2010年1月10日日曜日

『マッキンゼー式 最強の成長戦略』

市場水準を上回るパフォーマンスをしている企業は、「成長」か「退出」のどちらかの道を進むことになる可能性が高い。
成長には二つの道がある。一つは、収益の安定を伴う高成長。もうひとつは、収益の上昇を伴う中成長である。
退出には二つの道がある。一つは、株主への高水準のキャッシュ還元を続ける低成長。もう一つは、魅力的な買収を受けること。
中間の道はほとんど存在しない。。

企業にとって、市場の中では”UP or OUT”の選択しかなく、その中間は存在しないということを示しつつ、そのためには適正な”グラニュラリティー(粒度)”において集中戦略を練る必要がある、ということが書いてある本。

成長を3つの構成部分(「3つのシリンダー」と呼ばれている)に分解すると、ポートフォリオ・モメンタム(46%)、M&A(33%)、シェア獲得(21%)に大別することができる。(( )は各々の寄与度)

それを長期成長戦略を見据えた3つのホライゾン(中核事業の拡大と維持、新規事業の構築、有力なオプションの創出)各々のタイミングで適正なグラニュラリティーにより資産を集中投下するというもの。

この際の考え方に「5/95」ルールというのがあって面白かった。
成長の方向性をマッピングする際の一般的原則としては、自社のシェアが5%を超えない形で市場を広く定義するというもの。
(ジレットが60%の市場シェアをもつ男性用カミソリメーカーから一気に飛躍して、自社事業をパーソナルユース/パーソナルケア製品と再定義したときの市場シェアも5%だった)
そして残りの95%の部分について、グラニュラリティーのG4レベル(サブインダストリー内のカテゴリー)で評価する。
そこで、会社の能力が現時点で既に強剛他社への優位性を確率している成長ポケット〜最も高いモメンタム成長率が見込まれる部分〜に焦点を合わせ資本を投下していくというもの。
このような新規事業進出にあたっては、優位性が近接性に勝るというのも、なるほどという感じであった。

もうひとつの大きな考え方として「成長のアーキテクチャー」というのが紹介されているのだが、4つのフレームの名前が①成長の方向性、②スケール・プラットフォーム、③グラニュラーな青写真④グラニュラーな戦略、となっていて今ひとつわかりづらい。

戦略(左脳型)⇔組織(右脳型)
スケール(トップダウン型)⇔グラニュラー(ボトムアップ型)

という2軸クロスの4つのフレームと割り切って
①成長の方向性(戦略/スケール)
②スケール・プラットフォーム(組織/スケール)
③グラニュラーな青写真(組織/グラニュラー)
④グラニュラーな戦略(戦略/グラニュラー)
と整理した方がわかりやすい気がした。

スケールとグラニュラリティーは対立概念ではなく、スケールがグラニュラリティーを可能にし、グラニュラリティーは必ずしもスケールを排除しない、としているのだが、現実的には非常に対立しやすい概念である。
言うは易しだが、行うのは非常に難しい。(この点については著者も認めていて、トップの覚悟が必要だとしている)

「各企業には適正な売上規模があり、それ以上のことを望むとおかしくなる」という論説を以前、高塚武氏が書いていて、「なるほどこういう考え方をもつトップもいるのか」と思ったが、高塚氏はその後女性への強制わいせつ容疑で捕まってしまった。
やっぱり市場においては金銭的利益によるUP or OUTなのだろうか。
新たな資本主義を模索したい気になる今日この頃である。

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