2018年4月22日日曜日

第9回子供学カフェ

同志社女子大 教育学の上田信行先生が、建築家の小堀哲夫さんと一緒に講演会をやるというので行ってきた。


講演会といっても、トーク、アクト、リフレクトの三部の構成。
一方的な講演会ではないあたりが上田先生っぽい。

<トーク>

まずは上田先生のトークということで始まる。
実は用意していたスライドのファイルが消えてしまったという大ハプニングがあったのだが、焦りながらも(とおっしゃりながらも余裕に見えたが)必要なスライドを出しながら、まさにトークでカバー。
上田先生が50年近くも前から携わっているセサミストリートのformative researchについてお話を聞く。

その頃はまだ「TVで教育?」てな感じで、映像による教育は「視聴覚教育」が認知され始めたくらいだったとのこと。
その時代の教育番組の評価・分析は「番組を見た後にどれだけ成果(子どもの学力の伸び)があったか」をいうことを確認する調査だったのだが、セサミストリートでやっていたのは、プログラムそのものを評価したという点が新しかった。
プロダクションはもちろん、コンテンツ、そしてリサーチの専門家が集まり、三位一体となって番組を作り上げていった。
具体的には7.5秒ずつ区切って、子供の"attention"を評価基準にして、プログラム(コンテンツ)を評価した。
(この7.5秒というのは、昔あったカルーセルという機械の映写のタイミングが7.5秒おきだったことによるらしい)
そしてそのコンテンツを『マガジンフォーマット』(要は雑誌を作るのと同じように、色々なテーマを組み合わせていく手法)で、様々なコンテンツを編集することで番組を作っていった。

その頃のアメリカは貧困が学力低下を呼び、その低学力がまた貧困を呼ぶという負のスパイラルに入っていて、テレビ(しかも白黒)というものを使って、小学校に上がる前にいかに子供達の学力の底上げを図るかということが社会の大きな課題であった。
そのためには、(視聴覚教育コンテンツのように見てもらえる前提で番組を作るのではなく)まず子供達に興味を持って見てもらうためにはどうしたら良いのか、というところから入っていく必要があったのだという。

<アクト>

その次にアクトということで、チームに分かれてレゴを使ったタワーチャレンジ。
その前に、二人組で ”I'm on you!!” と叫び合ったり、手を叩いた後、「クリス、クロス、ハッ!!」と謎の掛け声で気合を入れたりするパフォーマンスを全員でやってアイスブレイク。
いい歳とった人たちが上田先生の”指導”のもと、ノリノリでパフォームしているのは端で見たらきっと狂信的な新興宗教のようであったろう。

続いてタワーチャレンジ本番。
まずはチームで何の事前相談もなく、積み上げる。
どのチームもせいぜい人の背の高さくらいまで。それでもチームごとにはちょっとずつ工夫が見られる。
上田先生はそれらを見ながら、「もっと天井まで目指してくださいね〜」なんて言っている。
次は、チームで戦略を練って、役割分担をする時間を取って行う。
上田先生はまた「土台をしっかりするのと、上に積み上げるのと、相反するものをどうバランスさせるか、その辺もポイントです。よく話しあってくださいね〜」
などといって再チャレンジ。
すると今回はなんと天井まで届くチームが出た!

このチャレンジ、ミハイ・チクセントミハイの”フロー”の状態を実感するのには非常にいいプログラムだと思っていたが、戦略の共有(チームで協働する)とビジョンの共有(天井まで届かせる)ということの重要性にも気がつくプログラムである。

その後の理論編の話によると、このタワーチャレンジはレゴでやることに意義があって、このタワー、必ずどこかで何回も倒れる。
その際にも、落ち込んでいる時間はなく、すぐに倒れたタワーを修復し始め上を目指す。
この行為は"resilience"を学ぶことにもつながるのだそうだ。

天井まで届いたレゴタワー!
戦略の共有と、天井まで届かせようというビジョンの力。


その後小堀哲夫先生の学びの環境に関する講義があった。
「空間、道具、人、活動」のデザインが重要という話を聞きつつ、柏の葉のプロジェクトを懐かしく思い出した。
小堀先生は梅光学院大学のユニークな建物を設計、建築中とのこと。
・廊下のない校舎
・個室のない校舎
・シラバスと空間の関係について、関係者を集めてワークショップを行いながら設計
など、ユニークな手法での設計を行ったとのこと。
空間とその中で行われる活動について、行ったり来たりして設計していく手法を”Tinkering"と述べておられた。

上田先生とのやりとりでは、上田先生は上記のうち「空間」が非常に重要だとおっしゃるのに対し、小堀先生は「人」(上田先生のような”変態”が重要、という言い方でもあったが(笑い))が重要だという意見。
お互いにないものを重要だと思っているという点が面白い。

学びには「ワクワクとドキドキが両方(両立)が必要」とのこと。
本来、ドキドキ(risky:不安と恐怖)とワクワク(playful:期待と喜び)は相反するものだが、どちらかだけでは”学び”につながらない、ということをおっしゃっていた。
その際、自分は設計者で、ちゃんとした建物を色々な事業の制約の中で建てなければならないので不安やプレッシャーがある。その不安の中でワクワクすることで学びにつながっていく、という内容を話をしていて、事業をする身としては非常に共感を覚えた。
上田先生がよく
「playfulは真剣でなければならない」「engagementが必要」
とおっしゃるのは、その不安、恐怖、制約の中で真剣に関わり、楽しむことを両立させる、ということなのだと理解している。

また小堀先生がおっしゃっていて面白かったのは、
「今は”時短”が叫ばれているが、本来はcreativityを上げるため、speed up のための時短時間の制約が生まれることで、よりcriativeになる。そこが勘違いされていて、ただ時間が短ければ良い、という風に間違って解釈されている」
という話をされていたのが印象的だった。

これにかぶせて上田先生が「criation していなければ creative ではない」
とおっしゃっていて、これがMITの「demonstrate or die」の発想につながるのだと思った。


梅光学院大学の校舎の模型を見ながら説明する小堀先生
来年3月には竣工予定らしい。


最後の振り返りの部分も上田先生の話が多かったが、もっと話を聞きたかった位だったので非常に勉強になった。

キャロル・ドゥエックの”The Spirit of Yet"の話が面白かった。
今、mindsetの話が話題となることが多いが、これはコンピューターでいうとOSの部分、人が行動するにあたり基本となる姿勢(attitude)のこと。
”The Spirit of Yet"では、できない(can not)のではなく、まだできていない(not yet)ということで、「できない」という思考停止となるような発想に立たない、ということ。
まだできていない、だったらどうしていけばいいのか、という発想につながる。
"playful"というのはこの"attitude"なんです、という上田先生。

自らのポートレイトをジョン・レノンと重ねて"yet"という姿は、刺激に満ちている。
相変わらず、登場して話をするだけで場の雰囲気を一変させるパワーをお持ちだった。


2018年4月15日日曜日

『やる気があふれて、止まらない。』

外資生保営業で、カリスマ支店長として実績を残した早川勝氏の著書。
自らの経験とともに著名人の名言を盛り込みながら、モチベーション高く仕事をしていく考え方について書かれている。

面白いと思った視点や、仕掛けについていくつかピックアップ。




<「頑張ります」>

「がんばる」というのは一見前向きに見えるが、実は得てして「自己陶酔型の頑張り屋」になりがち。
怠け者ほど心地よいと感じる「頑張る」という偽ポジティブワードは、「言い逃れ」「自己満足」「正当化」などの温床となりかねない。
「いついつまでに◯◯します」という具体的な行動目標に変え、実行することが必要。

<感謝と貢献の瞑想>

寝る前の、バラ色マインドコントロール。
寝る前に瞑想のように、自分の大切なひと、好きな人、尊敬する人の顔を一人一人想像する。 無条件で、心地よくなる人の笑顔を思い浮かべる。

<ミラー・アファメーション>

「やる気のアファメーション」として、「私はとことん運がいい」「私はやっぱり超ついている」「私は世界一の幸せ者だ」というメッセージを 鏡の中の自分自身へ語りかける。
そもそも運や幸福感などというものは、自分の能力とは直接関係がない。だから潜在意識からの拒絶が起きにくい。
この「ミラー・アファメーション」を習慣化する。
これには二人称版もあり、少々照れるが「やる気」アップの効果は絶大。

<「メンバーの好きなところ100」>

一人につき100個ずつ、長所や強み、好ましく感じている点、嬉しかったことなどを一つ一つ思い浮かべながら、ベスト100を作る。
ベスト100なので、メンバーとの信頼関係に亀裂が入ってしまったりした時にも、インパクトとサプライズ効果があり、お互いの固い絆を一瞬で回復してくれる。
好きなところベスト100を見つけ出すために、四六時中メンバーの一挙手一投足を集中して観察しなければならないというトレーニングにもつながる。
人間の長所と短所は紙一重なので、100個も褒める最大の効果は、人の欠点も愛せるようになるということ。

<「感謝の100秒スピーチ」>

毎朝、最近起こった嬉しいエピソードや朗報を50秒、今日起きて欲しい願望を50秒で、朝礼で語らせる。
当たり前の日常の中にある幸福や、不幸な出来事の中にある教訓を、ポジティブな解釈ですくい上げ、感謝のスピーチに変えるためのトレーニング。
当てるのは部門長の自分なので、誰が当たるかわからない。全員が毎朝「いいこと」を考え、スピーチを行う心の準備をしておかなければならないという効果がある。

<成功できないタイプ、成功できるタイプ>

成功できないタイプは、「ネガティブな頑固者」。
成功できるタイプは、「素直(=ポジティブ)な情熱家」


いろんな名言が紹介されているのだが、その中でも素敵で、今まで知らなかった名言をいくつか。
『ひとりで見る夢は夢でしかない。しかし、誰かと見る夢は現実だ』
  オノ・ヨーコ

『永遠の命と思って夢を持ち、今日限りの命と思って生きるんだ』
  ジェームズ・ディーン

『虹を見たければ、ちょっとやそっとの雨は我慢しなくちゃ』
  ドリー・パートン

『最高の贈り物が、綺麗な包装紙に包まれているとは限らない』
  H・ジャクソン・ブラウンJr.

『いつも太陽の光に顔を向けていれば、影を見ることはありません』
  ヘレン・ケラー

名言と一緒に提言されている各種の仕掛けは、「本当にやれるの?」という内容も多いが、有言実行で結果を出してきた著者はそれを実行したということだろう。
その事実だけでもすごいことで、それを考えると、本を読んでいるとそれだけでモチベーションが湧いてくる感じがする。

そう言えば、名言の中でも全てを包括するような名言を忘れていた。
そう全ては『これでいいのだ』(バカボンのパパ)



2018年4月9日月曜日

『結果を出すリーダーほど動かない』

行動分析学から導き出した「壁マネジメント」のノウハウ本。
ダイバーシティ化が進む中で、参考になるかと思い読んでみた。

「行動ルール」を設定し、指示するだけではダメで、その行動に介入することが必要。

「壁マネジメント」を運用する際に必要となる決め事
①「行動ルール」の設定
②行動ルールに対してもれなく介入する「介入ルール」の設定
③介入する際の「フィードバック方法」

<「行動ルール」の設定>

①「行動ルール」の設定については、能動的に行える行動をルールとして設定する。
ルールは「やろうと思えばできること」を設定する。目標とルール設定は異なる。

ルールを設定する際には、そのルールを
◯やろうと思えばできる行動群
◯やろうと思ってもできない行動群
の2つに分ける。

さらに「やろうと思えばできる行動群」を2つに分ける。
1つ目は、「知っていればできる行動」→「知るための行動のルール化」
2つ目は、「普段やっていない、慣れていない、いつものパターンと違うからやりたくない行動」。現状維持バイアスがかかるため、この内容をルールにしても習慣化するまではとても労力がかかる。→「習慣化が必要なルール化」

「やろうと思ってもできない行動群」も2つに分ける。
1つ目は、「スキルや技術がなければできない行動」→「スキル、技術を向上させる行動のルール化」
2つ目は、「時間がなければできない行動」→「時間を確保する行動のルール化」
まず行動ルールをやりきるために必要となる「時間」が確保できているかどうかを確認する。 時間の問題が発生している場合には、時間を確保するためのルールを検討する。


<「介入ルール」の設定>

成果を手に入れるために必要であれば、新しい行動のルールを設定し、現状維持バイアスによる反発があったとしても、行動をさせ続けることに身を置き続けさせない限り、部下の現状維持バイアスは外れない。

部下に設定した行動ルールを漏れなく介入するためには、3つの介入方法を合わせて複合的に介入を行う必要がある。
①リマインド型介入ルール
②アフター型介入ルール
③累積型介入ルール
累積型の介入は、行動できたのか、できなかったのか、データをつけておき、累積したデータを振り返って、設定した行動ルールについて漏れなく介入する。


<よく発生する3つのタイプ別フィードバック>

①あなたを上司として認めていないタイプ
同期や先輩が部下になるといったケース。その場合の改善として、あなた以外の人から「好子」「嫌子」を発生させるフィードバックをしてもらうことを視野に入れる。

②アラーム状態のタイプ 言われて初めて動くタイプの部下 「こちらからの確認でようやく動く」ことの繰り返しに慣れてしまっているため、叱っても「嫌子」が機能しない。
スケジュール帳や共有スケジュールを準備して、毎回「いつやるか、スケジュールに落とし込みながら打ち合わせしようか」と言って、期限までに行うスケジュールを事前に設定してしまうことがオススメ。また、介入リマインドの回数を増やすことも効果的。

③謝ることのプロフェッショナルタイプ いつも謙虚に「本当にすみませんでした」という言葉を繰り返して、その場を回避しているタイプ。 このようなタイプには「こんなことになるなら、初めからやっておけばよかった」と思える課題を与える。


<「行動ルール」を改善する時の3つの方法>

設定した行動をやり切らせても、経営上必要な成果につながっていない場合、設定した行動ルールを、より成果の出る行動へと変化させていく必要がある。これは苦戦する部分。
①行動ルールの量的改善。
②行動ルールのブラッシュアップ。
③行動ルールの追加

正直、どこまで高度な業務に通用するのか分からない部分もあるが、タイプ別のフィードバックで、場合によっては自分以外の人間からのフィードバックが有効であることもあるというのが面白く参考になった。



2018年4月8日日曜日

『シミュレーション思考』

グローバルマクロ戦略マネジャーの塚口直史氏の著作。

ストーリーに自分の時間とお金を投資すること。こうした行動につながる思考を「シミュレーション思考」と位置付ける。
「世界に対する好奇心」、地理と政治を結びつける「地政学」、私たちの経済生活の基盤をよく知るための「お金の歴史」の3つの柱こそ、シミュレーション思考に欠かせない。

ということで、著者の職業柄もあり、ちょっと金融的な発想が多い。

<「ドライバー」を見つける>

ファンドマネジャー同士のミーティングでよく出てくる言葉「ドライバー」。
「今のドライバーは?」というような形で使う。
「最も影響を与えているものを見つけ出す」そのポイントになるのがドライバー。
ドライバーを掴むためには、物事を全体でとらえる能力が必要。
生き馬の目を抜く世界のヘッジファンドマネジャーが最も大切にしている視点は、国内の企業の動向ではなく、通貨デリバティブ市場でドル需要がどう変化しているか、ということ。
というのも、国際投資を行うにあたっては、常にドル金利の推移を意識して運用を行っていく必要があるから。
情報収集においては、その目的を絞ること。そして情報収集には時間と労力をかけず、情報を集めた後の分析とドライバーを発見することが重要。
さらに情報分析に基づいて、少しでもいいのですぐに何らかの行動を起こすこと。
行動することで、気づきのチャンスにたくさん出会うことができる。また、人に意見を聞くことで、客観性を身につけることができる。

<最低5つのストーリーを描く>

まずは最低5つのストーリーを描くことを習慣にする。
できればその5つのストーリーは各々が影響し合わない、非相関なものが最良。
違ったなと思ったらすぐに別のストーリーに切り替えることができるようにしておく。投資の世界で言う「損切り」と言う行為。間違えてもすぐに立ち直ることができれば大きなダメージにはならない。常に正しい答えが出せるわけではない。正しさを求めるよりも常に立ち直るタフさの方が大切。
ストーリーに当たりも外れもある中で、説明責任を真剣に尽くし、次の一手を打ち続けること。その結果、一定のスパンではプラスのリターンを挙げることができる。

常に20%以上のリターンを出し続ける人の考え方の肝なのかもしれない。
常にプランBを持って、間違えてもすぐに立ち直るタフさにより、次の一手を打っていくということ。
5つも持つ必要があったり、それが非相関なものがいいというのは金融系ならではの発想。

<バブル経済の見極め>

バブル経済がいつ破裂するのかを探るために、注意深く見守っている市場は「海外絵画市場」。
バブル期にはいわゆる「名画買い」がほぼ必ずと言ってもいいほど起きている。


国家破綻ということが現実となったギリシャ危機、関東大震災後の金融がどうなったか、など歴史から学べ、ということと、「地政学」という歴史と地理と政治を掛け合わせたような学問から、自らストーリーを考えよう、という非常に知的な内容であった。
2016年に書かれているので、現在の北朝鮮問題など、ちょっと違う方向性を持ってきてたりもするが、そのズレがまた読んでいて面白い。

金融系の職業ではないが、楽しみながら世界的なストーリーを考えて、投資も行なっていければ。

2018年3月21日水曜日

『日本再興戦略』

今をときめく日本人科学者、落合陽一の著作。
若き天才から見ると、今後の世界はどうなっていくのか、歴史認識も含め、見えているものがちょっと違う点があって非常に面白かった。

<高度成長の正体>
結局、高度経済成長の正体とは、「均一な教育」「住宅ローン」「マスメディアによる消費者購買行動」の3点セットだった。
つまり、国民に均一な教育を与えた上で、住宅ローンによる家計のお金の自由を奪い、マスメディアによる世論操作を行い、新しい需要を喚起していくという戦略。


<平等と公平の概念>
平等とは、対象があってその下で、権利が一様ということ。何かの権利を一ヶ所に集めて、それを再分配することによって、全員に同じ権利がある状態を示す。
それに対して、公平はフェアだということ。システムの中にエラーがないことや、ズルや不正や優遇をしないということ。
日本人は公平については意識が高いけれど、権利が平等であることについてはあまり意識しない。
江戸時代から、お上の裁きは公平であってほしいと思う一方、士農工商については違和感なく取り入れている。日本人は同じ仕事をしたら、公平にお金を払うということには敏感だが、飲み会で男性が女性より多く払う。これは平等意識が低いから。

<人口減少、少子高齢化>
人口減少と少子高齢化は日本にとってチャンス。
理由その1。自由化、省人化に対する「打ち壊し運動(ラッダイト運動)」が起きないこと。
理由その2。人口減少・高齢化が早く進む分、高齢化社会に向けた新しい実験をやりやすい立場にある。もし日本が、人口減少と少子高齢化へのソリューションを生み出すことができれば、それは最強の輸出戦略になる。これは、インバウンドの人材誘致戦略としても力を発揮するであろう。
理由その3。教育投資が行われ易くなる。相対的に大人の数が多くなり、子供の数が少なくなる。すると「子供は少なくて貴重なのだから大切にしよう」ということになる。社会全体として子供への投資に対して不平が出にくくなる。

<ロボット/AI社会>
日本人はテクノロジー好き。日本人にとってテクノロジーはカラクリのようなもの。それは人の技能の最大到達点であって、それを崇めたいという思いがすごくある。だから日本はロボットフレンドリーな社会に変えやすい。
一方、(自分の印象として)、西洋人は人型ロボットに限らず、ロボットがあまり好きではない。西洋人にとって労働は神聖なものなので、それをロボットに任せることに抵抗がある。
AIについても似たことが言える。一神教支配の国にとっては、AIは人類の根幹、彼らの精神支柱に関わるようなものになる。西欧の国は統治者に人格性を強く求めるので、AIに対する反発は強いだろう。
(日本人は意思決定の上流がAIになっても、違和感なく受け入れるはず)

<ブロックチェーンと仮想通貨>
日本再興のカギを握るテクノロジーは、ブロックチェーン。
分散型の台帳技術と言われるが、あらゆるデータの移動歴を、信頼性のある形で保存し続けるためのテクノロジー。しかも、誰かが一元的に管理するのではなく、全員のデータに全員の信頼をつけて保っていくことができる、日中央集権的なテクノロジー。
これからの日本は全てをブロックチェーンにして、あらゆるものはトークンエコノミーであるという考え方にしていかなければならない。
トークンとは、仮想通貨とほぼ同義と考えてもらって構わない。

日本では「仮想通貨」という言葉で広がっているが、元々は「クリプトカレンシー」。本当は暗号通貨と訳す方が正確(ビットコインのハッシュはそもそも暗号ではない)
バーチャルカレンシーこと「仮想通貨」と訳したので、パスモなどの馴染みのある仮想通貨をイメージして日本人がブロックチェーンを受け入れやすい土壌を作れた。
トークンエコノミーということでいうと、TSUTAYAのTポイントもANAのマイレージも立派なトークン。日本人ほど、ポイントカードがたくさん財布に入っている国民は見たことがない。日本はすでにトークンエコノミー先進国なのだ。
トークンエコノミーとは、このポイントカード経済圏がさらに広がって、企業だけでなく、個人もポイント発行できるようになるイメージ。

欧州のエストニアは国自体を ICO(イニシャル・コイン・オファリング:証券会社の介在なく上場できる)した。
ICOすることで、地方自治体は攻めの投資を行うことができる。今の財政の仕組みは、まず産業振興等により税収を増やしてから次の投資を行う、後手でしか動けないモデル。
このやり方は国が成長している時には良かったが、今のような人口減少経済になると、財政を絞るばかりで攻めの一手を打つことができない。
この流れを逆流させるためにも、先行投資型にモデルを変えなくてはならない。その切り札になるのがトークンエコノミー。
トークンエコノミーが広がると、面白い開発が行われる自治体ほど、良いビジョンがある自治体ほどお金が集まる。独自性のある優れたビジョンと戦略と実行力がある自治体ほどお金が集まる。今のふるさと納税のアップデート版とも言える。

ブロックチェーンの本質は、非中央集権化であり、コードによるガバナンスであり、受益者負担。元締めとなるプラットフォームがなくても、ユーザー同士で情報を管理したり、取引ができたりする仕組み。これは日本の伝統的な価値観にも合っている。
トークンエコノミーの受益者負担、自給自足という考え方に自分は強く賛同している。
何故ならば、それがあれば、グローバルなプラットフォームによる搾取を防げるから。言い換えると、シリコンバレーと戦う最高の戦略になるから。

<デジタルネイチャー>
デジタルネイチャー とは、ユビキタスの後、ミックスドリアリティ(現実空間と仮想空間が融合する「複合現実」)を超えて、人、Bot、物質、バーチャルの区別がつかなくなる世界のこと。そして、計算機が偏在する世界において再解釈される「自然」に適合した世界観を含むもの。
「デジタルネイチャー」は、英語では「Super nature defined by computational resources」と説明することが多い。コンピューターによって定義されうる自然物と人工物の垣根を超えた超自然のことを意味している。
デジタルとアナログの空間をごちゃまぜにした時に現れうる本質であり、従来の自然状態のように放っておくとその状態になるようなコンピューター以後の人間から見た新しい自然。それは、質量のない世界にコードによって記述される新しい自然みたいなものとも言える。
それが質量や物質や人間と混ざり合って新しい自然を作る。
あらゆるものは情報の表現形態として今までになかったようなスピードで相転移する、というのが自分の考えているビジョン。
この相転移が前世紀にイノベーションと呼ばれていたものの本質だと思っている。

デジタルネイチャーの世界では、あらゆるものがパーソナライズされる。
2次元が3次元化されたり、運転が自動化されたり、必要な部品のほとんどがハードウェア側ではなくソフトウェア側に寄っていく。
日本はソフトウェアが全然得意ではないので、そこはあまり勝てないだろう。日本にとっての勝負所は、各ローカルの問題を解決するような若いベンチャー企業を日本中にバラまけるかどうか。

<ワークライフバランスからワークアズライフへ>
日本人には、「ワークライフバランス」よりも「ワークアズライフ」の方が向いている。
日本は歴史的にも、労働者の労働時間が長い国家。大和朝廷の時代にも下級役人は長時間労働をしている。1年のうち350日は働いて、そのうち120日が夜勤というような生活。一方、農民や上級役人などは、生活の中に労働を含む文化を持っている。それが過労でなかったのは、ストレスが少なく、生活の一部として働いていたから。
これは、時間やノルマの労働スタイルで過労すると心身が持たないことを示している一方で、生産性を上げきれない理由でもある。

ワークライフバランスからワークアズライフへ。
一番重要なのは、ストレスフルな仕事とストレスフルでない仕事をどうバランスするか。
この考え方に則ると、ストレスのかかる私生活(ライフ)をすることの方が、会社でストレスレスの長時間労働をするよりも問題になったりする。
近年、うつ病などが増えているのは、ワークライフバランスが声高に叫ばれる中、未だに会社がタイムマネジメントを中心に回っていて、ストレスマネジメントが全然できていないから。
ストレスマネジメントでオススメは筋トレ。筋トレはわかりやすいバイタルチェックになる。 筋トレを楽しくできるくらいのメンタルがあれば、それは病的なメンタル状態ではないと推測できる。また、体を動かし、適度な負荷をかけることは予防医学の観点からしても重要だし、心身にかかるストレス状態を把握するには、体の方が指標としてわかりやすい面がある。



◯高度経済成長期の概括について、「均一な教育」「マスメディアによる(均一な)消費者購買行動」というのに合わせて「住宅ローン」というのが意外でもあり、ちょっとピントがずれている気もするが面白い、自分にはなかった観点。

◯少子高齢化がチャンスであるという理由として「ラッダイト運動が起きづらい」「子供一人当たりの教育投資が増える」というのは面白い観点。アメリカでトランプ大統領が選出された事実を考えると「ラッダイト運動が起きづらい」というのは実はありがたいメリットなのかもしれないと気付かされた。

◯地方分権的な観点からも、VSカリフォルニアの観点からも、「ブロックチェーン」が肝となるテクノロジーであるという考え方は全くなかった。単に、今お騒がせのビットコイン系の基本技術であるという位の認識であったので、それについては認識を改めたい。

◯デジタルネイチャーの概念は抽象的すぎて良く分からなかったが、おそらく未来を見据える天才の中には感じられる未来があるのであろう。

◯ワークライフバランスについては(ネーミングはともかく)、タイムマネジメントではなくストレスマネジメントを行うべきだ、という主張については全くその通りだと思う。とはいえ、今までそのように認識したことはなく、目から鱗の発想であった。

2018年1月8日月曜日

『ペップトーク』

忙しくて、中々本のまとめができていない状況なんだけど、本は読んでいない訳ではなく、結構まとめなきゃいけない(まとめたい)本が山積みになっている中、年明けに購入して読んで思わず先にまとめを書きたいと思った本。
前向きな気持ちになれる、人を応援するための技術が身につく本。
著者の浦上大輔氏が元々理学療法士というのも、読んでみようと思ったきっかけかもしれない。


<モチベーションのメカニズム>

人のやる気に火がつくのにはメカニズムがある。
それは「自分には価値がある」と感じた時。
自分に価値を感じる時は大きく分けると2つある。
・承認欲求(人に認められたいという欲求)が満たされた時
・貢献欲求(人の役に立ちたいという欲求)が満たされた時

この2つを見て行く時に重要な観点がある。次の3つのステージがあるということ。
1.存在ステージ
2.行動ステージ
3.結果ステージ

各々のステージで承認、貢献を認める表現としては以下の通り。
<存在を承認する>
「あなたはあなたのままで素晴らしい」
「君の持っている力はすごい」
「あなたの夢は必ず叶う」
「君は可能性にあふれている」
「あなたと一緒に仕事をしたい」

<存在で貢献する>
「いてくれてありがとう」
「君の思いを聞いて感激した」

<行動を承認する>
「早起きだね」
「勉強、頑張っているね」
「いつも笑顔で挨拶してくれるよね」
「誰よりも早く会社に来て、仕事をしているよね」

<行動で貢献する>
「手伝ってくれて、助かるよ」
「席を譲ってくれて、ありがとう」
「笑顔で挨拶してくれるからとても気持ちいいよ」
「君が勉強を頑張っているから、みんなやる気になっているよ」
「社長がいつも率先してやっていただくのを見て、もっとチャレンジしようと思いました」

<結果を承認する>
「○○達成したね」
「頑張ったね」
「試験の結果すごいね」
「試合に勝ったね。おめでとう」

<結果で貢献する>
「君たちの勝利は多くの人たちに勇気を与えてくれた」
「あなたの大活躍を見て、みんなやる気になっているよ」
「君がそこまでできたんだから、僕もやってみようと思う」


<ペップトーク>

【ペップトークの5つのルール】

1.ポジティブな言葉を使う
2.短い言葉を使う
3.わかりやすい言葉を使う
4.相手が一番いってほしい言葉を使う
5.相手の心に火をつける本気の関わり

【ペップトークの4つのステップ】

1.受容(事実の受け入れ)
2.承認(とらえかた変換)
3.行動(してほしい変換)
4.激励(背中の一押し)

ステップ1.受容

受容の目的は、相手の感情や、置かれている状況をそのまま受け入れ、共感することで、相手の心のドアを開くこと。
この受容には2種類ある。相手のその時の感情や状況を相手の立場に立って(ポジションチェンジして)汲み取っていく。
1.相手の感情を受け入れる(感情受容)
2.相手の状況を受け入れる(状況受容)

「緊張しているんだね。わかるよ(共感)」
「不安になっているんだね。私もそうなったことがあるんだ(体験)」
「心配なんだよね。誰でもそうなるのは当たり前(当然)」

受容の二つ目のポイントは、「できていない部分を受け入れる」ということ。
この受容のステップでは、あえてネガティブな言葉を使うこともある。これは相手がネガティブな感情や状況にあり、特に安心感が必要な相手にとって必要な場合は、ネガティブにマッチングしてからポジティブにリーディングしていく必要があるから。

ステップ2.承認

第1ステップの受容で受け入れてマッチングした感情や状況を、ポジティブに捉え直していく。ポジティブに変換することで、相手の感情は一気にリソースフルになり、状況をポジティブにリーディングしていく。
承認とは、ステップ1の受容で「できていないこと」「ダメなところ」「不利な状況」「マイナスの部分があること」を受け入れてもらった上で、
「とはいえ、ここはできているよね」「ここはいいところ」「プラスの部分もある」とフォーカスを変えていくこと。

この重要な第2ステップ「承認」の仕方にも2種類ある。
1.逆転の発想承認(コインの裏表)
2.あるもの承認(パズルのピース)

コインを裏返す逆転の発想キーワードは「だからこそ」。
発想の逆転にも2つの方法がある。
①感情がネガティブな場合(アンリソースフル)は「〜の証拠」で裏返す
②状況がうまく言っていない場合(ピンチ)は「〜のチャンス」で裏返す

すでにあるピースに目を向けるためのキーワードは「とはいえ」。
アンリソースフルな心の状態になったり、うまくいかない状況になったりすると、我々はついつい、無いもの、できていないことに注目しがち。
こういう時は、ないものは無いで受け入れつつ、そこにフォーカスするのをやめて、あるもの、を探していく。

ステップ3.行動

行動とは、ポジティブにしてほしいことを明確に伝えること。
言葉は、相手の脳の中にイメージを呼び起こし、呼び起こされたイメージを相手は無意識に実現しようとする。

アクションを伝える方法は2つある。
1.ネガポジ変換(ポジティブなワードを使うこと。イメージの世界では脳は肯定系と否定形を区別できない。)
2.アクション変換(イメージしてほしいのは「結果より行動」。コントロールできる行動(アクション)の指示をするということ)
でも、行動の指示と結果の指示を一緒に使うと効果抜群。

ステップ4.激励

最後にもう一度、奮い立たせ、心に火をつける言葉、最後に背中をポンと押して送り出す言葉を投げかける。
激励にも2つのパターンがある
1.激励系の言葉で気合を与える
2.見守り系の言葉で安心感を与える


受容の言葉を磨いていくと、あなたは相手に「寄り添う人」になる。
承認の言葉を磨いていくと、あなたは相手に「気づかせる人」になる。
行動の言葉を磨いていくと、あなたは相手を「未来に導く人」になる。
激励の言葉を磨いていくと、あなたは相手を「勇気づける人」になる。

<ペップトークと心の状態>

受容で、現在の感情や状況の事実を受け入れる(心の状態は下がる)

承認で、受け入れた事実をポジティブにとらえ直す(心の状態が上がる)

行動で、実際の行動をイメージする(心の壁を越える)

激励で、背中を押されリソースフルになる(実力が発揮できる)

ペップトークは何を言うかだけでなく、誰が言うかも大事。
ペップトークをするには、相手との信頼関係が必要。
相手の心の状態に合わせて声をかける必要がある。

<相手の心の状態とスイッチ>

相手の心の状態によって必要なスイッチは大まか3つ。
1.できる感スイッチ
 「あなたならできる」という力を認め、自信をつけてくれる言葉
2.ワクワク感スイッチ
 「ねばならない」という閉塞感、「成功させねばならない」というプレッシャーで自由を奪われている時、その枠を取っ払い、自由で楽しく力を発揮できる心の状態を作る
3.安心感スイッチ
 やる気を出して頑張ろうにもエネルギーが枯渇している時、まずは一旦下向きのエネルギーを受け入れ、一緒に下がっていく必要がある。一緒に下がることでクッションで受け止められ、上向きのエネルギーに変えていくきっかけとなる。


受け取る力が相手のやる気を引き起こす 「素敵ですね」 と言われた時に、ついつい
「いえいえ、そんなことは・・」と謙遜してしまうが、
実は代わりに、「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいです」というのが良いという。
その言葉によってい「相手の貢献欲求」も満たされるというのだ。
「あなたの受け取る力」は、相手のやる気にも火をつけるというのは刺さった。

いけてない表現を「プッペトーク」と名付けることで職場の雰囲気が変わる話は参考になったし、歴史に残るペップトークも色々載っていて非常に参考になった。
337調子のセルフペップトークというのも積極的にやってみよう。

2018年1月2日火曜日

今年の抱負

昨年の抱負は「貫」としていたが、果たして貫き続けることができたか。
昨年卜をしてもらったところ、「水雷屯(すいらいちゅ ん)」という卦が続けて出て、これは「生みの苦しみに耐え忍ぶ時」という、現状としては正直あまりよくない卦のようだ。
「早春に厚く積もった雪(水)の下から若芽(雷)が必死に出ようとしているが、雪の重圧にさえぎられて立ち往生している姿」
ということで、まさに昨年の状況を表していた感じだ。
貫くことを目指すも、厚い岩盤に抑え込まれてもがき続けた1年であったように思う。

今年も貫くことを諦めた訳ではないので、「生みの苦しみに耐え忍ぶ時」であればそれを甘んじて受け入れ耐え忍ぼうということで、今年の抱負は

「忍」

としたい。

これにあやかって忍者の研究でも始めようかな。