2010年6月19日土曜日

『「私はうつ」と言いたがる人たち』

仕事を休んでリハビリがてらに海外旅行や転職活動に励む「うつ病セレブ」とその穴埋めで必死に働き続けて心の病になった「うつ病難民」。
実際に原因がみつからず思い症状で苦しむうつ病患者がいる一方で、不本意な状況を自分で納得しまわりに理解させるためのストーリーとしての「擬態うつ病」の増加がある。
その事実を確認しつつ、意外と知っているようで知らない「うつ病」の実態を、精神科医としての視点からも書いた香山リカ女史の本。

大うつ病、双極Ⅱ型(躁鬱病の一種と考えられる)、うつ病になりたがる人達をどう見分けるのかを考えると、その見極めは非常に困難。その他にも近い症状を伴うパーソナリティ障害、双極性障害Ⅱ型、適応障害、気分変調性障害などについては正確な判別は難しいのだそうだ。
その人がうつ病であるかどうかの決め手は、エネルギー水準が客観的かつ慢性的にかなりの程度で低下しているかどうかにある、というのが香山女史の意見なのだが、そうすると長期間の診療もしくは同僚の証言など客観的な事実が必要となり、早期の診断はできないことになる。
そうなると精神課医の中で話される「うつ病と診断してがっかりした人はうつ病、うつ病と診断して喜ぶ人はうつ病」というのはあながちジョークとは言えないのだそうだ。

著者は、労働時間を減らせばメンタル疾患は減少するという仮説については否定的にとらえていて、もっと複合的に整理しなければならないとしている。
成果主義とメンタルヘルス不全の労働者増加の関連についても確証はないのだそうだ。
その原因究明にも、日本を変えていく処方箋のヒントが隠されているのではなかろうか。

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