2010年10月27日水曜日

『ポジティブな人だけがうまくいく 3:1の法則』

通常の”ポジティブ感情賛歌”ではなく、ネガティブ感情も必要であるとした上で、その比率を3:1(もしくはそれ以上)にすべしという本。

ポジティブ心理学とはマーティン・セリグマン博士が提唱し始めたもので、それまでの心の弱さやマイナス面にスポットを当てたものではなく、前向きな感情にスポットを当てたものである。

著者のバーバラ・フレドリクソンはポジティビティには6つの”事実”(仮説ではない!)があるとした上で、ポジティブ感情の「拡張ー形成理論(broaden-and-build theory)を展開している。

ポジティビティがもつ6つの事実
事実1 ポジティビティは気分がいい
    「いい気分」は生き方を変える動機づけになる。
事実2 ポジティビティは精神の働きを拡げる
    思考の領域を変化させ、視界に入る可能性の範囲をぐんと拡げる。
事実3 ポジティビティはリソースを形成する。
    ポジティブな感情を経験するうちに、身体的リソース、精神的リソース、心理的リソース、社会的リソースが形成される。
事実4 ポジティビティはレジリエンス(弾力性・困難な状況から立ち直る力)の強化をもたらす
    ポジティビティはネガティビティにブレーキをかける。
事実5 ポジティビティは「ティッピングポイント(転換点)」をもつ
    ポジティビティ比が3:1を超えると『繁栄』に向かう。(但しポジティビティの効果は非線形。3:1を超えたところで初めて変化が現れる)
事実6 ポジティビティは増やすことができる
    ポジティビティ比は上げることができる。

著者は数値化魔で、3:1の比率の根拠を様々な実験データ等を用いて述べている。
困難な状況から立ち直る力「弾力性」をあらわす”レジリエンス”が、実は個人のもつ能力に留まらず、コミュニティの中にも織り込まれているという発想は非常に面白い。
これは社会関係資本(人間の関係性も1つの資本である)という考え方にもつながっている。

「本当には楽しんでいない笑み」(目の周りの眼輪筋の動きがポイント)は本質的に「偽善のポジティビティ」で、怒りと同様に、冠動脈性疾患を起こす危険があるという研究結果が出たとのこと。
心から楽しんでいないと自分をだまそうとしてもダメということか。

この理屈からいうと、褒める:叱るの比率も3:1位にしなくてはならないのかもしれない。

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