2011年3月20日日曜日

『会社の「強み」が企業を壊すとき』

以前、TEP(TXアントレプレナーパートナーズ)の会合に参加させてもらった話をこのブログに書いた。
その際にも参加されていた村井勝さんの著書。

垂直統合型企業と水平協業型企業という概念で企業を二分して考えていて、どちらが優れているということではないが、自社の立ち位置や、その特性を間違えると会社がおかしくなるとしている。

産業は成熟するにつれて、垂直統合型産業から水平協業型産業に変化する傾向にある。
水平協業産業では、他社との差別化が難しくなり、完成品はコモディティー(日用品)化する傾向にある。

垂直統合型企業では研究開発体制は原則として社内におかれるが、水平協業型企業では研究開発体制はオープン・イノベーション(開放的な技術革新)型を採用し、自社内の研究開発体制よりは、世界中の研究開発をフルに活用して、研究開発体制の経費を最小限にとどめるよう努力する。オープン・イノベーション型を採用することで、独自の先端技術の採用という差別化の手段を失う反面、世界的な市場を対象にして最も優れていると思われる先端技術の採用が可能となる。
オープンイノベーション型企業にとって最も大切なことは情報収集能力だ。先進的な自社技術をデファクト・スタンダードになるよう導くことが重要な戦略となる。
オープンイノベーション戦略では競合他社との違いを出すことは難しく、わずかな先行者利益を最大限活用できるかが成功のカギだ。


「知的資本経営」という概念についても紹介されていた。
知的資本経営の基本は「ナビゲーター・コンセプト」と呼ばれるもので、企業を家に喩えて説明される。
家(会社)の中心は人(=「人的資本」)であり、人を取り囲む家は企業が獲得している「顧客資本」や、作り上げた業務プロセスにあたる「組織資本」でできている。
これらを評価する仕組みは現在の会計システムには存在しない。
しかし、その結果として生まれたものが家の上の屋根(企業業績)の部分として表れ、会計システムで評価することが可能となる。
企業が現在直面している社内外の環境の変化に対応するには、「人的資本」「顧客資本」「組織資本」といった、企業が持つ「知的資本」に依存せざるを得ない。

村井氏が考える世界の大きな流れの中の一つにグローバリゼーションの更なる浸透というのがある。
グローバリゼーションの進んだ組織や集団では、人種の区別なく、個人の能力に応じて報酬が支払われる。企業の中で取り交わされるコミュニケーションの量や質が、組織や集団の力の差となって表れる。

コミュニケーションとは、
第一に相互に理解できる言葉で話すこと。
第二に相手の考え方も理解できること。
第三にこちらの考え方を相手の考え方に沿って理解させる能力をもつこと。
言葉の問題だけではなく、多民族や多文化によって構成されるグローバル化の社会では、多種多様な人種的、文化的な背景への理解も要求される。

先述のTEP会合での村井氏の言動を見ていると、日本IBMやコンパック日本法人社長の経歴にも関わらず、オープンで温和な雰囲気を持っていた。
(さすがにアントレプレナーに対する諸々の質問は鋭いものがあったが)
著作も読んでみて、村井氏は日本の将来について考えている(憂える?)一人であると感じた。

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