2010年6月13日日曜日

『チーム・ファシリテーション』

ファシリテーションというものに興味をもってから、堀公俊氏の著作はいくつも読んだが、今回のこの本は氏の集大成ではないだろうか。

チームの育て方に関して、農作物と土の関係に喩えて「人工栽培」と「自然栽培」という喩えを出している。
現在、大半の企業は、人工栽培で組織を運営している。
より多くの利益を得るために「マネジメント」「経営手法」という名の化学肥料を次から次へと投入し、収穫に悪影響を与える「ムダ」「余裕」「異分子」はとことん排除していく。
病虫害が出たと聞けば、「リストラ」「教育」という名の農薬を散布して病気を駆逐していく。
そうやって不自然な取り組みを重ねるうちに、土も木も段々疲弊して収穫が落ち始め、環境変化にも弱くなってくる。
そうなるとますます肥料と農薬に頼らざるを得なくなり、悪循環に陥る。
今、日本全体を覆っている閉塞感の元凶はこれではないだろうか、という問いかけだ。


結論から言うと今回、堀氏の提唱するチーム・ファシリテーションの手順は

起【会話:関係性を高める】
①どんな人が集まっているのか?
②どんな状況にあるのか?
③何を思っているのか?
承【対話:意味を共有する】
④何のためにやっているのか?
⑤何をめざしているのか?
⑥大切なものは何か?
転【議論:行動を変革する】
⑦本当の問題は何なのか?
⑧どんな手がうてるのか?
⑨やるべきことは何なのか?
結【省察:学習を深める】
⑩何が起こったのか?
⑪そこから何を学んだのか?
⑫次はどうすればよいのか?

とある。

今までもファシリテーションのノウハウとしては、「対話」との比較で「会話」や「議論」というのも比較として出されていたが「対話」が一番大切であるということが色々な人から述べられてきた。
が、今回の堀氏の話は、一連の流れの中で、「会話」→「対話」→「議論」と続けることでチームとして成果がでるとしており、「会話」「議論」も必要なものとして組み込まれているのが新しい考え方である。

不透明で不確実な時代を迎え、チームが扱う問題はかつてないほど複雑化している。
想定外のことが次から次へと起こり、過去から未来を予測することも難しくなり、素早く意思決定をして行動に移し、その結果を迅速にフィードバックしていく「学習のサイクル」のスピードを上げていかないと、組織は淘汰されかねない。
また、国際化や派遣社員の浸透が進み、同質性を前提としたチームワークから、異質性を前提としたチームビルディングへと時代が求めるものが変わりつつある。

自然栽培の基本コンセプトは「チームが(場)が輝けば、顧客が輝く」「顧客が輝けば、大きな果実を生み出す」という信念。

そして”活性化されたチーム”とは、
①個々のメンバーが「自律性」(主体性を持ち、自発的に行動している)を発揮している
②人と人が有機的につながり、共通のゴールに向けて互いの利害を超えて頑張る「協働性」(利他的)が発揮されている
③そして、互いの相乗効果によって、当初予想もしなかった力を生み出す「相互作用」(グループダイナミクス)が生まれる
とある。
「自律性」と「協働性」、すなわち主体的でありながらも相互に依存している。この2つを高いレベルで実現しているのが、活性化されたチームなのだ。


ファシリテーション上、今まで一番大切とされてきた「対話」(Dialogue)。
しかし、無理にまとめを行わず、新たな問いを見つけ出すことができればよしとする「対話」は業務上の話し合いとしては物足りないのではないかと、常々思っていた。
それに対しての見事な回答が示されている。
それ以外でもよく出てくる
・ミッション(存在意義、使命)・・私たちは何のために存在するのか?
・ビジョン(目標像、到達イメージ)・・私たちは何を目指しているのか?
・バリュー(価値観、行動指針、原則)・・私たちは何を大切にして活動するのか?
についても明確な考え方が示されていて腑に落ちるところがあった。

文句なく良書。お勧めの一冊である。

「いつの時代も、変革はメインストリームではなく、辺境から起こる。」というのも今の状況から心強い話である。
頑張らねば。

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