2011年8月17日水曜日

『9割は伸ばせる できる人の教え方』

東進ハイスクール人気講師の安河内哲也氏の「教え方」本。
予備校という究極の人材育成機関にあって、20年以上の経験を伴った知見には説得力がある。

企業においては、人材育成だけを目的とした「人材育成部」というのは一般的ではなく(今だと人事部の一セクションか)、OJTという名のもとに各ライン部署に「人材育成」の実行責任が降りてきている。
そのことを考えると安河内氏の教えは、企業においては誰しもが意識しなければならないということだ。

安河内氏曰く、教える人は「5つの役割」を担う。(これは安河内氏の独創ではなく、教育界においては結構いわれることなのだそうだが、初耳である)
教える立場に立つ人は、「学者」であり、「役者」であり、「易者」であり、「芸者」であり、「医者」でなければならない。
【学者】
・分かり易さは、教える側の膨大な知識があることによって初めて生まれてくる。
・自分が勉強する姿を見せて、それを部下、生徒、子供などに波及させる。
【役者】
・教えるとは、人前にたって、人を惹き付ける行為である。
【易者】
・相手の不安をキッパリ切り捨てる
・相手が「自分は成功に向かっている」と思えるように働きかけ、サポートする。
【芸者】
・学ぶ場を楽しくする。
・相手が退屈しないように「笑い」を盛り込む。
【医者】
・相手のタイプ(思考型か暗記型か)を見抜いてアドバイスする。
 (暗記型には思考するように、思考型には暗記するようにアドバイス)

教師の評価軸であるが、安河内氏曰く、教えると言う仕事は、次の二つの柱から評価すべき。
「部下・生徒・子供の満足度」
「部下・生徒・子供の伸び率」
それぞれについて、達成率が70%以上をキープできている人は、上司として、教師として、親としてかなり優秀だといえる、とある。
企業において何をもってして部下の伸び率の達成率70%というのか定量的な基準が難しいが、360度評価を用いて数値化するというようなことは可能な気がする。

また、話をまとめる時のコツも披露されている。
論理的に話すコツは、内容を4つに分けること。
「トピックの提示」(小さな主張)
「サポート」
「具体例・反論」
「結論」(最後まで引っ張っておく大事な主張)
  これは教師のみならず、一般の企業人にも活用できる素晴らしい技だ。

また、教える立場と教わる立場の距離感についての考察も面白い。
教える側と教わる側の距離は、遠くても近くてもダメ。追いつけそうだと思わせておいて、追いついてきたら突き放す。そのようにして、追いつけそうで追いつけない距離を保つ。
教える立場に立つ人は、ときに圧倒的な力の差を見せ、適度な距離感を保つことを意識する必要がある


伸びにくい人間の特性についても述べられている。
中途半端にできる人ほど、伸びにくいことが多い。
一番教えにくいのが、全体のレベルを5段階に分けたら、上から2,3番目のあたりの層。
彼らに共通していえるのは「プライド」が高いということ。そのため、自分のやり方を捨てようとしない。
間接的に彼らのプライドを挫いて、ガチガチに固まったプライドやコンプレックスを崩してあげると、この層は飛躍的に伸びていく。
この考察などは,正に一般企業でも同じこと。

テストの数字で”伸び(成長)”が明確に定量化しやすい予備校における人育ての様々なノウハウは非常に参考になるところが大であった。

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