2013年9月28日土曜日

『100円のコーラを1000円で売る方法3』

人気シリーズの第3弾。
シリーズ1作目は「顧客中心主義への回帰」をテーマにマーケティングのエッセンスについて、シリーズ第2作目は「成功体験からの脱却」をテーマに、競争戦略や仮説思考・論点思考について、そしてこの第3作目では「イノベーションとリスクへの挑戦」をテーマに、グローバル化、デジタルマーケティング、企業のM&Aについて述べられている。

相変わらず、ビジネスエッセンスを物語として表現しているので非常にとっつき易い。

著者の永井孝尚氏が登場人物に言わせている日本市場観が面白い。
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すべての市場は特殊。日本の市場も、そのような特殊な市場の中の一つに過ぎない。
日本市場が特殊な点は、ユーザーの要求レベルがおそらく世界で一番高いということ。日本のユーザーは妥協しない。その要求に個別に答えようとすると企業は高コスト体質にならざるを得ない。
また、日本向けにカスタマイズされすぎてグローバル展開できない
こうした市場の特殊性に対応するには、
①企業はユーザーの高い欲求に、個別にカスタマイズせずに標準品で対応して世界展開すること。
②意思決定のスピードを速めること。
が肝要。
国内市場の縮小が確実な今、グローバル市場で勝負しない日本企業には緩慢な死が待っているだけ。

ネット社会に入って、世の中の動きは加速する一方。昔はヒト・モノ・カネが経営資源だった。情報社会になってそれに情報が加わった。さらにネット社会になって「時間」が5つ目の貴重な経営資源になっている。しかし、あまりにも多くのマネジメント層がこのことに気がついていない。 間違っていてもいいからすぐに意思決定をして実行し、本当に間違えたらすぐに修正すればいい。

ネット社会になって、あらゆる情報が瞬時に伝わるようになって、生産するのは必ずしも「現地」でなくてもよくなった。
もう一つは、自由化の流れ。モノの移動に制限がなくなり、金融が自由化された結果、企業は「最も安いところで調達し、最も安いところで生産したモノを、全世界に向けて売る」ことができるようになり、世界全体でサプライチェーンを最適化することが可能になった。

AppleもAmazonも実態は、製品とサービスが一体化した、『サービス製造業』。そのプラットフォームを世界全体で統一している。 つまり、ハード本体はノー・カスタマイズで、サービスと一体化した世界共通仕様の単一製品を世界に供給している。
我々に必要なのは、ローカライズしなくてもすむような製品力をつけること。
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世の中の流れと日本市場を非常に分かりやすく示していると思う。


『イノベーションのジレンマ』においてクレイトン・クリステンセンが、大企業ほど自らの商品・サービスを乗り越えるものを作り出すこと(自己否定)が出来ずに、新たに現れた競合に飲み込まれているとしているが、その自己否定を行ってきた模範の企業として著者はAppleを挙げている。
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1970年代にパーソナルコンピューターを生み出した。
2000年まではiMacに代表されるパソコン事業が中心。
2001年に音楽プレイヤーのiPodを発表。iTunesという革新な仕組みと組み合わせで瞬く間にヒット商品へ。
2007年にiPhone発売。スマートフォンという新しい市場を生み出す。iPhoneは音楽プレイヤーとしても使えたので、iPodの売れ行きは鈍る。
2010年にiPad 発売。タブレット市場が立ち上がり、パソコン市場を食い始める。
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こうしてみるとAppleは、自社が生み出したイノベーションを、自ら乗り越えてきている。だからスティーブ・ジョブズは神様と言われるのだろう。


他にも色々なビジネスモデルエッセンスが物語で学べて面白い。
BATNA(Best Altenative To Non-Agreement)『交渉が成立しなかった場合の次善策』という概念は知らなかった。
交渉は強いBATNAを持っている方が勝つということ。

シリーズものでボリュームも出てきたので、映画化とかされて研修に使われるようになるかもしれないと思った。







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