2010年6月27日日曜日

『低炭素社会』

前東大総長だった小宮山宏先生の本。
実は仕事の関係で読むこととなったのだが、環境問題がわかりやすく説明されていて、これならアウトリーチとして一般人に説明されてもわかる内容となっていた。

地球は「水の惑星」と呼ばれるが、それは地球の平均気温が15℃と、水(H2O)が氷でも水蒸気でもなく、液体の状態で存在できることによる。
惑星の温度は、太陽からの距離と大気による温室効果という、非常に単純な物理法則で決まる。
地球の外側になってごく薄い大気しか無い火星の場合は−45℃くらいだし、地球の内側にあり、90気圧というCo2の大気を持つ金星は約430℃の超高温の星。いずれもH2Oは液体では存在しない。
もし温室効果がなければ、地球の平均気温はマイナス18℃くらいになってしまう。実は非常に微妙なバランスの奇跡的な状況により地球では生命が育まれている。

20世紀の100年間にCo2濃度は290ppm前後から380ppmへ変化した。このままだと2050年には大気中のCo2濃度は600ppmに達し、2℃から最大5℃の気温上昇が起こることが想定されている。
2℃〜5℃気温が変化することが問題というより、そのスピードに問題がある。


エネルギーとは「物体が仕事をする能力」である。すべてのエネルギーは最後に熱になる。

エネルギーは、動力、電力、どのような形で利用しても必ず最後は熱になる。エネルギーの最終形態が熱であると言ってよい。
だから、エネルギーを有効利用するには「どこで熱にするのか」が重要。なるべく熱にしないで、何回もエネルギーを利用すること、エネルギーの「質」を劣化させずに、繰り返し「仕事」をさせることが肝要。
色々環境関連の本も読んだが非常にシンプルで分かりやすい。


日本のエネルギー最終利用の55%を占める「日々のくらし」において、建物の断熱効率を上げたり、省エネタイプのヒートポンプを使用することで、鳩山元首相の「2020年までに日本はCo2排出量25%削減」は可能であるとしている。

その他にも原子力発電の効率を上げるだけでも削減が見込めるという。
「現在日本国内にある原子力発電所の稼働率は平均すると60%台にまで落ちている。韓国では90%の稼働率。その他の国も軒並み80%を超える稼働率が普通。
日本の原発では、1年に1回の点検作業が義務づけられている。ほとんどの国では点検は2年に1回。点検には約1ヶ月かかり、点検の間は発電がストップするので、それだけで稼働率が12分の1に減る。即ち8%の減少となり、最大稼働率は92%がマックスとなる。
10年後にかどうしていることがほぼ確実とみられる建設中の原子力発電所が3基ある。それらが動き出せば、稼働率の向上と合わせ、原子力だけで約4%の削減が達成できるであろう。」

他にも、風力発電の課題は、「電力会社間の電力移送システムが弱いため、北海道でつくった電気を本州に移送することができない。」などトリビア的なネタも書かれている。

日本人の「もったいない」意識は美徳だが、「もったいないのはモノよりエネルギー」という風に意識を転換し、節約するよりエコ家電を買おう、という小宮山先生のお話はうなづけるものであった。

エコキュートとエネファームの違いについても明確に記載がされていた。
「温かいところはエコキュート、寒いところはエネファームが優れている」など、知っているようで分かってなかった自分にとっては非常にわかりやすかった。
できうれば、その比較の中にエコジョーズとエコウィルなんかも入れて欲しかったというのは求め過ぎか。

0 件のコメント: