2010年6月6日日曜日

『わが「軍師」論』

佐々淳行氏。あさま山荘事件の現場指揮者として名を馳せた、危機管理の第一人者である。佐々氏の著作は大好きでよく読む。

今回は「軍師」すなわち”組織のNO2論”である。

秘書役(secretariat)は秘書(secretary)とは異なる。
秘書役(すなわち軍師たるもの)は、戦略・戦術に長け、知力体力抜群で、社会的に影響力を持ち、「逆命利君」をも行いうる全人格的力量が要求される。そして、秘書役にとって最も大事な資質は、「人脈」だ。「何が出来るか」だけではなくて、「何が出来る誰を知っているか」の方が百倍も大切、とある。
佐々氏曰く、自らが知りうる最高の軍師は後藤田正晴氏だそうだ。

既に日本に定着しつつある言葉「コンプライアンス」。通常「法令遵守」と訳されているが、佐々氏の定義は違う。
コンプライアンスの真の意味は『応諾』という意味であり、あらゆる不平・不満・苦情・謝罪要求・取り消し・損害賠償・辞任など悪意を持った攻撃からの「組織防衛」、「人身攻撃からの個人防衛」を行う、すなわち敏速適確に対応し、被害を最小限に食い止める着地点を探すという意味なのだそうだ。

強い組織を作るためには「泣いて馬謖を斬る」必要も出てくるし、「腐ったリンゴは樽から出せ」を実践する必要もでてくる。
場合によっては「トカゲの尻尾切り」も必要となる場面がでてくる。
トップのため、ひいては組織のためにその非情なる決断をトップの意向に逆らってでも行う(逆名利君)のが「軍師」たるものの役割であると佐々氏は説く。

禅僧 雲門文偃(うんもんぶんえん)の偈(げ)として『我ニ大力量アリ 風吹カバ即チ倒ル』というのが紹介されている。
本当に力のある強い人は、些細な咎めだてに対してはアッサリと謝ってしまう。
いざという時にはトップに謝罪させる、これもNO2たる「軍師」の役割なのだそうだ。

骨を折る割にその苦労は報われない。「軍師」には「匿名への情熱」(Passion of anonymity)という男の美学が要求される。

「負け残り」も同様に、苦労多き割に報われないことが多いが、佐々氏は「負け戦」の時の心構えを以下の通り述べている。
<負け戦の「退(の)き陣」の心得は、関ヶ原合戦における島津義弘入道のとった「正面突破」である。
「責任と犬と新聞記者は似たところがある。いずれも逃げると追いかけてくる。」>


今時聞かれなくなった男の美学を聞く(読む)のは清々しい気持ちになって、明日への活力につながってくる。

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