法は他人に教えることだ。
・誰でも何かを教える時は、自然とそれを推奨している。
・4Dxの推奨者となってリーダーは、自分自身がその手本になろうとする。4Dxを信じていないリーダーは、たとえ4Dxを導入しても、4Dxに反する行動をとり、実行に一貫性を欠く。
・リーダーはチームのメンバーから信頼されているから、チームは本気で4Dxに取り組む。4Dxが本物のプロセスなのかどうかを判断するとき、チームのメンバーはまず、リーダーを注視する。リーダーが4Dxを教え、推奨し、立ち上げるのであれば、メンバーは4Dxを信じるのだ。

受講者を集めて講義をするのではなく、講師を養成するための講義を行うという発想は前田出氏の「新家元制度」にも通じる考え方だ。

日常業務を「竜巻」ととらえる概念。遅行指標ではなく先行指標に着目し、その指標を日々管理し続けるという方法論は非常に参考になった。

実際の業務にどこまで落とし込めるか、後は実践あるのみ。






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