元外務事務次官、薮中三十二氏の著書。
外交の難しさというものが垣間みえて面白い。
交渉の場に臨む前に必要な研究項目として、
①相手の国が何をねらっているのか
②交渉と結論を急いでいるか
③相手国の力はどのぐらいか
④交渉担当者の人となり、国内における力量はどうか
を事前におさえておく必要があるのだそうだ。
この内容は相手側だけでなく、自分の側にも当てはまる。
「敵を知り、己を知ること」は言うは易しで存外に難しい。
また、交渉相手との信頼関係構築のツボとしては
①ウソをつかず、欺かない
②絶対に必要なことと、融通の利くことを分け、優先順位を相手に分かるように伝える
③ダメなこと、デリバー(実現)できないことは、はっきりと言う
ということらしい。
サンデル教授の授業にある、イマニエル・カントの主張を連想した。
カントの『道徳形而上学原論』では、嘘は不道徳な行為の最たる物である。
嘘はどんなものであっても、正しいことの根源を傷つける。従って常に真実を語ること(正直であること)は、いかなる都合も認めず、つねに例外無く適用される神聖な理性の法則なのだ。ただし「知っている全てを語る必要はない」とするあたりが外交っぽい。
そして、交渉の最終段階で忘れてはならないこと。
それは、交渉決裂を恐れないということだ。
外交では勝ち過ぎは愚策とされ、50:50が良いとされるらしいが、著者は最低限でも51:49程度には有利にしておくよう心がけていたとのこと。
やはりバランス感覚が大切のようだ。
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