2010年10月24日日曜日

『ゲーム理論で不幸な未来が変わる!』

ゲーム理論の数学モデルを使って”予言”を行う(機密解除されたCIA文書によると的中率90%!)ブルース・ブエノ・デ・メスキータ教授が、その科学的予測法を解説する一般向け指南書。

北朝鮮核問題、中東和平問題など、現在も進行中の具体的な課題について予測されていて面白い。

ゲーム理論の基本的な前提として、「人間はみな自分の利益をひたすら追求する存在である」と設定することが必要らしい。
自爆テロも、マザー・テレサの貧者救済活動も、同じく自分の利得を追求する合理的な行為とする視点が必要になるのだそうだ。
どんな問題であろうと、人は意思決定する際に2つのことを欲する。
ひとつは自分が目指す結果にできるだけ近い決定である。
そしてもう1つは栄光〜例えば、取引成立に重要な役割を演じたと他の人々に認めてもらうことによる自尊心の満足。
誰もがこの2つの目標「望んでいる結果にしたい」と「功績を認められたい」をもっている。
どちらをどれだけ重視するかは人によってちがう。一方の望みを叶えたいがために、もう一方の望みを喜んで犠牲にする。。
ちょっと直感的には受け入れ難い前提ではあるが、そう設定しないと数学モデルでは解くことができないということなのだろう。
(その設定で9割方あたってしまうこともちょっとおっかない気がするが・・)

<信頼できる予測をするのに必要なこと>
1 この問題に大きな利害関係があって結果に影響を及ぼそうとする、個人やグループをすべて特定する。(最終的な政策決定者に注目するだけではいけない)
2 1で特定したプレーヤーそれぞれが、互いにかわす私的会話の中で支持する政策〜各プレーヤーが私的に語る望み〜を、入手できる情報からできるだけ正確に推測する。
3  各プレーヤーにとって、これがどれだけ大きな問題か、つまり各人にとっての重要度(重視度)を推定する。
4 各プレーヤーが他のプレーヤーに対してもつ影響力(行使しうる影響力。この問題についての立場を変えるよう他のプレーヤーをどこまで説得できるか?)を推定する。
以上を数値化して、利害関係人がどのようにお互いに働きかけあうのかをゲーム理論の数学モデルで推定する。

様々なテーマの中でも、粉飾決算が起きている可能性をあぶりだすファクターというのが面白い。
株式市場が発達している国で不正会計(粉飾決算)が起こるのは、経営陣が業績不振の実態を隠して自分たちの職を維持するため。株式配当と役員報酬が低めであるのに、時価総額は普通に、あるいはかなり伸びているという”分裂”が、不正行為が行われている可能性が高いことを示す初期症状となる場合が多い。
報告書にある会社の業績や経営ぶりから考えて低すぎる配当、役員報酬などが、不正行為の兆候となるファクターなのだそうだ。
また、会社がどれだけ正直または不正直になりやすいかを判断する指標として、
○経営幹部が職を維持するのに必要な支持者の規模
○機関投資家の株式保有率
がある。
地位を維持するにあたって頼らなければならない人の数が多ければ多いほど、CEOは解雇されやすくなる。だから、業績不振のCEOが辞めさせられるというのは、どちらかというと民主的な会社 での方が起こりやすい。そこでCEOは地位を維持するために業績不振を明かさなくて済むように、事業状態を偽ろうという悪いインセンティブをもつことにな るというのがその理由だそうだ。

ゲーム理論を用いて未来を推定する方法のイメージはできたのだが、次は具体的な手法を事例とともに開陳してもらいたいものだ。

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