2011年8月20日土曜日

『一日で読める『源氏物語』』

東進ハイスクールの古文講師、吉野敬介氏の源氏物語の入門版。
現代語(更にいうと若者語)で書かれている部分が感情もこもっていて非常に分かり易い。
恥ずかしながら、これまで『源氏物語』は名前や作者については知っていても、どのようなストーリーなのかについてはほとんど知らなかった。
著者も「『源氏物語』と出会って国文学に目覚めたが、通常の現代語訳は正直みんな難しい。」と述べているが、この本は『源氏物語』の分かりにくさをクリアしつつ、『源氏物語』の深さを感じさせるには十分の内容である。

そもそも、源氏物語は言葉以前に登場人物の関係性が難しい。
今と違って「一夫一妻多妾制」なのでただでさえ相関図がつくりづらいのに加えて、義理のお母さんと子供を作っちゃうようなオイタをする輩が主人公なので、誰と誰がどのような関係なのかを理解するのが非常に難しい。
「一夫一妻多妾制」なので、現代の感覚からするとタブーっぽいことがたくさん出てくるのだが、『源氏物語』の平安朝時代においては通常のこととして描かれる。
一方、源氏と朧月夜の恋沙汰や、浮舟の入水自殺騒動についてはスキャンダルとなるとの判断が、現代の感覚だとどの程度の”ヤバさ”なのかがピンとこない。
”ヤバさ”加減がわからないということになると、平安時代の年齢感覚もよく分からないものの一つ。
10歳で「可愛い!」と思っていた若紫(紫の上)と源氏が結婚したのは、源氏22歳(大学2年生)、紫の上14歳。当時は当たり前なのかしら??
(この、今でいうと何年生という比較も吉野氏によるもの。イメージしやすくてvery good!!)

と、わからないことだらけながら、源氏物語の全体のあらましが理解できる良書である。
また時間があったら『源氏物語』を深堀り(深読み)してみたいと思わせるところも、この本が良書たる所以と思う。

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